岡大徳のポッドキャスト

岡大徳

病院事務長が実務と経営の視点で語る、医療制度の最新動向。急性期〜回復期で幅広い部門を統括してきた経験をもとに、最新の令和8年度診療報酬改定(算定要件・疑義解釈)や施設基準、医療DXの解説を音声で配信。経営層から現場の事務担当者まで、忙しい合間に「現場で使える知識」をアップデートできます。 www.daitoku0110.news

  1. 人工腎臓の評価見直し|令和8年度診療報酬改定で新設「腎代替療法診療体制充実加算」を解説

    5h ago

    人工腎臓の評価見直し|令和8年度診療報酬改定で新設「腎代替療法診療体制充実加算」を解説

    慢性透析患者は全国で約34万人にのぼり、その平均年齢は70歳を超えて高齢化が進んでいます。この透析医療では、災害時の継続体制や腎代替療法の情報提供、シャントトラブルへの対応といった取組に、医療機関ごとのばらつきが課題となっていました。そこで令和8年度診療報酬改定では、血液透析患者がより安心・安全に医療を受けられる体制を確保するため、人工腎臓(J038)の評価を見直すことになりました。本記事では、この見直しの内容を改定案と現行の比較を交えて解説します。 今回の見直しは、基本点数の引き下げと新加算の創設という2本立てで行われます。第一に、人工腎臓の基本点数を区分にかかわらず一律20点引き下げます。第二に、引き下げ分を補う形で「腎代替療法診療体制充実加算」(20点)を新設します。この加算は、災害対策・腎代替療法の情報提供・シャントトラブルの医療機関間連携という3つの要件を満たした医療機関で算定でき、要件の一部には届出のための経過措置が設けられています。 見直しの背景:透析医療を取り巻く現状と課題 今回の見直しは、透析医療の現状に残る体制面の課題を背景としています。慢性透析患者は約34万人で、新規導入患者も年間約3.9万人にのぼります。患者の高齢化が進むなか、災害時にも透析を止めない体制や、患者一人ひとりに適した治療法を選べる支援の重要性が増しています。 この体制面の課題は、複数の調査結果にあらわれています。災害対策では、対応マニュアルを策定済みの医療機関が80.5%にのぼる一方、日本透析医会の災害時情報ネットワーク等への登録や自治体等との連携体制を確保している医療機関は76.1%にとどまります。腎代替療法の情報提供では、血液透析・腹膜透析・腎移植という3つの選択肢をすべての患者に提示している医療機関は51.2%にすぎません。シャントトラブルへの対応では、自院での治療や事前に連携した医療機関への紹介を行う施設が93.6%を占める一方、事前連携のないまま紹介する施設も5.9%残っています。 これらのばらつきを是正することが、今回の評価見直しのねらいです。すなわち、安心・安全で質の高い透析体制を整えた医療機関を評価する仕組みを通じて、医療機関全体の取組の底上げをめざします。 改定内容①:人工腎臓の基本点数を一律20点引き下げ 第一の見直しは、人工腎臓の基本点数の一律20点引き下げです。この引き下げは、慢性維持透析1〜3の各区分と「その他の場合」のすべてに適用されます。引き下げ後も、後述の新加算を算定すれば実質的な点数水準は維持される設計になっています。 引き下げの内容は、区分ごとに現行点数と改定案を並べると確認できます。最も算定の多い慢性維持透析1では、4時間未満が1,876点から1,856点へ、4時間以上5時間未満が2,036点から2,016点へ、5時間以上が2,171点から2,151点へと引き下げられます。慢性維持透析2では、4時間未満が1,836点から1,816点へ、4時間以上5時間未満が1,996点から1,976点へ、5時間以上が2,126点から2,106点へと引き下げられます。慢性維持透析3では、4時間未満が1,796点から1,776点へ、4時間以上5時間未満が1,951点から1,931点へ、5時間以上が2,081点から2,061点へと引き下げられます。「その他の場合」も1,580点から1,560点へと引き下げられます。 改定内容②:腎代替療法診療体制充実加算(20点)の新設 第二の見直しは、引き下げ分を補う「腎代替療法診療体制充実加算」(20点)の新設です。この加算は、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合し、地方厚生局長等に届け出た医療機関で算定できます。引き下げと同額の20点であるため、基準を満たした医療機関では従来どおりの点数水準を確保できます。 裏を返せば、この加算は体制整備のインセンティブとして機能します。つまり、基準を満たさない医療機関は実質的に20点の引き下げとなり、基準を満たす医療機関だけが従来水準を維持できる仕組みです。こうして、安心・安全な透析体制を整えた医療機関に診療報酬が手厚く配分されます。 加算の施設基準:満たすべき3つの要件 腎代替療法診療体制充実加算には、満たすべき3つの要件があります。第一に災害対策、第二に腎代替療法の情報提供、第三にシャントトラブルの医療機関間連携です。これらに加え、緩和ケアの提供体制を整えることが望ましいとされています。 第一の要件は、災害対策です。具体的には、ハザードマップで自院の災害発生時のリスクを把握したうえで災害対応マニュアルを作成していること、そして日本透析医会等による災害時の情報伝達訓練に年1回以上参加していることの両方を満たす必要があります。 第二の要件は、腎代替療法の情報提供です。情報提供では、関係学会の資料に基づき、患者ごとの適応に応じて腎代替療法を説明していることが前提となります。この説明は導入期に限らず、患者の病状や求めに応じて繰り返し行うこととされています。そのうえで、在宅自己腹膜灌流指導管理料(C102)を過去1年間で24回以上算定していること(腹膜透析の実績)、または腎移植の相談に応じ移植手続を行った患者が前年に2人以上いること(腎移植の実績)のいずれかを満たす必要があります。 第三の要件は、シャントトラブルの医療機関間連携です。透析シャントの閉塞等で経皮的シャント拡張術・血栓除去術などの治療を要する場合に、自院で治療する場合を除き、治療を行う他の医療機関とあらかじめ連携し、必要に応じて診療情報を提供する体制を整えていることが求められます。 なお、緩和ケアの体制整備は努力義務にとどまります。すなわち、患者の症状に応じた治療やケアを提供できる体制を整えることが望ましいとされ、その際は「腎不全患者のための緩和ケアガイダンス」を参考にすることとされています。 届出への対応:要件の一部に経過措置 加算の要件のうち一部には、届出のための経過措置が設けられています。この経過措置は、加算の届出を行った医療機関を対象に、特定の要件を一定期間満たしているものとみなすものです。これにより、医療機関は段階的に体制を整えられます。 経過措置の対象は、2つの要件です。第一に、災害時の情報伝達訓練への参加(災害対策のイ)は、令和9年5月31日までの間は基準に該当するものとみなされます。第二に、腹膜透析の実績と腎移植の実績(情報提供のイ・ウ)は、令和10年5月31日までの間は基準に該当するものとみなされます。 まとめ:体制整備を評価する2本立ての見直し 令和8年度改定における人工腎臓の評価見直しは、基本点数の引き下げと新加算の創設という2本立てで行われます。人工腎臓の基本点数は一律20点引き下げられ、その分を補う腎代替療法診療体制充実加算(20点)が新設されます。この加算は、災害対策・腎代替療法の情報提供・シャントトラブルの医療機関間連携という3つの要件を満たした医療機関で算定でき、要件の一部には令和9年・令和10年までの経過措置が設けられています。透析医療を提供する医療機関は、これらの要件と猶予期間を確認し、届出に向けた体制整備を計画的に進めることが求められます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

