エンタメビジネス実況中継

朝日けけ。

エンタメ業界で15年、漫画・アニメ・ゲーム・キャラクターIPの新規事業を立ち上げてきた朝日けけが、いまそこで起きているビジネスの動きを毎回1つピックアップ。ひとりで、ときにはゲストとともに30分語り続けます。分析でも解説でもない、「実況中継」です。 asahikeke.substack.com

  1. 1d ago

    なぜスパイダーマンは死ななかったのか。失速するヒーロー映画と「感情の貯金」

    This is a free preview of a paid episode. To hear more, visit asahikeke.substack.com 2019年4月2日、ある映画の前売り券が、インターネットを壊しました。 『アベンジャーズ/エンドゲーム』の前売り開始日。全米最大の映画館チェーンAMCのサイトとアプリは、通常の約10倍のアクセスを浴びてダウンしました。アメリカのチケットサイトFandango(ファンダンゴ)では、それまで歴代1位だった『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の初日前売り記録が、わずか6時間で更新されました。 スーパーヒーローが映画館の王様だった時代の風景です。 それから7年後の2026年6月。『スーパーガール』が、全米オープニング3,710万ドル(約59.4億円)で沈みました。製作費1.7億ドル(約272億円)に、宣伝費が約1.2億ドル(約192億円)かかった作品です。大作としては、小さすぎる興行収入です。 「スーパーヒーロー疲れ」。 英語圏の映画メディアでこの言葉が定番になって、もう数年になります。でも、わたしはこの「疲れた」という説明に、ずっと引っかかっていることがあるんです。 同じ「疲れた」はずの数年のあいだに、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』は世界興収19億ドル(約3,040億円)を稼ぎました。劇場に人が戻りきっていないコロナ禍の2021年に、です。 そして今月末に公開される『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』の予告編は、公開24時間で7億1,860万回再生。映画の予告編として、史上最多です。 飽きられたはずのジャンルの真ん中で、スパイダーマンだけが、死んでいません。 なぜ、スパイダーマンだけが死ななかったのか。 このsubstackでは「エンタメビジネス実況中継」と題して、エンタメやポップカルチャーについてビジネスとプロデューサー視点で発信しております。すこしでもこういった話題に興味があれば、ぜひ無料購読をよろしくお願いします。 「ヒーロー疲れ」は、たしかに数字に出ている 先に、通説の側をちゃんと見ます。 統計分析メディアStat SignificantのDaniel Parris(ダニエル・パリス)氏の集計によれば、2015年から2020年頭にかけて、スーパーヒーロー映画は1本あたり平均でおよそ10億ドル(約1,600億円)を世界興行で稼いでいました。1本あたり、です。それがパンデミック以降、崖のように落ちました。 理由としてよく挙がるのは、コロナで劇場の習慣が壊れたこと。Disney+でシリーズを量産しすぎて、ありがたみが薄れたこと。そして単純に、観客が飽きたこと。 実際にスーパーヒーロー映画の年間公開数をまとめたグラフがこちらで、かつて年1本のお祭りだったものが、今や年9本ぐらい公開される、毎月何かしら上映されているものになってしまった。 また、コロナ後に映画化されたスーパーヒーローで稼いだ作品はほとんどなく、2020年以降に生まれた全ヒーローを足し上げても、スーパーマン1人に負けてしまいます。 本数が多いと追いきれないし、Disney+のドラマシリーズまで全部追いかけるのはそこまでじゃない。という気持ちは、わかります。わたしも実際全部は見切れないと感じてます。 ただ、「観客が飽きた」で全部を説明すると、冒頭の数字と衝突するんです。飽きたはずの観客が、スパイダーマンの予告編だけは1日で7億回観ています。疲れたはずの財布が、19億ドルぶんだけ開いています。 観客はジャンルに飽きたのか。それとも、別の何かが起きているのか。 死んだのは、ジャンルではなかった パンデミック後のスーパーヒーロー映画を、ぜんぶ一山にせず、2つに割ってみます。「昔からいるヒーロー」と「新しく立ち上げたヒーロー」です。 上の図を見るとわかるのは、「ヒーロー映画の失速」がじつは一様ではないことです。昔からいるヒーローは、今も数千億円を稼いでいます。沈んでいるのは、新しく立ち上げたヒーローだけなんです。2024年に立ち上げた『クレイヴン・ザ・ハンター』にいたっては、世界0.6億ドル(約96億円)でした。 Stat Significant(カルチャー系メディア)はこの現象を「持ち越した資産はまだ機能するが、新しい神話は機能していない」と表現しています。わたしの言葉で言い直すと、こうなります。 死んだのはジャンルではなく、「新しいヒーローのローンチ」だけ。 そしてこの切り分けができた瞬間、「観客が飽きた」という説明は使えなくなります。飽きたなら、古株から順に捨てられるはずじゃないですか。実際に起きているのは逆で、古株ほど強く、新顔ほど弱いんです。 これは「飽き」の形ではありません。別の構造の形です。 IPは感情の貯金である ここで、ことばをひとつ定義させてください。 わたしはIPを「感情の蓄積装置」だと考えています。名前を聞いただけで感情が動くもの。そして大事なのは、その感情が一夜では作れない、ということです。読んだ時間、観た時間、誰かと語った時間。接触のぶんだけ少しずつ積み立てられていく、貯金のようなものです。 この見方に立つと、映画の見え方が一段変わります。 大作映画のヒットは「引き出し」で、日々の接触が「入金」です。 スパイダーマンで実演してみます。初登場は1962年のコミック。以来60年以上、コミックで、テレビアニメで、ゲームで、おもちゃ売り場で、入金され続けてきました。親から子へ、その子からまた次の子へ。三世代ぶんの残高です。 だから『ノー・ウェイ・ホーム』は、コロナ禍という最悪の営業環境でも19億ドルを引き出せました。歴代スパイダーマン3人が並んだあの映画は、作品として面白いのと同時に、60年分の残高に対する、史上最大級の引き出しだったんです。 一方の『エターナルズ』はどうか。原作コミックの知名度は、米国でも高くありません。つまり、残高がほとんどない状態で、製作費2億ドル(約320億円)級の引き出しをかけました。作品の質の問題である前に、算数の問題だったと思うんです。残高がないところからは、引き出せません。 『ザ・フラッシュ』も『マダム・ウェブ』も『スーパーガール』も、細かい事情はそれぞれ違います。でも共通しているのは、「単独の大作を支えるだけの感情の貯金が、まだその名前に積まれていなかった」ことでした。 入金のほうが、止まっていた では、なぜ新しいヒーローには残高がないのか。ここが、この記事でいちばん見てほしい数字です。アメリカのヒーローたちの入金(マネタイズ)装置は、コミックでした。そのコミックの現在地を見ます。 1991年、『X-MEN』第1号は小売店からの発注が810万部に達しました。単号としてギネス記録、いまも破られていません(実際に読者の手に渡ったのは約300万部という推定もあります)。2026年のいま、全米でいちばん売れている月刊コミックは『アブソルート・バットマン』で、月30万部台です。 図から分かる通り、この落差がそのまま「新しいヒーローが生まれない理由」です。誤解のないように言うと、『アブソルート・バットマン』は近年まれに見る大ヒットで、DCのこの新路線は初年度で約800万部を積む健闘を見せています。作り手の腕が落ちたのでは、まったくありません。 1991年に1冊で売った部数を、いまは業界最大のヒット路線が、1年がかりで積む。 それだけ、コミックが「大衆の入金装置」から「熱量の高いファンの聖域」に変わったということです。 念のため付け加えると、米コミック市場の金額そのものは、グラフィックノベルやマンガに支えられて、いまも伸びています。細ったのは金額ではなく、「新しいヒーローの月刊誌を、大衆が毎月買う」という回路のほうなんです。 つまりマーベルもDCも、映画で引き出す一方で、源泉への入金が細り続けていました。新しいキャラクターに感情を積んでくれる大衆の窓口が、もうコミックにはなかったんです。 それなのに、引き出しのペースは逆に上がりました。2021年、マーベルは劇場映画4本に加えて、Disney+でシリーズを5本投入しています。入金が細った貯金に、かつてないペースの引き出しをかけたわけです。残高の厚いスパイダーマンは耐え、残高の薄い新キャラクターから順に、底をつきました。 エンタメ事業を統括していたころ、億円規模の新しいIPの立ち上げ案件が、担当者の異動ひとつで白紙に戻るのを見たことがあります。企画が悪かったわけではありません。新しいキャラクターへの入金

