Webコンサルタント中山陽平の「中小企業を強くするWebマーケティングラジオ」

ラウンドナップ・Webコンサルティング 代表 中山陽平

WebマーケティングやWeb活用で手が止まってしまったり、悩んでいる中小・小規模事業者の皆様へ、根本的なウェブに対する考え方・捉え方をお届け。

  1. 18H AGO

    第579回:AI時代にメールマーケティングはどうなっている?意義はある?しっかり「効果」も「意義」もあります

    ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。 この記事で得られること このページでは、AI時代におけるメールマーケティングの現状と、これから何を変えるべきかをまとめています。ざっと目を通してもらうと、次のようなポイントが整理できます。 チャットツールやSNSが増えても、メールマーケティングが依然として強い理由と、今後5〜10年の見通し 送信側と受信側、それぞれでAIがメールに与えている具体的な影響と、テクニック頼みが通用しにくくなる背景 これからのメールマーケティングで押さえるべき設計の考え方と、実際の始め方・ツール選定のポイント 結論から言うと、メールマーケティングは今も主力チャネルであり、AIによって「やりやすくなる部分」と「ごまかしが効かなくなる部分」がはっきり分かれてきています。テクニックを盛る前に、サービスや商品の設計と、要約されても伝わるメール内容に切り替えることが重要になります。 メールマーケティングは「終わらない」どころか、むしろ強くなっている AIの話題やコンテンツマーケティングの話題は増えていますが、その陰でメールマーケティングはあまり語られなくなっています。チャットツールやSlackのようなものが普及し始めた頃から「そろそろメールは厳しいのではないか」と言われ続けてきましたが、現場感としてはBtoBを中心にメール経由のコミュニケーションは依然として非常に強いチャネルのままです。 「メールが弱くなった」と言われるケースの多くは、社内連絡や既存顧客との日常的なやり取りの話です。そこは確かにチャットツールに置き換わりました。しかし、見込み客へのセールスや情報提供のチャネルとしては、メールの代わりになるものは出ていません。 一時期、BtoCではLINEなどのメッセージングアプリがメールの代替になるのではないかと言われました。LINE公式アカウントからクーポンやお知らせを送るような取り組みは成立していますが、メールマーケティングでやっているような「濃いコミュニケーション」までは置き換えられていない状態です。 理由はいくつかありますが、大きいのは公私の切り分けです。メッセージアプリはどうしてもパーソナルなやり取りのイメージが強く、セールスや会社からの情報と混ぜたくない、という感覚があります。LINEの有料プランなどを使えばプロフィールを分けることもできますが、あまり親切な設計にはなっておらず、現実としてはメールが使われ続けています。 既存顧客との継続的な接点としても、特にBtoBではメールが主力のままです。代替手段とされてきたチャットやメッセージアプリが、売上面で決定的な成果を出しているかというと、そうはなっていません。こうした状況を見ると、メールは今後しばらく主力チャネルであり続けると考えてよいです。 加えて、ゼロクリックサーチ(検索結果の要約だけ見て、サイトには来ない検索行動)やブランド検索の増加によって、ユーザーは「信頼できる会社や個人を見つけたら、そこからの情報だけを追う」という行動に寄っていきます。その時にダイレクトに届く手段としてのメールは、むしろ価値が上がっていると言えます。 送信側のAI活用:ツールを変えるだけで変わる部分 AIとメールの関係でまず押さえたいのが、送信側のAI活用です。ここは昔から「最適化」という文脈でいろいろな機能がありましたが、今はそれが本格的にAIとして組み込まれたツールが増えています。 AIで楽になる仕事:コンテンツ作成と配信のPDCA Validityのレポート「The State of Email 2025 from Litmus」と、それを参照しているNukesendの「2025 AI Email Marketing Trends」などによると、メールキャンペーンでAIを使っているマーケターはすでに多数派で、クリック率や売上でも非AIより良い結果が出ていると整理されています。 