    6 min
  2. 【令和8年度改定】心不全再入院予防継続管理料を徹底解説|算定要件と点数

    1d ago

    【令和8年度改定】心不全再入院予防継続管理料を徹底解説|算定要件と点数

    心不全は、退院後に再入院をくり返しやすい疾患です。再入院のたびに、患者の心機能は低下します。同時に、患者の生活の質も損なわれます。こうした再入院を防ぐには、退院後の継続した管理が欠かせません。しかし、退院後の継続管理を評価するしくみは、これまで十分ではありませんでした。そこで令和8年度診療報酬改定では、心不全再入院予防継続管理料が新設されました。本記事では、この新しい管理料のしくみと算定のポイントを解説します。 心不全再入院予防継続管理料は、急性心不全の入院から退院後の外来までを一貫して評価する点数です。本管理料は、イ・ロ・ハの3区分で構成されます。イは、入院中に1回算定する区分です。ロとハは、退院後の外来で月1回算定する区分です。これらの算定には、多職種による介入が求められます。さらに、施設基準では、地域連携の体制が求められます。 新設の背景:再入院予防を地域全体で推進する 心不全再入院予防継続管理料は、心不全の再入院予防を推進する目的で新設されました。急性心不全で入院した患者は、退院後に再入院するリスクが高い患者です。このリスクを下げるには、早期からの介入と退院後の継続管理が必要です。そこで本管理料は、入院中の早期介入から退院後の地域連携までを、一連の取組として評価します。 この取組の特徴は、多職種による介入にあります。心不全の管理には、薬物治療だけでなく、療養指導・食事指導・運動指導が欠かせません。これらの指導は、医師・看護師・薬剤師・管理栄養士がそれぞれの専門性をいかして担います。本管理料は、こうした多職種の共同による介入を評価します。 点数体系:入院中のイと退院後のロ・ハ 本管理料は、入院中のイと退院後のロ・ハの3区分で構成されます。イは、入院中の早期介入を評価する区分です。ロとハは、退院後の外来での継続管理を評価する区分です。各区分の点数は、次のとおりです。イは、入院中に1回算定する区分で、1,000点です。ロは、退院後の外来で月1回算定する区分で、6回目までが700点、7回目以降が225点です。ハも、退院後の外来で月1回算定する区分で、6回目までが400点、7回目以降が225点です。 イは、入院中に1回だけ算定する区分です。算定の対象は、急性心不全で入院した患者です。この患者に対し、再入院予防を目的とした計画的な評価と治療を行った場合に算定します。 ロとハは、退院後の外来で算定する区分です。いずれも、入院中にイを算定した患者が対象です。つまり、入院中にイを算定し、退院後にロまたはハで継続管理する流れになります。算定は、初回算定日の属する月から1年を限度に、月1回行います。ロは、多職種の共同による評価と治療を行う場合の区分です。ハは、継続した評価と治療を行う場合の区分です。両者の点数差は、介入の手厚さの違いを反映します。 対象患者と算定要件:ガイドラインに基づく評価が前提 本管理料を算定するには、ガイドラインに基づく評価と治療が前提となります。算定の対象は、慢性心不全の急性増悪を含む急性心不全で入院した患者です。この患者に対し、関係学会の「心不全診療ガイドライン」に基づく評価を行います。具体的には、心機能の評価・原因精査・リスク評価を実施します。 イの算定には、入院中の運動療法の実施も要件となります。心不全の患者には、薬物治療に加えて運動療法が有効です。そのため、イを算定する患者には、入院中に運動療法を実施します。あわせて、療養指導・食事指導・運動指導を、必要に応じて個別に実施します。 なお、本管理料には、併算定できない点数があります。心不全を主病とする特定疾患療養管理料は、本管理料と併せて算定できません。地域包括診療料も、原則として併算定できません。ただし、慢性心不全以外の慢性疾患もあわせて持つ患者について算定する場合は、地域包括診療料を併算定できます。また、ロについては、外来栄養食事指導料や心大血管疾患リハビリテーション料などを、同一日に算定できません。 施設基準:多職種の配置と地域連携の体制 施設基準では、多職種の配置と地域連携の体制が求められます。まず、心不全の診療を行う十分な体制が必要です。この体制には、医師・看護師または保健師・薬剤師・管理栄養士を適切に配置します。これらの職種が共同して、心不全の管理にあたります。 イを算定する病棟には、入院基本料の要件もあります。対象となるのは、一般病棟入院基本料の届出を行った病棟です。また、7対1または10対1入院基本料の病棟も対象です。ただし、後者は特定機能病院入院基本料または専門病院入院基本料に限られます。 まとめ:入院から退院後まで一貫して支える新評価 心不全再入院予防継続管理料は、再入院予防を推進する目的で新設されました。本管理料は、入院中のイと退院後のロ・ハの3区分で構成されます。算定には、ガイドラインに基づく評価と多職種の介入が要件となります。さらに、施設基準では、地域連携の体制が求められます。この新評価により、心不全の患者は、入院から退院後まで一貫した管理を受けられます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

