ハナボウズの山ログ

ハナボウズ

​群馬県中之条町、標高1000mの山の中ハーブや宿根草を育てる「ハナボウズ」園主(中島)が、日々の農作業の合間に、山の音と言葉を記録しています。 ステレオ録音で、山の中にある畑の環境ごと、カエルの声、鳥の声、風の向き、遠くのチェーンソー音、この山に生きているものたちの気配 いつか誰かがこれを聞くとき、朝の空気が伝わったら面白いなと思っています。 ハナボウズ圃場コード:たびたび登場する、畑の定義です。 ​K = 湿地・開放農地・森林が接するエッジ環境 ​A = アトリエ(現在の作業場の隣) ​G = ゴリラ形の岩がある枝もの畑(Aから100mくらい) ​M = 開拓時に水鉄砲がぶら下がっていた畑、標高1030m・北向きの最高地点の畑(Gの隣) ​Y = 100坪のビニールハウス(町から借りている) ハナボウズの様子(Instagram): https://www.instagram.com/hanaboze92 https://listen.style/p/hanaboze92?Y5d1uTfJ

  1. Oct 15

    思いついたらやってしまう

    十月の昼過ぎ、風の強い日。中島はKのハウスでアルケミラに灌水しながら、新規就農の仲間たちを待っていた。それぞれ別の師について学び、独立して五年ほどになる者たちが、互いの畑を見て回る。人が他人の畑を見たがるのは、自分の畑を知るためである。待つあいだ、中島はヘリアンサスとヘレニウムを支えていた紐と支柱を外した。花の季節が終われば、支えも用を終える。 町内の役員会で、中島は人々が争わないことに驚いた。規格と量と品質が各自の利益に直結する六合の花部会では、議論はたびたびぶつかる。近くに住む者どうしは、なるべく戦わないことを選ぶのかもしれない。あるいは町内会とは物事を決める場ではなく、すでに決まったことを調整する場なのだろう。表の静けさは、裏で何も動いていないことを意味しない。 その日は人からの便りが重なった。関東農政局の取材記事が掲載されたという知らせと、アメリカ海外農業研修の同期、彰人君からの電話である。彼はいま沖縄でカボチャを作っている。前日、勢いで送った誕生日の祝いが、遠く離れた二人をふたたび結んだ。思いついたことをひとつやってみる。事態はそうやって動き出すのだと、中島は記した。 気分は三。体が温まり、また走りたくなっていた。そこへ仲間がやって来て、中島は録音を止めた。

  2. Oct 4

    ハナボウズの色

    十月四日、日曜の午後。中島は午前の出荷を終え、昼食のあと娘とキーボードのドラムモードで騒ぎ、そのまま植え付けに向かった。曇り空の下、朝はTシャツにシャツとマウンテンパーカーを重ねていたが、土を掘るうちに暑くなり、いまはシャツ一枚。Kの石のベンチで汗を引かせながら、マイクを回している。 先週金曜に、関さんちから、もういらないと言われた苗をもらってきた。アイアンウィード、ユーパトリウム・チョコレート、ブラキトリカ。根がタコのように張っていて、掘り上げるのも植えるのも骨が折れる。グラス系は市場に送っても値がつかず、関さんちも減らすのだという。それでも中島は一株もらって割り、造成した畑の入り口の縁に植えた。畑の周りは、強いものをちょろちょろと足していくうちに、少しずつナチュラルガーデンの顔になってきた。まだ隙間だらけだが、秋になれば道が浮かび上がるだろう。 一方で、アマランサスは思うようにいかなかった。ホットビスケットは「ボリュームが小さすぎる」と市場で事故扱いに、廃棄した。中島の腹の六十センチと、買い手の思い描く六十センチが違っていたのだろう。九月の日照の短さに加え、西に山を負う畑では西側ほど背が低く、東へ行くほど伸びている。暑い夏を見込んだ読みは外れたが、小さくても可愛い、とは思っている。 十月十日の土曜は、菅谷農園さん主催の花マルシェ。初回からほぼ毎回出ている。農家がマルシェに出ること自体が妙で、その変さが刺さったのだろうと中島は笑う。出展ブースの色にも、ハナボウズの色というものがあるらしい。会場で見かけたら、一緒に写真を撮ってほしい。シーズンは終わりに近づき、植え替え、片付け、採種、種の購入が続く。ハウス一棟目には、まだ出せるものが残っている。

About

​群馬県中之条町、標高1000mの山の中ハーブや宿根草を育てる「ハナボウズ」園主(中島)が、日々の農作業の合間に、山の音と言葉を記録しています。 ステレオ録音で、山の中にある畑の環境ごと、カエルの声、鳥の声、風の向き、遠くのチェーンソー音、この山に生きているものたちの気配 いつか誰かがこれを聞くとき、朝の空気が伝わったら面白いなと思っています。 ハナボウズ圃場コード:たびたび登場する、畑の定義です。 ​K = 湿地・開放農地・森林が接するエッジ環境 ​A = アトリエ(現在の作業場の隣) ​G = ゴリラ形の岩がある枝もの畑(Aから100mくらい) ​M = 開拓時に水鉄砲がぶら下がっていた畑、標高1030m・北向きの最高地点の畑(Gの隣) ​Y = 100坪のビニールハウス(町から借りている) ハナボウズの様子(Instagram): https://www.instagram.com/hanaboze92 https://listen.style/p/hanaboze92?Y5d1uTfJ