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エンタメ・教育・ITの専門家が気になる話題を徹底解説!! 第1金曜日・・・映画解説・研究者 上妻祥浩さん 第2金曜日・・・ライブ配信ディレクター 斉場俊之さん 第3金曜日・・・熊本市立出水南中学校 校長 田中慎一朗さん 第4・5金曜日・・・元RKKアナウンサー 宮脇利充さん ◆WEB https://rkk.jp/515news/ ◆メール 515@rkk.jp ★地上波ではRKKラジオ(熊本)FM91.4    AM1197で、毎週金曜日 午後5時15分から放送中。是非生放送でもお聴きください。

  1. 3d ago

    秋に贈る「ミステリーとリアル」――上妻祥浩さんが選ぶ9月注目の映画3選

    日本を代表するミステリー巨編の映画化から、共感を呼ぶ社会派サスペンスまで秋の気配が感じられる9月、映画解説・研究者の上妻祥浩氏が注目の3作品を厳選してご紹介します。 日本を代表する2大ミステリー作家・東野圭吾氏と横溝正史氏の傑作映画化、そしてワンオペ育児のリアルと葛藤を描いたサスペンスなど、見ごたえのある作品が揃いました。聞き手はRKKの江上浩子です。 1. 東野圭吾の金字塔を豪華キャストで映画化『白鳥とコウモリ』加害者の娘と被害者の息子が事件の隠された真相に迫るミステリー 『白鳥とコウモリ』2026年9月4日(金)公開公式サイトはこちら👉 https://movies.shochiku.co.jp/eiga-hakuchotokomori/ ベストセラー作家・東野圭吾氏の超大作ミステリーが、満を持してスクリーンに登場します。 異色のバディが追う隠された真相誰もが絶賛する人格者の弁護士が刺殺され、ある男が容疑者として自供します。しかし、容疑者の息子は「父がそんなことをするはずがない」と疑問を抱き、被害者の娘もまた自供の内容に違和感を覚えます。本来であれば対立するはずの「容疑者の息子」と「被害者の娘」が手を組み、事件の裏に隠された真実を追い求めていきます。 圧倒的な人間ドラマとキャスト陣被害者の娘役を今田美桜さん、容疑者の息子役を松村北斗さんが演じ、いま最も注目を集める若手実力派の共演が実現しました。さらに容疑者となる父親役を三浦友和さんが重厚に演じています。約2時間半という長尺ながら、緻密なミステリーの仕掛けと丁寧な人間ドラマが見事に融合し、最後まで一気に見せる濃厚な傑作に仕上がっています。 2. 横溝正史の名作が新たなアプローチで蘇る『八つ墓村』村に伝わる血塗られた怪奇と謎に挑む名作ミステリーの完全新作『八つ墓村』2026年9月18日(金)公開公式サイトはこちら👉 https://movies.shochiku.co.jp/yatsuhakamura-movie/ 横溝正史氏による金字塔的ミステリーが、映画としては4度目の映像化を果たします。 ホラーの巨匠・清水崇監督が手掛ける新たな世界観『呪怨』などで知られるホラー映画の巨匠・清水崇監督がメガホンをとります。原作が持つおどろおどろしい怪奇性を活かしつつも、ミステリーとしての節度と品格を保った映像美が特徴です。 歴代の名優たちに続く「金田一耕助」像名探偵・金田一耕助役には歌舞伎俳優の尾上松也さんが抜擢されました。過去に片岡千恵蔵さん、渥美清さん(1977年版)、豊川悦司さんらが演じてきた異色の系譜に、現代的な軽やかさを備えた新たな金田一像が加わります。今作では複雑な登場人物や背景をスマートに整理し、厳しい現実の中で成長していく主人公の青年のドラマとしても見ごたえのある構成となっています。 3. 現代社会の限界と葛藤をリアルに描く『ワンオペレーション』仕事とワンオペ育児の極限状態で葛藤する女性のリアルを描くサスペンス 『ワンオペレーション』2026年9月18日(金)公開公式サイトはこちら👉 https://synca.jp/oneoperation/ 熊本のDenkikan(電気館)で公開される本作は、仕事・育児・家事を一人で抱え込む「ワンオペ」の過酷な現実をテーマにした注目作です。 監督の実体験が生んだ生々しいリアリティ セラピストとして働きながら、原因不明の病を抱える幼い娘の育児や仕事のトラブルに追われる主人公。 監督・脚本のメアリー・ブロンスタインが自身の実体験をもとに構想しておりスクリーンからひしひしと伝わるリアリティが観客の共感を呼びます。 ブラックユーモアが生む救いと客観性「これでもか」と重なる日常の災難を描きつつも、絶妙なブラックユーモアが散りばめられているため、重苦しくなりすぎず娯楽映画として楽しく鑑賞できます。極限状態の日常を少し引きで眺め、クスッと笑い飛ばすことで、鑑賞後には心が軽くなるような作品です。 まとめ:映画館で味わう濃厚な物語9月は、緻密に練られたミステリーや、現代人が抱えるリアルな悩みを捉えたサスペンスなど、じっくりと没入できる作品が揃いました。涼しい映画館へ足を運び、スクリーンが織りなす物語の世界に浸ってみてはいかがでしょうか。 出演:映画解説・研究者・上妻祥浩さん/聞き手:江上浩子(RKK)