  2. 3d ago

    才能を殺す人と生かす人の差。

    This is a free preview of a paid episode. To hear more, visit asahikeke.substack.com 「それって数字で説明できる?」 これはエンタメ企業で事業統括やプロデューサーをやっていた頃、何度も言われた言葉なのですが、会社にいると、これをほんとうによく言われますよね。だけど今日は、その逆の思考について書きます。 クリエイティブを殺さないほうが、結果的に儲かるし、成功するよね。という話です。 もちろん、「数字で説明しろ」が悪いわけじゃないんです。上司に、株主に、役員会に。説明でいちばん通りがいいのは、いつだって数字です。誰が見ても、同じ意味に受け取れる。感想やこだわりは人によってブレるけど、数字はブレない。大勢が同じ絵を見て動く会社では、数字がいちばん、全員が納得できるんですよね。だから、数字そのものは、悪者じゃないんです。 ではなぜ、才能を殺さないほうが儲かるのか。 どうやって才能は殺されていくのか 漫画を例に見ていきます。一巻の漫画を出したとします。 初版で刷るのは、いまの時代は新人作家ならだいたい5,000部から7,000部くらいと言われています。それが売れて、半分を過ぎたあたりで重版がかかる。悪くない滑り出しです。でも、会社として編集部として正直に言えば「ものすごく、すごいこと」ではありません。「良かった」くらいの話です。 この例から分かる通り、「良かった」「すごい」と評価するとき、いちばん手っ取り早いのは数字です。何部刷って、何部売れて、いくら回収できたか。全部、数字で出ます。出せてしまいます。外から見ていると、それで十分に思えます。売れたなら成功、売れなかったなら失敗。分かりやすい。 でも、わたしはその分かりやすさが、いちばん怖いと思うんですよね。数字はきれいに見える分、それだけ正解か不正解か、成功か失敗か、すぐに烙印を押されるからです。失敗したら終了、成功しても次の3巻でまた数字を見る。次は5巻。正しいんですが、その判断だけだと、結果的にほとんどの漫画がすぐに連載終了になってしまいます。 なぜか。「すごい」「過去最高」のような数字をつくる作品は、めったに出ないからです。だとすると、本当に見るべきなのは「その一巻でいくら売れたか」ではなくなってきます。 その一巻が、どれくらい話題になったのか。読者の中に何が残ったのか。作家性のなにを出せているか。など、つまりプロセスです。そしてもうひとつ、そもそも自分たちは、この一冊を「何をもって成功とするか」を決めていたのか。未来の成功の定義です。 プロセスと、未来の成功定義。このふたつは、初版の部数には映りません。 そして、ここを見極めるのに、数字的な視点だけではなく、クリエイティブの視点がいります。「この作家は、次にこう化ける」「この読者の熱は、こういう順番で育つ」。まだ数字になっていないものを読む力です。センスとも言いますよね。 ここが金融的なルール、つまり目先の数字を健全に伸ばせるかどうかだけで判断することに縛られすぎると、どうなるか。みんなが目の前の数字だけを追いかけるようになります。現場が、少しずつ息苦しくなっていきます。 そして、いちばん割を食うのが、クリエイター(作家含む)です。数字にならない工夫や粘りが評価されないので、クリエイティブな部分から順番に削られていく。最後には、クリエイター自身が生きづらくなって、離れていきます。 これが、じわじわ効いてくる殺し方です。でも誰も、殺したつもりがないのが一番怖いんですよね。 では、才能を殺さないためには、なにをどうやって見ていくべきか。先に結論を言うと、一発では見抜けません。二度目以降の打席で、差が出るからです。 ここから先は有料部分です。

