オーディオドラマ「五の線3」 闇と鮒
-
- 小説
-
【一話からお聴きになるには】 http://gonosen3.seesaa.net/index-2.html からどうぞ。 「五の線」の人間関係性による事件。それは鍋島の死によって幕を閉じた。 それから間もなくして都心で不可解な事件が多発する。 物語の舞台は「五の線2」の物語から6年後の日本。 ある日、金沢犀川沿いで爆発事件が発生する。ホームレスが自爆テロを行ったようだとSNSを介して人々に伝わる。しかしそれはデマだった。事件の数時間前に現場を通りかかったのは椎名賢明(しいな まさあき)。彼のパ
-
184.2 第173話【後編】
3-173-2.mp3
民泊の床下から続く通路は20メートル先の廃屋に通じていた。そこには生活の形跡はなく、何者かが常駐していた様子もなかった。ただ鑑識によるとバイクのタイヤ痕のようなものが確認されており、ここに出た朝戸は、そのバイクに乗って何処かへ移動したものと考えられた。
「駄目です。目撃情報はありません。」
地取り捜査の報告を受けた岡田は肩を落とした。
「自衛隊も公安特課も踏み込んだら対象居ませんでしたって…。」
昨日、自衛隊が踏み込んだアパートは今回の民泊とは目と鼻の先だ。どちらも常時監視という力の置きようで対応していたのにこのざまだ。こいつは四方八方から無能のそしりを受けるなと、気が滅入る岡田だった。
「地下通路って随分前から準備していたんですね。」
「…そうやろうなぁ。」
彼は机に広げられた現場付近の地図を見下ろしながら、生返事でしか応えることができなかった。
「ん?いま何て言った?」
「え?」
「あれ、お前、いま何て言った?」
「あ、いや、地下通路って昨日今日作れるもんじゃないでしょ。だから相当前からこのことを想定して準備していたんですねって。」
岡田は捜査員を見て目をしばたかせた。
「それだ。」
捜査員は首をかしげて岡田を見る。
「そうだ。どれだけの歳月をかけて準備をしてきたのかは知らんが、それがこうも立て続けに当局に踏み込まれるなんて、向こうにとったらしくじり以外のなにものでもないはず。」
「そうですね…。」
「なのに向こう側が焦っているような感じがせん…それ、俺だけかな。」
例の爆破テロは本日18時の予定である。あと6時間しかない。この土壇場で予定外の状況が発生し、今焦らないでいつ焦るというのだ。
「椎名が焦っていると自分聞いています。」
そうだった。この朝戸の失踪で一番焦っているのは椎名だった。テロの首謀者が一番焦っているのだから、岡田の見当違いだ。しかしその焦りをなぜか岡田は共有できない。その焦りの現場に自分が居なかったからか。
「暴走か…。」
「はい。」
「本当に暴走かね。」
「司令塔と突然連絡が取れなくなったんです。暴走といえば暴走じゃないですか。」
「この暴走も予定通りとかやったら話変わってくるんやけど。」
しかしその線は薄い。そう百目鬼らは判断している。椎名としてもここにきて制御不能の状況を作りたくはないだろうという見立てからだ。
しかし岡田はどうも納得がいかない。
この日のため莫大な月日と費用をかけて椎名達は準備をしてきたのだ。ちょっとやそっとのことで計画をふいにするなんてありえない。多少の変更点はあっても大筋は変えずに実行されるはず。
「制御不能を偽っとるとか…。」
制御不能をもしも偽っているとしたら、どこかでそれは回復をするはずだ。
朝戸は金沢駅にやってくる。きっと来る。なぜか岡田はそんな気がした。
この岡田の感覚を上司である片倉や百目鬼が抱いていない、何てことは考えにくい。彼らも岡田と同じ考えを持っていることだろう。
となればここで朝戸の行方を捜すことに力を割くことは、無駄とは言わないまでも、それほど価値ある事であるようには思えない。金沢駅にやってくるなら、その姿を捕捉した段階で排除する。それだけでよい。
「でもこれもただの俺の憶 -
184.1 第173話【前編】
3-173-1.mp3
時刻は正午となった。携帯を見た椎名は、力なく首を振った。
「梨の礫か…。」
「こうなったからには、朝戸は捨てます。朝戸は発見次第排除お願いします。」
百目鬼に椎名が応えた。
「朝戸の合図を持って事が始まるんだろう。」
「私の統制下で事を起こす分には、それは制御可能ですが、事態はそうではありません。なので危険は排除しましょう。」
百目鬼は隣に居た片倉と目を合わせてひと言。
「わかった。」
これに椎名は頷いた。
「逮捕とか考えなくて良いです。その場で排除してください。」
「って言ってもな、俺らはそんなに簡単に民間人を殺傷できんのだよ。」