    秋に贈る「ミステリーとリアル」――上妻祥浩さんが選ぶ9月注目の映画3選
  2. Aug 28

    アメリカの「ICC所長制裁」と日本の揺れる立場――著書『戦争犯罪と戦う』から考える「法の支配」の危機

    国際社会で「法の支配」の根幹を揺るがす重大な事態が続いています。トランプ政権下のアメリカが、オランダ・ハーグに本部を置く国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長に対し、資産凍結や入国禁止などの制裁措置を発表しました。 ルビオ国務長官は「ICCを解体する」とまで言い切り、強硬姿勢を強めています。 日本人初のICC所長である赤根智子氏の著書『戦争犯罪と戦う 国際刑事裁判所は屈しない』(文春新書)を紐解きながら、元RKKアナウンサーの宮脇利充氏が、国際社会の激震と日本政府の対応が抱える問題点について解説します。 聞き手はRKKの江上浩子氏です。 🔶 アメリカによる「ICC制裁」とルビオ国務長官の解体表明 今回の制裁は、ICCがイスラエルのネタニヤフ首相やハマス幹部、さらにはロシアのプーチン大統領らに対し、戦争犯罪や人道に対する罪の疑いで逮捕状を出したことへの反発から端を発しています。 強硬な制裁内容: 米国内の資産凍結、米国への入国禁止、米国企業や個人との取引禁止などが課され、所長本人だけでなく家族も対象とされています。「解体」に言及するアメリカ: ルビオ国務長官は「全ての手段を用いてICCを解体する」と表明し、主権を脅かすことが不可能になるまで構造的な措置をとる構えを示しています。 ここで押さえておきたいのが、ICC(国際刑事裁判所)の性質です。国連の機関である「国際司法裁判所(ICJ)」とは異なり、2002年に設立された独立した常設組織です。加盟国・地域は125にのぼりますが、アメリカ、ロシア、中国、イスラエルといった大国や当事国は非加盟です。 一方、日本は2007年に加盟して以来、最大の資金拠出国であり、2025年時点でも約45億6,000万円(分担率14.6%)を拠出する極めて重要な立場にあります。 🔶 欧州の即時支援と、批判を浴びた日本政府の初動 アメリカの制裁発表に対し、国際社会は即座に反応しました。 国際社会の迅速な反発: 欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長や国連のグテーレス事務総長をはじめ、オランダ、ドイツ、イギリスなど各国政府が「ICCの独立性を強く支持し、全面的に支援する」と即日で表明しました。 日本政府の遅れた軌道修正: 高市早苗首相は当初、「大変残念に思っている。関係国と意思の疎通を継続しながら対応していく」と述べるにとどまり、国内外から強い批判を浴びました。その後、「日本の立場と相いれない、大変深刻に受け止めている」と軌道修正を図りましたが、言うべきタイミングで毅然とした態度を示せなかった不信感は残りました。 宮脇氏は、赤根氏がICC裁判官に立候補した背景には、日本政府(法務省・外務省)からの強い要請と後押しがあったことを著書から指摘します。法の支配を体現するために国家の意思として彼女を送り出したにもかかわらず、同盟国であるアメリカに対して「それはおかしい」と即座に言えない姿勢は、真の対等な日米関係とは言えません。 🔶 著書が警告する「ニュルンベルク裁判以前」への退歩 赤根所長は著書『戦争犯罪と戦う』の中で、アメリカによる圧力とICCの存在意義について、次のように切実な警鐘を鳴らしています。 「もしICCがなくなってしまうとしたら、それはニュルンベルク裁判以前の状態に戻ることを意味します。戦争における市民への組織的な攻撃が犯罪とみなされない、あるいは不処罰のまま放置されるのが当たり前という世界へと逆戻りしてしまうかもしれないのです」 冷戦終結後の1990年代という歴史的な「雪解け」の時期だったからこそ誕生できたICC。現在の国際情勢で同様の裁判所をゼロから作ることは不可能であり、だからこそ「歴史の狭間で幸運にも誕生したICCを守り抜かなければならない」と訴えています。 🔶 まとめ:力の支配ではなく「法の支配」を守るために 「力の支配」が横行する世界になれば、一番被害を受けるのは軍事力に頼らない国際秩序を望む国々や民間人です。 日本が果たすべき役割は、単に拠出金を出すことだけでなく、国際法や「法の支配」を守るために同盟国に対しても是々非々で主張を貫くことです。赤根所長が孤独な戦いを強いられる中、日本という国がどのような姿勢を貫くのかが、今まさに試されています。 出演:元RKKアナウンサー・宮脇利充さん/聞き手:江上浩子(RKK)

