Webコンサルタント中山陽平の「中小企業を強くするWebマーケティングラジオ」

ラウンドナップ・Webコンサルティング 代表 中山陽平

WebマーケティングやWeb活用で手が止まってしまったり、悩んでいる中小・小規模事業者の皆様へ、根本的なウェブに対する考え方・捉え方をお届け。

  1. 1d ago

    第605回:Google検索の将来に、中小企業はどう備える?顧客理解を今から積み上げる理由

    Podcastを今すぐここで聞く ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。今回は、Googleが目指しているものを踏まえて、企業は何を準備すればよいのかをお話しします。目先の検索対策も必要ですが、5年、10年という長い目で、今から積み上げるものを考えておきたいんですね。 GEO(Generative Engine Optimization:生成エンジン最適化)やLLMO(Large Language Model Optimization:大規模言語モデル最適化)など、新しい対策の話が次々に出てきます。短期的に効く施策を否定するつもりはありません。ただ、今のAI(Artificial Intelligence:人工知能)オーバービューやAIモードへの対応を続ければ、そのまま将来にも対応できるのか。現在の機能への最適化と、長期的な備えを分けて考える必要があると思っています。 検索結果が対話型AIになる、という理解だけで止まらない 私も現場で、Search Consoleの表示回数が大きく増える一方、CTR(Click Through Rate:クリック率)が大きく下がっていると感じます。「AIオーバービューのせいだ」という話もよく見かけます。ただ、以前もお話ししたように、数字をどう読むかは注意が必要です。目の前の変化だけを見て、Googleの方向まで決めつけない方がよいと感じています。 従来の青いリンクが並ぶ検索結果が、Geminiと会話する画面へ置き換わる。そういうイメージを持つ方も多いと思います。確かに見た目には分かりやすい変化ですが、Googleが長年解決しようとしている問題は、それだけではないんですね。 Googleは、多くの人にサービスを使ってもらい、広告を含めて事業を成り立たせています。Google Cloudのように少し事情の違う事業もありますが、検索では使ってもらえることが大前提です。Yahoo!のディレクトリ型検索やgooを使っていた頃から振り返ると、Googleは検索を便利にし続けてきました。私は、その流れを利用者が情報を探すときの負担を減らしてきた歴史として見ています。 検索は、実は難しい作業です。まず自分が知りたいことを整理し、検索する言葉を選び、うまく出てこなければ言葉を変える。そもそも何を知りたいのか、本人もうまく言語化できないことがあります。私たちもお客さんと話していて、本人がまだ言葉にできていない困り事に気づくことがありますよね。 私がセミナーでもよくお話しするのは、「探すこと自体は、別に楽しくないですよね」ということです。買う前にいくつもの会社や商品を比較するとしても、比較作業をしたくて始めたわけではありません。必要なものを見つけるまでの手間は、できれば少ない方がいい。Googleは、そこを減らそうとしているのだと思います。 毎日の順位変動を、長期方針の根拠にしない 毎日のように「順位が動いた」「今日は不安定だ」というニュースが出ます。毎日そう言っているなら、それを聞いて何を判断すればいいのか、と思うこともあります。Googleはさまざまなテストをしているので、短い期間の変化に合わせて、毎回方針を変えていたら振り回されます。 参照:Google:検索のテストと評価 短期施策は必要です。それでも、新しい対策を入れたらまた元に戻った、ということを繰り返していては、お金も時間もかかります。ニュースやセミナーで紹介された施策に対して、自社がそこへお金をかける価値はあるのかを、意思決定する方には考えていただきたいですね。 Googleの発表を、利用者の不便から読み直す AIは、OpenAIが登場したところから始まったものではありません。Googleも以前から、言葉や画像などを理解する技術に取り組んできました。今の機能を最終形だと考えるより、昔から解決しようとしてきた問題の途中にあると見ると、捉え方が変わります。 BERTは、検索する言葉を選ぶ難しさに向き合っていた 2019年にGoogleが検索への導入を発表したBERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)は、文中の言葉を前後の文脈から理解する技術です。その説明では、検索する人が適切な言葉を知っているとは限らず、検索の仕方そのものに迷うこともある、という問題が挙げられています。知らないことを調べたいのに、調べるための言葉を知っていなければならないわけです。 参照:Google:BERTによる検索の言語理解 これは、仕事でも実感します。私が初めて関わる業界について調べるとき、お客さんに「どの本を読んだらよいですか」と聞くことがあります。言葉を知らないと、自分で検索しても調べようがないんですよ。教えてもらった本を10冊ぐらい読んでから入ることもありました。最近は初めての業界に出会う機会も少なくなりましたが、今でもあります。 Googleの発表を読み返すと、人が検索エンジンに合わせて、不自然な単語の組み合わせを入力していること自体を問題にしているんですね。2019年から2026年まで、もう約7年です。それでも、人間側の検索の仕方が一気に変わったわけではありません。技術が変わることと、人の行動が変わることには時間差があります。 MUMは、何度も調べ直す負担を減らそうとしていた 2021年のMUM(Multitask Unified Model)の発表には、以前登った山とは別に、今度は富士山へ登りたいという例が出てきます。準備の違いを知るには、標高、気温、難しさ、必要な装備などを自分で分けて調べなければなりません。登山に詳しい人なら、一つ質問しただけで、その事情を踏まえて答えてくれるでしょう。人が質問を細かく分解して調べる負担を、検索側で引き受けようとしていたのだと思います。 当時のGoogleの説明では、こうした複雑な用事を済ませるために、平均8回の検索が行われていました。これを減らしたいという話です。今のAI検索に通じる問題意識が、2021年の時点ですでに示されていたんですね。 参照:Google:MUMの発表と登山の例 編集注:収録では、この時期を「AIはなかった」と表現していますが、MUM自体がAI技術です。ここでは、当時から現在のAI検索につながる課題に取り組んでいた、という話の流れを残し、この点を訂正しています。 Google レンズやマルチサーチは、言語化しなくても探せる入口 服の形や素材を見て「こういうものが欲しい」と思っても、うまく言葉にできないことがあります。Google レンズなら画像を使えるし、画像に「この色が欲しい」といった言葉を足すマルチサーチもあります。全部を文章や単語へ変換しなくても、知りたいことを伝えられる方向です。 参照:Google:画像と文字を組み合わせるマルチサーチ 自然で直感的な方法で、身の回りのものを理解する。Googleの説明には、そういう考え方が出てきます。キーワードをうまく選べる人だけが検索を使いこなせる状態から、その人が自然に伝えたことを理解できる状態へ近づけたいのだと私は受け取っています。 AIモードでは、検索の組み立ても任せられる AIモードの「クエリ・ファンアウト」は、一つの質問を関連するテーマへ分け、複数の検索を行って情報を集める仕組みです。人が自分で検索語を変えながら調べていた部分を、裏側で行う。利用者の意図をくみ取って、必要な調査を組み立てるという流れですね。 参照:Google:AIモードとクエリ・ファンアウト ここは、LLM(Large Language Model:大規模言語モデル)そのものが持っている機能と、混ぜない方がよいと思います。モデルを使って、どう検索を分解し、調べ、まとめるかというアプリケーション側の作りがあります。AIだから自然にそうなるのではなく、その目的に合わせて仕組みを作っているわけです。 さらに、詳しく調べたレポートを作るDeep Searchや、カメラで見せながら話せるSearch Liveのような方向もあります。調べるための手間を任せたり、自分が見ているものを相手にも見てもらったりする。私は、検索が、その場で相談に乗ってくれる相手に近づいていると感じます。 チケットを探すといった作業まで手伝う、エージェント的な機能も紹介されています。情報を見つけるだけでなく、その先の用事へ進んでいくわけです。利用者が目的を達成するまでの面倒を減らすという見方をすると、これらの動きはつながります。 参照:Google:Deep Search、Search Live、チケット探しを支援する機能の発表 編集注:上の機能は、Googleが2025年5月に紹介した内容を参照しています。発表内容と、収録時点での提供範囲は同じとは限りません。チ