  3. 6d ago

    音楽が「TikTokでバズったら売れる」は、半分だけ本当。

    2026年のいま、音楽の入口において、TikTokはとても大きくなりました。 Creepy Nutsの「Bling-Bang-Bang-Born」は、アニメ『マッシュル』のオープニングからTikTokのダンスで世界に広がって、Billboardの「Global Japan Songs Excl. Japan(海外での日本楽曲の再生を集計したチャート)」で、自分たちの3曲による史上初のトップ3独占を達成。2026年4月には、コーチェラのGobiステージで大トリを務めるところまで行きました。 Tani Yuukiさんは、自宅で録音した曲をTikTokに投稿するところから始めて、「W/X/Y」がストリーミング累計8億回。日本の楽曲として最大級の数字です。 こっちのけんとさんの「はいよろこんで」は、MVの「ギリギリダンス」がTikTokでミーム化して、ストリーミング累計2億回。リリースからわずか7か月で、NHK紅白歌合戦のステージまで届きました。 そしてtuki.さんは、中学3年生・15歳のときに投稿した「晩餐歌」の弾き語りで、ストリーミング累計5億回に、女性シンガーソングライターとして史上最速で届きました。累計は、いまや6億回を超えています。 通説だと、全部きっかけは「TikTokでバズったから」と言われています。聞いたことありますよね? でも、ここで一回、疑ってみてほしいんです。 TikTokで10万再生、30万再生を超える曲は、毎週、何百とあります。何千かもしれません。しかし、そのほとんどは、次の月には記憶にも残っていないものもたくさんありますよね。 同じ「バズった」なのに、世界のチャートまで駆け上がる曲と、一週間で消える曲がある。 その差は、運でしょうか。 わたしは、違うと思っています。だから本記事の問いは、こうです。 バズった後、一体何が差を分けているのか? わたしはこれまで、かれこれ15年くらいエンタメ業界にいます。事業統括やプロデューサーとして。その間ずっと近くで見てきたのが、「バズった実績やファンの熱量を、次にどこへつなぐか」でした。だから、TikTokで何かが跳ねるたびに、つい「で、この熱を、次どこに着地させるんだろう」と考えてしまうんですよね。 本題の前に、先にひとつだけはっきりさせておきます。ここに名前を挙げたアーティストは、全員、才能が一流です。曲がいい。歌がいい。これは大前提で、議論の余地はありません。 そのうえで、彼らに新しく加わったものがある。それが「伝播の設計」です。伝播とは、TikTokで点いた火を、別のプラットフォーム、別の文脈、そして体験へと、計画的に移し替えていく設計のことです。火をつけるところまでは、才能と、少しの運でいける時があります。でも、火が消える前に次へ伝播させていくのは、設計の仕事でもあるんですよね。 本記事では、TikTokでバズってアーティストが世界に出ていくという現象を分析していきます。3つのステップでできています。 このsubstackでは「エンタメビジネス実況中継」と題して、エンタメやポップカルチャーについてビジネスとプロデューサー視点で発信しております。すこしでもこういった話題に興味があれば、ぜひ無料購読をよろしくお願いします。 第1ステップ:まず、「10万再生の壁」 TikTokという場所のいちばん変わっているところは、人ではなく「音源」が拡散の単位になることです。 あなたがいいと思った曲があるとして、広がっていくのは、その人の歌そのものだけではありません。その曲を使って、何万人もの他人が、踊ったり、口パクしたり、自分の日常に乗せたりした「二次創作の束」です。だから入口で必要なのは、聴かせる力よりも、「使いたくなる力」なんです。 10万再生というのは、その「動画で使いたくなるか、歌いたくなるか」が響いたかどうかの、最初のしきい値です。ここを超えると、TikTokのおすすめが勝手に運んでくれるようになる。逆に超えないと、どれだけ曲が良くても、火は燃え広がりません。※10万という数字は、わたしの感覚値です。 点火の作り方は、もう一様ではありません。 tuki.さんは、15歳の弾き語りという「本人そのもの」で点けた。 新しい学校のリーダーズの「オトナブルー」は、2020年の曲のサビが、3年後に「首振りダンス」として勝手に点きました。 そして、いまの10代は、聴く人を最初から巻き込みます。 高校生シンガーソングライターとして注目されたAKASAKIさんの活動の始まりは、自作の曲に「曲名ください」というキャプションを付けてTikTokに投げた一本でした。「Bunny Girl」も、サビの30秒だけを先に投稿して、「フルで聴きたい」というコメントが積み上がってからリリース。正式リリースから4か月で、ストリーミング1億回に届きました。聴き手が曲を「育てた」感覚ごと、火になっています。 そして、この点火を運まかせにしないための設計が、二次創作を「させる」ことです。 自分が踊るのではなく、何万人もが真似したくなる振りやネタを置いておく。新しい学校の「首振り」も、Creepy Nutsの「BBBBダンス」も、振りが簡単で、撮りやすくて、真似ると気持ちいい。火を、他人に運ばせる設計です。 こっちのけんとさんの「ギリギリダンス」には、Da-iCEやNiziU、DA PUMPといった有名グループの公式アカウントまで踊りで参加して、火が一段と加速しました。FRUITS ZIPPERの「わたしの一番かわいいところ」は、中高生が振り付けを真似して投稿し、TikTokの総再生はおよそ30億回に膨らんでいます。 ここで大事なのは、点火しただけの曲は、本当に、毎週、何百とあるということです。10万再生は、ゴールではありません。導火線に、火がついただけです。 第2ステップ:横断させて、ストリーミングに「定着」させる ここが、いちばん大事なところです。 10万再生の火は、放っておくと数週間で消えます。TikTokのトレンドの寿命は、それくらい短い。だから、バズった次に売れ続ける人は、火が消える前に動いています。やることは、プラットフォームを横断させること。そして、その先のストリーミングサービスに「定着」させることです。 火を、TikTokの外へ運ぶ imaseの「NIGHT DANCER」は、TikTokで全世界40億回再生まで広がり、YouTubeのMVが1億回を突破、そこからSpotifyのバイラルチャートTOP50には、48の国と地域で入りました。 上の図がimase ‘NIGHT DANCER (2022~)の火がTikTokから各プラットフォームへ伝播したイメージ図です。このようにtiktokだけで燃え尽きずに、他プラットフォームに熱量を移していくことが大事だということがわかります。 文脈の「隣」に、自分を並べる 横断には、もうひとつ強力なやり方があります。すでに大きなうねりがある場所の「隣」に、自分を並べることです。 Creepy Nutsの「BBBB」は、アニメ『マッシュル』のオープニングという文脈に乗りました。 imaseは2026年、『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』の配信版エンディングに起用されてもう一度チャートを駆け上がっています。一度跳ねた曲が、新しい文脈をもらって二度跳ねる。 そして、乗れる文脈は、アニメだけではありません。 M!LKの「イイじゃん」は、歌詞の「ビジュイイじゃん」というフレーズそのものが曲を飛び出して、若者の日常語になりました。SNSでの総再生は25億回を超え、2025年の新語・流行語大賞にノミネート。曲が「流行りの言葉」という文脈に乗ると、ふだん音楽をあまり聴かない人にまで、火が届きます。 FRUITS ZIPPERは、原宿の「かわいい」カルチャーという文脈ごと海を渡って、台北や上海のチケットが即完するアジアツアーを完走しました。曲だけでなく、文化を丸ごと隣に置く運び方です。 ゴールは、曲のファンを「本人のファン」に変えること ただ、横断もミームも、あくまで「手段」です。 真のゴールは、SpotifyやApple Musicといったストリーミングサービスで、その曲がプレイリストやライブラリに入り、日常の中で繰り返し聴かれるようになること。つまり、「あの曲いいよね」を、「この人の次の曲も聴きたい」に変えることです。TikTokの火は数週間で冷めますが、ストリーミングに移した火は、積み上がる資産に変わります。 その証拠に、Billboard JAPANが公式に集計しているストリーミング累計1億回突破曲の一覧には、この記事の登場曲がずらりと並んでいます。「W/X/Y」8.0億回。「Bling-Bang-Bang-Born」7.0億回。「晩餐歌」6.0億回。「はいよろこんで」「Bunny Girl」「NIGHT DANCER」「わたしの一番かわいいところ」が、それぞれ2