メールマーケティングは、やろうとするとどうしても手がかかるチャネルです。件名を考え、本文を書き、配信時間を決めて、ABテストをして、ステップメール(あらかじめ決めたシナリオで自動配信するメール)を設計して……と、ひと通りやろうとするとかなりの工数になります。 そこで今大きく効いているのが、コンテンツ作成と配信のPDCAに対するAIの支援です。 件名の案出しとテストパターンの生成 配信時間の最適化(読まれやすい時間帯の自動判定) ステップメールやキャンペーンシナリオの構成案やトピック案の生成 こういった部分はAIが非常に得意です。海外の調査では、メール1通を作るのに平均2週間ほどかかっていたものが、AIの活用によって6分の1程度まで短縮されたというデータも出ています。コンテンツ作成がボトルネックでメールマーケティングに踏み出せなかった方にとっては、今はかなり良いタイミングになっています。 これまで、ステップメールのシナリオ作成や、メール登録+ダウンロードコンテンツのようなフロントエンド商品づくりが重くて手を付けられなかった場合も、今はAIを活用することで一気に形にしやすくなります。メールの中身を考える負荷が下がるので、「やりたいけれど時間がない」状態から抜けやすくなります。 AIに任せてよいところと、任せてはいけないところ とはいえ、すべてをAIに丸投げしてよいかというと、そうはなりません。現場の声としても、ネタの元からすべてAIで一括生成するのは良くないという意見が多く出ています。 AIに任せてよいのは、例えば次のような部分です。 社内の資料や既存コンテンツを読み込ませて、メール本文のたたきを作らせる 書いた文章を分かりやすい構成や文章に整えてもらう 件名やリード文の候補を複数出してもらい、テストにかける 一方で、「そもそも何を伝えるのか」「どんな価値を提供するのか」といった元ネタや設計は、人間が持っている必要があります。ここまでAIに渡してしまうと、中身が薄くなり、要約された時に何も残らないメールになってしまいます。 イメージとしては、ネタと方向性は自分たちで決めて、その先の具体化やブラッシュアップをAIに手伝ってもらう形がちょうど良いです。チャットGPTやGeminiのような対話型AIに「自社の商品・サービス」「最近のお客様の状況」などを投げて、「この前提でメール案を出して」と依頼すると、かなり使えるものが出てきます。 メール配信ツール選び:AI機能があるものを前提にする メールマーケティングをやるなら、メール配信ツールを使うことは大前提です。今もローカルでCGIを動かしたり、ただメールを一斉送信するだけの仕組みを使っているケースもありますが、そろそろクラウド型の配信ツールへの乗り換えを考えた方がよい段階になっています。 特に、次のようなAI機能を持っているツールを選ぶと、効果と運用負荷のバランスが一気に変わります。 件名の自動最適化や複数パターンのテスト機能 読者一人ひとりの開封傾向をもとにした配信時間の最適化 ステップメールやキャンペーンシナリオの提案・自動配分 こういった機能はAI登場以前から存在していましたが、AIによって精度と使いやすさが大きく上がっている領域です。ツール側が最先端を追いかけてくれていれば、自動的に恩恵を受けられます。 一方で、現場の感覚としては、メールの本文エディタがまだ少し使いづらいツールも多いです。AIと本文エディタがシームレスにつながっていて、情報の入力から本文生成、配信設定までを一気通貫で支援してくれるツールは、まだそこまで多くありません。もしそういったものが出てきたら、私自身もすぐに試したくなる領域です。 海外ツールを検討する価値 メールマーケティングツールは、海外製の方が機能面でも価格面でも進んでいるケースが多いです。日本国内のツールだと、月額1〜3万円くらいのプランが普通にありますが、海外ツールに乗り換えるだけでコストを大きく圧縮できるケースもあります。例えば半分〜10分の1などもありえます。 為替の影響はあるものの、現時点では海外ツールの方が割安で、AIまわりの実装も早い傾向があります。最近は日本語対応しているサービスも増えているので、まず海外ツールを候補に入れて検討するのがおすすめになります。 開封率というボトルネックと、AIが効くポイント どれだけよいメールを