  2. 5d ago

    第604回:Google SAFEとは?AIをコンテンツ作成に使う際に抑えるべきGoogleの動きとは

    Podcastを今すぐここで聞く ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。今回は、Googleが公開したSAFE(Scaled Abuse Forensics Examiner)という研究を通じて、自社や外注先が、コンテンツをどう作っているか確かめておきたいという話をします。 自分たちでスパムをやっているつもりはなくても、外注先に頼んだ仕事が、実はそうなっていることがあります。新しいお客様にお話を伺うと、「費用も高くないし、効果があるという営業を受けたので、任せたままなんです。内容はよく分かっていません」と言われることがあるんですね。知らないうちに、問題のあるやり方を続けているかもしれない。今回は、その点も気にしていただきたいと思っています。 AI(Artificial Intelligence:人工知能)を使えば、記事や動画を大量に作ることは本当にできてしまいます。作るだけなら簡単ですが、それが負債になり、最悪の場合、Googleからの流入を得られなくなることもあります。今やっていることや、これから受ける営業をどう判断するか。そのために、Googleが何を調べようとしているのかを見ていきます。 SAFEの研究を、Google検索への導入発表と受け取らない 話のきっかけは、2026年9月25日にSearch Engine Journalが掲載した記事です。歴史のあるSEO(Search Engine Optimization:検索エンジン最適化)関連の媒体ですね。Google Researchで公開されたSAFEが、Google検索のスパムアップデートにも関係しているのではないかと取り上げていました。 参照:Search Engine Journal:Google Has Deployed A New AI Spam Detector Called SAFE ただ、論文で具体的に扱っているのは、YouTubeチャンネルを想定した動画やチャンネル群の不正調査です。この論文から、SAFEがGoogle検索で使われているとは判断できません。2026年9月30日の時点で、9月のスパムアップデートにSAFEが入ったという公式発表も、私は確認していません。ここを拡大解釈した営業もありそうなので、先に区別しておきたいところです。 参照:Google Research:SAFEの研究紹介 論文には「early deployment results」と、初期導入の結果を示す記述があります。ただし、YouTubeの本番で使われているか、使われているならどこまでかは、私には分かりません。内容を見ると、使われていてもおかしくないとは感じますが、Google検索に新しいアルゴリズムが加わったという話として受け取らないでください。 参照:GoogleのSAFE論文:Abstract(1ページ目) 私自身は、Web検索でも同じ方向に進むだろうと思っています。ただ、それは私の見方です。生成AIによって変わったスパムを、Googleがどう見つけようとしているのか。その方向を知り、今のうちに気をつけたいことを考えるための研究として読んでいただければと思います。 動画の中身だけでなく、投稿の仕方やつながりも調べる SAFEは、大量に作られたAIコンテンツの中から、組織的な不正をAIで調査する仕組みです。フォレンジック調査という言葉を聞いたことがある方もいるかもしれません。証拠を集めて調べる、というイメージですね。一つひとつのコンテンツを見るだけでは分かりにくい不正も、周辺の情報と合わせて調べます。 従来のコンテンツ評価というと、まずは中身が低品質か、高品質かという話を思い浮かべますよね。パンダアップデートなど、懐かしい名前です。E-E-A-T(Experience, Expertise, Authoritativeness, Trustworthiness:経験・専門性・権威性・信頼性)も、コンテンツの品質を考えるときの観点です。ペンギンアップデートでは、悪質なリンクやプライベートネットワークも問題になりました。内容に加え、リンクなどの関係も見てきたわけです。 参照:Google検索セントラル:E-E-A-Tと品質評価ガイドライン/Google検索ランキングシステムのご紹介:Panda・Penguin 生成AIが普及して、スパムの作り方も変わりました。YouTubeで同じテーマの台本を作り、一定の形式で動画を大量に作る。「そのうち1本でも当たれば、それなりの収益になる」という発想ですね。内容はほぼ同じでも、文章や映像は少しずつ違う。地域ごとの別バージョンを作ることもあります。ここで言うのは、自動吹き替えとは別の話です。まったく同じもののコピーではないので、中身だけでは見つけにくいんですね。 それでも、投稿する量やタイミング、使われるアカウントまで見ると、不自然さが分かることがあります。人間なら「このアカウントと、あのアカウントは怪しいぞ」と気づけても、一つずつ大量に調べるのは大変です。そこで、人間が行う不正調査を、AIで大規模に行おうというのがSAFEの考え方です。 参照:GoogleのSAFE論文:Introduction(1ページ目) ですから、SAFEを「この動画はAIで作られたか」と調べるだけのシステムと捉えると、少しずれます。どんな内容を、どんな関係にある投稿者が、どう配信しているかまで含めて調べる。コンテンツの中身に加えて、作り方や配信の仕方にも目を向けた仕組みだと考えてください。 AIを使うこと自体が悪いわけではありません。今の時代、AIがまったく関わらずに作る方が難しいのでは、とも思います。Googleが問題にしているのは、価値の乏しいものを大量に作り、検索順位や露出を無理に操作しようとすることです。 参照:Google検索セントラル:AI生成コンテンツに関するガイダンス SAFEの4つの担当から、何を見ているかを知る 論文では、調査を大きく4つのエージェントに分けています。内容・行動・関係性を調べる3つの担当と、それをまとめる担当がいると考えると分かりやすいと思います。 内容の担当は、既知の違反や見逃されやすい違反を調べる Content Understanding Agentは、動画や文章の中身を調べます。既知のポリシー違反に加え、従来の検出方法をすり抜けるような微妙な違反も分析する担当です。特定の違反を見分けるよう調整した大規模言語モデルと、少数の事例から新しいパターンを判断する方法を組み合わせています。 参照:GoogleのSAFE論文:Content Understanding Agent(2ページ目) アンチウイルスソフトに近いイメージですかね。既存のパターンも調べながら、新しいものにもできるだけ早く対応する。私には、これまでの検出を続けながら、日々改善している部分にも見えます。 行動の担当は、投稿の集中や共通する環境を見る Behavior Understanding Agentは、「何を投稿したか」ではなく、どう投稿しているかを調べる担当です。例えば、次のような情報を見ます。 同じタイミングに投稿が集中しているか。 短時間に大量公開しているか。 異なるアカウントで、端末の環境に共通点があるか。 通信環境などに不自然な共通点があるか。 参照:GoogleのSAFE論文:Behavior Understanding Agent(2ページ目) 論文には、複数のチャンネルで同じOS(Operating System:基本ソフト)のバージョンが使われ、同じ5秒間に投稿が集中する、という例があります。投稿のタイミングと環境を組み合わせて、不自然な活動を調べるわけです。 参照:GoogleのSAFE論文:OSと投稿時間の例(2ページ目) 意図してやっている人は、自分で分かっているのでしょう。ただ、そういうところへ気づかず外注していたり、自社でも「これから動画をやるぞ」と一気に公開したりすると、似た状態になってしまうかもしれません。相当な量の話だとは思いますが、誤検知される可能性もあるのでは、と私は気にしています。自然なやり方で進めた方がいいと思います。 関係性の担当は、チャンネル同士のつながりを調べる Channel Cluster Understanding Agentは、一つずつのチャンネルに加えて、アカウント同士の関係を調べます。スパムネットワーク全体を把握しようとする担当です。 参照:GoogleのSAFE論文:Channel Cluster Understanding Agent(2〜3ページ目) 投稿内容やタグ付けなどを見て、「このアカウントと、あのアカウントは似ているぞ。実は同じところが動かしているのでは」と考えるわけですね。アカウント間のつながりから、全体を調べるイメージです。 これは、SEOで以前から扱ってきたプライベートネットワークなどの話にも似ています。AIで調査が強化されているのだろうな、と感じます。ただ、最近のスパムアップデートの頻度に、どのくらい影響しているかは分かりません。仮に使われていたとしても、まだ一部なのではという気はしますが、そこも私の推測です。 Root Agentは、3つの担当の評価をま