  4. Jul 24

    フランスでは、映画館の券売機が次の映画に出資している

    前回、クールジャパン機構の540億円の赤字を解剖しました。溶けた金の6割超は、下手な投資ではなく、案件を選ぶ人間を雇い続けた「会議室の維持費」でした。わたしはそれを「会議室のお金」と呼びました。 そこで当然、こういう疑問が出てきます。じゃあ、うまくいっている国は、いったい何をしているのか。会議室で選ばないなら、どうやってお金を配っているのか。 本記事では、「なぜ稼いでいる国は、国が作品を選ばないのか」という問いを、4つの国の仕組みを並べて解いていきます。そしてもう一つ、日本にとって耳の痛い問いも一緒に置きます。この「会議室でしか配れない病」は、本当にお役所だけの病なのか、という問いです。 このsubstackでは「エンタメビジネス実況中継」と題して、エンタメやポップカルチャーについてビジネスとプロデューサー視点で発信しております。すこしでもこういった話題に興味があれば、ぜひ無料購読をよろしくお願いします。 稼ぐ国の共通点は、たった一つだった 先に、4カ国を見比べてわかった結論を言います。 答えをシンプルに言えば、稼いでいる国は、どこも国が個別の作品を選んでいませんでした。フランスも英国もカナダも韓国も、やり方は違うのに、この一点だけは揃っているんです。順番に見ていきます。 フランス、券売機が出資する国 フランスの支援を仕切るのは、CNC(国立映画映像センター)という組織です。その財源が、面白い。国の予算ではなく、映画館の入場料などにかかる目的税です。 つまり、あなたがパリで映画のチケットを買うと、その一部が自動的に業界の基金に入る。そのお金が、興行成績に応じて「次回作の資金」として製作者の口座に積み上がっていく。ヒットを出した人ほど、次に使える金が自動で増える設計です(フランス上院・2024年予算報告(映画)、CNC)。 誰かが会議室で「この企画は有望か」と審査する余地が、構造的に小さいんですね。券売機が、次の映画に出資している。わたしはこの仕組みを知ったとき、日本の会議室と比べて、思わずうなりました。 英国は税制、カナダは人件費で「自動で戻す」 英国は、もっと割り切っています。 2024年に導入した映像税額控除(AVEC)は、制作費を英国内で使ったら、その34%が自動で戻ってくる仕組みです。 アニメや子供向け番組なら39%(いずれも額面ベースで、実際の手取りはもう少し下がります)。年間の上限なし。制度の期限もなし。国は、どの作品が有望かを審査しません。使った制作費に応じて、機械的に還す。 この設計が世界中の大作を呼び込み、2022年の映画とハイエンドTVの製作費は過去最高の63億ポンド(約1兆2,600億円)に達しました(英国映画協会(BFI)ほか)。 カナダは、還付の基準を「人件費」に置きました。自国民に払った制作の人件費の一定割合を戻す。連邦の控除に州の控除を重ねられて、たとえばブリティッシュコロンビア州は基本40%。地方やVFXのボーナスを積むと、実質40〜60%に届きます。2022年の制作額は116.9億ドル(約1兆8,700億円)、雇用は約24万人です(カナダ・州政府資料。通貨はカナダドル)。 3カ国に共通しているのは、審査で選ぶのではなく、条件を満たせば自動で戻す、という発想です。 韓国だけ、少し毛色が違う 韓国は、国が前に出ている国だと思われがちです。実際、政策金融を2021年の5039億ウォン(約550億円)から2024年に1.74兆ウォン(約1,900億円)へ、3倍以上に積み上げました。 でも、中身を見ると発想は同じでした。コンテンツ振興院(KOCCA)の2025年の予算を機能別に見ると、大半は研究開発、輸出支援、人材育成です。作品への直接の投融資は、わずか42億ウォン(約4.6億円)しかありません。国は土台を作るほうに徹して、実際に世界で稼ぐのはHYBEやNaverといった民間に任せている。 どの作品が勝つかを選ぶ仕事は、市場に譲っているんです。輸出額は2024年に140.8億ドル(約2兆2,500億円)で過去最高になりました。 回路のお金、という考え方 ここで、前回の「会議室のお金」に対になる言葉を置きます。 回路のお金です。人が選ぶのではなく、ルールを満たせば自動的に流れるお金。 券売機の税、使った制作費への還付、人件費への還付。 呼び方は国ごとに違いますが、全部これです。 回路には、選ぶ人の会議室が要りません。だから、あの238億円のような固定費がつかない。 誤解のないように言っておくと、回路がタダという意味ではないんです。税額控除なら国の税収は減りますし、フランスでも「公的資金が民間の投資を押しのけている」という批判はあります。 ただ、かかるコストの種類が違う。案件を選ぶ人を雇い続ける固定費は、要らないんです。フランスのCNCが1946年の設立から80年も回り続けているのは、目利きが優秀だからではなく、目利きをほとんど必要としない回路だからです。 エンタメ事業を統括していたころ、海外の制作現場の予算の組み方を見て、驚いたことがあります。彼らは、税額控除で戻ってくるぶんを最初から計算に入れて予算を組んでいました。オフィスを借りる場所も、採用する人の要件も、返ってくるお金が制度で約束されているから、そこを前提に強気の絵が描ける。 日本で同じことをしようとすると、まず「補助金、通るかな」の相談から始まる。話せる人を探す、採択されるように調整する。 この差は、とても大きいんですよね。 そして、もっと耳の痛い話をします ここまで読むと、「要するにお役所が回路を作ればいい」で終わりそうです。でも、話はそう簡単じゃありませんでした。 この「会議室でしか配れない病」は、実は官の専売特許ではないんです。ここが、今回いちばん書きたかったところです。 映画監督の是枝裕和さんたちは、まさにフランスのCNCをモデルに、映画チケット代の1%を業界で拠出して、制作現場やクリエイター育成に再分配する仕組みを提案してきました。 日本版の回路を作ろう、という話です。交渉の相手は、日本映画製作者連盟。大手のスタジオや配給が集まる団体です。 約1年半、話し合って、中断しました。 是枝監督の言葉は、こうです。 フランスは、チケット代の約11%が回っています。韓国は約3%。日本は、1%が通らなかった。 ここから先はわたしの推測です。 拠出する側、つまりすでに興行の上がりを取れている大手にとって、1%を出す痛みは確実で、見返りは不確実です。だから動く動機がなかった。回路を作ると、いま得している人が少し損をして、業界全体が長く得をする。 この「自分が少し損して、みんなが得をする」がいちばん通しにくいのは、実は役所より、民間の既得の側なのかもしれません。 回路がないツケは、いちばん立場の弱いところに流れます。映画制作の現場では、フリーランスのうち、映画の仕事による年収が300万円未満の人が6割強。6割以上が、製作側と契約書すら交わしていません(経済産業省「映画制作現場の実態調査」2020年)。 得する人、損する人 前回お渡しした物差しを、もう一度置きます。エンタメ支援など政策支援のニュースを見たら、「会議室のお金か、回路のお金か」で分けて見てください。 そこに、今回もう一目盛り足します。回路を作る話が出たら、「これに反対しているのは誰か」を見てください。役所とは限りません。回路は、いま会議室で得をしている人の取り分を、薄く広く動かす仕組みでもあります。だから、いちばん抵抗するのは、その席に座っている人だったりします。 作品を作る力なら、日本の民間はもう世界レベルで持っています。 足りないのは才能ではありません。稼いだお金が、薄く広く、現場まで流れて戻る「回路」です。そしてそれを、官も民も、まだ作れていないのが日本の現在地です。 では、その回路を、これから誰が、どうやって敷けばいいのか。次回、最終回で「選ぶから、流すへ」という具体を書きます。 朝日けけ。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit asahikeke.substack.com/subscribe

