いなか医師の勉強ノート

つばさ

医学知識をアップデートしたい!でも面倒!という同志のため、地域医療、家庭医療、総合診療、プライマリ・ケア、総合内科に関する論文やレビュー、ガイドラインを、Notebook LMに解説してもらうだけの、「くつ王レディオ」リスペクト番組です。

  1. 11時間前

    「抗うつ薬、どれを選ぶ?」体重・血圧・代謝への影響を徹底比較!The Lancet 2025 最新論文から読み解く

    今回は、日常診療で頻繁に処方される「抗うつ薬」の身体的な副作用について、2025年のThe Lancet誌に掲載された大規模なネットワークメタ解析の結果をご紹介します。精神症状への効果だけでなく、体重や血圧、代謝項目への影響を考慮した薬剤選択について、最新のエビデンスを一緒に学びましょう。 本研究は、30種類の抗うつ薬を用いた151のランダム化比較試験(参加者58,534人)を対象としたネットワークメタ解析です。 解析の結果、抗うつ薬間で体重、心拍数、血圧、代謝パラメータへの影響に顕著な差異が認められました。例えば、 ・agomelatineやbupropion等は体重減少と関連しましたが、maprotilineやamitriptylineなどは体重増加を示しました。 ・nortriptyline等は心拍数や血圧を有意に上昇させる一方で、fluvoxamineは心拍数低下と関連していました。 ・特筆すべきは、paroxetineなどが体重減少を示す一方でコレステロール値を上昇させるなど、体重変動と代謝変化が必ずしも相関しない点です。 著者は、これらの生理学的リスクの違いを考慮し、治療ガイドラインを更新すべきであると結論付けています。 Pillinger T, Arumuham A, McCutcheon RA, D'Ambrosio E, Basdanis G, Branco M, et al. The effects of antidepressants on cardiometabolic and other physiological parameters: a systematic review and network meta-analysis. Lancet. 2025;406:2063-77. #地域医療 #プライマリ・ケア #いなか医師の勉強ノート #抗うつ薬 #副作用 #EBM #lancet #うつ病

    10分
  2. 4日前

    うっかりでは済まされない?処方ミスや予約忘れが患者信頼を崩すとき

    今回のエピソードでは、診療現場で起こりがちな「事務的なエラー」に焦点を当てた最新の研究を紹介します。「処方を間違えた」「予約を入れるのを忘れた」「診察室の声が漏れていた」……これらは身体的な害がない場合でも、患者さんの心にどのような影を落とすのでしょうか?日本のプライマリ・ケアセッティングで行われた興味深い調査結果をもとに、医師への「信頼」がどのように揺らぐのか、そして私たち医療者が明日から気をつけるべきポイントについて深掘りしていきます。 ■要点本研究は、日本の非感染性疾患患者661名を対象に、3つの事務的エラー(処方ミス、守秘義務違反、予約忘れ)が医師への信頼にどう影響するかを調査した横断研究です。 解析の結果、これら全てのエラーは主治医への対人的信頼を有意に低下させることが示されました。特に「守秘義務違反」と「予約忘れ」は、対人的信頼に対して最も大きな負の影響を与えていました。 一方で「処方ミス」は、主治医への信頼だけでなく、医師全体に対する「一般的信頼」も有意に低下させることが明らかになりました。この一般的信頼の低下は、主治医への信頼低下によって部分的に媒介されることも示唆されています。 Aita T, Miyawaki Y, Katayama Y, Sakurai K, Oguro N, Wakita T, et al. The Effect of Three Key Administrative Errors on Patient Trust in Physicians: Prescription Errors, Confidentiality Breaches, and Appointment Scheduling Omissions. J Gen Fam Med. 2025;0:1-8. doi: 10.1002/jgf2.70086. #地域医療 #プライマリ・ケア #いなか医師の勉強ノート #医療安全 #医師患者関係 #ヒヤリハット

    5分
  3. 6日前

    「聞くのが怖い」の正体とは?GPが性的暴行の既往に踏み込めない理由

    今回のエピソードでは、プライマリ・ケアの現場で非常に重要でありながら、避けて通られがちな「性的暴行(Sexual Assault)」の話題化について取り上げます。オランダで行われたGP(総合診療医)へのインタビュー調査から、なぜ私たちは患者の性的トラウマについて聞くことをためらってしまうのか、その心理的・構造的な障壁を深掘りします。「解決策を持っていないと聞いてはいけない気がする」「トラウマを想起させて悪化させるのが怖い」……そんな医師ならではの葛藤と、それを乗り越えるためのヒントを学びます。 本研究は、オランダのGP14名を対象に、性的暴行の特定と議論に関する経験を調査した定性的インタビュー研究です。 分析の結果、話題化を阻む要因として主に2つのテーマが特定されました。第一は「専門職としての落とし穴」です。身体的症状のみに焦点を当てる「生物医学的視点(Biomedical gaze)」や、即座の解決策を提示しなければならないと考える「解決志向(Solutionism)」が、背景にある性的暴行への気づきを妨げていました。 第二は「対人・個人的課題」であり、異性の患者に対する遠慮や、「患者を傷つけるのではないか」という恐怖心、医師自身の感情的な抵抗感が障壁となっていました。性的暴行は健康全般に長期的な影響を及ぼすため、医師がこれらの障壁を自覚し、生物心理社会的なアプローチをとることの重要性が示唆されています。 van Zyl-Bonk F, Lagro-Janssen A, de Klein A, Teunissen D. What deters GPs from talking about sexual assault? A qualitative interview study. Br J Gen Pract. 2025; DOI: https://doi.org/10.3399/BJGP.2024.0761. [Epub ahead of print] #地域医療 #プライマリ・ケア #いなか医師の勉強ノート #性的暴行 #コミュニケーション #質的研究

    5分
  4. 12月8日

    質的研究:「医師は患者を信頼しているか?」――信頼の“出発点”と“ゆらぎ”を質的研究から読み解く

    今回のエピソードでは、患者さんとの信頼関係について、あえて「医師の視点」から深掘りしたオーストラリアの研究をご紹介します。 本研究は、一般開業医(GP)25名を対象としたインタビューを通じ、医師から患者への「信頼」がどのように形成されるかを質的に分析したものです。 結果として、医師は診療の出発点において、まず「患者の言葉を信じる」ことを前提としている(Default Trust)ことが明らかになりました。この信頼は、患者が自身のケアに主体的に関与し、相互的な治療関係が築かれる中で時間とともに深まっていきます。一方で、二次的な利益(オピオイド処方や書類作成など)を目的に患者が医師を操作しようとする場面では信頼が揺らぎますが、それでも医師は専門職としての倫理観から、治療関係の維持に努める傾向があることが示されました。 Uebel K, Yong FR, Agaliotis M, Pathirana T, Nguyen JDT, Chan C, et al. General Practitioners' Trust in Their Patients: A Qualitative Study. Ann Fam Med. 2025;23(6):500-506. #地域医療 #プライマリ・ケア #いなか医師の勉強ノート #医師患者関係 #家庭医療 #質的研究

    5分

評価とレビュー

5
5段階評価中
2件の評価

番組について

医学知識をアップデートしたい!でも面倒!という同志のため、地域医療、家庭医療、総合診療、プライマリ・ケア、総合内科に関する論文やレビュー、ガイドラインを、Notebook LMに解説してもらうだけの、「くつ王レディオ」リスペクト番組です。