BOOK 沼 RADIO

BOOK 沼 RADIO

「BOOK 沼 RADIO」は、オカ・コン・カフカの3人が、毎回、1冊の書籍を取り上げ、そこから生まれた問いに対して、具体と抽象を行き来しながら、答えを出そうとする。そんな対話番組です。3人で思考の沼を楽しんでいきます。 Notionページ→ https://tricky-wallaby-04e.notion.site/BOOK-RADIO-1ec73bca327f4adca851a40ab543134a?pvs=4 毎月第二、第四日曜日に更新予定。

  1. May 23

    #72 『静かな時間の使い方』(安斎勇樹著)

    今回はカフカの選書。 安斎勇樹さんの著書『静かな時間の使い方』を取り上げます。 現代社会は、SNSのフォロワー数や会社のKPIといった「市場のスコア」、世間体などの「社会の規範」といった、著者が「ソーシャルノイズ」と呼ぶ情報に溢れています。 本書は、こうしたノイズから物理的に距離を置き、静かな時間の中で「リフレクション(内省)」を行うことで、自分自身の内なる声と言語化を取り戻す重要性を説いています。「分析的」と「物語的」という2つのリフレクション。 成果をロジックで振り返るだけでなく、自分の熱意や直感を「物語」として意味づけすることで、初めて自分の納得感につながるという視点です。 さらに、「信念」に至るためのステップアップとして、「感情」、「技術」、「興味」という3つの階層を丁寧にリフレクションする。そうすることで、自分の才能が発動する条件である「信念」が形を帯びてくるプロセスが紹介されています。 この回では、元アスリートとして「才能の有無」というアンフェアな世界にいた経験から、自身の信念を「フェア(対等)」であることだと再定義するカフカの自己分析と、復職後に「効率」だけを求めて働く中で「没入」という感覚を失い、バイタリティを削削されているオカの実感を交えて議論します。 特に、余裕がなくなった時に「相手のせい」にしてしまう衝動を、いかにしてリフレクションという「理性」で飼いならすかという切実な問いについて深く語り合います。 最終的に、私たちは「どれだけ時間やお金を確保しても、自分の内側の声を言語化しない限り満たされない」という、デジタル社会における幸福の核心に立ち返ります。

    37 min
  2. May 9

    #71 『嘔吐』(小川哲著)

    今回は、オカの選書。 小川哲さんの短編『嘔吐』(文芸誌「GOAT」掲載)を取り上げます。 本作は、ある中年男性が、ファンである女性作家のサイン会を「おじさんであること」を理由に追い出された、というブログを投稿することから始まります。一見、不当な差別に抗議する紳士的な告発に見えるこの文章が、SNSでの炎上や二次情報の流布を経て、読み手の「真実」を激しく揺さぶっていく物語です。 「認知の歪みと雰囲気の支配」「ロジック」と「感情」の対立。仕事のプロジェクトなどで、本来の目的(ロジック)を優先する人が、盛り上がっている場(感情)において「冷たい人」と見なされてしまうような、現代社会における正論の通じにくさ。 本人同士が納得していても、それを見た「第三者」への影響を考慮しなければならないSNS社会特有の監視構造と、そこから生まれる息苦しさについて考察します。 この回では、自身の仕事でのプロジェクト事例(目的と盛り上がりの乖離)を引き合いに出すオカの実感と、メタ的な視点で「客観視できる自分でいたい」と願いつつも、反射で動いてしまう人間の身体性を分析するカフカの視点を交えて議論します。 特に、「私たちは言葉の端々に宿る人間性をどこまで正しく受信できているのか」という、コミュニケーションの本質的な難しさを深掘りします。 最終的に、私たちは「情報の海の中で、いかにして自分自身の価値観を保ち、他者の痛みを想像し続けることができるのか」という、現代的な誠実さを問う問いに立ち返ります。

    33 min
  3. Mar 7

    #69 『母という呪縛 娘という牢獄』(齊藤 彩著)

    今回は、コンの選書。『母という呪縛 娘という牢獄』を取り上げます。 本書は、2018年に滋賀県で起きた、9年もの浪人生活を強いられた娘が実の母を殺害・遺棄した実在の事件を、記者による取材と被告となった娘の手記から解き明かしたノンフィクションです。 「母娘の共依存と支配」「教育虐待」「心理的な逃げ場のなさ」。傍目には逃げ出せるように見えても、当事者の心の中では「母を殺すか、自分が死ぬか」しか選択肢がないと感じるほど煮詰まった「牢獄」の闇について描かれています。 親による「過度な同一視」。母自身の不遇な生い立ちやコンプレックスを埋めるために、娘を「自分自身」だと思い込み、支配を強めていった歪んだ愛情の形とは。 この回では、親の意向と自分の意志の狭間で葛藤した過去を持つコンの実感を交えて話しています。特に、「愛情の裏返し」という名目で正当化される支配の残酷さや、誰もが一歩間違えれば「異常」とされる世界線に入りうる危うさについて深く語り合います。 最終的に、私たちは「他者を自分とは別の人間としていかに尊重し、理性で支配欲を制御し続けるか」という、家族関係の深淵にある問いに立ち返ります。

    40 min
  4. Feb 21

    #68『本なら売るほど』(児島 青 著)