    アメリカの「ICC所長制裁」と日本の揺れる立場――著書『戦争犯罪と戦う』から考える「法の支配」の危機
  3. Aug 21

    新学期直前の「行けない焦り」とどう向き合うか――田中慎一朗校長が語る、子どもを追い詰めない「ノット・ノウイング(知らない姿勢)」の対話術

    夏休みが終盤を迎え、2学期が近づくこの時期は、不登校や行きしぶりを抱える子どもたちにとって精神的な負担が急激に高まるタイミングです。 熊本市立出水南中学校の田中慎一朗校長が、かつての不登校の教え子から聞いた切実な本音をもとに、大人が良かれと思ってかける言葉が潜むリスクと、心理学における「ノット・ノウイング(知らない姿勢)」を取り入れた寄り添い方について解説します。聞き手はRKKの江上浩子氏です。 🔷 学校に行っていない子にとっても「新学期の始まり」は苦しい 不登校の生徒にとって、夏休み中も新学期に入っても「学校に通っていない」という物理的な状況自体は変わりません。しかし、元不登校の教え子たちは「夏休みが終わって学校が始まった瞬間が一番きつかった」と口をそろえて振り返ります。 夏休み中は全校生徒が休みであるため対等でいられますが、新学期が始まると「みんなは通えているのに、自分は通えていない」「できていない、悪いことをしている」という強い罪悪感や自己否定感が子どもの胸の中に押し寄せてきます。 地震などの災害体験による不安も重なりやすい時期だからこそ、大人が子どもの心の中で起きている心理的な変化に深い関心を持つことが求められます。 🔷 「不安だよね」「大丈夫?」という言葉が孕む罠 子どもが新学期を前にソワソワしていたり憂鬱そうにしていたりすると、親や教員は「不安だよね」「大丈夫だよ」「無理なら休んでいいからね」と優しく声をかけがちです。しかし、アメリカの心理学者ハーレーン・アンダーソン氏らが提唱した家族療法や対話の理論(コラボレイティブ・アプローチ)では、こうした言葉がけが思わぬ逆効果を生む可能性が指摘されています。 「不安」が前提として固定化される 「学校に行くの不安だよね」と大人が言ってしまうと、対話の中で「不安であること」が事実として固定化され、子どもは「不安をどう解消するか」という枠組みに閉じ込められてしまいます。 本音を隠させる圧迫感「大丈夫?」と聞かれると、子どもは心配する親に気を使って「大丈夫」と答えざるを得なくなります。これは地震などの被災時にも同様で、「親や大人が不安そうにしているから、自分が『怖い』と言うと余計に混乱させてしまう」と、子どもが自分の本音に蓋をしてしまう構造と同じです。 🔷 子ども自身が「心の専門家」――「ノット・ノウイング」の姿勢とは 大人側が経験や知識を持つ「専門家」として指導・支援しようとする姿勢がかえって子どもを追い詰めることがあります。そこで重要になるのが、知識や先入観を横に置き、大人が「ノット・ノウイング(私はまだあなたの心の中を知らないという姿勢)」に立つことです。 当事者である子どもに教えてもらう子ども自身の心の中で何が起きているのかを一番よく知っている「専門家」は、大人ではなく子ども自身です。大人は「私はあなたの胸のうちをまだ知らないから、教えてほしい」というスタンスで向き合います。 感情を決めつけずに語りを引き出す「あなたの中にモヤモヤしたものがあるなら、よかったら聞かせてほしい」と語りを促します。「それは毎日続くのかな?」「辛くならない瞬間もあるのかな?」と対話を重ねることで、子ども自身が自らの語りによって心情を整理していくプロセスを支えます。 🔷 大人が心がけるべき3つの接し方 答えをすぐに提示して問題を解決しようとするのではなく、子どもが安心して本音を語れる環境をつくるために、大人は以下の意識を持つことが大切です。 自分の主観として伝える「あなた不安でしょ」と相手の感情を決めつけるのではなく、「あなたの様子を見ていて、私には少し不安そうに見えたよ。違っていたらごめんね」と、あくまで大人側の見え方(主観)として言葉をかけます。 言葉を選ぶ「沈黙」を待つ子どもが言葉を選べずに考え込んでいる時間は、自分の気持ちにぴったり合う言葉を懸命に探している時間です。大人は途中で言葉を遮ったり誘導したりせず、ゆとりを持って待つ姿勢が必要です。 気負わずに「ともにそこにいる」完璧な答えや解決策を提示する必要はありません。ただ一緒に過ごし、「あなたの話をいつでも聞く準備があるよ」という空気を発しながら、子どもの物語の中に寄り添い漂うことが何よりの救いとなります。 🔷 まとめ 2学期を迎えるにあたり、子どもたちも大人たちも気負いすぎる必要はありません。 何か特別なアドバイスをしようとするのではなく、「私はあなたの今の気持ちをまだ知らないから、話したくなったときに教えてね」という姿勢で寄り添い、子どもが一人で抱え込まずに大人を頼れる環境を整えていくことが大切です。 出演:熊本市立出水南中学校校長・田中慎一朗さん 聞き手:江上浩子(RKK)

