ブックカタリスト

goryugo

面白かった本について語るポッドキャスト&ニュースレターです。1冊の本が触媒となって、そこからどんどん「面白い本」が増えていく。そんな本の楽しみ方を考えていきます。 bookcatalyst.substack.com

  1. 12月16日

    BC129 2025年の配信を振り返る(前半)

    いよいよ、12月です。 年末恒例の「一年の配信を二人で振り返ってみよう」企画。今回は、2025年の1月から6月までの配信を振り返りました。 もしご興味あれば、以下のリンクからそれぞれの配信に飛べますのでチェックしてみてください。 * 2025年01月28日 BC106『訂正可能性の哲学』と自己啓発 * 2025年02月11日 BC107 『結婚の社会学』 * 2025年02月25日 BC108『「学び」がわからなくなったときに読む本』 * 2025年03月11日 BC109『脳と音楽』 * 2025年03月25日 BC110『エスノグラフィ入門』 * 2025年04月08日 ゲスト回BC111 えむおーさんと『庭の話』 * 2025年04月22日 BC112 『脳と音楽』後編 * 2025年05月07日 BC113『読書効果の科学: 読書の“穏やかな”力を活かす3原則』 * 2025年05月20日 BC114『イスラームからお金を考える』 * 2025年06月03日 BC115『心穏やかに生きる哲学』 * 2025年06月17日 BC116『体内時計の科学』 自分を揺さぶる読書 本編でも「学び」について触れていますが、本を読むことは、知らなかった知識が増えて、+1賢くなった、みたいなことだけが効能ではありません。仮にそうしたものを雑学的効能と呼ぶならば、「えっ、そんな考え方があったの!?」と驚き、今までの自分の価値観・物の見方に再編を迫られるような経験が得られることも効能であり、「学び」の第一歩はそういうところから始まるのではないかと思います。そうしたものは変身的(メタモルフォーゼ)効能と呼べるかもしれません。 そうした効能を得た直後は、私たちは言葉を失います。今までの語彙ではそのこと(経験や本そのもの)について語ることができなくなるのです。しかしまったく語れないわけではありません。それを語るための言葉を集め始める・つくり始める必要があるというだけです。 安直な言語化信仰が危ういのはこの点です。そんなに簡単に言語化できるなら、たぶん何も変身は起きていません。単にそれまでの自分の思いを強めただけです。 言葉にならないような経験があり、それでもなお、それを言葉にしていこうと時間をかけて取り組むときに生じる振動があって、それがネットワークを大きく組み換えていくのだと思います。 これは、知識を増やして賢くなろう的な教養主義ではなく、自らを変化にさらしていくというプラグマティックな生存戦略です。「生きる」ために切実に必要なのです。 というわけで、次回は2025年の後半の振り返りです。 ちなみに去年の振り返りは以下です。 告知: 第七回のJAPAN PODCAST AWARDSの投票がスタートしております。 ◇第7回 JAPAN PODCAST AWARDS 「一次選考」投票フォーム もし当ポッドキャストを気に入っていただけているなら投票お願いいたします。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

    1時間11分
  2. BC128『NEXUS 情報の人類史』

    12月2日

    BC128『NEXUS 情報の人類史』

    面白かった本について語るPodcast、ブックカタリスト。 今回は、『NEXUS 情報の人類史』について。 本編でも話していますが、この本の著者であるユヴァル・ノア・ハラリ氏が書いた『サピエンス全史』は、ごりゅごの「ブックカタリストを始めるきっかけになった本」でした。 その著者が書いた本を、今回は「面白かった」以上の感想を述べてまとめることができた。 まあ、これだけで目標達成というか、なにか大きな壁を越えたような達成感を味わうことができました。 しかもこれ、2025年のブックカタリストで最後に紹介する本でもあったりして、そういう意味でも非常に感慨深いです。 内容に関しては、もう本編聞いてくれ、という感じですが、今回の本はサピエンス全史よりもずっと「誰もが読む価値がある本」だと思います。 上下巻合わせて買ったら5000円くらいになるので、高いと感じる方は図書館で借りてきたらいい。(人気の本なので高確率で本はあるし、おそらく貸し出しの波はもう落ち着いている) ちゃんと2025年の最後に、2025年のベスト本を紹介できるおれ、見事やん、と自分で自分を褒めたい! そんな本です。 今回紹介した書籍のリンクなどははこちらから→📖ブックカタリストで紹介した本 - ナレッジスタック - Obsidian Publish This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