  3. Sep 27

    第603回:地方自治体のAI研修の現在と、押さえておきたい一つの事例紹介

    Podcastを今すぐここで聞く ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。今回は、自治体が行っているAI(Artificial Intelligence、人工知能)の支援と、福岡県北九州市の訪問看護会社の事例をご紹介します。「自社でもAIを使いたいけれど、どう始めればよいか」と考えている中小企業の方へ、研修を受ける入口と、会社の中で使ってもらうまでの話をお伝えできればと思います。 何から始めるか迷っているなら、自治体の研修に触れてみる うちはAI支援だけを行う会社ではありません。ただ、Webの仕事をするうえでもAIを避けて通る理由はないので、一緒にお伝えしています。その中で感じるのは、国や自治体の力の入れ方の強さです。Webサイトが増えていった2000年代前半にもセミナーはいろいろありましたが、今はそれ以上ではないかと思うくらいですね。 無料の説明会や支援、補助金など、全国のいろいろなところで取り組みがあると感じます。少し前は、議事録を取る、文章を直すといった、比較的やさしい内容が多い印象でした。ところが今は、実際に業務を自動化するところまで扱うものが出てきています。 例えば、今回見た千葉市の事業者向けセミナーです。ノートパソコンを持参し、Claude Coworkを実際に操作して、複雑な作業手順を見えるようにする。そこから業務の自動化につなげる内容です。市内事業者が対象で、参加費は無料。企業規模による制限は案内には示されていません。「生成AIとは何か」を聞くだけでは終わらない内容なんですね。 参照:千葉市:事業者向け生成AIセミナー 2026年10月27日に開催される案内で、市は「社員5人分の働きを明日から1人で実現」と、かなり強い表現を使っています。実際に参加枠がまだ空いているかは分かりませんが、千葉市の方は確認してみてはいかがでしょうか。こうした内容が出てくるくらい、風向きが変わってきたと感じます。 参照:千葉市:開催日・対象・申込先の案内 私の地元の新座市でもAI関連の取り組みは見かけますし、東京はもっと力が入っていると感じます。「どうしよう、何から始めたらいいのだろう」という方は、一度、こうした場に触れてみるとよいと思います。あるテーマを知りたければ本を2冊読むといわれるのと同じで、いくつか受けて、自分たちに響くものから試す。それでもよいのではないでしょうか。 一般的な使い方を教えるだけなら、民間は厳しくなると思う 支援する側から見ると、正直、一般的なAIの使い方を教えるだけの会社には、この先、勝ち目がないのではないかと思います。公的な支援のレベルが上がり、しかも無料ですから。行政が予算を組み、事業者への支援として進めているところへ、同じ内容で入っていくのは厳しいでしょう。 もちろん、導入するシステムを実際に組める、その業界について深い知見がある、すでにお客様との関係ができていて社内に入れる、といった条件があれば話は違います。研修で知ったことを、会社の仕事として動かす部分には、民間の役割があります。経営計画でもそうですが、計画を実行するところは、専門家派遣などを通じて民間へつながる流れがありますよね。 そこにつながっている会社には、事業の機会があるのだと思います。ただ、そうした関係もないところから、「自分たちはAIを少し使えるから、支援事業を始めよう」と考えるのは、結構危ないのではないかと感じています。支援を受ける側にも、支援を仕事にする側にも、今の状況を見ておいてほしいですね。 ツールを入れる目的を、働く人の方へ向け直す 自社でどう使うかを考えるうえで、面白かったのが、J-Net21に掲載された北九州市の訪問看護会社、プーラビダ株式会社の事例です。単にツールを入れるのではなく、従業員に気持ちよく、質の高い仕事をしてもらうために使う。そのように目的を捉え直した話として、参考になると思いました。 参照:J-Net21:プーラビダ株式会社の取組事例 訪問看護の人手不足という背景もあったようですが、それ以上に気になったのが、会社の組織の問題です。同社では、社員が40人規模に増える中で、社長、管理職、現場という階層の間で意思疎通が難しくなっていたそうです。会社が目指しているものと、現場の人が欲しいものがずれてしまう。コロナ禍も重なり、離職率は83.3%に達したと紹介されています。算出の細かい条件までは分かりませんが、10人採用したら8人辞めるような、地獄のような状態ですよね。 参照:J-Net21:事業拡大後の組織の課題 当初は、DX(Digital Transformation、デジタルトランスフォーメーション)をコスト削減のために考えていた。それを、社員を守り、一人ひとりの働きがいを生むために使うと、目的を決め直したそうです。Google WorkspaceやGeminiを使った取り組みですが、私が気になったのは、どのツールを選んだか以上に、この目的の見直しです。 参照:J-Net21:人を守るためのDX 40人規模の会社で、最初に使ったのは2人 ただ、社長が「これを使って生産性を上げよう」と言っても、すぐには広がりませんでした。「今までのやり方で何が悪いのか」といった反発が起き、最初に使っていたのは2人だけだったそうです。40人規模の会社で、2人です。DXではよくある話かもしれませんが、便利だと説明すれば使ってもらえる、というものではないんですね。 参照:J-Net21:Google Workspace導入時の反発 そこから身近な用途で使ってもらい、社員にとってのメリットを伝えていく。文字にすると「それはそうだよね」と思うのですが、現場で判断し、受け入れてもらえるように伝えるところが、いちばん大変だったのではないかと思います。記事では詳しく書かれていない、その紆余曲折が気になるんです。 「生産性10%改善」より、「報告書が1時間から5分」の方が伝わる 入口になったのは、訪問看護で毎月作る報告書でした。J-Net21の記事では、利用者一人分に1時間以上かかっていた作業が、Geminiの利用によって90%短くなったと紹介されています。会社側の資料では、報告書の作成が「1時間から5分」になったと示されています。 参照:J-Net21:報告書作成の時間短縮、プーラビダ:自社のDX実践 上の人が「会社の生産性が10%改善するぞ」と言っても、現場の人には「10%と言われてもな」となりがちです。でも、「毎月1時間かかっていた報告書が、5分でできるようになる」なら、自分の仕事として分かります。社員に伝える内容を、そうした身近な変化にしていく。小さな成功を積み重ねることは、やはり大事だと思います。 Google Workspaceを使って社内ポータルを作るなど、ほかにも取り組みがあります。ただ、まず社員自身が便利さを感じると、「こうすれば情報を簡単に得られる」「この使い方を教え合おう」という話が出てくる。ツールの利用と一緒に、社内の情報共有やコミュニケーションも変わっていったのだと思います。 参照:J-Net21:情報共有と社員同士で教え合う取り組み 空いた時間を、人を減らすためだけに使わない 報告書が1時間から5分になったら、残りの時間をどう使うか。「それだけ空いたなら、人を減らせるよね」「採用を減らせるよね」と考えるのをやめ、看護師の研修や資格取得に使う。今いる人を大事にする方へ時間を回したことが、大きいと思います。 参照:J-Net21:時間の余裕を生かした研修と資格取得 社員が技能を身につければ、会社としても、より高度なケアを担当できるようになります。社員の仕事への気持ちや役割が変わり、視野も広がるでしょう。社員にとってもうれしく、会社にとってもうれしいことに使う。この考え方への切り替えが、事例の大きなポイントだと感じました。 言い方を変えただけで、信じてもらえるだろうか もっとも、経営者がそう言ったところで、最初から信じてもらえるとは、私は思いません。「資格を取っても、どうせ給料は上がらないだろう」といった反応もあったのではないでしょうか。これは記事に書かれた社員の発言ではなく、私が自分の会社へ置き換えて考えたときに、引っかかるところです。 どんな伝え方をして、最初はどんな反応があったのか。記事ではさらっと読めても、自社で真似をしたら、ここで反発が起きて進まなくなることはありそうです。成功事例では、うまくい