    6 min
  3. 【令和8年度診療報酬改定】カルタヘナ法に基づく医学管理の推進|個室管理を評価する新加算300点を解説

    2d ago

    【令和8年度診療報酬改定】カルタヘナ法に基づく医学管理の推進|個室管理を評価する新加算300点を解説

    近年、遺伝子組換え生物等を含む薬剤の投与機会が増えています。ところが、こうした薬剤の取扱いに必要なカルタヘナ法上の管理は、従来の診療報酬で評価されてきませんでした。そこで令和8年度診療報酬改定では、カルタヘナ法を遵守した薬剤投与と医学管理を推進する評価を新設します。 本改定の見直しは、大きく2つです。1つ目は、入院中の個室管理を評価する「特定薬剤治療環境特別加算」(1日につき300点)の新設です。2つ目は、特定薬剤治療管理料の対象拡大であり、自宅等での管理指導を新たに評価します。いずれの見直しも、カルタヘナ法に基づく管理が必要な薬剤を対象とし、新設加算ではその対象に再生医療等製品を含みます。 カルタヘナ法と対象薬剤を理解する はじめに、カルタヘナ法と今回の対象薬剤を確認します。カルタヘナ法は、遺伝子組換え生物等が環境へ広がることを防ぐ法律です。医療では、この遺伝子組換え生物等を含む薬剤が、管理の対象となります。 カルタヘナ法は、遺伝子組換え生物等の使用を規制し、生物の多様性を守る法律です。正式名称は「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」といいます。この法律は、遺伝子組換え生物等が自然環境へ広がり、在来の生態系に影響を及ぼす事態を防ぐことを目的とします。医療分野では、遺伝子組換え技術を用いた薬剤が、この規制の対象に含まれます。 対象薬剤は、カルタヘナ法に基づく管理が必要な薬剤であり、再生医療等製品を含みます。具体的には、ウイルスを用いたがん治療薬や、遺伝子を導入する治療製品などが該当します。これらの薬剤は、投与後に患者の体液や排泄物を通じて、遺伝子組換え生物等が外部へ排出される可能性があります。そのため、薬剤を投与する医療機関には、拡散を防ぐための管理が求められます。 1つ目の見直し:個室管理を評価する「特定薬剤治療環境特別加算」 1つ目の見直しは、入院中の個室管理を評価する「特定薬剤治療環境特別加算」の新設です。この加算は、1日につき300点を算定できます。対象は、カルタヘナ法に基づく管理が必要な薬剤を投与する目的で個室に入院する患者です。 この加算は、遺伝子組換え生物等の拡散を防ぐ個室入院を評価します。対象薬剤を投与すると、遺伝子組換え生物等が患者から外部へ排出される可能性があります。個室での入院管理は、この排出物が他の患者や環境へ広がることを防ぎます。新設の加算は、こうした拡散防止の体制を、診療報酬の面から支えます。 算定要件は、対象薬剤の投与を目的とした個室入院です。具体的には、本加算を算定できる入院基本料または特定入院料を現に算定している患者が、算定の前提となります。この患者を、カルタヘナ法に基づく管理が必要な薬剤を投与する目的で個室に入院させた場合に、所定点数へ加算します。なお、対象薬剤には再生医療等製品も含まれます。 2つ目の見直し:特定薬剤治療管理料の対象拡大 2つ目の見直しは、特定薬剤治療管理料の対象拡大です。改定後は、カルタヘナ法に基づく管理が必要な薬剤を投与する患者への、自宅等での管理指導が評価対象に加わります。算定は、月1回に限られます。 今回拡大するのは、特定薬剤治療管理料のうち「注11 ロ」の規定です。この規定は現行で、サリドマイド及びその誘導体を投与している患者を対象としています。具体的には、これらの薬剤を投与している患者について、服薬の安全管理の遵守状況を確認し、その結果を所定の機関に報告するなどの管理を評価します。この確認により投与の妥当性を見極め、必要な指導を行った場合に、月1回算定できます。 改定後は、この注11 ロの対象に、カルタヘナ法に基づく管理が必要な薬剤を投与している患者が加わります。これらの患者は、退院後も自宅等で薬剤に由来する遺伝子組換え生物等を排出する可能性があります。そこで、自宅等における管理に必要な指導を行った場合に、月1回に限り所定点数を算定できるようにします。この拡大により、入院中だけでなく退院後の管理も、診療報酬で評価されます。 まとめ 令和8年度診療報酬改定では、カルタヘナ法に基づく医学管理を推進するため、2つの見直しを行います。1つ目は、入院中の個室管理を評価する「特定薬剤治療環境特別加算」(1日につき300点)の新設です。2つ目は、特定薬剤治療管理料の対象拡大であり、自宅等での管理指導を新たに評価します。これらの見直しにより、遺伝子組換え生物等を含む薬剤の安全な投与と管理が、診療報酬の面から支えられます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