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  2. NOV 21

    第578回:ビジネスの決断のための情報探索の2つのポイント「いいところ探し」と「考えてから探す」の原則

    ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。 今回は、ビジネスの決断に本当に役立つ情報にどうしたら、うまくたどり着けるか・見つけられるかというテーマです。ただ情報を「集める」のではなく、自分の判断や行動につながる情報を“探索”するための考え方です。 この記事で得られること このページを読むと、次のようなポイントが分かります。 ネガティブ情報に振り回されない「いいところ探し」の視点 ─ 世の中の事例や他社の取り組みを見るときに、ダメ出しではなく「ここはいいな」「ここだけ真似したい」を見つけるための具体的な考え方。 「探す前に考える」ことで、質の高い情報に出会いやすくする方法 ─ なんとなく検索するのではなく、事前に「知りたいことリスト」を持った上で情報を取りに行くための簡単な習慣。 AIやニュース、SNSに触れるときに、自分の感覚を守るコツ ─ ChatGPT や Gemini を含む対話型AIの使い方のポイントと、他人の意見を先に見過ぎないためのちょっとした工夫。 情報収集ではなく「情報探索」に切り替える なぜ、”情報をたくさん集めているのに決断につながらない”事が起きるのか 情報は集めているつもりなのに、いざというときに「結局どれを選べばいいのか分からない」「行動に移せない」という感覚はないでしょうか。 私自身も、自分の情報の取り方を振り返る中で「ここに1つ、分かりづらいけれど原因がある」と感じるようになった内容を、今回ご紹介します。 「情報収集」という言葉から自然に行ってしまうのは、 すぐに役に立ちそうなノウハウやテクニックを 大量の情報の中から「宝探し」のように見つけてきて そのまま“ポン付け”しようとする といったスタイルです。 ただ、このやり方だと、仮に「すぐ使えそうなノウハウ」が見つかったとしても、 他の人も同じ情報にたどり着いていて、優位性にならない 自分の状況と合っているかどうかの判断があいまい そもそも「そのまま使えるノウハウ」自体がそんなに多くない といった問題が出てきます。 ではどうしたら、自分の判断や行動につながる形で情報を“探索”して見つけることが出来るのでしょうか? 「情報収集」と「情報探索」の違い ここで一度、言葉の定義をはっきりさせておきます。 情報収集 ─ 目の前にある情報の中から、使えそうなノウハウやテクニックを拾ってくるイメージ。 情報探索 ─ 先に「自分は何を知りたいのか」「どんな判断をしたいのか」を考えた上で、   必要な情報を筋道立てて集め、判断や行動につなげていくプロセス。 同じニュースを読んだり、同じ本を開いたりしても、 「ただ眺める」のか、「自分の判断のために読み解く」のかで、得られるものはだいぶ変わります。 この前提を押さえた上で、ここから2つのポイントを整理していきます。 ポイント1:情報の「いいところ探し」をする ネガティブ情報が増えやすい理由 今の世の中を見ていると、ニュースサイトにしても、SNSにしても、多くの情報がネガティブ寄りになっていると感じませんか。 そうなっているのは、分断や対立を煽るような話題、感情的なぶつかり合いのようなやり取りの方が、どうしても注目を集めやすいからです。 結果として、 ネガティブな情報や炎上しそうな話題の方が、拡散されやすい 誰かを批判したり、何かを否定する情報が目に入りやすい という状態になっているのが、SNSやネットニュースです。 当然、経営やビジネスの判断に使う情報は、これではどうしようもありません。むしろ時間の無駄になるかもしれません。 なぜなら、ネガティブな情報は、「これはやってはいけない」という”選択肢を減らす”役には立つかもしれませんが、「何をやるのか」というストレートな行動に繋がりづらいからです。 ネガティブ情報は「選択肢を減らす」役割にとどまる理由 例えば、100個の選択肢があるとします。 