    新学期直前の「行けない焦り」とどう向き合うか――田中慎一朗校長が語る、子どもを追い詰めない「ノット・ノウイング(知らない姿勢)」の対話術
  4. Aug 14

    「10年目の再度の地震」に立ち向かう心を守るために――斉場俊之氏が語る、いま私たちに必要な3つの考え方

    ――復旧の焦りや罪悪感を乗り越え、自分と地域を守る復興へのアプローチ 熊本地震から10年という節目の年を迎え、大型観光企画「熊本デスティネーションキャンペーン」などで県内が活気と笑顔に包まれていた矢先、熊本を再び襲った大きな地震。 熊本県内の停電はすべて解消されたものの、断水や避難所生活は続いており、住宅被害や罹災証明の手続きなど、被災現場では過酷な対応が続いています。 1回目の地震を経験しているからこそ「みんな強いよね」と励まし合う一方で、観光や商業、農林水産業など産業全体への打撃も大きく、「前回よりも精神的にしんどい」と疲弊する声も少なくありません。 このような厳しい状況下で、私たちはどのように心と生活を守っていけばよいのでしょうか。 ライブ配信ディレクターの斉場俊之氏が、全国の被災地支援に携わってきた経験をもとに、今伝えたい3つのメッセージを語りました。聞き手はRKKの江上浩子氏です。 🔶 1. 「がんばらない」をがんばる――我慢を溜め込まず、目の前の人に吐き出す 熊本の人々は辛抱強く、「しょんなか(仕方がない)」「自分は家族も無事だったからまだ大丈夫」と現状を一身に受け止めてしまう傾向があります。その結果、1人で片付けをして熱中症になったり、必要な手伝いや行政支援を遠慮して一人で抱え込んでしまうケースが懸念されています。 斉場氏は「そぎゃんこつは思わんちゃよか(そんなこと思わなくていい)」と強く語りかけます。 口にするためらいを捨てる 「誰に言えばいいのか」「断られたらどうしよう」と頭の中で悩み続ける前に、保健師や警察、県外から応援に駆けつけてくれている支援者など、目の前にいる人にいまの辛い気持ちや困りごとを言葉にして吐き出すことが大切です。 「繋ぐ」支援の重要性応援に入っている支援側の人々も、目の前の相談をすべて自分で直接解決できるとは限りません。専門外の相談であっても「解決できる人や適切な窓口を探して繋ぐ」という姿勢を持つことで、一人ひとりの我慢や孤立を防ぐことができます。 🔶 2. 「できない罪悪感」を持たない――普段通り暮らすことも立派な復興 地震からの復興には必ず地域差や個人差という「時間差」が生じます。被害が比較的軽かった地域や人から順に、少しずつ日常が戻っていきます。 そうした中で生じやすいのが、「隣の町や被災地がまだ大変なのに、自分たちだけ普通に生活していいのだろうか」という罪悪感です。 自分の生活と心を優先する余震への恐怖や、自身の仕事・経済的な打撃を抱えている場合は、まず自分自身の生活と心身の安全を守ることが最優先です。体力や資金に余裕があればボランティアや寄付を行うのも素晴らしいことですが、それができないからといって罪悪感を抱く必要はまったくありません。 日常を維持する価値特別な支援活動ができなくても、普段通りの日常を静かに暮らし続けること自体が、地域を支える立派な復興活動であり支援活動です。 🔶 3. 「楽しむ」ことを忘れない――息抜きと経済循環で心と地域を守る 阿蘇や人吉、天草といった県内の主要観光地では、交通状況や遠方からの自粛ムードにより観光客が減少するなどの影響が出ています。 だからこそ、被災地から近い場所にいる私たちが、身近な地域に足を運んで「楽しむ」ことが大きな意味を持ちます。 後片付けに追われている日々の息抜きに連日の片付けや過酷な環境から少し離れ、日帰りで出かけたり、映画や買い物で息抜きをすることは、疲れ切った心を守るために不可欠な時間です。 地域経済を回す支援楽しむことを不謹慎だと遠ざけるのではなく、地元で消費し、笑顔を取り戻していく行動そのものが、疲弊した地域経済を活性化させる力となります。 🔶 まとめ 余震や復旧作業が続く中、焦りや不安から自分を追い詰めてしまう人が増えています。 「がんばらないこと」を意識し、周りの人に甘え、できる範囲で普段通りの暮らしと楽しみを大切にする。一人ひとりが無理をせず自分自身を慈しむことこそが、長丁場となる復興への道のりを支える確実な一歩となります。 出演:ライブ配信ディレクター・斉場俊之さん/聞き手:江上浩子(RKK)