    1時間10分
  3. 11月18日

    BC127『哲学史入門Ⅳ』

    今回は、倉下が『哲学史入門Ⅳ』を紹介しました。 一般向けの哲学紹介本の中でも、本書は一味違った楽しさがあります。 書誌情報 * 出版社 * NHK出版(NHK出版新書) * 発売日 * 2025/9/10 * 編者 * 斎藤哲也 * 人文ライター。1971年生。東京大学文学部哲学科卒業。著書『試験に出る哲学』シリーズ、『哲学史入門』シリーズ(NHK出版新書)、監修に『哲学用語図鑑』(プレジデント社)など。 * 目次 * 序章 倫理学に入門するとは何をすることなのか(古田徹也) * 第1章 現代に生きる功利主義―誰もが幸福な社会を目指して(児玉聡) * 第2章 義務論から正義論へ―カントからロールズ、ヌスバウムまで(神島裕子) * 第3章 徳倫理学の復興―善い生き方をいかに実現するか(立花幸司) * 第4章 なぜケアの倫理が必要なのか―「土台」を問い直すダイナミックな思想(岡野八代) * 特別章 「地べた」から倫理を考える(ブレイディみかこ) 構成は、編者による解説+研究者へのインタビューで、両方読むとよくわかるようになっていますが、インタビューだけを読んでも楽しめると思います。ざっくばらんな雰囲気と、論文などではあまり見えてこないそれぞれの研究者の「人間くささ」が伝わってきます。そして、本シリーズを通して読むと、哲学というのは「人間の営みなのだ」ということがよくわかります。 でもって、このⅣはまさにその「人間」に焦点を当てています。 倫理学の必要性 現代ほど倫理学の視点が大切な時代はないでしょう、と書くといささか大げさめいていますが、それでも科学の発達で「人間の拡張」の可能性が開かれたり、LLMの登場で「人間知性の拡張」が現実味を帯びてきた中で、「そもそも人間とは何か、人間として生きるとはどういうことか」を問うことは欠かせないように思います。 また、インターネットとスマートフォンの普及によって、これまでになかった規模や範囲で人と人の交流が生まれるようになっています。人間(じんかん)を捉える視点が、これまで長く続いてきた社会とは大きく異なりはじめているわけです。目の前に顔が現れ、文脈を共有し、共感が働きやすい共同体とは違った関係において、その関係を維持したり、よいものにしたりする能力を磨くことも必要でしょう(少なくとも生得的な能力としては持っていなさそうです)。 加えて言えば、現代では市場原理があまりにも強くなり過ぎています。あたかも「原理」がそれしかないかのように扱われています。しかし、アダム・スミスが道徳を論じたように、市場に参加する人の感情的能力があってこそ成り立つものがあるはずです。それを無視して、システム=メカニズムを整備すればうまくいくという考え方は、あまりにも見過ごしてしているものが多いと感じられます。 そのような単一の原理の一強体制は、市場だけに限りません。本編でも触れたように「正義」の原理だけが重視され、ケアの倫理が無視されてきた歴史も同様でしょう。もちろん、それぞれの時代においての最善はなされてきたのだと思います。だからといって、それをこだまのように繰り返せばいいとは言えません。「解釈と批判」を続け、その時代に必要な新しい視点を確立していく必要があります。 というよりも、そのような営みをずっと続けてきたのが「人間」なのかもしれません。だとすれば、「人間」の終焉がありえるとしたら、そのような営みが閉じられるタイミングなのでしょう。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