    今回は、オカの選書。 漫画『本なら売るほど』を取り上げます。 「本をテーマにした漫画」といえば、名著の素晴らしさを語り合ったり、読書の崇高さや楽しさをキラキラと描いたりするものが一般的。しかし本作は、古書店を舞台に「本を手放す人々」や、必ずしも本を読み通せない人々の姿を描き、本と人との関わりが決して綺麗な側面だけではないというリアリティを肯定してくれています。 そこで今回は「読書への罪悪感」をキーワードに、3つのトピックを中心にお話ししました。 まず、本を読まない「本好き」の存在について。内容よりも本の情報や流通が好きだったり、買って満足してしまう「積読派」や、読んでいて寝落ちしてしまう人など、完璧な読書家ではない人々の心情を肯定する視点について。 次に、読書につきまとう「高尚さ」の呪縛について。本は綺麗に扱わねばならない、最後まで読まねばならないというプレッシャーと、そこから解放されて自由に(書き込みをしたり、途中でやめたり)本と付き合うことの豊かさ。 最後に、本のある空間の居心地の良さについて。コンの祖父の書斎の原体験や、カフカが感じる書店の安心感など、読む行為そのものよりも「本に囲まれる」こと自体が持つ、癒やしの効果です。 この回では、「積読」に引け目を感じていたオカが本作に救われたエピソードや、アスリート時代のカフカが「読めない時期」に感じた葛藤、そして図書館や書店に見える「人の生活」を愛するコンの感性を交えて議論します。 特に、「読書はオン(頑張る時)にするものか、オフ(休む時)にするものか」という問いや、本を崇高なものとして扱いすぎない「生活に溶け込んだ読書」のあり方について語り合います。 最終的に、私たちは「知識を得るための読書ではなく、ただその時間を味わうための読書とは何か」という、本との幸福な距離感を問う議論に立ち返ります。

    31 min
  5. Feb 7

    #67 『戦略的暇』(森下彰大著)

    今回は、カフカの選書。 森下彰大さんの著書『戦略的暇 人生を変える新しい休み方』を取り上げます。 スマホの登場以来、私たちは常に何かに接続し、隙間時間を埋めることに躍起になっている。 しかし本書は、デジタルデバイスへの「依存」から「共存」へとシフトし、意識的に「暇」を作り出すことこそが、脳のパフォーマンスを高め、人生を豊かにすると説いています。 今回は「良質な暇」をキーワードに、3つのトピックを中心に展開しました。 第一に、「良質な暇」と「悪質な暇」の違い。単なるうさ晴らしやSNSによるドーパミン消費(悪質)ではなく、軽い運動や瞑想、創作活動など、脳のデフォルト・モード・ネットワークを整える活動(良質)の重要性について。 第二に、現代を覆う「ナウイズム(今至上主義)」の弊害。SNSのタイムラインや即時的な成果に追われ、過去に学び未来を構想する「長い時間軸」での思考が失われている現状への警鐘。 第三に、反射から内省への転換。情報は「反射」的に消費させるように設計されています。そこから距離を置き、五感や身体感覚(内受容感覚)に耳を澄ませる時間の必要性を話しています。 最終的に、私たちは「空白の時間を恐れず、いかにして自分自身との対話を取り戻すか」という、デジタル社会におけるウェルビーイングの問いに立ち返ります。

    37 min
  6. Jan 27

    #66『思春期センサー 子どもの感度、大人の感度』(岩宮恵子著)

    今回は、conの選書。 岩宮恵子さんの著書『思春期センサー 子どもの感度・大人の感度』(岩波書店)を取り上げます。 大人にとって、かつての自分の記憶を頼りに語ってしまいがちな「思春期」。しかし本書は、時代や環境の変化に伴い、現代の思春期の子どもたちが感じている世界は、大人の想像とは大きく異なることを示唆しています。 「思春期センサー」という独特な感性をキーワードに、現代の思春期を取り巻く環境の変化として、主に3つのトピックが挙がりました。 ・SNSの普及により「逃げ場がない」状況が生まれていること。 ・「いつメン(いつものメンバー)」という独特な人間関係の在り方。 ・自分の感情や状況を説明するための「言葉」をまだ持たない子どもたちと、自身の経験則で「分かった気になってしまう」大人との間にある決定的なズレ。 今回は、これから思春期の子どもに向き合うことになるconの実感と、自身の高校時代を振り返りながら「センサー」の働きを議論します。 「悪いことだと分かっていないのではなく、断るための言葉を持っていないだけ」という視点や、大人が自身の過去の経験をそのまま当てはめることの危うさについて深く語り合います。 最終的に、私たちは「大人になる過程で弱まっていく『センサー』の存在を認め、いかにして『分かった気にならず』に他者の痛みを想像するか」という、世代を超えた対話の問いに立ち返ります。

    38 min
  7. Jan 10

    #65 『人生にコンセプトを』(澤田智洋著)

    今回は、オカの選書。 澤田智洋さんの著書『人生にコンセプトを』(ちくまプリマー新書)を取り上げます。 一般的に「コンセプト」といえば、ビジネスにおいて競合と差別化し、市場でポジションを獲得するための「戦略」を指す言葉として使われます。 しかし本書は、そうした「勝つための戦略」ではなく、社会から「浮いてしまっている」状態を肯定し、その違和感に名前を与えることで自分を支えるための「コンセプト」の重要性を説いています。 著者の澤田さんは、自身の「運動音痴」という弱さを逆手に取り、誰もが楽しめる「ゆるスポーツ」を生み出した経験などを背景に、コンセプトを持つことの意義を語ります。 本書によると、夢は「目的地」であり、コンセプトは武士道や茶道のような「道(スタンス)」。 子育てなどを経て、ポジティブな生き方が難しいと感じているオカの個人的な葛藤と、モヤモヤから始める本書のアプローチを重ね合わせながら議論を展開します。 特に、社会的に評価される「A面(表題曲)」のような自分だけでなく、悩みや弱さを含んだ「B面(カップリング曲)」のような自分こそが、その人のアイデンティティや深みを作るという「人生のB面」論について語り合います。 最終的に、私たちは「解決できない悩みや弱さを否定せず、いかにして人生の味わい深さに変えていくか」という、成熟した生き方の問いに立ち返ります。

    38 min

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