    「10年目の再度の地震」に立ち向かう心を守るために――斉場俊之氏が語る、いま私たちに必要な3つの考え方
  5. Aug 7

    困難な時こそ映画で日常を――上妻祥浩さんが選ぶ、夏休み注目の2作品

    ――恐竜襲来を乗り越える家族の絆から、津奈木町を舞台にした極上の短編アニメまで夏の盛りを迎える中、映画解説研究者の上妻祥浩さんが、いま観るべき注目の映画2作品をピックアップしました。日常の少しの気分転換や、明日への力を与えてくれる個性豊かな作品が揃いました。聞き手はRKKの江上浩子です。 🔷 1. 恐竜の出現に立ち向かう家族の奮闘『オークストリートの異変』2026年8月14日(金)公開 公式サイトはこちら👉 https://oak-street.jp/ アメリカのどこにでもある穏やかな住宅街を襲った突然の「異変」。その正体は、街に突如出現した恐竜たちでした。 ▶ 豪華キャストが演じる「家族の団結」主人公夫婦を演じるのは、名実ともにトップスターであるアン・ハサウェイとユアン・マクレガーです。突如として極限状態に陥った夫婦と家族が、互いに協力し合いながら困難を切り抜けていく姿を、圧倒的なスケールとスリルで描きます。 ▶ 困難を共に乗り越えるテーマ性理不尽な災難に見舞われても、家族や大切な人と力を合わせて乗り越えようとする姿勢は、今の私たちが抱く想いにも深く重なるメッセージを持っています。映画『プラダを着た悪魔2』など多角的な活躍が続くアン・ハサウェイの、新たな挑戦と魅力が詰まったハラハラドキドキの一作です。 🎁 番組からのお知らせ(ムビチケプレゼント)映画『オークストリートの異変』の公開を記念して、映画鑑賞券(ムビチケ)を抽選でお2人にプレゼントいたします。 応募方法: メールの件名に「オークストリートの異変希望」と明記し、本文にお名前、ご住所、番組へのメッセージをご記入の上ご応募ください。宛先: 515@rkk.jp締め切り: 来週水曜日(8月12日)まで(当選者の発表は発送をもって代えさせていただきます)。 🔷 2. 津奈木町の風景と「あのちゃん」の演技が光る『しらぬひ』2026年8月21日(金)公開公式サイトはこちら👉 https://gaga.ne.jp/shiranuhi/ 熊本の夏の風物詩としても知られる「不知火」をモチーフに描かれた、36分間の濃密な短編アニメーション映画です。熊本・Denkikan(電気館)にて公開されます。 ▶ 新鋭監督と名門スタジオのタッグ本作を手がけたのは、『君の名は。』や『すずめの戸締まり』などの大ヒット作を生み出してきたアニメーションスタジオ「コミックス・ウェーブ・フィルム」に見出された期待の片野坂亮(かたのさか・りょう)監督です。 抒情的で美しい映像美が、深い物語を包み込みます。 ▶ 津奈木町の実在の風景が登場舞台となる漁村のモデルには、熊本県葦北郡津奈木町が起用されています。かつて日本で唯一の海上小学校として知られた「旧・赤崎小学校」をはじめ、実際に町内に存在する建物や美しい風景が劇中に多数登場し、地元の人々にとっては強い親近感を持って鑑賞できる作品となっています。 ▶ 「あのちゃん」による驚異的な少年役の声演技母親が家出し、酒浸りの父親と二人で暮らす少年の心の葛藤と、沖に浮かぶ弁天島で出会う不思議な少女との交流が描かれます。主人公の少年声を担当したあのちゃん(ano)の演技力は圧倒的で、プロの声優と見紛うほどの豊かな表現力が作品の完成度を一段と引き上げています。 🔷 まとめ:映画館で一呼吸を置き、日常を取り戻すきっかけに 片付けや復旧作業、日常の慌ただしさなど、大変な状況に置かれている時期だからこそ、涼しい映画館に身を置き、作品の世界に没頭することは大切な「心の休息」になります。「映画を通じて少しでも気分転換を図り、自分たちのペースで日常を取り戻していくきっかけにしてほしい」と上妻さんは語りました。 出演:映画解説研究者・上妻祥浩さん/聞き手:江上浩子(RKK)