ネガティブな情報は、 「この2つは危ないからやめておこう」 「このパターンだけは避けよう」 といった形で、せいぜい1〜2個の選択肢を消す役割を果たします。 もちろん、それにも意味はありますし、重要な役割です。 ただ、100個あった選択肢が98個になるだけでは、次に踏み出す一歩はまだ見えてきません。 そこで意識したいのが、「いいところ探し」です。 「ここはいいよね」を意識的に探す 他社の事例やニュース、誰かの意見を見たときに、最初から粗探しをしない。これが重要です。 具体的には、 「いろいろあるけれど、ここはいいな」 「この決断はすごいな」 「この部分だけなら、うちでも真似できるかもしれない」 といった“いいところ”を見つけにいく習慣を持つことが効果的です。 どんな情報であっても、大なり小なり ここでこういう決断をしたのはすごい この場面でこうやって人を動かしているのは参考になる この一部分だけ切り出せば、うちでも試せそう といったポイントは、どこかに潜んでいることが多いです。 そこを意識的に拾っていくと、「やってはいけないこと」を知るだけでなく、「やってみてもいいこと」の候補が増えていきます。 そしてこの「やってみてもいいこと」は先ほどのネガティブ情報のような「無数の選択肢の中から、いくつか選択肢を消すだけ」ではなく、これをやろう!という、行動に繋がるダイレクトアクションに繋がる情報なのです。つまり、ポジティブに選ンだ情報は行動に直結しやすいのです。 1.その場で言語化しておこう この時1コ追加の注意です。「なんとなくいいな」と思っただけでは、時間が経つとその感覚を忘れてしまいます。 そこでおすすめなのが、 なぜ自分はそれを「いい」と感じたのか どこが魅力的に映ったのか どんな場面でなら自社でも試せそうだと思ったのか といった「考えの筋道」を、その場で軽くメモしておくことです。 ポイントは、完璧な分析をする必要はまったくないということ。 「多分こういう理由でいいと思ったんだろうな」という程度で構いません。 あとから見返したときに、 自分の頭の中でどういう連想が起きていたのか どの順番で「これやってみようかな」という気持ちになったのか が分かるくらいで十分です。 2.「自分のやりやすい形」でmemoを取ろう このときのメモ方法は、本当に何でも大丈夫です。 スマホのメモ帳に、思いついたことを打ち込む 紙のノートに、殴り書きで箇条書きしておく 移動中などは、音声で録音しておく 私自身は、打てる状況ならメモ帳に打ち込み、難しいときは音声で録音して、あとから生成AIにまとめてもらうことが多いです。 昔は「音声を録ったあとに、もう一度聞き返して、自分で書き起こす」のが大変でしたが、今は ChatGPT や Gemini などの対話型AIに読み込ませれば、要約や整理を任せることができます。 音声で話すと、自分でも意外だった考えや感情が、そのまま言葉として出てくることがあり、頭の中を丸ごと取り出せる感覚があります。 そういう意味でも、メモとしてはとても相性が良いと感じています。 3「その場で考える」から実行につながるんだと考えよう もう1つ加えて大事なのは、いいと思ったその場で、実行までの筋道をざっくり考えておくことです。 「あとで時間があるときに考えよう」とメモだけ残しても、そのときの感情や熱量は薄れてしまい、結局手を付けないまま終わってしまうことも多いからです。 「いいところ探し」をしながら、その場で、 自社ならどこを真似できるか 最初の一歩をどこに置くか 誰を巻き込めば動き出せそうか といったことを軽く考えて、理由と合わせて記録しておく。 これだけでも、情報を「読んで終わり」から、「読んで動く」に近づけていくことができます。 ポイント2:探す前に「何を知りたいか」を考える “なんとなく探し”ても、良い情報は見つかりにくい 次のポイントは、情報を探す前に、何を知りたいのか先に考えておくということです。 よく「仮説と検証」と言われますが、その情報バージョンのようなイメージです。 「何かいい情報ないかな」「これに役立ちそうなものないかな」と、ふわっとした気持ちのまま情報を探していると、なかなか良い情報に出会いません。 人間のアンテナには限界が