「なにも殺せと言っていません。朝戸を発見次第、片腕、片足を打ち抜いてください。物理的に何もできなくさせます。」
随分具体的な指示だな。そう呟いた百目鬼だったが、これに関しては椎名の言ったとおりに行動するよう現場に指示を出した。
「ん?どうした。」
ふと椎名を見ると彼はしきりに目をしばたたかせたり、擦ったりしていた。
「すいません。まつげか何かが入ったようです。トイレで顔洗ってきていいですか。」
「ああ。」
椎名は監視員と一緒に部屋から出て行った。
ドアを閉める音
「さてどうしたもんか。」
「どうしたもんでしょうね…。」
片倉が浮かない顔で百目鬼に応えた。
「まぁ作戦開始の合図を出せない状況さえ作ってしまえば、テロの筋書きを壊せるわけだから、あとは朝戸の排除に戦力を集中させれば良いんじゃないかと思えてきた。」
「でもそれだと上層部の言っている、関係者一斉検挙は難しくなるかと思います。SATも椎名案を採用したことですし、ここにきて作戦の変更はどうかと。」
これには百目鬼は口をへの字にして、一息ついた。
「お偉方のことは話半分でいいさ。事が起こっちまって、収拾不能になったらそれどころじゃない。それくらいはお偉方も分かってる。」
「しかし…。」
考えに考えた結果だと百目鬼は言った。
「とにかく失敗がこわいんだ。あいつらは。無謬性を求めるがあまり、ついついあれもこれもってどうでも良いものまで求めてしまう。結果どれも中途半端で失敗すんのにな。」
「役人根性ですか。」
「ああ。俺らもその役人なんだけど。」
「しかし、だからといって朝戸排除だけに専念しても、それで危険が完全に消えるわけではありません。テロは奴の合図で始まるって事になっていますが、仮に奴がこのままどこかに姿をくらましたところで、本当にテロは実行されないなんて考えられない。相応の人員がこれにかり出されているんです。」
「だろうな。そのままもし撤収となっても、それだけの人員が金沢駅周辺に18時時点で展開しているんだ。何かしらバレる。足が付く。絶対に。」
「はい。それに朝戸のように暴発する奴が出でもおかしくない。」
「だとすればこのまま朝戸の合図無しにテロを強行する可能性は捨てきれない。」
片倉は頷く。
「SATについては、このままの作戦でいく。」
「そうですね。」
「朝戸が消えた現在、椎名の統制は当てにならない。状況がエスカレートする可能性があるってわけか…。」
「どうするんですか。」
「上層部に事前に了承をもらっておく必要があるだろう。」
「何を?」
「椎名の言っていた奴だよ。」 -
183.2 第172話【後編】
3-172-2.mp3
腕時計に目を落としていた男が顔を上げると、前に居た男が頷いた。
ガラガラガラっと民泊の玄関扉を開くと、どこからともなく二人の背後から6名程度のアウトドアウェア姿の男らが現れ、物音ひとつ立てずに宿の中に全員流れ込むように入っていった。
「ごめんくださーい。」
「はーい。」
しばらくして奥から宿の主人が現れた。主人は目の前に突然屈強な男らが大勢現れたことに、驚きのあまり腰を抜かした。
「こちらに朝戸さんって方、泊まってらっしゃるでしょ。」
「あ、あ…。」
声すら出せない主人の驚きようだ。
「どちらに居ますか?」
この質問に主人はなんとか首を振って応える。
「わからない?」
これには頷いて応えた。
「そんなはずはないんだよなぁ。」
ちょっと中調べさせてもらうよと言って、主人は猿ぐつわをされ、両手両足を縛られた。
「はじめるぞ。」
リーダー格の男が握った拳を広げると、全員が宿の中に散らばった。彼らは手に拳銃のようなものを持っていた。
ただの民泊だ。朝戸を探すと行っても、時間はかからない。リーダー格の男は主人を前にどっかと腰を下ろして、報告を待った。
先ず、一階の捜索をしていた者たちがこちらに戻ってきた。彼はリーダーに向かって首を振る。
「わかった。ここで待機せよ。」
「了解。」
それから間もなく二階の捜索をしていた者たちが戻ってきた。彼らも首を振った。
「何だって?」
どこかに隠れているのかもしれない。再度入念に調べろとリーダーは全員に指示を出した。
ふと横に転がっている主人の様子を見ると、どこか笑っているように見えた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「なに…居ない…。」
民泊からの報告を受けた一郎の声が神谷に届いた。
「その民泊からの脱出経路があるはずだ。虱潰しに調べろ。」
神谷と卯辰兄弟がビル屋上からエレベーターに乗って事務所に移動中の時だった。