  5. Jul 22

    クールジャパンの540億円、本当の死因は「投資の失敗」ではない。

    2026年6月、クールジャパン機構の累積損失が540億円に達し、政府が廃止を含めた検討に入ったと報じられました。SNSは「だから言ったじゃないか」の大合唱です。目利きの失敗。税金の無駄。お役所仕事。わたしも、最初はそう思って読んでいました。 でも、決算と国会答弁の数字を並べ直していくと、この「目利きに失敗して溶かした」という物語が、半分しか合っていないことに気づいたんです。しかも残りの半分にこそ、日本のエンタメがこれから稼ぐための急所が埋まっていました。 本記事では、「540億円の本当の死因は何だったのか」という問いを、決算書の数字だけを頼りに解剖していきます。全3記事のシリーズでお届けします。今回はその1本目。ビジネスとプロデュース視点で解剖していくので、面白そうだと思ったら、ぜひフォローして続編も読んでください。 このsubstackでは「エンタメビジネス実況中継」と題して、エンタメやポップカルチャーについてビジネスとプロデューサー視点で発信しております。すこしでもこういった話題に興味があれば、ぜひ無料購読をよろしくお願いします。 本当の犯人は、投資そのものではない 先に、結論をお伝えします。 答えをシンプルに言えば、540億円のうち、下手な投資でスった金はごく一部でした。赤字の6割超は、案件を選ぶ人間を雇い続けた「箱の維持費」だったんです。 どういうことか、数字で見ていきます。 まず、亡くなった機構の履歴書を見る クールジャパン機構、正式名称は海外需要開拓支援機構。2013年に、日本の魅力を海外の需要につなげるために作られた官民ファンドです。出資金は1513億円で、そのうち政府のお金が1406億円。実に93%が国費でした(経済産業省資料、2026年4月時点)。20年の時限つきで、これまで83件・約2040億円を支援してきました。 その13年目の決算が、累積損失540億円。単年度だけで156億円の赤字。売上高は44億円で前年から88%も減りました。政府が立てた「累損426億円まで」という管理目標を、114億円も突き抜けています(日本経済新聞・時事通信、2026年6月24日)。 では、どんな案件で溶かしたのか。履歴を掘り起こすと、首をかしげたくなる名前が並びます。 インドネシアなどで日本の番組を流した衛星放送、WAKUWAKU JAPANに44億円(2015年)。Netflixに代表される配信の波に、衛星放送というモデルごと飲み込まれ、2022年に放送を終えました。オールジャパンを掲げたアニメ配信会社に10億円(2014年)。これもHuluやNetflixに歯が立たず、数年で撤退。マレーシアの百貨店に約9.7億円。現地の相場とかけ離れた値付けで空回りし、2018年に手放しています。 そして、とどめがSpiberでした。クモの糸に着想を得た人工タンパク質繊維のベンチャーに、2018年と2021年で合わせて140億円。機構最大級の出資です。2026年3月に私的整理へ進み、多額の減損になりました。540億円への転落の、最大の要因です(日本経済新聞ほか、2026年6月)。 バイオ繊維。百貨店。衛星放送。 ここで、多くの人と同じ疑問がわたしにも浮かびました。なぜ、これがクールジャパンなのか。「日本の魅力」という言葉は、便利すぎて、どんな案件にも化粧できてしまうんですよね。 ただ、ここまでは通説どおりの「筋の悪い投資リスト」です。話が変わるのは、この赤字の中身を割ったときでした。 赤字を3つに割ると、犯人の顔が変わる 2026年5月の参議院決算委員会。累積赤字383億円(2024年度末の時点)の内訳を問われて、経済産業省はこう答えています。 投資そのものの損益が、マイナス35億円。まだ売っていない資産の含み損の先行計上が、マイナス110億円。そして人件費や税金などの必要経費が、マイナス238億円(経産省・商務サービス政策統括調整官の答弁、2026年5月)。 読み違えようのない数字です。実際に投資でスった損は、35億円。 赤字の6割超は、投資の失敗ではなく、箱を維持するための経費でした。 設立からこの時点までのおよそ11年で、238億円。単純に割れば、年に20億円強です。ちなみに、後の回で触れる新制度が世界向けの大作1本に出せる補助の上限が15億円ですから、それを毎年1本ぶん以上、配る側を回すためだけに使っていた計算になります。 なぜ、配るだけでこんなにかかるのか。ここに、このシリーズの背骨があります。 会議室のお金、という考え方 機構は、人が案件を選んで投資していました。 世の中から候補を探してくる。財務や事業を審査する。条件を交渉する。投資を決める。投資した後は取締役を送って経営を見て、国内企業とのマッチングまで世話する。全部、人の手作業です。だから人を雇う必要がある。 機構の投資チームは、投資銀行やコンサル出身の人材が中心だったと報じられています。この層の人件費は、高い。それを13年ぶん、オフィスや税金と一緒に積み上げると、238億円になる。 この記事ではこれを「会議室のお金」と呼ぶことにしますね。 人が会議室に集まって、どの案件に張るかを一つずつ決めていくお金。この方式は、選ぶ人間の人件費という固定費を、必ず連れてきます。当たっても外れても、会議室の椅子には給料が発生する。 ここで、わたし自身の話を少しだけします。 わたしはこれまで、かれこれ15年くらいエンタメ業界にいます。国のお金が絡む案件の検討も、いくつか見てきました。そこで感じたことを一言でいうと、こうです。国のお金が入ると、会議室の空気は、悪くなるのではなく、慎重になって、そして遅くなる。受けるべきか、条件は何か、ヒアリングや調整、要件に企画を寄せるべきか。決められない理由だけが、テーブルの上に増えていくんですよね。みんなお金もらえるなら、もらいたいですからね。 その空気を13年ぶん維持した値段が、238億円だった。わたしにはそう読めました。 機構が眠っている間に、市場は勝手に伸びた もうひとつ、並べておきたい数字があります。 この同じ13年間に、日本のコンテンツの海外売上は、2012年の1.4兆円から2024年に約6.0兆円へ伸びました。4.3倍です(ヒューマンメディア「日本と世界のメディア×コンテンツ市場データベース2025」)。 牽引したのは皆さんご存知の通りアニメで、前年比26%増の約2.2兆円。いまや2023年時点で鉄鋼や半導体の輸出額を超え、自動車に次ぐ規模の輸出産業になっています(経済産業省「エンタメ・クリエイティブ産業戦略」2025年6月)。 機構が会議室で配った累計が、2040億円。市場のほうが自力で増やしたのが、4.6兆円。桁で言えば20倍以上の開きです。 もちろん、この成長が全部クールジャパン政策と無関係だった、とまでは言い切れません。配信の普及や円安の効果と、きれいには切り分けられないからです。 ここはわたしの見立てですが、少なくとも「会議室が日本のエンタメを海外に押し出した主役だった」とは、この比率からは読めないんですよね。市場は、会議室の助けを待たずに伸びていました。会議室はそのわきで、椅子の維持費だけを積み上げていたわけです。 エンタメ支援政策を見る物差し ここで、次のニュースから使える物差し一つ、お渡しします。 国のエンタメ支援のニュースを見たら、「これは、人が会議室で選んで配る金か。それとも、ルールで自動的に分配される金か」を分けて見てください。この2つは、同じ「支援」でも性質がまるで違います。片方は選ぶ人の固定費がつき、片方はつかない。クールジャパン機構は、前者の極端な形でした。 そう考えると、540億円に怒るのは、正しいと思います。ただ怒りの宛先は、下手な投資家ではなく、「会議室でしか配れない仕組み」そのものに向けたほうが、本質であると思います。 作品はこの13年、世界で愛され続けました。海外売上は6兆円まで伸びています。 溶けたのは、作品を作る力ではなく、作品を選ぼうとした会議室のほうでした。だとしたら、次に問うべきは「誰の投資が下手だったか」ではありません。「そもそも、なぜ日本は限られた人間が会議室で配る先を選んでいたのか」です。 その答えは、海外事例にありました。フランスでは、映画館の券売機が次の映画に出資しています。韓国も国を挙げて、音楽や映画に出資します。なぜ彼らは成功し、日本は失敗したのか。次回、その話をします。 このsubstackでは「エンタメビジネス実況中