    困難な時こそ映画で日常を――上妻祥浩さんが選ぶ、夏休み注目の2作品
  6. Jul 31

    避難所にダイバーシティを――内閣府「避難所チェックシート」と、熊本地震10年で浮き彫りになった「子どもの静かな声」

    大規模な地震災害の発生直後、避難所の管理・運営現場では食料や水、寝床、空調の確保といった緊急対応に追われます。しかし、そうした混迷を極める状況だからこそ、「多様性を尊重し、あらゆる人を取り残さない避難所運営」という視点が欠かせません。 元RKKアナウンサーの宮脇利充氏が、内閣府の「避難所チェックシート」の活用法や、熊本地震から10年を経て語られた「子どもたちの切実な葛藤」について解説します。聞き手はRKKの江上浩子です。 🔷 「誰も取り残さない」避難所作りの指針――内閣府「避難所チェックシート」とは 災害発生時、熊本県や熊本市のホームページにも掲載される内閣府(男女共同参画局)の「避難所チェックシート」は、避難所における配慮や運営のあり方を具体的に点検するためのツールです。プライバシーや衛生面の配慮に加え、特に重視されているのが「運営体制」と「運営ルール」の改善です。 ▶ プライバシー・衛生面への配慮 授乳室やオムツ替えスペースの確実な設置女性用トイレの数量確保(男性より多めに配置)や、女性用品の配置ピクトグラム(絵文字)や「やさしい日本語」による分かりやすい部屋表示 ▶ 運営体制と代表性の確保避難所の運営責任者に「男女双方」を配置する要介護者、乳幼児連れの保護者、中高生、外国人など、様々な立場の代表者を運営組織に参画させる ▶ 公平な運営ルールの設定炊き出しや清掃、トイレ掃除などの負担が特定の性別(女性)に偏らないよう、男女問わず全員で分担する 🔷 能登半島地震でも繰り返された「固定的な性別役割分担」の課題 なぜ、こうしたチェックシートによる意識改革が必要なのでしょうか。 2024年1月に発生した能登半島地震の避難所でも、過去の災害同様の課題が浮き彫りになりました。 平時から「男性がリーダー、女性がサポート役」という固定的な性別役割分担意識が強い地域や自主防災組織では、混乱する災害時にその習慣がそのまま避難所運営に持ち込まれてしまいます。 その結果、以下のような問題が発生しました。 トイレ掃除や炊き出しの負担が女性に集中する 運営スタッフが男性ばかりであるため、女性が生理用品などの支援物資を受け取りづらくなる 運営のトップやスタッフに女性や多角的な視点を持つ人を配置することは、避難者全員の尊厳を守るために不可欠な要素です。 🔷 熊本地震から10年――語られ始めた「子どもの静かな声」 今回のチェックシートで「中高生など若者も運営メンバーに加える」という点が提示されている背景には、災害時に子どもや若者の声が置き去りにされてきた歴史があります。 熊本市男女共同参画センター「はあもにい」が2026年3月に発行した情報誌『はあもにい』第99号では、「熊本地震から10年、子どもの静かな声に学ぶ、誰も取り残さない防災の形」と題した特集が組まれました。2016年の熊本地震当時、小・中学生だった若者たちが大人になり、当時の葛藤を語っています。 当時15歳(現在24歳・女性): 「プライバシーがなく、女性用のお風呂に高学年の男の子がお母さんと一緒に並んでいるのも嫌でした。違和感を抱きつつも、忙しそうな大人たちには決して言えませんでした」 当時11歳(現在20歳・男性):「パニックになっている大人を見て、自分が不安を口にすればもっと混乱させてしまうと考え、静かに耐えていました」 当時13歳(現在23歳・女性):「あまりの恐怖で県外の祖父母の家に避難しましたが、同級生が学校の片付けやボランティアをしているのを知り、自分だけが逃げてしまったと責めていました」 大人たちが疲弊しパニックになる中、子どもたちは自分の感情に蓋をし、静かに痛みを抱え込んでいたのです。 🔷 子どもを「守られるだけの存在」にしないために 情報誌『はあもにい』の編集者であり、防災士・消防団員でもある榊育代氏は、若者たちの証言を受けて次のように記しています。 「10年前、被災した若者たちが胸の奥に閉じ込めていた言葉。そこには、非日常と向き合う大人たちの不安を察して、自分の感情に蓋をせざるを得なかった子どもたちの切実な姿がありました。まずは子どもを守られる存在としてしっかりと認め、性別や年齢による役割にとらわれず、一人ひとりの尊厳や小さな声をわがままと切り捨てない気持ちが、安心できる環境へと繋がっていきます」 子どもや若者を単なる「保護対象」や「手伝い要員」として扱うのではなく、一人の当事者としてその意見を聞き、運営プロセスに巻き込んでいく姿勢が求められています。 🔷 まとめ:性暴力・DV防止と公的窓口の活用 避難所という非常時・密閉された空間では、性暴力やセクハラ、DV(ドメスティック・バイオレンス)のリスクも高まります。こうした被害に遭遇した、あるいは見かけた場合は、決して口をつぐまず、設置された公的な相談窓口や専門機関へ速やかに相談することが重要です。 一人ひとりの多様な視点を避難所運営に反映させることが、誰もが安全・安心に過ごせる避難生活への一歩となります。 出演:元RKKアナウンサー・宮脇利充さん/聞き手:江上浩子(RKK)