    5 min
  4. 検体検査管理加算の見直し|令和8年度改定でパニック値対応が要件に

    3d ago

    検体検査管理加算の見直し|令和8年度改定でパニック値対応が要件に

    令和8年度診療報酬改定では、検体検査管理加算の施設基準が見直されます。検体検査管理加算とは、院内で実施する検体検査の精度を組織的に管理する医療機関を評価する加算です。これまでの基準には、検査結果が生命に関わる異常値を示した際の対応について、明確な定めがありませんでした。今回の改定は、この異常値への対応体制を施設基準に位置づけ、患者への安心・安全な医療の提供を更に推進することを目的としています。 今回の見直しでは、検体検査管理加算(Ⅱ)、(Ⅲ)及び(Ⅳ)に、パニック値への対応体制を整えることが望ましいという要件が追加されます。パニック値とは、生命が危ぶまれるような状態を示唆する検査の異常値です。医療機関には第一に、グルコース、カリウム及び血小板についてパニック値の閾値を設定することが求められます。第二に、パニック値が出た際に速やかに担当医師へ連絡することが求められます。第三に、検査結果報告書にパニック値であることがわかる表示を行うことが求められます。 見直しの背景と基本的な考え方 今回の見直しは、医療安全対策の推進という改定方針に沿うものです。令和8年度改定では「患者にとって安心・安全に医療を受けられるための体制の評価」が重点項目に掲げられました。検体検査管理加算の見直しは、この重点項目を構成する個別改定項目の一つに位置づけられます。 検体検査管理加算は、院内検査の品質を組織的に管理する体制を評価する加算です。この加算は管理体制の水準に応じて(Ⅰ)から(Ⅳ)まで段階的に区分されています。これらの区分のうち、より高い管理水準を評価する(Ⅱ)、(Ⅲ)及び(Ⅳ)が、今回の見直しの対象です。 見直しの対象となった3区分では、検査結果が異常値を示した際の対応が課題でした。検査値の中には、放置すれば患者の生命を脅かすパニック値が含まれます。このパニック値への対応は、これまで各医療機関の運用に委ねられ、施設基準には明示されていませんでした。そこで今回の改定は、パニック値への対応体制を施設基準に追加し、安心・安全な医療の提供を更に推進することとしました。 パニック値の閾値設定(要件ア) 第一の要件は、パニック値の閾値を設定することです。閾値とは、検査値が異常値かどうかを判定する境界の数値を指します。医療機関は、院内で実施する検体検査について、この閾値をあらかじめ定めておくことが望ましいとされます。 閾値の設定が望ましい検査項目は、少なくともグルコース、カリウム及び血小板の3項目です。グルコースは血糖値であり、極端な高値や低値が意識障害を招きます。カリウムは電解質であり、異常値が重い不整脈の原因となります。血小板は止血に関わる成分であり、著しい減少が出血の危険を高めます。これら3項目は、いずれも異常値が生命に直結するため、優先して閾値を設定する対象とされました。 パニック値が出た際の対応体制(要件イ・ウ) 第二と第三の要件は、パニック値が出た際の連絡と表示の体制です。閾値を設定するだけでは、異常値を見逃すおそれが残ります。そこで改定案は、パニック値を検出した後の具体的な対応も体制として整えることを望ましいとしました。 連絡の要件では、パニック値が出た際に速やかに担当医師へ伝えることが求められます。医師への伝達は、看護師等を経由して連絡しても差し支えありません。また、連絡を受けた医師は、パニック値に対して行った対応を遅滞なく診療録に記載するよう努めることとされています。 表示の要件では、検査結果報告書にパニック値であることがわかる表示を行うことが求められます。報告書の中で異常値が他の数値に埋もれると、対応が遅れるおそれがあります。そのため、結果がパニック値であると一目で判別できる表示を行うよう努めることとされました。 加算(Ⅱ)(Ⅲ)(Ⅳ)への反映 今回追加された要件は、3区分すべてに連動して反映されます。新しい要件は、まず検体検査管理加算(Ⅳ)の施設基準に項目(7)として新設されます。続いて、上位区分の(Ⅱ)と(Ⅲ)が(Ⅳ)の基準を引用する形で、この新要件を取り込みます。 具体的には、(Ⅱ)と(Ⅲ)が引用する(Ⅳ)の基準の範囲が広がります。現行では、(Ⅱ)は(Ⅳ)の(3)から(6)までを、(Ⅲ)は(Ⅳ)の(2)から(6)までを満たすこととされていました。改定案では、(Ⅱ)は(Ⅳ)の(3)から(7)までを、(Ⅲ)は(Ⅳ)の(2)から(7)までを満たすこととされます。この引用範囲の拡大により、新設された(7)が(Ⅱ)と(Ⅲ)にも適用されます。 なお、これらの要件はいずれも「望ましい」と位置づけられている点に留意が必要です。望ましいとは、必須ではないものの実施が推奨される努力義務的な扱いを指します。したがって、各医療機関は自院の体制を見直し、パニック値への対応を整えていくことが期待されます。 まとめ 令和8年度改定では、医療安全対策の推進を目的として、検体検査管理加算の施設基準が見直されます。見直しの対象は、検体検査管理加算(Ⅱ)、(Ⅲ)及び(Ⅳ)の3区分です。これらの区分には、生命が危ぶまれる異常値であるパニック値への対応体制を整えることが望ましいという要件が追加されます。具体的には、グルコース・カリウム・血小板の閾値設定、パニック値検出時の医師への速やかな連絡と診療録への記載、検査結果報告書での明示の3点が求められます。各医療機関は、これらの要件に沿って院内の検査体制を点検し、より安心・安全な医療の提供につなげることが期待されます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