  6. Jul 19

    アニメ『ワールド イズ ダンシング』が10倍おもしろくなる、10個の話。

    時の将軍が、12歳の少年の舞に夢中になった。いまから約650年前、京都での話です。少年の名は鬼夜叉。のちに能を大成させる世阿弥、その人です。 そしてこれは、2026年7月2日に放送が始まったTVアニメ『ワールド イズ ダンシング』の主人公でもあります。原作は三原和人さんが講談社「モーニング」で連載した同名漫画(全6巻)。第1話の放送直後から、「まるでアート作品のような」「作画がめっちゃ美麗」という感想が並びました。 正直に言うと、能というのは、いまの視聴者にとっていちばん縁遠い伝統芸能のひとつだと思います。わたし自身、世阿弥は「日本史で名前だけ習った人」でした。 ところが、この作品の裏側を掘ってみたら、想像と違いました。制作の裏話も、時代背景のトリビアも、たどっていくと最後はぜんぶ、世阿弥自身が600年前に書き残した言葉に戻っていくんです。 この記事では、その10個の話すを書いていきます。知ってから見ると、同じ映像が少し違って見えるはずです。 このsubstackでは「エンタメビジネス実況中継」と題して、エンタメやポップカルチャーについてビジネスとプロデューサー視点で発信しております。すこしでもこういった話題に興味があれば、ぜひ無料購読をよろしくお願いします。 1. 時の最高権力者が12歳の少年を推した まず、物語の入口になった事件からです。 1374年ごろ、京都の新熊野(いまくまの)神社で催された猿楽を、室町幕府三代将軍・足利義満が見物します。舞台に立っていたのが、観阿弥と、その息子の鬼夜叉。のちの世阿弥です。世阿弥は数え12歳ほど、義満もまだ10代でした。数え12歳は、いまでいえば小学生の年頃です。 義満はこの父子の芸に魅了され、以後、一座を手厚く庇護するようになります。それだけではありません。関白まで務めた当代一の文化人・二条良基は、少年に「藤若」という名を与え、自分の連歌の会に招いて絶賛しています。 時の最高権力者と、時の最高の文化人が、そろって一人の少年に夢中になった。いまの言葉で言えば、トランプ大統領がが推しを見つけてしまった状態です。 ジャンルが大きく育つ瞬間には、たいてい熱量のあるお金の出し手がいます。配信プラットフォームが惚れ込んだ作品に出す独占契約は、その現代版です。 能はその原型のような構図から始まっていて、アニメが描こうとしているのは、まさにこの直前、まだ何者でもない鬼夜叉の日々なんですよね。 2. 「能」は大衆娯楽で今で言う最新エンタメ 鬼夜叉たちがやっている芸能を、劇中の人たちは「能」とは呼んでいません。 彼らの芸は「猿楽(さるがく)」と呼ばれていました。世阿弥自身は著書で「申楽」という字も当てています。「能楽」という呼び名が定着するのは、なんと明治になってからです。1881年(明治14年)、存続の危機にあった猿楽を守るために華族たちが「能楽社」という組織を設立したとき、「猿」という字が穏当でないという意見から「能楽」へ改称されました。 つまり「能」というジャンル名は、あとから付いたものです。鬼夜叉たちに「伝統芸能をやっている」という意識はなくて、当時の大衆娯楽の覇権を、田楽や他の一座と奪い合っていました。今の時代で言うと、アーティストとしてグループ活動をしていた、もしくは2.5次元みたいな感覚に近いかも。 公式の発表資料も、この作品を「”猿楽”が最新エンターテイメントだった時代」の物語として紹介しています。この一行、さらっと書いてありますが、作品の見方を決める大事な一行だと思います。 わたしたちが「地味で静かな伝統」だと思っているものは、当時の最先端のエンタメで、その覇権争いの真ん中に、この少年はいたわけです。 3. 『風姿花伝』は、500年間ずっと秘密だった その世阿弥が後年に書いた『風姿花伝』は、日本最古の演劇論とされる書物です。約600年前、1400年ごろから書き継がれました。 中身を読むと、これがいわゆる芸術論ではないんです。観客の分析、年齢別のキャリア設計、ライバル一座との勝負のしかた。書いてあるのは、芸能で勝ち続けるための実践的な戦略です。現代で言うと、ビジネス書みたいなものでしょうか。 そして、ここが今回いちばん驚いたところなのですが、この本は書かれてから約500年間、その存在すらほとんど知られていませんでした。一子相伝の秘伝書として、ごく限られた人だけが読めるものだったからです。 一般に公開されたのは1909年(明治42年)。前年に古書店から見つかった伝書を、歴史学者の吉田東伍が校訂・刊行したことで、はじめて世に出ました。1400年ごろに書かれた本ですから、ほんとうに500年です。しかもその原本は、のちの関東大震災で焼けています。 わたしは長い間大きなエンタメ企業に勤めていましたが、企画書や戦略資料というものは、基本的に外へ出ません。競合に手の内を見せないためです。大事なものほど機密性が高いですからね。だから、これまで山ほど見てきた優れた社内資料のほとんどは、いまでも社外の誰にも読めない場所に、社内でも限られた人しかアクセスできません。 そう考えると、600年後に読まれている社外秘の戦略書のすごさを想像できますよね。そんなもの、わたしは世阿弥のほかに知りません。 4. 「初心忘るべからず」は、出典も意味も、思っていたものと違う 『風姿花伝』の話をしたので、有名なあの言葉の話をします。 「初心忘るべからず」。 世阿弥の言葉だと知っている人は多いと思います。 ただ、出典は『風姿花伝』ではありません。世阿弥が晩年に完成させた別の伝書『花鏡(かきょう)』の、結びの部分にあります。原文はこうです。 しかれば、当流に、万能一徳の一句あり。初心不可忘。この句、三箇条の口伝あり。是非初心不可忘。時々初心不可忘。老後初心不可忘。 大意を取ると、 「わたしたちの流派には、すべてに通じるひとつの教えがある。初心を忘れてはならない。これには3つの口伝がある。若いころの初心。人生の段階ごとの初心。そして、老後の初心」 となります。 ポイントは、ここでの「初心」が、「始めたころの新鮮な気持ち」ではないことです。世阿弥の言う初心は、「未熟だったころの自分の芸」を指します。下手だった時代の記憶を消すな、それが、いまの芸の高さを測る物差しになるから。歳を取ったら取ったで、老いた身で初めて学ぶ芸があり、それもまた初心だから。つまりこれは、心構えの話ではなく、一生かけて芸を更新し続けるための技術論なんです。 ここで、監督の言葉を見てほしいんです。黒柳トシマサ監督は発表時のコメントで、才能も勲章もないまま猿楽に挑み続ける鬼夜叉の日々に触れて、その姿が「自分たちの中にある”初心”にも繋がっている」と語っています。 アニメを作る人たちが、初心の物語として世阿弥の少年時代を選ぶ。世阿弥が読んだら、たぶんいちばん喜ぶ企画書だと思うんですよね。 5. 「秘すれば花」は、サプライズ設計の理論だった 世阿弥の言葉を、もうひとつだけ。『風姿花伝』の最終章「別紙口伝」に、こんな一節があります。 秘する花を知ること。秘すれば花なり、秘せずは花なるべからず、となり。この分け目を知ること、肝要の花なり。 大意は 「秘密にするから花になる。秘密にしなければ、花にはなりえない。この分かれ目を知ることが、いちばん大事な花である」。 これだけ聞くと、奥ゆかしさの美学のように聞こえます。でも同じ章で世阿弥が続けているのは、もっと実践的な話です。珍しい芸も、「これから珍しいことをやります」と予告した瞬間に、観客の心の中で珍しくなくなってしまう。何も知らせず、思いもよらないところで出すからこそ、人は驚き、心を動かされる。その「思いもよらない感動」こそが花だ、と世阿弥は言っています。 観客の期待値をどう管理するか。驚きをどこに仕込むか。600年前の秘伝書に書いてあったのは、いまの言葉で言うサプライズ設計の理論でした。 6. 第1話で作画が「崩れた」のは、その実演に見える なぜサプライズの話をしたかというと、第1話にこういうシーンがあるからです。 第1話は、整った美しい画づくりで淡々と進みます。ところが、白拍子(しらびょうし。男装で歌い舞った女性の芸能者です)が舞い始めた瞬間、「整った