  4. Sep 24

    第602回:サーチコンソールをKPIに使う際の注意点とは?実は不透明な公式ツールについて

    Podcastを今すぐここで聞く ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。今回は、Google Search Console(サーチコンソール)とどう向き合うかという話です。Google アナリティクスと並んで、Webサイトを運用している方なら使うことが多いツールですよね。ただ、サーチコンソールを、長い期間の成長を正確に比べられるデータ分析の基盤だと思わない方がいいと、私は考えています。 GA4(Google Analytics 4)のようにデータがたまり、昨年や一昨年と比べられる。しかも、どんな検索語句で表示され、何回クリックされたかという、Googleが持っているデータを見られる。だから、表示回数やクリック数をKPI(Key Performance Indicator、重要業績評価指標)にしている方も多いと思います。問題は、その数字が増えたことを、そのままサイトの成長と受け取ってよいのかです。 長期の成績表として見る前に、数字の限界を知っておく 別に、Googleを悪く言いたいわけでも、サーチコンソールが壊れたと言いたいわけでもありません。以前はウェブマスターツールと呼ばれていたツールです。そこへAI(Artificial Intelligence、人工知能)を含むさまざまな検索結果の見せ方が加わり、今の画面や指標では捉えきれなくなっているのではないか、という話です。 私なら、30日や3か月くらいで「今はどんな感じかな」「どこから、どんな検索語句で来ているかな」と確認するために使います。長くても昨年との比較くらいでしょうか。もっとも、1年前との比較でも、そのまま信じるのは危ないかもしれません。昔の数字と並べれば、時系列の変化をきちんと把握できると思っていると、落とし穴にはまります。 むしろ、検索に関する機能を管理したり、インデックスの状況を確認したりする、Googleとの間接的な対話の場としての役割が8割くらいだと私は捉えています。検索パフォーマンスはおまけとまでは言いませんが、「自分が出した記事は、今こういう感じなんだな」と、その時々の状況を見るくらいの距離感がよいのではないでしょうか。 集計の変更と、自分たちの施策の成果を混ぜない 検索結果の形が変われば、表示回数や掲載順位の測り方も変わっていくでしょう。それ自体は当然です。ただ、過去と今を比べている側からすると、測り方が変わった後に、以前の数字をどう読めばよいのかが分からない。ここが困るところです。 サーチコンソールでは、Google側の集計方法の変更やロギングエラーによって、グラフが急に増減することがあります。およそ1年にわたる数字の問題が、後から分かることもあるわけです。 編集注:Googleの公表で確認できる対象期間は、2025年5月13日から2026年4月27日です。表示回数と関連指標が影響を受け、クリック数は対象外でした。原文の「2025年にあったような気がする」「過去1年、全部おかしかった」という説明は、この期間・範囲に訂正しています。 参照:Google Search Console ヘルプ:データの異常 画像や商品、求人などの集計基準が変わったという案内を見たり、画面に黄色い線が入り、「ここから変わっています」と示されたりすることもあります。でも、どのくらい変わったのか、過去の数字をどう補正すればよいのかまで分かる情報は、私が把握している限り、ほぼ見たことがありません。 プライバシーのために検索語句が隠され、検索語句のフィルタをかけると見える数字が減ることもあります。画面で見られる検索パフォーマンスのデータは16か月分です。それより長く残したいなら、BigQueryや手元へのエクスポートで確保しておく必要もあります。画面に出ている数字だけで、すべてが分かるわけではないんですね。 参照:Google Search Console ヘルプ:検索パフォーマンスの確認、Google検索セントラル:検索トラフィックの減少をデバッグする それから、順位測定のボットや、SEO(Search Engine Optimization、検索エンジン最適化)関連のツールが検索結果へアクセスすることも、気になります。AI関連の仕組みが加わり、外部からのアクセスも変わっていく。私は、そこに人間の検索行動がどのくらいの精度で表れているのか、疑問を持っています。Googleが対策をしても、いたちごっこになる部分はあるでしょうし、技術的にも難しいのだろうと思います。 無料だからといって、データの品質への不満がなくなるわけではない 「無料版なのだから、仕方がない」と思うかもしれません。では、仮にプロ版があり、年間100万円や200万円を払って使う分析基盤だったらどうでしょうか。Google アナリティクスにも有料版はありますから、まったく考えられない話ではないですよね。それなのに、提供されたデータをそのまま分析に使えないとなれば、大きな問題です。 Googleも一つの企業です。ほかの会社が継続してデータを提供していて、「実は品質が悪かった」となったら、問題になりますよね。Googleは扱う範囲が広く、ネット上のインフラのようになっているので、「Googleだから仕方がない」と思いがちです。でも、提供元という観点で見ると、言い方は悪いですが、「データの品質を保つやる気はあるのか」と思ってしまう状況です。 集計基準を変えたなら、例えば「この種類の検索語句では、数字が10%くらい変わります」といった補正の目安が欲しい。大変なのは分かりますが、数字を使って判断する側が困ることまで、無料だからで片付けたくはありません。それでも、今後もこうした曖昧さを含む数字として付き合っていくしかないのでは、と私は思っています。 表示回数が増え、クリック率が下がったときに慌てない 実務でも、「表示回数がものすごく増えている」と感じる場面がありました。AI関連の検索結果が広がった時期は、本当に荒れていたんです。表示回数が急に増えたり、急に減ったり、いろいろなパターンがありました。 クリック数が変わらないまま表示回数だけ増えれば、CTR(Click Through Rate、クリック率)は下がります。すると、「タイトルやディスクリプションを大きく変えた方がいいのか」「競合が入ってきたのか」と、いろいろな仮説を立てたくなります。でも、検索結果の見せ方や数え方が変わった影響まで、施策の問題として追いかけてしまうことがあるんですね。 編集注:原文では、AI概要の掲載順位と表示回数の説明が混在していたため、次のように訂正します。Googleの説明では、AI概要は検索結果の中で一つの掲載順位を持ち、その中のリンクには同じ順位が割り当てられます。表示回数は通常のルールに従って数えます。「AI概要全体が、丸ごと1インプレッション」という意味ではありません。 参照:Google Search Console ヘルプ:表示回数、掲載順位、クリック数とは クリックされにくい場所に出た場合でも、表示回数として数えられれば、数字の読み方は変わります。分析している側からすれば、「先に言ってくれよ」という気持ちになります。まして、1年前の数字と比較していたところへ、長い期間に問題があったと分かったら、「もう、どうしてくれるんだ」と思います。同じように感じた方は、口には出さなくても多いのではないでしょうか。 改良を待つより、今の使い方を決めておく これからサーチコンソールが、もっと細かなことまで分かる分析基盤になるか。収録時点では、私はおそらくそうはならないと思っています。プライバシーへの配慮もありますし、AI検索の見せ方も変わります。私が見聞きした範囲では、測り方が変わるという話はあっても、使う側がもっと詳しく理解できるように、具体的にどう改良するのかという話は聞いていません。 だから、何年分もの表示回数やクリック数を、そのまま同じ物差しで比べるのは気をつけてください。GA4なら、こちらでフィルタを設定するなど、データを扱うときに調整できる部分があります。サーチコンソールでは、Google側の計測をこちらで変えられません。渡された数字を、こちらでコントロールできるデータと同じように鵜呑みにしないことです。 私は、パフォーマンスの数字以上に、インデックスの状況などを見ることが多いです。「なぜこのページはインデックスされていないのか」と確認する。ただ、それも毎日しょっちゅう見るわけではありません。Googleの案内にも、毎日のログインは必要なく、月1回程度確