エレベーターの扉が開く音
「朝戸が消えたのか。」
「はっ。例の拠点に外への脱出経路が用意されていたと想定されます。」
「敵も然る者。」
「いかにも。」
「脱出経路を抑えたら、その先も抑えねばならんな。」
「はい。」
「人手がウチらだけでは足りないか…。」
「隠密行動なら事足りますが、大がかりになると無理かと。」
「すぐに公安特課に指示を仰ぐ。一郎は脱出経路の調査と、その先を抑えてくれ。」
「はっ。」
「くれぐれも注意せよ。」
「了解。」
「カシラ。」
次郎が神谷を呼ぶ。
「なんだ。」
「これで連中が動きを早めると言うことはありませんか。」
「ないとは言えないな。」
「ヤドルチェンコの警戒を強めます。」
「ああ頼む。」
「あと比例してアルミヤプラボスディアが早期に動く可能性も見越して、部隊に早めの待機を命じます。」
「ああそうしてくれ。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「そうか…失敗か…。」
「はい。現在、脱出経路の探索をしています。しかしその脱出先の探索となると、現状の我々の人員では無理です。」
「わかった。先は公安特課で対応する。お前さんは早急にその脱出経路を特定してくれ。」
「了解。」
それでは仁熊会はアルミヤプラボスディア対応に全てのリソースを振り向けます。そ -
183.1 第172話【前編】
3-172-1.mp3
「わかりました。公安特課が一時的に居なくなる隙を狙って、突入します。」
「現場の報告によると、今現在、対象の民泊で働いているのは、そこのオーナーただひとり。利用者も朝戸一名や。」
「環境は整っているというわけですね。」
「ああ。ほうや。事前に潜入しとったトシさんが見る限り、特段、武装しとるふうには見えんかったようや。が、油断は禁物。施設にどういった仕掛けが施されとるかわからんしな。」
「了解。」
ふと神谷は時計を見た。時刻は8時20分だ。
「こちらは0830(マルハチサンマル)をもって拠点制圧を開始します。」
「頼む。」
神谷は側の一郎にその旨を即座に指示した。
「アルミヤの方は何か分かったか。」
「金沢駅近辺にあった奴らの痕跡が一斉に消えました。」
「消えた…。」
「はい。攻勢の前触れかと。」
「それは自衛隊の方も把握しとれんろ。」
「勿論です。ただ…。」
「ただ、なんや。」
「例の影龍特務隊が気になりまして。」
「気になるとは。」
「中国語で会話をするビジネスマン風の人間がちらほらあるようです。」
「金沢駅にか?」
「はい。同様に観光客も居ます。」
「…わかった。頃合いを見てその中国人らに声をかけるようこちらから現場に指示を出す。」
「はい。」
「神谷。ところでお前は今はどこや。」
「機密上それは言えません。」
神谷は電話を切った。
昨日の天気が嘘のようだ。雲の切れ目からまばゆいかぎりの日の光が街を照らす。雨で濡れたそれらが反射によってさらに輝く。
美しい。そして静かだ。
この穏やかな状況がこのまま保たれれば、どんなに良いことであろうか。
神谷は、金沢駅近くのビルの屋上に居た。
「カシラ。」
次郎が神谷に声をかけた。
「何だ。」
「ヤドルチェンコの居所がわかりました。」
「なにっ。」
「奴はいま小松に居ます。」
「小松?」
「小松駅近くのホテルです。雨澤のダンナの解析を手がかりにホテルを虱潰しに当たったところ、突き止めました。」
「なるほど…」
神谷は眼下にある金沢駅から北西に延びる沿線を見やった。
「本体は大胆にも鉄道でやってくる可能性があるということか。」
「はい。しかしいくらボディチェックがないとしても、それでは相応の武器を運搬することは不可能かと思います。」
「ならば現地の近くに武器庫があるか…。」
「おそらく。」
「もしくは鉄道移動はヤドルチェンコのみ。他は既に散り散りにすでにスタンバっているとか。」
「そのほうが現実的でしょう。」
「ヤドルチェンコは俺から公安に情報を入れておく。次郎は一旦ヤドルチェンコからは手を引け。」
「はっ。」
「たった今からお前は一郎のフォローに重点を置け。雨澤は別の人間に引き継ぐが良い。」
「はっ。」
さてと言って、神谷は双眼鏡で金沢駅をのぞき込む。
「トシさんと相馬…。」
交番から古田と相馬が肩を並べて出てきた。古田は待ちきれずに喫煙所に付く前から煙草に火を着ける。方や相馬は煙草を吸わないため、手ぶらだ。彼らはそのまま近くの喫煙所へ吸い込まれていった。
視点を交番の中に移すと、若い男性2名が見えた。
「あれが自衛隊特務の二人か…。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