  7. Jul 16

    AIが音楽を量産する時代に、Twitchが15,000人のDJに金を払う理由。

    This is a free preview of a paid episode. To hear more, visit asahikeke.substack.com AIに「夏の終わりみたいな曲を」と頼めば、数秒で一曲できあがる時代になりました。 メロディも、歌詞も、それっぽい歌声も。ボタンひとつで、いくらでも。 ふつうに考えれば、音楽の値段は下がる一方のはずです。実際、ストリーミングの数字を見ると、そのとおりに見えます。Spotifyの1再生は、ざっくり0.4円から0.7円くらい。これはSpotifyが公式に決めている単価ではなくて、いろんな試算からの概算なんですが、桁としてはそのあたりです。年に10万ドル、日本円で約1,450万円以上を稼いだアーティストは、Spotify全体でたった12,500組。何百万人が曲を出している世界での、12,500組です。 曲は、音楽を聴く行為自体はコピーされる、タダに近づいている。そしてAIは、その制作も安くなっていくという流れをもう一段、加速させます。 ところが、ここにひとつ、つじつまの合わない動きがあるんです。 そのタダになっていくはずの音楽の世界で、世界最大級の配信プラットフォームが、わざわざ大金を払って「生身の人間」を囲い込み始めました。 Twitchです。 この記事では、「AIが曲を無限に作れる時代に、なぜプラットフォームは”人間”にお金を払い始めたのか」という一点を、プロデューサーの視点で、お金の流れから読み解いていきます。 このsubstackでは「エンタメビジネス実況中継」と題して、エンタメやポップカルチャーについてビジネスとプロデューサー視点で発信しております。すこしでもこういった話題に興味があれば、ぜひ無料購読をよろしくお願いします。 タダの曲が氾濫する世界で、Twitchは「人間」を買った きっかけのニュースは、お祭りでした。 2026年6月26日、TwitchとSoundCloudが組んで、12時間ぶっ通しのDJ配信イベント「SoundCloud Sessions」をやったんです。世界中のDJが順番にプレイして、最後はニューヨークのオフィスでダンスパーティー。「TwitchとSoundCloudが音楽配信で新市場へ」と、いくつかのメディアが報じました。 このイベント自体は、お祭りでした。一方で、著作権の処理や、収益の分け方を新しく決めた提携ではありません。お祭りができたのは、その下にもう、お金と権利の仕組みが敷かれていたからです。 AIが数秒で曲を吐き出すいま、「録音された音楽」の希少さは、たしかに溶けています。皮肉な話で、SoundCloud自身、2024年に利用規約へこっそりAI学習の条項を入れて炎上した当事者でした。批判を受けて、最終的には「アーティストの許可(オプトイン)がなければAIに学習させない」と方針を直しています。CEOのエリヤ・セトン(Eliah Seton)さんは と書きました。 曲そのものが、どんどんコモディティ(誰でも安く手に入る、ありふれたもの)になっていく。その実感は、間違っていないんです。 なのに、Twitchはそこで、逆の方向に大金を動かしました。 2026年のお祭りの、2年前に起きていたこと さかのぼると、Twitchと音楽の関係は、ずっと険悪でした。 Twitch自身の発表によると、2020年5月より前は、音楽の著作権侵害の通知は「年に50件未満」でした。それが2020年の春から、レコード会社側から「毎週、何千件」も届くようになります。 その99%超が、配信のうしろでたまたま流れていた曲への指摘でした。同じ年の10月には、過去の配信クリップが大量に削除される騒ぎになります。 Twitchは慌てて、権利処理済みの音楽ライブラリ「Soundtrack by Twitch」を2020年に立ち上げますが、あまり使われず、2023年に閉じました。2021年には音楽出版社の団体とも取り決めを結びましたが、それは「曲を自由に使っていい」という包括的な許諾ではなく、もめごとを少し穏便にするための合意にとどまりました。要するに、長いあいだ「配信で好きな曲をかける」は、グレーで危ない行為だったんです。 その膠着を、お金で解いたのが2024年6月でした。 Twitchは、ユニバーサル、ソニー、ワーナーという三大レコード会社と、インディーをまとめるMerlinまで巻き込んで、ライセンス契約を結びます。「Twitch DJ Program」です。これでDJは、配信で大手の楽曲を堂々とかけられるようになりました。 ここで、わたしのプロデューサーとしての職業病が顔を出します。こういうニュースは、「誰がいくら払い、誰が権利を持ち、誰が得をするのか」というお金の流れで読むと、景色が変わるんです。 このDJ Programのお金の流れは、こうなっています。 権利を持っているのは、レコード会社です。曲をかけて稼ぐDJは、その対価としてロイヤリティ(使用料)を払う必要がある。ここまでは、当たり前です。面白いのはここからで、Twitchはそのロイヤリティを、DJに全部払わせていません。報道によると、Twitchは「大半のDJが払うべき使用料の50%を肩代わり」し、最初の1年はさらに多めに負担する、という設計にしました。収益化していないDJは、そもそも払わなくていい。 つまりTwitchは、自腹を切って、DJが音楽を流すコストを下げにいったんです。 なぜ、そんなことをするのか。同じ報道の中で、Twitch側は「DJ配信者の数が4倍に増え、約15,000人が収益化している」と語っています。CEOのダン・クランシー(Dan Clancy)さんは、こう言っています。 「レーベルとお金を分け合うことになる。タダではないんだ」 と。 タダじゃないと知りながら、お金を払って囲ったもの。それは、録音された曲ではありません。「いま、この瞬間に、生身の人間が曲を選んで、つないでいく」という行為のほうです。 AIに頼めば数秒で曲が手に入る時代に、Spotify や Apple Music ではどんな音楽も聴ける時代に、世界最大級の配信プラットフォームは、「曲」ではなく「曲を選ぶ人間」を、お金を払って自社に固定しにきた。これが、お祭りの2年前に起きていた、本当の構造変化です。 コピーできるものは安くなり、コピーできないものの価値は上がっていく 以前わたしは、音楽の値段は「コピーできるか、できないか」で二極化していく、という記事を書きました。再生やデータみたいにコピーできるものは限りなく安く、ライブや「今夜」みたいにコピーできないものは史上最高値を更新していく、という話です。 その地図は、いまも正しいと思っています。ただ、その地図をもう一歩アップデートすると、 これまで「コピーできる」は、「すでにある曲を、コストゼロで複製できる」という意味でした。AIが変えるのは、その手前です。これからは「ありそうな曲を、ゼロから無限に生成できる」になる。複製がタダになっただけでなく、制作そのものがタダに近づくんです。 そうなると、希少なものが、もう一段ずれます。 曲が無限なら、価値は「どの曲か」ではなくなる。「その無限の中から、誰が、何を、いつ、どこで、どう選ぶか」に移る。素材がタダで無限に湧くほど、それを選び、並べ、文脈をつける人間の手つきだけが、希少になっていくんです。 DJという仕事は、まさにそれでした。DJは、曲を作る人ではありません。膨大な曲の海から「これ」を選び、この順番で、この夜の、この客に向けてつないでいく人です。言ってしまえば、DJとは、音楽を編集する人間のことなんですよね。 Twitchが2024年に、レコード会社にお金を払ってまで囲おうとしたのは、この「編集する人間」でした。AIが素材を無限にする未来を、おそらく一番ちゃんと見ているのは、現場でお金を動かしているプラットフォームのほうなんです。 ここまでの内容を踏まえて、本記事の論旨をまとめます。プラットフォームが録音より高く買っているのは、「曲」でも、ただの「ライブ」でもありません。 では、いちばん高く買われているものの正体とは、何なのか。それは、