  5. Sep 16

    第601回:中小企業のAI導入の最大の敵は「最短で成功しようとすること」です

    Podcastを今すぐここで聞く ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。今回は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)導入の成功事例や調査を、自分たちの会社でどう使えばよいかという話です。結論から言うと、成功事例は、自社で試していくための出発点だと考えていただきたいと思います。 AIの導入が進んだといっても、文字起こしなどの用途にとどまる会社もあれば、全社で使う会社もあり、温度差があります。その中で「生産性が何パーセント上がった」というニュースを見ると、同じことをすれば自分たちも成果を得られるのでは、と思いますよね。失敗を避けたいから、先に成功事例を知りたくなる。ニュースや事例ページも、そう感じる構成になっていると思います。 ただ、今回は「成功事例を疑え」という話ではありません。調査や事例を参考にしながら、うちではどうするかを考えて動く。その必要性を、研究の結果と、私が現場で見てきた違いからお話しします。 成功事例の「試行錯誤」を読み飛ばさない 私もすべての事例を見ているわけではありませんが、多くの場合、書かれていないところで思いどおりにいかないことを乗り越えています。失敗せずに成功したのではなく、うまくいかないことを直した結果、成果が出ているんですね。 ところが、事例では「試行錯誤を経て」「フィードバックをもとに」と、さらっと書かれます。読む側には、すんなり進んだように見えてしまう。自分たちで試して、最初に失敗すると、「うまくいかないじゃないか。これは違う。別の方法を探そう」となる。その段階でやめてしまうのは、とてももったいないと思っています。 AIを受け入れる素養や状況、業種、仕事の内容は、現場ごとに違います。巷にある情報を読んだだけで、そのまま当てはまると思わない方がいい。自社に合わない部分を、現場に合わせて直す仕事が残るわけです。 AIの改善率は、誰が何をした数字なのかを確かめる きっかけになったのが、METR(Model Evaluation & Threat Research)という非営利研究機関の研究です。先端的なAIの能力やリスクを評価している機関で、2025年前半の実験が一部で話題になりました。経験豊富なオープンソース開発者に、普段の仕事を「AIを使ってよい」「使ってはいけない」という条件でランダムに割り当てると、AIを使える方が、平均で19%長くかかったという結果だったんです。 参照:METR:2025年前半の開発者の生産性研究 業務を効率化できるはずなのに、どうして時間がかかるのか、と感じますよね。もちろん、どの業務を対象にして、どこまでを測るかによって、結果の捉え方は変わります。私が仕事の現場でも気になるのは、目の前の作業が短くなっても、付随する仕事まで含めるとうまくいかないことがあるという点です。 次の研究で短縮しても、単純な比較はできない METRが2025年後半に始めた研究では、今度は時間が短くなる方向の結果が出ました。収録では「18%ぐらい短縮」と紹介しています。単純に読めば、AIの使い方に慣れてきたのかな、と思いますよね。ところがMETR自身は、この数値を、その時点のAIによる生産性向上の実態として使うのは難しいと説明しています。 編集注:「18%短縮」は、前回から続けて参加した開発者の推定値です。新規参加者では4%短縮の推定で、いずれも信頼区間は時間が延びる場合を含みます。2026年2月24日の報告は、選択の偏りが大きく、改善幅を示す証拠としては弱いとしています。原文中の参加規模も記憶が曖昧でしたが、報告上は57人、143リポジトリです。 参照:METR:開発者の生産性を測る実験設計の見直し 調査へ参加する人と、提出する仕事が変わる 人が関わる調査では、参加するかどうかの段階で偏りが生じます。普段AIを使って仕事をしている人に、「半分はAIなしでやってください」と頼んだら、参加したくない人もいるでしょう。AIの効果を強く感じている人ほど、調査から抜けてしまう可能性があるわけです。 報酬も参加するかどうかに関わります。普段ならAIですぐ済む仕事を、使わずに長い時間かけてやる。その負担に見合うと思えなければ、わざわざ参加しません。報酬や条件が変われば、参加してくる人の属性も変わります。 編集注:原文では報酬を「500ドルぐらい」「100ドルとか50ドルかな」と曖昧に挙げ、後半では日当のように比較しています。公式報告では、初回は時給150ドル、後の研究は時給50ドルです。日当との比較は成立しないため採用せず、報酬条件が参加者の選択に影響し得るという論点を残しています。 参照:METR:報酬変更と参加者の選択について 仕事の選び方にも偏りが生じます。「これがAIなしに割り当てられたら困る」という仕事を、最初から実験に出さない人もいた。AIを使わないと10倍ぐらい時間がかかるなら、出したくなくなりますよね。参加者だけでなく、測られる仕事も選ばれているんです。 参照:METR:タスクを提出しない選択について ここをきちんと説明して、結果を広く当てはめられるとは言わないのは、誠実だと感じます。私が皆さんにお伝えしたいのも、調査を信頼するなということではありません。参考にすることと、そのとおりに進めれば失敗しないと考えることは、分けてほしいんですね。 他社の30%改善を、自社の15%改善へ置き換えない 仮に「AI導入で30%効率化しました」という事例があったとします。これはMETRの数値ではなく、私が説明のために出す例です。すると、「うちは30%までは無理でも、15%、20%ぐらいはいけるのでは」と思いがちです。でも、他社の成果を少し割り引けば、自社の成果になるわけではありません。 関わる人、権限、仕事の内容、意思決定の仕組み、トップの考え方が違います。タイミングや運もあります。使えそうな要素を取り入れるのはよいのですが、社内に根づかせ、受け入れてもらう方法は、その現場で判断するしかないんです。 同じような会社でも、使われる仕組みと使われない仕組みがある 同じ業種で、規模も同じぐらい。私が両方の社長さんを知っていても、浸透の仕方がまったく違うことがあります。業種や規模が似ていることだけでは、導入の進み方は分かりません。 例えば、それまで顧客管理をしておらず、新しいツールを入れることには抵抗がある。でも、皆さん普段Gmailを使っている。それならGoogle Workspaceを入れて、Google Apps Scriptで簡単な顧客管理の仕組みを作りましょうか、と提案します。3か月ぐらいで使えるようになる場合もあれば、作ったのに全然使われない場合もあるんですね。 その違いは千差万別です。私は「こうすれば必ずうまくいく」とは言えませんし、決まった方法を示されても、そのまま受け取ってよいのかは考えてほしい。ゴールへ向けて、自分たちの会社では何を変えるかを、その都度考える必要があります。 ツール選びで止まる時間を、自社で試す時間に変える Gemini、ChatGPTやCodex、Claudeなど、どのAIを使うかもよく議論になります。「どれがいいですか」と聞かれますが、実際に使わなければ、自社に合うかは分からないと思います。 Google製品との連携が合う場合もあります。お客さんがGoogle Workspaceを使っていれば、Google Apps Scriptで組んだものを大きくするときに、Googleのクラウドへつなぐこともあります。一方、ChatGPTで使うプロンプトが社内にたまっていれば、別のベンダーを介したり、Cloudflareを使ったりすることもある。今まで使ってきたものや、社内にある知識によって選び方は変わります。 どれが一番費用対効果に優れているかを考えて、立ち止まっているなら、その時間はすごくもったいない。複数使ってみて、月に1回か2回でも、どれがよかったかを話す勉強会を開く方が、はるかにいいと思います。自社で使って、知見をためるものだと考えてください。 AIの力を、車のトルクや馬力と同じように比べると失敗します。私たちは、AIの力をすべて引き出せるわけではありません。自分たちが、その力をどれだけ引き出せるかという観点で見る必要があります。 有料版を前提に、使いやすいものから試す 企業では、基本的に有料版を使うべきだと私は考えています。最初から一つの正解を探しすぎず、使いやすいものを試す。ChatGPTやCodex、Google系ならGemini、Claude Codeも