    1時間28分
  4. 10月21日

    BC125『とっぱらう 自分の時間を取り戻す「完璧な習慣」』

    今回は倉下が 『とっぱらう 自分の時間を取り戻す「完璧な習慣」』を紹介しました。 コテコテの自己啓発感のあるタイトルですが、内容はもっとずっと身近で、役立つ考え方が提示されています。 書誌情報 * タイトル&出版日 * 『とっぱらう――自分の時間を取り戻す「完璧な習慣」』 2025/6/18 * 『時間術大全 人生が本当に変わる「87の時間ワザ」』 2019/6/20 * 原題 「MAKE TIME How to focus on what matters every day」 * 著者 * ジェイク・ナップ&ジョン・ゼラツキー * 翻訳 * 櫻井祐子 * 出版社 * ダイヤモンド社 * 目次 * ■INTRODOCTION――これが「時間オタク」の全技術だ * ■Highlight/ハイライト * ■Laser/レーザー * ■Charge/チャージ * ■Tuning/チューニング * ■「いつか」を今日にする 概要 本書は大きく二つの層で話が展開されます。 一つは、「自分にとって大事なことをする時間をもっとつくる」ためのシステムの解説。もう一つは、それぞれの文脈で展開される個々のテクニック。後者はいわゆる「ライフハック本」の内容と重なるものが多いですし、既知のものもたくさんあるかもしれません。 というわけで、今回は前者の「システム」に注目しました。もう少し言えば、そのようなシステムをいかに構築するのかというアプローチです。 ライフハックを料理のレシピだと考えれば、レシピ本を買ってきてそこにあるレシピを一気に習得しようとする人はいないでしょう。何か気になるレシピを一つ選び、実際につくってみる。その結果を確かめて、次回つくるときにちょっと変えてみる。そういう繰り返しで、少しずつレシピのバリエーションを増やしていくと思います。 本書で提示されるたくさんの戦術も同様だと著者らは述べます。何か一つを選び、実際に試してみて、その結果を踏まえて、また試す。それを繰り返すことで、少しずつ自分が使える戦術のレパートリーを増やすのがよいのだと提示されます。 私もまったく同意見です。そのテーマで自分でも一冊本を書きたいくらいです(『ロギング仕事術』はそういう側面を少し持っています)。 そう考えると、著者らは面白い仕事をしたことになります。 一方では、バラバラに散らばっているライフハック的なテクニックを、「自分にとって大事なことをする時間をもっとつくる」という大きなシステムの下位要素に位置づけました。雑多なテクニックが乱雑に並んでいるのではなく、大きな文脈のもとで統制した形です。 もう一方では、そうした個々の戦術を体系立ててまとめることまではしませんでした。提示したのは、大きな枠組みがどうあるのか、という点だけであって、具体的な戦術レベルまでの規定はせず、著者らが言うように「何かを選んで、試す」というアプローチが採用できるようになったのです。 この点は、たとえばGTDというメソッドが、下位要素のどれか一つだけを選んで試してみたらいい、という促し方をされない点と対比的に感じられます。 別の言い方をすれば、「メイクタイム」システムの発想は、細部まで体系だった構造を作ったというよりは、大きな枠組みだけを提供する「ライフハックのプラットフォーム」づくりだったと言えるかもしれません。 実に面白い仕事ですね。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

    58分
  5. 10月7日

    BC124『ランニングする前に読む本』

    面白かった本について語るPodcast、ブックカタリスト。 今回は、ごりゅごの「運動の神話シリーズ」です。 『ランニングする前に読む本』という名前の、スロージョギングの利点や、その具体的な方法などについて語りつつ、最終的に「フルマラソンでサブスリー(3時間未満のタイム)」を目指す本。 といっても、ごりゅごは今のところフルマラソンを走ろうなんてことは微塵も考えていないし、そもそも長距離のレース、というのもにはまったく興味はありません。 あくまでも視点は「いかに楽に健康で健全な肉体と精神を手に入れるか」というもの。(これは、今までのシリーズすべてで共通の考え) また、今回のポイントは「読み終えた直後」じゃなくて、100日以上きちんとスロージョギングを継続し、その上で得られた知見を語ったことなのではないかな、と思っています。(100日以上前からやっているけど、毎日走った、というわけではない。ある時期からは2日に1回で安定) 当然発見はとにかくたくさんあって、自分自身の「長距離走の走り方」というのはすごくイメージが変わったし、「3ヶ月でここまで伸びるのか」と本当に心の底から驚くレベルで「進歩」したりもしました。 BC101 『プリズナー・トレーニング』と、今回のスロージョギング。この2つで「現代の都市生活を送る人類が達成すべて着運動基準」をクリアできて、どっちも「大して辛くないのに成果が見えやすい」という観点で、とてもオススメです。 こういうのはやっぱ「いかに頑張らずに楽しむか」 これさえできれば、継続は簡単にできるのではないかと思います。 今回紹介した書籍のリンクなどははこちらから→📖ブックカタリストで紹介した本 - ナレッジスタック - Obsidian Publish This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