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  3. NOV 7

    第577回:中小企業がWebのパートナー選びでトラブルを避ける実務ポイント

    画像で内容のまとめ ポッドキャスト書き起こし 良いマーケティングエージェンシーを選ぶためのチェックポイント 今回は、Xのポストでも少し引用したのですが、マーケティングエージェンシーを選ぶ際に押さえておきたいポイントについてお話しします。これはウェブ広告に限らず、サイト制作やコンサルティングなど、皆さんのパートナーとなる会社を選ぶ際にも役立つ内容です。 こういったテーマは、どうしても業界ごとのポジショントークになりがちです。その業界で長く仕事をしていると、自然と特定の切り口で物事を見てしまいますし、商売としてそう発言せざるを得ない側面もあるでしょう。 私もなるべくポジショントークにならないよう心がけていますが、普段から中小企業の「現場主義」を掲げてコンサルティングを行っているため、どうしてもその視点が強くなる点はご容赦ください。 今回この話題を取り上げようと思ったのは、海外の中小企業向けマーケティング会社のCEOが書いた記事を読み、「なるほど、これは皆さんにシェアしたい」と感じたからです。その記事で挙げられていた項目を引用しつつ、私自身の経験や知見を交えて解説していきます。 今回の内容を聞いていただくことで、現在パートナーを探している方は、選定時の質問や検討の材料になるでしょう。また、すでに付き合いのある会社がいる方は、改めて関係性を見直すことで成果が出やすくなったり、今後の付き合い方を考える目安になったりするはずです。皆さんにとってより良い関係性を築くきっかけとして、今回のチェックポイントを活用していただければと思います。 海外の失敗事例から学ぶ、エージェンシー選びの重要性 今回ご紹介するのは、『Duct Tape Marketing』という会社のCEO、サラ・ネイ氏が書いた「Questions to ask before hiring a marketing agency」という記事です。 元記事はリンクを載せておきますので、ぜひGoogle翻訳などを使って読んでみてください。より中立的な視点が得られるかと思います。 10 Questions to Ask Before Hiring a Marketing Agency or fCMO https://ducttapemarketing.com/questions-to-ask-before-hire-a-marketing-agency/ 記事では、2つの極端な失敗例が挙げられています。 1. 内容を理解しないまま、高額なSEOサービスを3年契約してしまった 一つは、いわゆる「丸投げ」状態で、月8,000ドル(約120万円)のSEOサービスを3年契約で縛られてしまったケースです。成果については書かれていませんが、失敗例として挙げられている以上、おそらく出ていなかったのでしょう。月額120万円は、コンテンツ制作費を含んでいるかは不明ですが、中小企業から中堅企業にとってかなりの投資額です。 2. 広告アカウントの所有権がなく、トラブルになった もう一つは、月1万ドル(約150万円)をかけてGoogle広告を運用していたものの、広告アカウントの所有権が自社になかったために、トラブルに発展したケースです。 これらの事例は、導入を分かりやすくするためのものかもしれませんが、金額の大小はあれど、実際に起こりがちな生々しい話でもあります。特にSNS関連では、もっとドロドロした話も耳にします。 今回は誰かを批判することが目的ではありませんので、早速チェックすべきポイントについて見ていきましょう。 契約前に確認すべき7つの重要ポイント 1. 広告アカウントやデータの所有権は自社にあるか? 最初に出てくるのが、広告アカウントや解析ツールのアカウント、データの所有権を自社で持てるかという点です。 これは日本のまともな代理店であれば、口酸っぱく言っていることなので、常識になりつつあるとは思います。お客様自身でアカウントを作成してもらうか、代理店が作成して譲渡するなど、お客様がいつでも管理画面を見られるようにするのが一般的です。