    5 min
  5. 近視進行抑制薬の検査を新たに評価|令和8年度改定で年2回・2種類までの算定要件を新設

    4d ago

    近視進行抑制薬の検査を新たに評価|令和8年度改定で年2回・2種類までの算定要件を新設

    近視の進行抑制を効能・効果とする医薬品が、令和6年12月に薬事承認されました。この医薬品の治療では、関係学会の指針により、治療開始時と治療中に屈折検査などの検査が推奨されています。しかし、近視進行抑制薬の処方に係る検査については、診療報酬上の算定の取り扱いが定められていませんでした。本記事は、令和8年度診療報酬改定で新設された眼科学的検査の算定要件を整理します。 令和8年度改定は、近視進行抑制薬を投与している患者の眼科学的検査に、新たな算定要件を設けました。対象は、近視の進行抑制を目的として診療を行い、近視進行抑制薬を投与している患者です。この患者への眼科学的検査は、年2回の受診に限り算定します。さらに、1回の受診で複数の検査を行った場合は、2種類を限度として算定します。 改定の背景|近視進行抑制薬の承認と検査の必要性 今回の改定は、近視進行抑制薬の薬事承認を契機としています。承認されたのは、近視の進行抑制を効能・効果とする医薬品(一般名:アトロピン硫酸塩水和物、販売名:リジュセアミニ点眼液0.025%)です。承認日は、令和6年12月27日でした。この医薬品は、1日1回就寝前に1滴を点眼する低濃度アトロピン点眼薬であり、主に小児の近視治療に用いられます。 この医薬品は薬価収載されておらず、選定療養への追加が提案されました。選定療養とは、保険外の医薬品や治療を、保険診療と併用できる仕組みです。この仕組みが認められれば、患者は保険診療を受けながら、自己負担で近視進行抑制薬による治療を併せて受けられます。令和8年度改定に向けた提案・意見募集では、この医薬品を選定療養に追加する提案が寄せられました。 この治療では、定期的な検査が欠かせません。関係学会の治療指針は、治療開始時と治療中に屈折検査等を行うよう推奨しています。具体的には、治療開始時に近視の有無を確認し、治療中は3〜6か月ごとに近視の進行状況を確認します。こうした検査の代表例が、屈折検査(D261、69点)と矯正視力検査(D263、69点)です。これらの検査自体は従来から算定できましたが、近視進行抑制薬の処方に係る検査としての取り扱いは定められていませんでした。 改定の内容|眼科学的検査の新たな算定要件 改定後は、眼科学的検査に「対象」「回数」「種類」の3つの要件が加わります。これらの要件は、近視進行抑制薬を投与している患者への検査を、適切に評価するためのものです。以下、3つの要件を順に説明します。 第1の要件は、算定の対象です。対象は、近視の進行抑制を目的として診療を行い、当該効能・効果を有する医薬品を投与している患者です。つまり、近視進行抑制薬による治療を受けている患者が対象となります。 第2の要件は、算定の回数です。この患者への眼科学的検査は、年2回の受診に限り算定します。年2回という上限は、治療中の定期観察にあわせた頻度です。 第3の要件は、算定する検査の種類です。1回の受診で複数の検査を行った場合は、2種類を限度として算定します。3種類以上の検査を行っても、算定できるのは2種類までとなります。 現行との違い|新設される検査の取り扱い この算定要件は、これまで規定のなかった検査の取り扱いを新たに設けるものです。現行の眼科学的検査の通則には、近視進行抑制薬に関する規定がありませんでした。改定後は、通則に新たな項目が加わり、対象・回数・種類の取り扱いが明確になります。 実務では、近視進行抑制薬を投与している患者かどうかの確認が出発点になります。対象患者であれば、眼科学的検査の算定は年2回までです。同じ受診日に複数の検査を行った場合は、算定する検査を2種類までに整理します。これらの点に注意することで、新たな算定要件に沿った適切な請求が可能になります。 まとめ|年2回・2種類までの新ルールを押さえる 令和8年度診療報酬改定は、近視進行抑制薬を投与している患者の眼科学的検査を新たに評価しました。対象は、近視進行抑制薬による治療を受けている患者です。この患者への眼科学的検査は、年2回の受診に限り算定します。また、1回の受診で複数の検査を行った場合は、2種類を限度として算定します。承認された近視進行抑制薬の背景とあわせて、この「年2回・2種類まで」のルールを押さえておきましょう。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