  6. Sep 8

    第600回:企業のAI導入はどう進める?人員削減より先に決めるべきこと

    Podcastを今すぐここで聞く ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。今回は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)を会社へ入れるときに、「仕事を取られる」と受け止められる職場と、うまく一緒に働ける職場の違いについてお話しします。あくまで、私が中小企業の現場で感じていることです。普遍的な原則というより、自社で考えるきっかけとして読んでいただければと思います。 うちのお客さんは中小企業がほとんどで、Web担当者も兼務という方が多いんですね。私は、むしろ兼務の方がよいと考えています。現場を知り、実務が分かるからです。お客さんに価値を届ける現場に近い方が、Webを仕事に生かしやすいと思っています。 AI導入が「仕事を増やされる話」に聞こえていないか AIと人間では、仕事の領域が重なります。これまで人がしていた仕事の一部をAIに任せるのですから、完全に別々の領域へ分けることはできません。 そこで、「人員削減をするのでは」「もう人を採らず、自分たちがAIを使って何倍も働くことになるのでは」という不安が出てきます。働く時間が何倍にならなくても、新しい道具を覚え、生産性を高めなければならない。自分たちに、さらに負荷をかけるための導入だと受け取られてしまうんですね。 そうなると、本当はAIに興味があっても、なんとなく使いづらい。すでに使っている人への風当たりが、なぜか強くなる。便利かどうか以前に、社内で使いにくい雰囲気ができてしまうことがあると感じています。 人が担当すると、お客さんに喜ばれる仕事を先に見つける 私はまず、「ここは人がやると、お客さんが喜ぶ」「対応やサービスの質が上がる」という仕事を見つけておくとよいと思っています。その仕事に集中してもらうために、それ以外をAIで省力化する。人に力を注いでほしい仕事から、AIを使う理由を考えるわけです。 もちろん、これですべて解決するとは思っていません。同じ仕事をコツコツ続けること自体がうれしい人もいます。ホラー映画やジェットコースターが好きな人も苦手な人もいるように、仕事の何に喜びを感じるかは、人によって違います。自分の好きな仕事を、AIが速くこなしてしまうのはつらいという方もいるでしょう。 その気持ちを簡単に解決できると言いたいわけではありません。今回は、組織としてどう話を進めるかに絞ります。経営側は人員削減やコスト削減からAIを語りがちですが、「人がここを丁寧に担うことで、会社の魅力を伸ばしたい」ところを先に確かめる方がよいのではないでしょうか。 理想論だけで決めず、現場に聞いて、「ここへ力を入れよう」と共有する。そのうえで、ほかの作業が減れば、ここでもっとできることがあるよね、と話すんです。現場が大切にしたい仕事と、会社が目指すことをつないでから、AIの話をすることです。 人を減らしたいより、辞めた人を補えないことが問題 中小企業は、新しく人を雇おうとしても、なかなか採れません。人を減らしたいというより、減らしたくないのに辞めてしまった。補充しようにも応募が来ない。賃金を上げても来ない。そうして仕事が回らなくなる。人員の不安定さに困っている会社が多いと感じます。 編集注:「2025年度の人手不足倒産、確か4,500件」という説明は、確認した一次資料の件数とは一致しません。負債1,000万円以上の倒産を対象とした2025年度の調査では、帝国データバンクが441件、東京商工リサーチが442件と公表しています。調査ごとの集計値として区別し、4,500件を確定値にはしていません。 参照:帝国データバンク:人手不足倒産の動向調査(2025年度)、東京商工リサーチ:2025年度の「人手不足」倒産 人を増やすのが難しいなら、AIに任せられる仕事を任せることで、その不安定さを減らす。経営者にとっても、安定して任せられる部分が増えれば安心でしょう。今いる人が、会社として大切にしたい仕事を続けるために使うという説明になります。 「会社としてもっとやりたいことがあるので、ここにAIを使いたい。最初は慣れないし、気持ち悪く感じるかもしれない。でも、お客さんから気持ちよく感謝してもらえる仕事へ、みんなで集中したい」。同じ導入でも、伝え方によって受け止められ方はかなり変わると感じています。 経営者が見ている結果だけでなく、そこまでの話を伝える 特に最初の導入時の説明は、印象に残ります。そこで「人間の仕事は、みんなAIに奪われる」といった過激な話を持ち込めば、不安になりますよ。自分が生きていくための糧がなくなるかもしれないわけですから。その不安を理解したうえで、AIも含めて協力する雰囲気を作りたいですね。 経営者は先を見ているので、先々の結果だけを話しがちです。現場からすると、「いきなり何の話をしているんだ」「自分たちはもういらないのか」となってしまう。なぜその仕事を大切にしたいのか、なぜほかの作業をAIへ任せるのか。結論へ至るまでの考えも、きちんと伝える必要があります。 現場には、その人のおかげで会社が回っている、という強い人がいます。最初から「コストダウンします」「これ以上人は採りません」と持っていくと、なかなか浸透しません。現場の人が担っている役割を認め、一緒に働きやすい会社を作る話にすることが大切だと思います。 お客さんとのやり取りから、人に残す判断を考える 人が担当すると喜ばれる仕事は、会社やお客さんの年齢層によって違います。初回相談をフォームだけにせず、人が受けた方がよい場合もあるでしょう。定型的な確認はAIへ任せても、「ここはもう少し踏み込んで聞こう」という判断は人の方がよいこともあります。自社のお客さんとの接し方から、役割を考える必要があります。 AIは、やりすぎることもあるんですよ。レポートがどっさり出てきたり、できるだけのことを全部やったりする。一方、人なら「ここまででよい」と判断できます。どこまで考え、どこで止めるかを適切に決められる人が担った方がよい仕事もあるわけです。 情報整理はAIができても、提案そのものは、お客さんの雰囲気やこれまでの経緯を知る担当者の方が、まだ適切に判断できる場合が多いと思います。例えば、声色から「ここに不安があるのかな」と感じ取ることです。お客さんとの間で積み重ねた理解が、提案の質につながることがあります。 いずれは、グループウェアなどが過去のやり取りや会議の音声、動画から、その雰囲気まで読み取れるようになるとは思います。大企業なら蓄積したデータも多いでしょう。ただ、現状ではその精度はまだ微妙だと私は感じています。将来できそうなことと、今、人へ任せた方がよいことは分けて考えたいですね。 時間が空けば、新しいことを考えられるのか AIで時間が空くなら、一人ひとりが新しいことを考える時間にもできます。ただ、DeNAの南場さんのお話では、個人の作業が速くなっても、業務の進め方や組織が変わらず、新しいことへ移れなかったという問題がありました。時間を作るだけで、新しい仕事へ自然に移るわけではないので、難しい部分もあります。 参照:DeNA:南場智子「先に動かし、事業を広げる」講演書き起こし それでも、余裕ができて、そこから何かできるのはよいことです。人が担当すると喜ばれる仕事を出し、ほかは「AI君にやってもらおうか」と考える。自分たちが大切な仕事をするために使うなら、堂々とAIを使いやすいのではないかと思います。 AIに任せても評価が下がらないよう、運用を整える こうした考え方を共有するだけでなく、評価制度も関わります。AIに任せたことで、その人の評価が下がるのでは困りますよね。何を本人の貢献として評価するのかも、導入と一緒に考える必要があります。 また、AIを入れれば、今度はAIを管理する仕事が増えます。その仕事をする人や時間は確保しなければなりません。自分たちで考えるのが難しければ、導入を支援する会社へ相談した方がよい場合もあるでしょう。AIに任せた後の管理まで、誰かの仕事として決めておくことです。 具体的には、次のようなことを考えます。他社の例をそのまま使うのではなく、自社の現場に合わせたルールが必要だと感じています。 AIが作った内容を、誰が確認