しかし、地方などでは「管理画面はお見せできません」という代理店がまだ存在するという話も聞きます。 確認すべき質問 「契約が終了した際、広告や解析ツールをスムーズに自社で引き継ぎ、管理・運用できますか?」 「広告費用やコンバージョン数など、管理画面で確認できるデータを、いつでも私たち自身が見られる状態にしてもらえますか?」 もし代理店から「自社のアカウント内で運用しているので切り離せません」といった説明を受けた場合は、本当に注意してください。 元データにアクセスできず、代理店が作成したレポート経由でしか数字を見られない状況は非常に危険です。まず、そうした古いやり方をしている会社であること自体がリスクですし、パートナーとして対等な関係を築く意識が低い可能性があります。 データは会社の生命線です。お互いがいつでもデータを見て、それに基づき意見交換をしながら改善を進めていくのが本来あるべき姿です。データを見せない、あるいは契約終了後にアカウントを譲渡できない会社とは、基本的に付き合わない方が良いでしょう。 また、「こちらで全部やりますから、皆さんは見なくていいですよ」といったように、クライアントを依存させようとする姿勢の会社も避けるべきです。「見方が分からないなら教えますので、ぜひ見てください」と言ってくれる会社を選びましょう。 2. 「成功の定義」は売上に繋がっているか? 次に、「何を成功とみなすか」が明確になっているか、という点です。 ここで注意したいのは、成功の定義がアクセス数、クリック数、SNSのフォロワー数といった、ウェブ上のデジタルな数字だけで完結していないか、という点です。これらはKPI(重要業績評価指標)にはなり得ますが、必ずしも売上に直結するとは限りません。 そうした指標だけを見て、「コンバージョンが増えましたね、良かったですね」で終わってしまう会社は避けましょう。 確認すべきポイント 増えたコンバージョンの「中身」まで気にしてくれるか? 「問い合わせ内容は悪化していませんか?」「営業に繋がらない問い合わせが増えていませんか?」といった確認をしてくれるか? 施策実施後、「その後の成約率はどうでしたか?」「見込み客の熱量はどうでしたか?」といった、最終的な成果まで踏み込んでくれるか? 特に最近は問い合わせフォームへの営業メールなども多く、ツールの設定によってはコンバージョン数が実態と乖離して跳ね上がることがあります。その数字だけを見て何の疑いもなく「成功です」と報告するような代理店は危険です。 クリック数やフォロワー数が業績と明確に連動していると双方で合意できているなら話は別ですが、そうでなければ、最終的な売上まで気にしてくれるパートナーを探しましょう。可能であれば、問い合わせ内容などを共有できる関係を築くのが理想です。 3. 短絡的な施策だけでなく、大局的な戦略はあるか? 個別の戦術、例えば「新しいページを作りましょう」「広告の出稿先を増やしましょう」といった単発の提案は出てくるものの、その背景にある大きな戦略が見えない会社は避けた方が良いでしょう。 ウェブマーケティングの競争は激化・飽和しており、短期的に「これをやれば上がる」という魔法のような施策はほとんどありません。「将来的にこういう姿を目指すために、今はこれをやります」という中長期的な視点に基づいた全体像がなければ、施策は場当たり的になり、投資対効果も悪化します。 確認すべき質問 提案された施策が「何を目的として」いて、「自社をどのような姿にするために」必要なのか、その意図を尋ねる。 提案された手段(How)だけでなく、その目的(What)や理由(Why)をきちんと説明してくれる会社を選びましょう。 手段だけを提案するのは楽ですし、実行するのも簡単です。しかし、それが成果にどう繋がるかはやり方次第です。 もし定例会などで提案された内容がよく分からなければ、「よく分かりません」と正直に伝えることが大切です。その質問に対して、きちんと相手に合わせて分かりやすく説明できるのが、本当に良いパートナーです。専門家の言うことだからと萎縮せず、臆せずに質問しましょう。そこで相手の本当の実力が見えてきます。 4. 契約終了後のプロセスは明確か? どんな契約にも終わりは来ます。契約が終了した後のことを明確にしてくれる会社を選びましょう。 特に伴走支援