    5 min
  6. 【令和8年度改定】骨塩定量検査の算定回数が「4月に1回」から「1年に1回」へ

    5d ago

    【令和8年度改定】骨塩定量検査の算定回数が「4月に1回」から「1年に1回」へ

    骨塩定量検査は、骨粗鬆症の診断と経過観察に用いる検査です。現行では、医療機関はこの検査を4月に1回算定できます。しかし、この算定頻度は、関係学会が示す治療管理での位置付けと一致していません。本稿は、令和8年度診療報酬改定で見直される骨塩定量検査の算定回数を、現行と比較して解説します。 今回の改定は、骨塩定量検査の算定回数を見直し、頻回な検査を適正化します。見直しの背景には、学会ガイドラインにおける骨塩定量検査の位置付けがあります。原則の算定頻度は、4月に1回から1年に1回に変わります。ただし、治療開始1年以内や骨量が急激に変動する患者など、6つのケースでは、引き続き4月に1回算定できます。 改定の背景:学会ガイドラインを踏まえた頻度の見直し 今回の見直しは、関係学会が示す骨粗鬆症の治療管理での骨塩定量検査の位置付けを踏まえています。 現行の算定要件は、検査の種類を問わず一律に4月に1回を認めています。一方、関係学会は、骨粗鬆症の治療管理のなかで骨塩定量検査の位置付けを整理しています。今回の改定は、この学会の位置付けを踏まえ、一律のルールを見直すものです。 この見直しによって、骨量が安定している患者の算定頻度が、学会の位置付けに沿った形に改められます。これにより、診療報酬の算定ルールが、骨粗鬆症診療の実態に近づきます。 改定内容:原則の算定頻度を「4月に1回」から「1年に1回」へ 改定後は、骨塩定量検査(D217)の原則の算定頻度を、4月に1回から1年に1回に変更します。 現行の算定要件は、検査の種類にかかわらず、患者1人につき4月に1回を上限としています。改定後の算定要件は、この上限を患者1人につき1年に1回に引き下げます。つまり、骨量が安定している患者では、年に1回の測定が標準になります。 ただし、治療開始後の早い時期は、例外として4月に1回を維持します。改定案では、骨粗鬆症の治療を開始した日から1年以内の場合に、患者1人につき4月に1回算定できると定めています。治療開始直後は骨量の変化を細かく確認する必要があるためです。 現行と改定案の違いは、次の3点に整理できます。第1に、原則の算定頻度は、現行の4月に1回から、改定案では1年に1回に変わります。第2に、治療開始1年以内の取り扱いは、現行では区別なく4月に1回でしたが、改定案でも引き続き4月に1回となります。第3に、例外の取り扱いは、現行では規定がありませんでしたが、改定案では6つのケースに限って4月に1回を認めます。 例外:引き続き「4月に1回」算定できる6つのケース 治療開始1年以内や骨量が急激に変動する患者など、特定の6つのケースでは、例外として、引き続き4月に1回算定できます。 改定案は、急激な骨減少または骨増加をきたす病態や薬剤投与時を、例外として位置付けています。これらの患者は、骨量の変化を短い間隔で確認する必要があるためです。具体的には、以下のアからカのいずれかに該当する場合に、4月に1回算定できます。 * ア 骨粗鬆症の治療を開始した日から1年以内の場合 * イ 新たに骨折した場合 * ウ 関係学会のガイドラインで示されている骨折危険因子が新規に増えた場合 * エ ビスホスホネート薬治療の中断を検討する場合 * オ グルココルチコイド、アロマターゼ阻害薬、抗アンドロゲン薬、骨形成促進薬など、骨減少または骨増加をきたす薬剤を投与する場合 * カ 吸収不良、全身性炎症性疾患、長期不動、人工閉経など、骨減少または骨増加をきたす疾患などを有する場合 これらに該当しない患者は、原則どおり1年に1回の算定となります。したがって、医療機関は、患者がアからカのいずれかに該当するかを確認したうえで、算定頻度を判断します。 まとめ:原則は「年1回」、骨量が変動する例外は「4月1回」 今回の改定は、骨塩定量検査の算定回数を見直し、頻回な検査を適正化します。見直しの背景には、学会ガイドラインにおける骨塩定量検査の位置付けがあります。原則の算定頻度は、4月に1回から1年に1回に変わります。ただし、治療開始1年以内や骨量が急激に変動する患者など、6つのケースでは、引き続き4月に1回算定できます。医療機関は、患者が例外に該当するかを確認したうえで、適切な算定頻度を選択することが求められます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