    避難所にダイバーシティを――内閣府「避難所チェックシート」と、熊本地震10年で浮き彫りになった「子どもの静かな声」
  7. Jul 24

    1人あたり「約8万8,000円」の重み――川辺川ダム計画60年、強制収用へ向かう事業認定と「費用対効果」の真実

    1966年(昭和41年)の計画発表から今年でちょうど60年を迎えた川辺川ダム計画。2027年度の本体着工、2035年度の完成に向け、2026年7月に入り大きな動きが相次いでいます。 金子国土交通大臣による事業認定の告示や、開示文書から明らかになった巨額の熊本県負担額、そして疑惑の「費用対効果(B/C)」について、元RKKアナウンサーの宮脇利充氏が解説します。聞き手はRKKの江上浩子です。 🔶 事業認定告示と、明らかになった「県民1人あたり約8万8,000円」の負担 2026年7月15日、金子国交大臣が川辺川ダム計画に対する「事業認定」を告示しました。 これにより、任意の協議で取得できなかった土地について、県の収用委員会の採決をもって強制収用することが可能となります。 土地の99%は取得済みであり、行政側にとっては着実な前進と見られますが、その裏で巨額の公金負担の実態が浮き彫りになりました。 7月1日、市民グループ「子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」が県の情報公開文書をもとに発表したデータによると、以下の事実が判明しています。 これまでに熊本県が負担した額: 約520億円 今後、熊本県が負担する見込み額(市民グループ独自試算): 約620億円 熊本県の推計人口(2025年10月1日時点:168万3,115人)で割ると、生まれたばかりの赤ん坊も含めて県民1人あたり「約8万8,000円」の負担となります。 4人家族であれば35万円を超える計算です。さらに近年の建設コストや資材価格の高騰を考慮すれば、この金額が膨らみ続ける懸念はぬぐえません。 これに対し、木村敬熊本県知事(7月2日会見)は「県民の命と暮らしを守るため、負担金を払ってもダムを推進する」と表明しています。 🔶 費用対効果(B/C)「2.4」のからくり――過去の支出を外すと見えてくる「0.4」の実態 大型公共事業を実施・継続するにあたっては、費用対効果(B/C=ベネフィット・パー・コスト)が「1.0」以上であることが要件とされています。 川辺川ダムの費用対効果は公表上「2.4」とされていますが、ここには大きな「計算上の仕掛け」が存在します。 【費用対効果(B/C)の現実】 ▶ 国交省の公表値(残事業のみ):2.4 ▶ これまで投入した過去の全費用を含めた実質値:0.4 ▶ 洪水の被害想定(過大評価)を現実的に修正した試算:0.1 国交省のルールでは、過去に投入した巨額の費用を計算式から除外することが認められているため、見かけ上のB/Cを高く維持できています。しかし、全体の投入コストから見れば「1.0」を大幅に下回る「0.4」、さらに嘉田由紀子参議院議員が指摘するように被害想定の過大さを正せば「0.1」まで下落するのが実態です。 🔶 2020年豪雨の教訓――救えなかった命と「共同検証」の拒否 2020年7月の球磨川豪雨水害において、流域で亡くなった50人の方々の死因について、市民グループが200人以上の住民へ聞き取り調査を行いました。 その結果判明したのは、死亡原因のほとんどが「球磨川本流の水位がピークに達する数時間前に起きた、支流の氾濫や増水、山の斜面崩落」であったということです。 ダムは上流で降った雨を一時溜める機能しか持たず、下流域で起きた支流の氾濫や斜面崩落を防ぐことはできません。市民グループは県や国に対して「共同検証」を呼びかけていますが、木村知事は「共同検証を行うと、国や有識者、一部住民の見解を全否定することになる」として拒否を続けています。 🔶 新刊『球磨川流域物語』に学ぶ、対話を逃げない姿勢 宮脇氏は、2026年7月1日に刊行された嘉田由紀子氏の著書『球磨川流域物語 水害、ダム問題に挑む女性たち』(つり人社)を紹介しました。 本書の中では、かつて熊本県知事を務めた潮谷義子氏のエピソードが取り上げられています。 2001年12月、相良村の体育館に3,000人もの住民が集まった激しい討論会の場において、夕方5時を過ぎて退場しようとした賛成派の住民に対し、潮谷知事(当時)は次のように訴えました。 「この議論はまだ終わっていません。ぜひとどまってください」 事業を強硬に進めるのではなく、賛反対立の渦中であっても正面から対話に向き合おうとした当時の熱量と姿勢こそが、いまの行政に強く問われています。 🔶 まとめ 総事業費4,900億円(残事業費2,560億円)という巨額の予算が動く川辺川ダム計画。単なる「治水対策」という説明にとどまらず、将来世代が背負う財政負担や、本当に命を守るために必要な防災対策は何なのかについて、私たちがデータと事実に基づいた検証を続けていく必要があります。 出演:元RKKアナウンサー・宮脇利充さん 聞き手:江上浩子(RKK)