喫煙所に到着したタイミングで、古田は煙を吐いた -
182 第171話
3-171.mp3
- 椎名はテロ実行直前までチェス組と連携し彼らをエスコートする。そこに警察は介入しないこと
- 実行直前に公安特課の出番をつくるので、相応の人員を用意すること
- 空閑と朝戸にはしっかりと専任者を配置し、勝手な動きをしないよう監視を強化すること
- サブリミナル映像効果を少しでも薄めるため、こちらで用意した動画をちゃんねるフリーダムで短時間で集中的に配信すること
- テロは爆発物によるものであるはず。可能性を徹底的に排除すること
- 朝戸がテロの口火を切る行動をし、その後にヤドルチェンコがウ・ダバを使ってさらにそれを派手なものにする手はずである。したがってウ・ダバらしき連中の行動はつぶさに報告を入れること
- その他現場サイドで気になることがあればすぐさま椎名に連絡し、その判断を仰ぐこと
これが当初、椎名から警察側に要請されていたことだ。
空閑が保持してるであろう鍋島能力に関することも、今回の警察が椎名を隔離することも一切取り決めがない。
「だからと言ってここで椎名を完全隔離ってのは…。」
百目鬼は困惑した。
「理事官。椎名はまだ何かを企んでいます。」
腕を組んで片倉の顔をちらっと見た百目鬼は大きく息をついて視線を逸らした。
「椎名と話してくる。」
ドアが閉まる音
「空閑は鍋島能力を持っている。これは間違いないか。」
しばらく間を置いて椎名。
「間違いないかどうかは私にも分かりません。どうやらそのようだとしか。」
「お前自身、確証がないのか。」
「はい。未だに半信半疑です。」
空閑は鍋島能力を身につけている。この情報を得た椎名はダメ元で大川説得にその能力を使って見ろと指示を出した。結果それは功を奏したわけだが、椎名にとって空閑の持つ能力については未だ信用に足らないらしい。
「だから試してみたかった。」
「さすが百目鬼理事官。その通りです。」
百目鬼は大きく息を吐いた。
「鍋島能力に関しての取り決めがないんだから、その能力が本当にあるのか、使えるものなのか。そういった実験をするのも椎名、お前の自由だと?」
「はい。私は一方的にこのような完全隔離状態にされているんですから。」
百目鬼は二度頷いた。
「片倉。こういうことだそうだ。」
「はい。」
片倉の返事が部屋にあるスピーカーから聞こえた。
「椎名、残念やったな。サングラスかけて空閑の対応したら、鍋島能力の有無は検証できんぞ。」
「だから参りましたと言いました。」
「いまから空閑を逮捕する。」
「ご自由にどうぞ。空閑は紀伊に命じて光定を殺害せしめました。」
「…。」
この椎名の言葉に片倉からの返事はなかった。
「ここで空閑が消息を絶つと、朝戸やウ・ダバの連中に怪しまれないか。」
百目鬼が椎名に聞いた。
「問題ありません。自分が制御します。」
「…。」
椎名の目を見つめて黙った百目鬼だったが、彼はおもむろに一台のスマートフォンを椎名の前に差し出した。
「解析が終わった。これはお前に返す。」
「…。」
「お前さんが制御するんだろう。」
「片倉さんが黙っていませんよ。」
「あいつは俺の部下だ。」
しばらく黙って椎名はそれを受け取った。
「百目鬼さん。」
「なんだ。」
椎名は声に出さずに口を動かした。
その動きを見た百目鬼は手元にあるスイ -
181.2 第170話【後編】
3-170-2.mp3
「っくしょん!」
パソコンの前に座ったままで目を瞑り、軽く睡眠をとっていた椎名はくしゃみによって目を覚ました。
自分の体調について尋ねる声はない。椎名を監視しているはずの片倉や岡田といった連中も今は眠っているのかもしれなかった。
しかしこちらから向こうの様子は見えないので迂闊な言動は慎むべきだ。とりあえず椎名はSNSのタイムラインを流し読みすることにした。
ハッシュタグ立憲自由クラブでフィルタリングされたそこには、日章旗と旭日旗が入ったアイコンがよく見られる。その中で椎名は「日本大好き」という名前のアカウントが時々ポストしているのを発見した。
やるしなかない
戦うしかない
完全にもう俺らは米帝の植民地だ
出たとこ勝負でもいいじゃないか
全ては行動あるのみ
何か薄ぼんやりとした何かを鼓舞するポストだ。
椎名は即座にこのポストを縦読みする。
ーや た か で す
続けて日本大好きアカウントは以下のポストをした。
川岸からの合図で動くとしよう
ー川岸…岸…。騎士…ナイトか。ナイトの合図で始まると言うことだな。
桃は未だ見ず
ー桃…?