    6 min
  7. 令和8年度診療報酬改定|質の高い臨床検査の評価と検査料新設をわかりやすく解説

    6d ago

    令和8年度診療報酬改定|質の高い臨床検査の評価と検査料新設をわかりやすく解説

    令和8年度診療報酬改定では、質の高い臨床検査を適切に評価する見直しが行われます。新規に保険適用された検査の一部は、専用の点数を持たず、既存の検査の点数を借りて算定されてきました。本記事では、この「準用点数」の課題を解消する検査料の新設について、背景から具体例まで解説します。 今回の見直しは、E3区分で保険適用された新規の検査に、専用の検査料を新設するものです。対象となるのは、現在「準用点数」で算定されている新規臨床検査です。新設される検査料は、E3区分で保険適用された新規体外診断用医薬品等を対象とします。具体例として、感染症免疫学的検査のアスペルギルスIgG抗体に390点が新設されます。 準用点数とは何か——新規検査が抱えてきた課題 今回の見直しは、新規検査が「準用点数」で評価されてきた課題に対応します。準用点数とは、新しい検査に専用の点数がないとき、既存の似た検査の点数を借りて算定する仕組みです。新しい検査が保険適用されると、まずはこの準用点数で算定が始まります。 準用点数は、新規検査をすばやく保険適用するうえで欠かせない仕組みです。専用の点数を一から設定するには、検査の手間やコストを丁寧に評価する時間が必要になります。そこで、評価が整うまでの間は、性質の近い既存検査の点数を準用して算定します。この仕組みにより、患者は新しい検査を早期に保険診療で受けられます。 ただし準用点数には、検査の価値を正確に反映しにくいという課題があります。準用元の検査と新規検査では、手間やコストが必ずしも一致しません。そのため、準用点数のままでは、新規検査の実際の負担と点数がずれる場合があります。このずれを解消するには、新規検査に専用の検査料を設定する必要があります。 E3区分の新規検査に検査料を新設する 今回の改定では、E3区分で保険適用された新規体外診断用医薬品等に、専用の検査料を新設します。E3区分とは、既存の検査と測定する項目が異なる、新しい検査を指す分類です。測定項目そのものが新しいため、E3区分の検査には準用できる既存検査が見つかりにくいという特徴があります。 E3区分の検査は、これまで準用点数で算定されてきました。測定項目が新しくても、保険適用の段階では暫定的に近い検査の点数を準用します。この暫定的な扱いが続くと、新規検査の価値が点数に反映されないまま固定化してしまいます。 そこで改定では、E3区分の検査を準用点数から専用の検査料へと切り替えます。専用の検査料は、その検査の手間やコストに見合った水準で新設されます。この見直しにより、質の高い臨床検査が、その価値に応じて適切に評価されるようになります。 具体例:アスペルギルスIgG抗体に390点 検査料新設の具体例が、感染症免疫学的検査のアスペルギルスIgG抗体です。アスペルギルスIgG抗体は、真菌の一種であるアスペルギルスへの体の反応を調べる検査です。この検査は、慢性の肺アスペルギルス症などの診断に役立ちます。 アスペルギルスIgG抗体は、これまで準用点数で算定されてきました。測定項目が新しいE3区分の検査であるため、専用の点数が設定されていませんでした。この準用の状態を解消するのが、今回の検査料新設です。 新設される検査料は、アスペルギルスIgG抗体に対して390点です。診療報酬は1点を10円として計算するため、検査料の総額は3,900円となります。なお患者が窓口で支払うのは、このうち自己負担割合(1~3割)分です。この専用点数の新設により、アスペルギルスIgG抗体は準用ではなく、検査そのものの価値に応じて評価されます。 まとめ:質の高い臨床検査を、価値に応じて評価する 令和8年度診療報酬改定は、質の高い臨床検査を適切に評価するため、専用の検査料を新設します。対象は、現在準用点数で算定されているE3区分の新規体外診断用医薬品等です。具体例として、感染症免疫学的検査のアスペルギルスIgG抗体に390点が設定されます。この見直しにより、新規検査は準用点数の課題から解放され、その価値に応じて評価されるようになります。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