  7. Sep 3

    第599回:WordPressの脆弱性リスクをどう見る?SaaS・Astroと比べるCMS選び

    Podcastを今すぐここで聞く ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。今回は、中小企業が次のサイト更新でもWordPressを選ぶべきか、その判断材料をお伝えします。いま使っている方にも、これから自分たちで更新できるサイトを作りたい方にも、一度考えていただきたい話です。 WordPressを悪く言いたいわけではありません。私自身、かなり古いバージョンから使っています。あくまで、皆さんが安全に運用し、事故に遭わないためにはどう考えたらいいかという観点です。 「いまWordPressだから、次も」で決めない 昔はMovable Typeが先行していた時期もありました。私の記憶では、途中でライセンスが有料になったこともあって、無料で使えるWordPressへ移る流れがありました。プラグインもどんどん充実して、いまでは自分たちでインストールするCMS(Content Management System、コンテンツ管理システム)として、事実上WordPressがまず候補になる状況だと感じています。 WordPressは、Web制作の仕事を本当に変えたツールです。手作業でページやプログラムを作っていたところから、オンラインの管理画面で更新し、プラグインで機能を増やせるようになりました。自社でWebサイトを運用する敷居を、ものすごく下げてくれた。これからも素晴らしいツールであり続けると思います。 ただ、すでにWordPressで作っていると、リニューアルでも「次もWordPressでやりましょう」となりがちです。データを移しやすいですし、制作会社にとっても基本的な作り方になっています。そこで一度、うちの管理体制で、これからも使い続けて大丈夫なのかと立ち止まってほしいんですね。 システムの管理をサービス側へ任せるSaaS(Software as a Service)型もあります。WordPressにもそうしたサービスがありますし、WixやStudioなども候補です。私たちも最近は、保守を外部へ任せる費用や社内の体制を考えると、サービス側がメンテナンスするものをベースにした方がいいのではと提案するケースが増えています。 参照:WordPress.com:WordPress.comとWordPress.orgの違い、AWS:SaaSとは 便利さと引き換えに、何を管理しているか確認する 2026年8月6日にWordPress 7.0.3、6日後の8月12日に7.0.4が公開されました。どちらもセキュリティ修正を含む更新です。こうした短い間隔での更新を見ると、作った後も管理を続ける必要があると、改めて感じます。 参照:WordPress.org:7.0.3リリース、WordPress.org:7.0.4リリース 編集注:7.0.4で修正されたのは、ImagickとGhostscriptを使用するサイトで、認証済みの投稿者以上の権限から悪意あるファイルをアップロードすると、遠隔でコードを実行され得る脆弱性です。「権限があまりないところでも」という説明には、この条件が付きます。また、公式発表では自動バックグラウンド更新に対応したサイトが順次更新されると案内されており、すべてのサイトへの強制更新を意味しません。 参照:WordPress.org:7.0.4の修正内容と自動更新の案内 WordPressはPHP(PHP: Hypertext Preprocessor)を使って作られていて、きちんと更新しないと危険だという話は昔からあります。そこへAI(Artificial Intelligence、人工知能)を使う攻撃が加わり、攻撃の準備や実行を進めやすくなっています。従来の管理負担と同じつもりでいていいのかというのが、今回考えていただきたいところです。 参照:Google Threat Intelligence Group:AIを利用した脆弱性攻撃などの調査 これまでは、WordPressのメリットが大きいので、管理が必要だというデメリットをきちんとカバーできればおすすめですよ、と私たちもお伝えしてきました。ところが私は、そのデメリットの部分が、かなり大きくなってきていると感じています。WordPress側も修正や更新の案内をしています。それでも私は、対応が現実的に追いついていないと感じています。 問い合わせ情報がサイト内に残っていないか 管理体制と合わせて見てほしいのが、サイトの中にある個人情報です。問い合わせフォームは、メールで通知するだけのものもあれば、問い合わせ内容をデータベースへ保存するものもあります。Contact Form 7と組み合わせて使うFlamingoなどが、その例です。 参照:Contact Form 7:Flamingoによる送信メッセージの保存 会員など、一般の利用者がログインして使うサービスがあれば、ユーザー情報自体も個人情報になります。表に見えるページだけではないんです。WordPressは、放っておくと本当に危険の塊になってしまうという意識は持っていただきたいと思います。 私も去年だけで、うちのお客様以外を含めると、3、4件ぐらい緊急の復旧相談を受けました。悪意あるものを仕込まれてしまったケースなどです。もっと多くのサイトを制作している会社なら、さらに相談を受けているのではないでしょうか。これは本当に身近な危険なんです。 本体が安全でも、プラグインは別に見なければならない プラグインの充実は、WordPressを使う大きな理由です。以前なら開発を頼む必要があった機能を、ほぼ無料で分かりやすく追加できる。管理画面に広告が出ることはあっても、低い費用でいろいろな機能を実装できるのは、大きな魅力です。 ただ、メンテナンスが止まっていたり、脆弱性を十分に確認していなかったりするものもあります。管理画面で検索して見つけた海外のプラグインが、実はもうあまり更新されていなかった、ということもある。本体だけでなく、入れたプラグインも管理しなければなりません。 参照:WordPress.org:セキュリティと継続的な更新 自動更新はしてくれますが、更新によって表示や機能が崩れるケースもあります。中小企業で専任担当者を置くのは、なかなか現実的ではありませんよね。すぐ対応してくれる保守会社が付いているならいいのですが、その体制には費用がかかります。 保守する側も責任を負います。私の感覚では、きちんとやるなら安くても月3万円ぐらい。うちでも、コンサルティングに加えて保守までとなると、最低限で月3万〜5万円ぐらいはかかります。安く引き受ければ済む作業ではないんです。 お知らせの更新だけなら、WordPress以外も考える その費用と手間に対して、自社ではWordPressの機能をどれぐらい使っているでしょうか。お知らせを更新するためだけで、重要な固定ページは結局、外部の制作会社と一緒に直している。そういう場合は、それならWordPressでなくてもいいですよねという話になります。 年に数回のお知らせやキャンペーン情報、件数、人数、残り枠など、一部だけを変えたいのであれば、必要な箇所だけ更新できるように作る方法もあります。更新したい箇所に合ったものを作った方が、管理しやすく、使いやすくなる場合もあります。WordPress以外という選択肢も考えていいと思います。 編集注:ここで比べているのは、自社が継続して保守する範囲と、その負担です。別のツールへ移れば危険がなくなる、という意味ではありません。WordPressの公式セキュリティ案内も、どのシステムでも安全の維持には継続的な作業が必要だと説明しています。 参照:WordPress.org:システムの安全を維持するための考え方 拡張性が必要で保守できるなら、WordPressが向いている WordPressのよさは、外部との連携や独自機能を組み込みやすいところです。SaaS型には「ここまでしかできません」という限界がありますが、WordPressはやろうと思えば本当にいろいろできます。うちでもかなりカスタマイズして納品しています。自由度が必要なら、WordPressはやはり有力です。 大量のデータを入れたい、データベースのように使いたい、自分たちで機能を追加していきたい。そういう用途では、SaaS型だと難しい場合があります。ただし、重要なプラグインは、できれば有料版を含めて、きちんとメンテナンスされるものを選んだ方がいいと思います。素性や保守状況の分からないものを安易に入れないことです。 データを外部のSaaSへ預けるのが、自社の規約上難しい場合もあります。その場合は、国内のサーバーでWordPressを動かす形が選択肢になります。必要な拡張性があり、社内の担当者や制作会社が継続して保守できるなら、これからもWordPressをベースに考えるのがいいと思います。 編集注:国内サーバーなら自動的に規約上問題がなくなる、ということではありません。実際に自社の規約や契約