椎名は一瞬考えたが、すぐにそのポストの意味を把握した。
ー桃…ピンクか…。ピンク稼業はヤドルチェンコの表の姿。そうか、ヤドルチェンコの行方は矢高もまだ把握できていないか…。
ー上々だ。これは面白くなってきた。
「お、椎名起きてたか。」
タイムラインをぐりぐり下の方まで移動しながら椎名はこの声に応えた。
「すいません。すこし寝てました。」
「あぁ俺も今起きたところや。」
「久しぶりにカツ丼食ったら、急に眠くなってしまって…。」
「あぁ俺も。夜中にあんな脂っこいモン食ってもたれてしまうかと思ったら、しばらくして急に眠くなっちまってな。今起きたンやけど、案外すっきりしとる。」
「お若いですね。自分は少々もたれています。」
他愛もないやりとりをした。
「で、どうや。なにか動きはあったか。」
「いや。目立ったものはありません。」
「これからお前さん、どう出る。」
「まず朝戸を現地まで誘導します。」
「いつ、どうやって。」
「昼過ぎにいまの宿を出てもらって、駅近くのどこかの店で待機してもらいます。」
「どこにする。」
「お任せします。その店に誘導します。」
「わかったこちらで選定し、お前に指示する。」
片倉は合わせて空閑に関する対応についても、椎名に意見を求めた。
「空閑はこのまま放置します。頃合いを見て逮捕してください。」
「頃合いってなんや。」
「片倉さんのタイミングで結構です。」
「…。」
この間に椎名は反応した。
「いかがされましたか。」
「随分あっさりとしとるんやな。」
「駄目ですか。」
「…いや。」
「空閑逮捕に関する注意事項はないか。」
「彼は男前です。くれぐれもその誘惑に気をつけてください。」
「…。」
片倉は沈黙で応えた。
ー知ってるな。この様子。
「椎名。」
「はい。」
「サングラスはかけていった方が良いかね。」
「サングラス?え?なんで?」
「あぁサングラス。あれ?お前知らんがか。」
「え?なんですか?」
「鍋島やって鍋島。」
ーやはり分かっていた…。しかしどうしてサングラスをかけろって話なんだ。
「鍋島能力の発動はその目からくるもんやっての
カスタマーレビュー
おもしろいのは当然としても
世界情勢や政治・経済、警察内部の事 どれだけの知識が!と
これが本職では無いと言う 闇と鮒さんに驚嘆する。
物語内の創造物であろうと思っていた『ノビチョク』や『ウルトライブン』は
実際のものであったし…。
とにかく毎回ドキドキが止まらない。
いま最も熱いラジオドラマ
ラジオドラマを求めてポッドキャストを検索したところこちらの番組を見つけました。 続き物であり、シーズン1と2、そしてこちらのシーズン3があります。 各作品から登場人物が密接に繋がっているので、1から聴くことをお勧めします。 この作品の魅力をひと言で言うなら、「敵側の底知れない悪意と知性」が丁寧に描かれていることです。 敵が藤井聡太並みに先の先まで読んで、情け容赦なく追い込んできています。 次どんな展開になるのか、全く読めません。 サスペンス好きには堪らないラジオドラマになっています。 こんなに面白いのに、まだバズっていないことにラジオドラマという媒体の限界を感じます。
ここまできた!
シーズン1から始まり、よいよ、五の線3まで来ました。
古田さん大好き頑張れー!
ほんまにハマります。
ただ、最後に向かうにつれ、オカルトチックの話がくどくなってきた感がありました。