    1時間4分
  6. 9月23日

    BC123『「書くこと」の哲学』

    今回は佐々木敦さんの『「書くこと」の哲学 ことばの再履修』を倉下が紹介しました。 さまざまな「技術」を学ぶ前に、触れておいた方がよい話がたくさん織り込まれています。 書誌情報 * 著者 * 佐々木敦 * 日本の映画評論家・音楽評論家・文芸評論家・時事評論家、小説家。雑誌編集者。 * 出版社/レーベル * 講談社/講談社現代新書 * 出版日 * 2025/6/19 * 目次 * 第一部 「書けなさ」から脱出するためのマインドセット/マインドハック * 第一講 日本語を「外国語」として学びなおすこと * 第二講 「ことばにできないもの」はどこにあるのか? * 第三講 書いてはならない? * 第四講 上手な文章、下手な文章 * 第五講 ことばの多様性 * 第六講 ロジックとレトリック * 第七講 話し言葉と書き言葉 * 第八講 反射神経について * 第九講 スローライティング * 第十講 ことばと思考 * 第二部 書き終えるまで * 第十一講 書き始めるまえに * 第十二講 書き始めるために * 第十三講 書き進めるために * 第十四講 書き続けるために * 第十五講 書き終えるために * 第十六講 書き終えたあとに * 補講一 人称について * 補講二 外国語について * 「書くこと」の倫理について──あとがきを兼ねた補講三 生成AI時代の「書く」 「あなたが書けないのはこれが理由です。この方法を使えばその理由が解消されて、あっという間に書けるようになります!」 と謳うノウハウ書は、たいへんありがたみを感じるものの、実際的な"効能"は限定的です。なぜなら「書けなさ」の多様性がまるっと無視されているから。 本書を読めば、一口に「書けない」といってもさまざまな状態があり、またさまざまな解釈がありえることがわかります。一言で言い表せない様態がある。それは、個々の人間が身体=歴史を持つ固有の存在だからでしょう。単純に言えば、ひとそれぞれなわけです。 たった一つの方法で「問題」を一刀両断する態度が、人の多様性をも一刀両断するのだとすれば、たった一つの書き方が正しいとする態度もまた、人の多様性を損ないかねません。 しかし、まさに現代はそのような態度の存在感が増している時代でもあるでしょう。それはここ数年で突然出てきた傾向ではなく、ある時期以降にじわじわと広がってきた傾向が生成AIの登場と共に急激に閾値を超えた現象だと感じられます。 なにせ今はもう「わかりやすい文章を書くためのわかりやすい方法」すら必要ありません。単に依頼して書いてもらえばいいのです。そこには「書けないこと」への悩みや葛藤など皆無です。とてもなめらか(スムーズ&スマート)な環境が広がっています。画一性の静寂。 2025年において、自分の手で文章を書くこと──それは生成AIの手助けを全否定することを意味しません──の意義は、そうした「なめらかさ」への抵抗だと考えることができるかもしれません。 いかに凸凹を生み出すのか、あるいは育むのか。 それを考えたいのです。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

    1時間14分
  7. BC122『私たちの戦争社会学入門』

    9月9日

    BC122『私たちの戦争社会学入門』

    面白かった本について語るPodcast、ブックカタリスト。 今回は、ごりゅごのブックカタリストで紹介する本の中での「社会派」枠と言える本です。 近いところだと、以下の2つなんかが自分的に「同じ枠」だと言えるもの。 * BC114『イスラームからお金を考える』 - by goryugo - ブックカタリスト * BC107 『結婚の社会学』 - by goryugo - ブックカタリスト 自分の場合この他に主なジャンルとして「健康・運動系」だとか「音楽系」「脳科学・心理学系」「進化人類学系」「哲学の入門的なもの」あたりがあげられるかな。 なんだかんだと、自分の紹介した本で言えば50冊以上を整理してみると、ほとんどの本がなんらかの場所に配置できる。 だいたいどれも「似たようなもの」になってくる。 決して狙っているわけじゃないんだけど、やっぱり続けているとこうやって傾向が見えてくるというのが、個人的にもとてもおもしろいところだな、と思います。 さらに言うと、最近は脳科学・心理学だとか、進化人類学系は、読む頻度も、紹介する頻度も減っていることに気がついたりもしました。 こういう緩やかな変化なんかも、少しずつでも「続けていること」から見つけられることなんじゃないのかな、なんてことも思った次第です。 今回紹介した書籍のリンクなどははこちらから→📖ブックカタリストで紹介した本 - ナレッジスタック - Obsidian Publish This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

    1時間10分
4.5
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