ジョンの山RUNラジオ

ジョン

マラソンのこと、山のこと、みなさんのトレーニングのモチベーションアップにつながることを話していきます

  1. 21h ago

    なぜダブル閾値は生まれたのか?二人の巨人、こっそり闇の練習、そしてケニアでの答え合わせ

    今回は一つのキーワードというより、一つの物語です。テーマは「ダブル閾値は、どこから生まれたのか」。 1996年、アメリカ・イリノイ州の高校のトラックに、長距離界の対極の哲学を持つ二人の巨人――ピーター・コー(セバスチャン・コーの父であり生涯のコーチ)と、アーサー・リディアードの弟子ジョー・ニュートン――が偶然居合わせました。その真ん中にいたのが、17歳のノルウェー人交換留学生。のちにこのメソッドを作ることになる、マリウス・バッケンです。 面白いのは、代名詞である「ダブル閾値」自体、最初から狙って設計されたものではなかったという点です。ピーター・コーのもとでの、ただの走行距離の帳尻合わせ。そこに、なぜか"何かが心に残った"。 さらに、インディアナ大学時代には、公式練習だけでは物足りず、キャンパスが暗くなるのを待ってこっそり追加の閾値インターバルを走り、コーチに怒られたというエピソードも。「サボって怒られる」ではなく「やりすぎて怒られる」という、逆転した挿話です。 そこから、ノルウェーでの"かたまり"の発想、恩師ペール・ハレとの1972年トレーニング日記の再現実験、ノルウェー・オリンピックセンターでの乳酸プロジェクト、そしてケニアでの"答え合わせ"まで。一つの理論が、およそ10年かけて「偶然」から「意図的な構造」へと育っていく過程をじっくり辿ります。 https://amzn.asia/d/00oaPsqc

  2. 1d ago

    「ドリップロード」— なぜ量を絞るのか?「2頭の馬」と日本人研究者の貢献

    「The Norwegian Method Applied キーワードシリーズ」、今回はマリウス・バッケン著『The Norwegian Method Applied』から「ドリップロード(Drip Load)」を取り上げます。 閾値トレーニングを中心に据えるこのメソッドで、スピードやパワーの要素をどう"壊さずに"取り入れるか。その答えが「点滴のように、ごく少量だけ注ぐ」というドリップロードの考え方です。 なぜ本数は1〜3本に絞るべきなのか?その背景にある「2頭の馬(有酸素の馬・無酸素の馬)」という比喩、世界記録保持者カーステン・ワーホルムの実例、そして「刺激は練習の後より前に置いた方がいいかもしれない」という直感に反する提案の根拠になった、ある日本人研究者の論文まで掘り下げます。 さらに、著者自身が「ドリップロードだけではレースペースへの本当の特異性は身につかない」と認めている一節から、その先の解決策である「動的レスト法(ペース固定・レストで強度調整)」まで、原著の流れに沿ってご紹介します。 【今回の内容】 ・ドリップロードとは何か ― 坂トレーニングの期分けから生まれた発想 ・「2頭の馬」の比喩 ― なぜ直近の練習が"どちらの馬を選ぶか"を決めるのか ・カーステン・ワーホルムの実例 ・具体的なやり方 ― 流し1〜3本、階段プライオメトリクス ・「前に置く」という提案とOgasawara et al. (2014)の動物実験 ・ドリップロードの限界 ― "短い垣間見"にすぎない ・本当の特異性ツール「動的レスト法」(ペース固定・レスト可変) https://amzn.asia/d/05Zfom4a Ogasawara R, Sato K, Matsutani K, Nakazato K, Fujita S. "The order of concurrent endurance and resistance exercise modifies mTOR signaling and protein synthesis in rat skeletal muscle." American Journal of Physiology-Endocrinology and Metabolism, 306(10):E1155–E1162, 2014. DOI: 10.1152/ajpendo.00647.2013 The order of concurrent endurance and resistance exercise modifies mTOR signaling and protein synthesis in rat skeletal muscle | American Journal of Physiology-Endocrinology and Metabolism The order of concurrent endurance and resistance exercise modifies mTOR signaling and protein synthesis in rat skeletal muscle - PubMed