  8. Jul 14

    ゲームの「宣伝アニメ」で終わるものと、世界観を拡張してしまう作品の差。

    This is a free preview of a paid episode. To hear more, visit asahikeke.substack.com ゲームを原作にしたアニメには、当然ながらプロモーションとしての役割があります。ゲームの世界を映像で見せて、新しいプレイヤーに届ける。IPの拡張としてまっとうな設計です。 『サイバーパンク エッジランナーズ』は、その宣伝としての役割を果たしたうえで、独立したアニメ作品としても成立しました。両方を同時にやれた稀有な事例です。 Season 2の公開がこの秋に控えています。公開を前に、制作陣のインタビューや制作ドキュメントを改めて見直していたのですが、ずっと引っかかっていた疑問がようやく腑に落ちました。 なぜこのアニメは「ゲームの宣伝」で終わらなかったのか。その理由は「クオリティが高かったから」ではなく、IPの渡し方の設計にあったという話です。 エッジランナーズという作品 「サイバーパンク2077」というゲームがあります。ポーランドのゲーム会社CD Projekt Red(以下CDPR)が開発した、サイバーパンク世界を舞台にしたオープンワールドRPGです。2020年12月に発売されました。 CDPRはこのゲームのIPを使って、日本のアニメスタジオStudio Triggerと組みます。Triggerは「キルラキル」「プロメア」などで知られるスタジオで、独自の作画と演出に強みがあるんですよね。 2022年9月、Netflixで全10話のアニメ「サイバーパンク・エッジランナーズ」が配信されました。ゲームと同じ「ナイトシティ」を舞台にしながら、ゲーム本編とはまったく別のオリジナルストーリーです。 結果として、アニメの放映後にゲームのSteam同時接続プレイヤー数はおよそ7倍に跳ね上がりました。CDPRの公式発表によれば、1日100万人以上がプレイヤーとして戻ってきたとされています。Crunchyrollのアニメアワード2023では最優秀作品賞を受賞。プロモーションとしてゲームにプレイヤーを呼び戻しながら、アニメとしても世界中で評価された。この「両方」が起きたことが、エッジランナーズの本質です。 なぜ「宣伝」で終わらなかったか ひとつ、見落とされがちな事実があります。 このアニメの企画発表は2020年6月25日のNight City Wire。ゲームの発売は2020年12月です。つまりアニメの企画は、ゲーム発売より前から動いていました。「ゲームが話題になったからアニメも作ろう」ではなく、最初からIPの別の表現として設計されていたということです。 そしてわたしが感じたのは、媒体選択のセンスです。「サイバーパンク」というSFジャンルは、「攻殻機動隊」や「AKIRA」を通じてアニメに深い土壌があります。にもかかわらず、この世界観を正面から再現したゲームは意外と少なかった。CP2077がそれをやり、さらにアニメで拡張した。サイバーパンクのファンがもともといる場所にIPを届けたわけです。 CDPRのアプローチで特徴的だったのは、トリガーに大きな裁量を渡したことです。 制作陣のインタビューによれば、今石洋之監督は制作に入る前にゲームの開発版をプレイし、サイバーパンクの世界を「設定資料集」ではなく体感として受け取っています。CDPRは世界観やIP設定を共有しつつ、ストーリー、キャラクター、演出の自由度をトリガーに渡しました。 その結果、CDPRだけでは生み出せなかった視点で世界観が拡張されました。 ゲーム本編が「選択と自由」を軸にしたRPG体験だったのに対し、アニメは一人の少年の暴走と喪失という、まったく異なる感情の層を持つ物語になっています。主人公デイビッドは身体改造に溺れていく過程で人間性を失っていく。Triggerの得意とする作画とテンポで描かれたその物語は、ゲームとは別の角度からサイバーパンクの世界を照らしました。 同じナイトシティなのに、体験がまったく違う。その落差こそが、アニメを観た人がゲームに戻ったとき、街を見る目を変えたのだと思うんですよね。ゲームの中で通り過ぎていた路地裏に、デイビッドの影が見える。 委ねたから、強くなった 作品の権利を自分たちだけで握り込まず、外部のクリエイターに渡して、その作家性を活かす。言葉にすると簡単ですが、実行は簡単ではありません。 「委ねる」と「丸投げ」は違います。 わたしもIPを外部のクリエイターに渡す判断をしたことがありますが、何を握って何を渡すかの設計が甘いと、世界観が崩れます。CDPRとトリガーの間には、20ヶ月以上にわたる共同でのストーリー開発がありました。世界観の整合性を保ちながら、表現の自由度を確保する。その両立の設計があったからこそ、「宣伝アニメ」ではなく「作品」が生まれた。 ここまでが、Edgerunnersに「何が起きたか」の話です。 プロデュースの目でもう一歩だけ掘ります。CDPRは具体的に何を握って、何を渡したのか。わたしはここに、プロデュースの基本設計が凝縮されていると思っています。整理すると、この設計は、

About

エンタメ業界で15年、漫画・アニメ・ゲーム・キャラクターIPの新規事業を立ち上げてきた朝日けけが、いまそこで起きているビジネスの動きを毎回1つピックアップ。ひとりで、ときにはゲストとともに30分語り続けます。分析でも解説でもない、「実況中継」です。 asahikeke.substack.com