  8. Sep 2

    第598回:GoogleのAI検索から自社サイトを除外すべき?AIオーバービュー・AIモードの判断軸

    Podcastを今すぐここで聞く ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。GoogleのAI(Artificial Intelligence、人工知能)検索機能から、自社サイトを除外できる設定について、ご質問をいただいています。今回は、一般的な中小企業が、この設定をどう考えたらいいかをお伝えします。 先に私の考えをお伝えすると、一部の特別な事情がある会社を除いて、AIオーバービューやAIモードから自社サイトを外すのは、デメリットしかないのではないかと思っています。何を止められる設定なのかを、まず分けて考えてください。 AI検索からの除外と、学習の拒否を混ぜない Googleは2026年8月31日、Search Consoleの「Search generative AI」という設定を、全世界のWebサイトへ提供したと案内しました。対象はAIオーバービュー、AIモード、Discover内の生成AI機能です。自社サイトのリンクや内容を、これらの機能に含めるかどうかを選ぶ設定です。 参照:Google Search Consoleヘルプ:Search generative AI control 除外を選ぶと、自社サイトへのリンクが出なくなり、自社コンテンツも回答の根拠として使われなくなります。通常の検索結果からサイトを消すnoindexとは別です。Googleは、この設定を、ほかの検索機能への掲載や順位を決める要因には使わないと説明しています。 参照:Google Search Consoleヘルプ:除外した場合の扱い 編集注:設定は単純なオン・オフだけではなく、自社のリンクと内容を含める、除外する、親プロパティの設定を引き継ぐ、という選択肢があります。基本の設定は「含める」ですが、親プロパティがある場合はその設定の継承が初期値です。反映は通常数日かかり、設定が有効になってから1〜2日で除外されるものの、キャッシュなどで長くかかる場合もあると案内されています。 参照:Google Search Consoleヘルプ:設定の選択肢・継承・反映時間 「検索経由はそれほど重視していないし、情報を持っていかれるのも嫌だから除外しよう」と思うかもしれません。でも、ここで表示しなくなることと、AIの学習に使われなくなることは別です。学習に使わせたくないなら、別の指定を考える必要があります。この設定だけで、学習まで止めたことにはなりません。 参照:Google Search Consoleヘルプ:AI学習とは別の設定 編集注:Googleは、対象モデルの学習を制限する方法としてGoogle-Extendedを案内しています。これは独立して巡回する学習用ボットの名前ではなく、robots.txtで利用を管理するための指定です。通常のGoogleのクローラーが取得した内容の扱いを制御します。 参照:Google公式:Google-Extended 会員限定の情報や、そもそも外から見られたくない情報を守るために、この除外設定を使うものでもありません。公開範囲の管理と、AI検索への掲載をどうするかは、別に考える話です。 編集注:robots.txtはクロールへの指示であり、会員限定情報を隠す仕組みにはなりません。Googleも、非公開情報を守るにはパスワード保護など別の方法を使うよう説明しています。 参照:Google Search Central:robots.txtの限界 間違った要約の不利益が大きい会社には、除外の理由がある では、どういう会社が使うのか。正直、あまり多くは思いつかないのですが、自分たちは正しい情報を公開しているのに、要約の誤りが繰り返される場合は考えられます。公式サイトだけでなく、求人サイトなどへ掲載した情報も直している。それでも、間違った説明をされてしまうケースです。 医療関係など、少しの言い間違いが大きな問題になる分野もあります。AIオーバービューやAIモードから集客できることより、誤解による不利益の方が大きい。そういう事情があるなら、除外を検討するのは分かります。 また、検索上で新しく知ってもらう必要がなく、決まったお客様との関係で成り立っている業界もあります。ほかの販路を十分に持つ大きな会社もそうかもしれません。露出を失う影響まで考えたうえで、それでも出したくない会社が使う設定だと思います。 公式サイトを消しても、ほかのサイトにある自社情報は残る AIオーバービューで名前を見て、その場ではクリックしなくても、「ああ、あんな会社があったな」「よくこの名前を見るな」と覚えてもらう。その後、社名を検索し、問い合わせや成約へ向かう。私は、今はこの認知から指名検索へ進む流れが中心になっていると見ています。直接の流入だけでなく、認知の入口として考える必要があります。 「勝手に要約されたくない。公式サイトを見てほしい」という気持ちは分かります。ただ、皆さんの会社の情報は、思っている以上にいろいろな場所へ載っています。求人サイト、企業情報を集めたデータベース、第三者のブログや、昔の情報が転記されたページなどです。自社サイトを除外しても、そうした周辺情報まで消えるわけではありません。 参照:Google Search Consoleヘルプ:ほかのサイトの内容は引き続き利用される 例えば、自社では料金を改定したのに、比較サイトや過去のお客様のサイトには古い料金が残っているとします。その状態で公式サイトを回答の根拠から外したら、古い料金の方が使われやすくなってしまうのではないでしょうか。これは、公式情報を外すことの不利益を考えるための例です。 ブランドや会社の評判を守るなら、自社のサイトできちんと正しい情報をメンテナンスして、発信し続ける方が有効だと私は考えています。公式の情報を出さなくなると、間違った周辺情報を訂正する機会まで減らしてしまう。そこまで考えると、除外する理由は何だろう、と思うんですね。 1週間変化がなくても、影響がないとは判断しない Googleは、AIオーバービューやAIモードをこれからも広げていくでしょう。2026年6月の公式資料では、AIオーバービューの月間利用者は25億人超、AIモードも10億人超とされています。AIモードは選んで使うひと手間があるのに、この規模なんですよね。クリックを一つ増やすのは、簡単なことではありません。 参照:Google:2026年6月のAlphabet投資家向け説明 Googleは2026年5月の発表でも、AIモードへの質問数が、提供開始後、四半期ごとに2倍を超えて増えたと説明しています。今後の情報収集の経路として、GoogleがAIを推していく方向は見えていると思います。 参照:Google:AIモードで検索の使い方がどう変わったか しかも、Googleのこの設定を変えたからといって、ChatGPTやClaude、Perplexityなどでの扱いまで一緒に変わるわけではありません。Googleという大きな発見経路から、自分たちを外す判断になるということです。 「AIが嫌いだから、とりあえず拒否してみよう」と変えても、すぐに売上が変わるとは限りません。すでに検討しているお客様は会社名を知っていますし、検討の途中にいます。新しいお客様が入ってこなくなった影響は、後から出てくることがあるんです。 特に法人間の取引や、個人向けでも金額の大きな商品は、知ってから買うまでが長くなりがちです。早いところなら1か月、2、3か月たった後に、パタンと反応がなくなるようなことがある。1週間試して変化がないから大丈夫、と決めるのは怖いです。すべての会社に同じ期間で起きるという話ではなく、お客様が検討する時間を含めて見てほしいということです。 ですから、一般的な中小企業は、基本的には安易に除外しない方がいいと考えています。露出や問い合わせへの影響を含めても除外したい、という理由のある会社だけが選ぶ。そのぐらいの考え方でいいのではないでしょうか。 納得しにくい部分があっても、露出を失う判断は分ける この設定には、私の主観ですが、「選べる機能は付けたからね。表示されるのは、あなたが除外していないからですよね」というような、Google側の言い分を感じてしまいます。選択肢があるからといって、企業が気軽に選べるわけではないんですよね。 Googleは経済的な動機を使って、企業にいろいろな対応を促してきました。構造化データも、自分たちの検索結果を充実させるために、サイト側に実装してもらう。検索で見つけてもらえることが利益になるから、こちらも対応するわけです。私は、そういうやり方にジャイアニズムを感じることがあります。 それでも、Googleからの露出を失うと、Web上での集客には大きな打撃になります。納得しにくいところがある

About

WebマーケティングやWeb活用で手が止まってしまったり、悩んでいる中小・小規模事業者の皆様へ、根本的なウェブに対する考え方・捉え方をお届け。

You Might Also Like