  3. 2d ago

    Podcast灼熱の桧原湖30kmとビール2杯で睡眠スコアが崩壊した話

    今年初の桧原湖に行ってきました。避暑ランのつもりが、平地38度・標高900mの湖畔でも28〜29度という灼熱コンディション。想定していたキロ4:30は早々に諦めて、「ペースを守る」から「心拍を守る」へ方針転換した30.8kmのロング走の記録です。 一周を12km・10km・8kmに3分割して、道の駅のアクエリアススパークリングとコンビニアイスでクールダウンを挟む暑熱マネジメント。結果、平均心拍126bpmで翌日に疲労を残さず完走できました。裏磐梯から見る磐梯山の荒々しい絶景と、標高900mという高地トレーニング環境の魅力、そして走った後に染み渡る道の駅の山塩ラーメンの話も。 後半は、新潟に帰ってからの飲み会でビール中ジョッキ2杯を飲んだ夜のCOROS睡眠データを公開します。睡眠時間はほぼ同じなのに睡眠スコアは75→41に暴落、深睡眠とREMは半減。ところがHRVは平均85msで正常範囲という不思議な乖離が起きていました。「アルコールは睡眠の量ではなく質を壊す」「回復指標は1つだけで判断しない」「平均値はストーリーを隠す」——データから見えた3つの教訓を話します。 ▼今回のトピック ・暑熱下ロング走はペース目標より心拍目標(Zone2縛り) ・分割走+積極的休憩という暑さ対策 ・標高900m桧原湖は夏の走り込みに最高の高地トレーニング適地 ・道の駅の山塩ラーメン(しおまるさん、次こそは) ・ビール2杯で睡眠アーキテクチャはこう壊れる ・HRV正常×睡眠スコア41の謎を時系列データで読み解く

    Podcast灼熱の桧原湖30kmとビール2杯で睡眠スコアが崩壊した話
  4. Jul 5

    VLamaxというスパイス。800mとマラソン合宿を両立させる、代謝の話

    インターバルトレーニングの科学シリーズ、番外編です。今回のテーマは VLamax(最大乳酸産生速度)。「乳酸をどれだけ速くドバッと生み出せるか」を表す指標で、種目の特異性を大きく左右する、いわば”スパイス”のような存在です。 今回はちょうど私自身が、7月20日の新潟県選手権800m(狙いは2:05)と、8月最初の週末に控えているマラソンエリートたちとの高地合宿、この相反する2つを同時に見据えているタイミング。VLamaxを軸に、その絶妙なバランスの取り方をリアルな練習の話も交えて解説します。 この回のポイント ・VLamaxの正確な定義(乳酸を「溜める」力ではなく「生み出す速度」) ・なぜVLamaxが種目の特異性を決めるのか(VO2maxとの綱引き) ・才能・素質の影響と、自分のタイプの見極め方 ・「マラソンは低いほど良い」の本当の意味と、下げすぎのリスク ・有酸素が「溶ける」現象を2つの論点に分解——①代謝の経済性が削れる話(グリコーゲン、CPT-1、クロスオーバーポイント)②特異性が中距離に偏る話。この2つは同じようで違います ・やりすぎ厳禁の理由(上げるのは簡単、下げるのは数ヶ月かかる非対称性)

  5. Jul 2

    佐渡の稜線で感じた熱気と「暑熱順化」プロトコル。風邪から学んだ体調管理の哲学

    今回は久しぶりに体調を崩した経験から見つめ直した、日々の生活習慣とマインドセットの重要性について。そして先日公開した「佐渡トレイル」の動画を振り返りながら、標高1000mクラスの稜線がなぜあれほど暑かったのか、ブナの森がもたらす極上の涼気について語ります。後半のメインテーマは、これからの本格的な夏を生き抜く、そして走り抜くための「暑熱順化(しょねつじゅんか)」の科学。サウナや入浴の効果、具体的なトレーニングへの落とし込み方まで、理論と実践を交えて徹底解説します。 根拠論文・出典 論文名: Heat acclimation mechanisms, regimens, and cooling strategies for runners in the hot environment / Benjamin et al. (2019) URL: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6602377/ 主要な知見: ランナーにおける暑熱順化の生理学的メカニズム(血漿量増加、発汗早期化)と、最適な順化期間・冷却戦略を包括的にレビュー。 論文名: Post-exercise sudomotor function and heat acclimation via hot water immersion / Zurawlew et al. (2016) URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26602280/ 主要な知見: 運動後に40℃の温水に継続的に入浴することで、暑熱環境下でのランニングパフォーマンス向上と暑熱順化(発汗機能の改善など)が促進されることを証明。

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