    1人あたり「約8万8,000円」の重み――川辺川ダム計画60年、強制収用へ向かう事業認定と「費用対効果」の真実
  8. Jul 17

    「正しさを教える」前に、まず話を聴く 熊本刑務所と出水南中学校をつなぐ「リフレクティング」の試み

    今回の「ニュース515+」には、熊本市立出水南中学校の田中慎一朗校長とともに、熊本刑務所から2人のゲストが出演しました。 熊本刑務所 矯正処遇部 看守長の桑原悠二さんと、同じく矯正処遇部 教育専門官の竹重昂宏さんです。 一見すると、環境も目的も大きく異なる中学校と刑務所。しかし、双方はいま、「リフレクティング」と呼ばれる対話の手法を通じて、互いの実践を学び合っています。 共通しているのは、相手に“正しい答え”を与えるのではなく、安心して自分の言葉を話せる場所をつくることです。 聞き手は江上浩子(RKK)です。 🔶 中学校と刑務所を結んだ「リフレクティング」 出水南中学校では、生徒たちが自分の思いや悩みを安心して語れる環境をつくるため、「リフレクティング」を学校教育に取り入れています。 リフレクティングとは、話し手の言葉をじっくり聴き、聞き手が受け取ったことを断定せずに言葉にして返す対話の手法です。 相手を評価したり、すぐに助言をしたりするのではなく、「私はこのように受け取りました」と伝えます。その言葉を聞いた本人が、改めて自分の思いや行動について考える時間をつくります。 もともとは対話や支援の現場で用いられてきた手法ですが、熊本刑務所でも、受刑者の改善更生や再犯防止に向けた取り組みの中で実践されています。 「熊本刑務所でリフレクティングが行われていると知り、学校にも取り入れたいと思いました。刑務所と中学校は違う場所ですが、人の話を聴くという点では、とても親和性があると感じたんです」(田中校長) 出水南中学校の教職員が熊本刑務所へ研修に出向く一方、希望する生徒が熊本刑務所の職員によるリフレクティングを体験するなど、双方が行き来しながら実践を重ねています。 🔶 「教える」ことから「一緒に考える」ことへ 刑務所に対して、「厳しく管理する場所」という印象を持つ人は少なくありません。 これまでの受刑者教育では、職員側が正解を知っているという前提で、改善すべき点を伝える場面も多くありました。 もちろん相手の話は聞きます。しかし、最終的には職員側が伝えたい内容へ導いていく形になりやすかったと、竹重さんは振り返ります。 「以前は、こちらが正解を知っているような態度で話を聞き、最後にはこちらが伝えたいことを伝える形になっていました。でも、リフレクティングでは、まず相手の話をじっくり聴きます」(竹重さん) 聞き手は、相手の話を聞いて感じたことを「こういうことではないですか」と決めつけるのではなく、「私はこのように受け取りました」と返します。 受刑者本人が、その言葉を聞きながら考え、自分自身の問題と向き合っていくのです。 これは単に優しく接することでも、責任を曖昧にすることでもありません。 「甘やかすということではありません。むしろ、こちらが答えを出さないからこそ、本人が考え、向き合い続けなければならないんです」(竹重さん) 🔶 安心して話せる場所が、変化の入口になる 熊本刑務所では、リフレクティングを行うための環境づくりにも力を入れています。 安心して話せるよう、専用の部屋を整え、無理に話す必要はないことも伝えます。話したくなったときには、自分の中に抱えてきた出来事や思いを語ることができます。 桑原さんは、そうした場所が存在すること自体に意味があると話します。 「話すことを強制されるのではなく、話したいときには受け止めてもらえる場所がある。それだけでも、受刑者の気持ちは変わってくると思います」(桑原さん) 犯罪行為だけを見れば、受刑者は罪名や番号によって管理される存在になりがちです。 しかし、改善更生や社会復帰を本気で考えるためには、その人がどのような背景を持ち、どのような人生を歩んできたのかを知る必要があります。 「受刑者という記号やラベルだけではなく、一人の人として見なければ始まらないと思っています。その人の背景を見て初めて、社会復帰や再犯防止を考えられるのではないでしょうか」(桑原さん) 🔶 受刑者だけでなく、職員の心も支える リフレクティングは、話をする受刑者だけでなく、話を聴く職員にも変化をもたらしています。 刑務所では、ときに殺人事件をはじめとする重大な犯罪について、受刑者の話を聴かなければなりません。 その重い内容を一人で受け止め、「どんな言葉をかけるべきか」と考えることは、職員にとっても大きな負担です。 竹重さんも、以前は身構えてしまうことがあったと話します。 「重い事件の話を聞くとき、一人でどんな言葉をかければいいのかと考えていました。リフレクティングは一人で答えを出す場ではありません。相手の話を聞きながら、一緒に考えることができます」(竹重さん) 何かを決定したり、結論へ導いたりする責任を一人で背負う必要がありません。 そのため職員自身の心理的な負担が軽くなり、結果として、より前向きに受刑者と向き合えるようになったといいます。 職員同士でも、「この人が本当に変わっていくためには何が必要か」を話し合う機会が、少しずつ増えてきました。 🔶 学校もまた「正しさ」を教えすぎていないか 田中校長は、刑務所での実践を聞きながら、学校にも同じ課題があると感じています。 先生と生徒という関係では、教員が「正しいことを教える側」になりやすいものです。 しかし、その正しさが目の前の子どもにとって受け入れられるものなのか。その行動の背景に、本人にしか分からない事情や物語がないか。そこを見ないまま指導してしまうことがあります。 「私たち教員も、つい正しいことを教えようとします。でも、まずその子の話を本当に聞いているのか。そこを考えなければいけません」(田中校長) 子どもの話を十分に聴いたうえで、本人が自分の行動や気持ちと向き合えるように支える。 その文化が学校に根づけば、子どもたちも「先生に何かを言われる」のではなく、「自分で考える」機会を持てるようになります。 🔶 刑務所と学校に共通する「人を人として見る」姿勢 刑務所と中学校では、年齢も置かれている状況も異なります。 それでも、相手を一人の人として尊重し、安心して話せる関係をつくるという点では、共通するものがあります。 学校では生徒を「問題行動を起こした子」としてだけ見るのではなく、その背景まで知ろうとすること。 刑務所では受刑者を「罪を犯した人」としてだけ見るのではなく、社会へ戻っていく一人の人として向き合うこと。 どちらも、すぐに答えを出すのではなく、対話を続ける姿勢が求められます。 「生徒を一人の人として見て、心理的な安全性が確保された中で向き合う。刑務所と学校が一緒に取り組むことで、これからどんな展開が生まれるのか、私自身も楽しみにしています」(田中校長) 🔶 対話は、相手を変えるためだけのものではない リフレクティングの目的は、話し手を思い通りに変えることではありません。 相手の言葉を聴くことで、聞き手自身の見方も変わっていきます。 受刑者と刑務所職員、生徒と教員。立場の違いはあっても、どちらか一方だけが答えを持っているわけではありません。 安心して話し、聴き、一緒に考える。その小さな積み重ねが、受刑者の社会復帰や再犯防止につながり、学校では子どもたちの成長や信頼関係につながっていきます。 熊本刑務所と出水南中学校による今回の連携は、「教育とは、正しさを一方的に伝えることではなく、相手とともに考え続けることではないか」と問いかけています。 【出演】熊本市立出水南中学校 校長 田中慎一朗さん熊本刑務所 矯正処遇部 看守長 桑原悠二さん熊本刑務所 矯正処遇部 教育専門官 竹重昂宏さん 【聞き手】江上浩子(RKK)

    「正しさを教える」前に、まず話を聴く 熊本刑務所と出水南中学校をつなぐ「リフレクティング」の試み

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エンタメ・教育・ITの専門家が気になる話題を徹底解説!! 第1金曜日・・・映画解説・研究者 上妻祥浩さん 第2金曜日・・・ライブ配信ディレクター 斉場俊之さん 第3金曜日・・・熊本市立出水南中学校 校長 田中慎一朗さん 第4・5金曜日・・・元RKKアナウンサー 宮脇利充さん ◆WEB https://rkk.jp/515news/ ◆メール 515@rkk.jp ★地上波ではRKKラジオ(熊本)FM91.4    AM1197で、毎週金曜日 午後5時15分から放送中。是非生放送でもお聴きください。

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