    5 min
  8. 【令和8年度診療報酬改定】迅速フィブリノゲン測定加算150点を徹底解説

    May 29

    【令和8年度診療報酬改定】迅速フィブリノゲン測定加算150点を徹底解説

    フィブリノゲン製剤は、出血を止める血液凝固に欠かせないたんぱく質「フィブリノゲン」を補い、大量出血時の止血を助ける重要な製剤です。この製剤を適正に使うには、投与の前に患者のフィブリノゲン値を迅速に測定する必要があります。しかし従来は、その迅速な測定を評価する仕組みがありませんでした。本稿では、迅速な測定を後押しするために令和8年度診療報酬改定で新設された「迅速フィブリノゲン測定加算」を解説します。 令和8年度改定では、迅速フィブリノゲン測定加算として150点が新設されました。この加算の対象は、後天性低フィブリノゲン血症の患者です。測定の目的は、フィブリノゲン製剤を投与すべきかどうかの判断です。そして算定には、手術室等の場所で迅速に測定することが求められます。 なぜ迅速フィブリノゲン測定加算が新設されたのか 迅速フィブリノゲン測定加算は、フィブリノゲン製剤の適正使用を支えるために新設されました。適正使用とは、必要な患者に、必要なタイミングで、過不足なく製剤を使うことです。この適正使用を実現するうえで鍵となるのが、フィブリノゲン値の迅速な測定です。 フィブリノゲン製剤を投与すべきかどうかは、患者のフィブリノゲン値を踏まえて判断します。一般にフィブリノゲン値が大きく下がっていれば、製剤の投与が検討されます。逆に値が十分であれば、投与は要らないと考えられます。いずれにせよフィブリノゲン値の把握が、投与判断の出発点になります。 その値を把握するための測定では、結果が出るまでに時間を要する場合があると考えられます。一般に検査は、採取した検体を検査室へ送り、そこで分析する流れになるためです。大量出血が進む手術室では、こうした待ち時間が課題になりうると考えられます。 そこで令和8年度改定では、手術室等での迅速な測定を新たに評価することになりました。手術室等でその場で測定すれば、待ち時間を抑えられると考えられます。この迅速な測定を評価することで、フィブリノゲン製剤の適正使用を後押しするのが、今回の加算のねらいです。 迅速フィブリノゲン測定加算の概要 迅速フィブリノゲン測定加算は、既存の出血・凝固検査に上乗せして算定します。上乗せの対象は、「フィブリノゲン半定量」と「フィブリノゲン定量」という2つの検査です。いずれもフィブリノゲンの量を調べる検査で、半定量はおおよその量を、定量は正確な量を測定します。 この2つの検査を迅速に行った場合に、所定点数へ150点を加算します。加算とは、もともとの検査の点数(所定点数)に上乗せする点数のことです。診療報酬は1点を10円として計算するため、150点は1,500円に相当します。 なお現行では、この加算は設けられていません。今回の改定で初めて新設される項目です。 算定できる3つの要件 迅速フィブリノゲン測定加算の算定には、3つの要件をすべて満たす必要があります。3つの要件とは、対象患者、測定目的、実施場所です。以下、順に説明します。 第1の要件は、対象患者です。対象は、後天性低フィブリノゲン血症の患者に限られます。後天性低フィブリノゲン血症とは、大量出血などによって後天的にフィブリノゲンが不足した状態を指します。 第2の要件は、測定目的です。測定は、フィブリノゲン製剤の適応の可否を判断する目的で行う必要があります。適応の可否とは、その患者に製剤を投与してよいかどうかの判断です。 第3の要件は、実施場所です。測定は、手術室等の場所で実施しなければなりません。手術室等でその場で測定することが、「迅速」な測定の条件となります。 まとめ 令和8年度診療報酬改定では、迅速フィブリノゲン測定加算150点が新設されました。この加算は、フィブリノゲン製剤の適正使用を支えることをねらいとしています。算定するには、後天性低フィブリノゲン血症の患者に対し、製剤の適応の可否を判断する目的で、手術室等の場所で測定する、という3つの要件を満たす必要があります。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

    5 min

About

病院事務長が実務と経営の視点で語る、医療制度の最新動向。急性期〜回復期で幅広い部門を統括してきた経験をもとに、最新の令和8年度診療報酬改定(算定要件・疑義解釈)や施設基準、医療DXの解説を音声で配信。経営層から現場の事務担当者まで、忙しい合間に「現場で使える知識」をアップデートできます。 www.daitoku0110.news