    34 min
  4. NOV 5

    第576回:Webマーケで対話型AIからより良い回答を得るコツをAIの仕組みから考える(自己回帰型トランスフォーマー)

    ChatGPTでがっかりした経験はありませんか? 今回は、対話型AI、特ChatGPTやGeminiについて、もう少し深く掘り下げてみたいと思います。 ChatGPTのような文章生成AIを使った際に、「なかなか満足のいく回答が得られない」「思ったような品質にならない」と感じた経験はないでしょうか。 一度は軽い絶望感や、がっかりした気持ちを味わった方も多いかもしれません。その結果、「やっぱりまだ実用的ではないな」と感じ、使うのをやめてしまった方もいるのではないでしょうか。 このようなことが起こる大きな理由の一つは、私たちが対話型AIの「得意なこと」をきちんと把握していないからかもしれません。今回の内容を読んでいただくことで、ChatGPTやGeminiなどから、より質の高い、実用的な回答を引き出すヒントが得られるはずです。 そのためには、まずAIがどのようにして文章を生成しているのか、その仕組みを少しだけ知っておくことが近道になります。そこで本記事では、まずAIの仕組みを分かりやすさを優先して解説し、その上で「なぜ思った通りの回答が返ってこないのか」「どうすれば質の高い回答を引き出せるのか」について、具体的なポイントを解説していきます。 AIが苦手な「オープンクエスチョン」と得意な「条件付け」 生成AIから満足のいく回答を引き出せない方の使い方を見ていると、ある共通点に気づきます。それは、「オープンクエスチョン」をしてしまっているケースが非常に多いということです。 例えば、以下のような質問です。 「最高の〇〇を考えてください」 「我が社にとってベストで、他にないようなものを作ってください」 「最高の提案をしてください」 実は、AIはこのような漠然とした質問がとても苦手です。その理由は後ほどAIの仕組みの部分で詳しく説明しますが、まずはこの点を覚えておいてください。 では、逆にAIは何が得意なのでしょうか。それは、条件や関連情報を適切に与え、方向性を定めた上で、ゴールまでの道筋を模索させることです。つまり、入り口と出口がはっきりしている課題解決を得意としています。 「問いを立てる能力」の本当の意味 よく「AIを使いこなすには、問いを立てる能力が重要だ」と言われます。「問いを立てる能力」と聞くと、優れた質問をする力のように思われがちですが、本質は少し違います。これはむしろ、適切な「初期の条件付け」を行い、「どうなってほしいか」というAIにとってのゴールを明確に設計し、指示する能力だと捉えると、より具体的になります。 もちろん、考える過程をAIに手伝ってもらうことは有効ですが、すべてを丸投げして「とりあえず売上を上げるために一番やるべきことを教えて」のように質問すると、たいていは漠然とした、どこかで聞いたことがあるような一般的な内容が返ってくるだけです。 AIを使いこなすとは「丸投げ」ではない 「AI」と聞くと、どうしても「丸投げで答えを出してくれる魔法の道具」というイメージがあるかもしれません。しかし、本当にAIを使いこなす能力とは、丸投げする能力ではなく、AIが最も得意なことを、得意なやり方でやらせてあげる能力です。 これが上手な人は、AIから単なる情報ではなく、実務で本当に役立つ質の高いアウトプットを引き出すことができます。 なぜAIは平凡な回答しかできないのか?その仕組みを解説 では、なぜオープンクエスチョンではありきたりな答えしか返ってこないのでしょうか。その理由を理解するために、ChatGPTのような対話型AIが文章を生み出す仕組みを簡単に見ていきましょう。 文章生成の心臓部「自己回帰型トランスフォーマー(Transformer)」 少し専門的な言葉になりますが、ChatGPTなどは「自己回帰型トランスフォーマー(Transformer)」という技術がベースになっています。これは以下のような仕組みで動いています。 トランスフォーマー(Transformer) 単語を、様々な特徴を持つパラメータの集合体(ベクトル)に変換する仕組みです。ゲームのキャラクターに「素早さ」「力」「特殊能力」といった多数のパラメータがあるように、一つの単語を多くの側面から数値化して捉えます。 自己回帰型 直前の文脈(一つ前や二つ前の文章)を踏まえて、「次にどの単語が来ると最も自然か」を予測し、言葉を紡ぎ出していく仕組みです。 つまり、AIは与えられた文脈や情報に基づいて、最も適切と思われる単語を確率的に繋ぎ合わせることで、文章を生成しているのです。 AIは「既存の知識のつながり」から答えを見つける AIが単語を選ぶ際の根拠となるのは、「モデル」と呼ばれる膨大な知識データベースです。このモデルは、インターネット上のテキストなどを事前に学習(プリトレーニング)して作られた、いわばAIの脳みそです。AIの回答は、すべてこのモデルの中にある知識や単語同士のつながりが元になっています。 ここで重要なのは、AIはすでにある言葉と言葉の結びつきや、既存の概念を元にして答えを生成するという点です。「最高の提案」のようなオープンクエスチョンを投げかけると、なぜ平凡な答えが返ってくるのか。それは、特に条件が指定されていなければ、AIは世の中で「最高の提案」という言葉と一緒によく使われる、ごく一般的な単語の組み合わせを提示するしかないからです。「よくある質問」には「よくある答え」が返ってくるのは、ある意味で当然なのです。 「今までにないもの」が生まれない理由 「他社がやっていないこと」や「今までにないアイデア」を求めても、期待外れの結果に終わることが多いのも、この仕組みを考えれば理解できます。 「どこにもないもの」とは、言い換えれば「まだ言葉と言葉が結びついていないもの」です。AIは既存のデータのつながりを元に回答を生成するため、そもそもデータの中に存在しない、あるいは関連性が極めて薄い組み合わせを自発的に生み出すことは原理的に非常に困難です。 誰も思いつかないような突飛なアイデアは、AIのデータベース(モデル)の中では単語同士の関連性がないため、そもそも選択肢に上がってきません。このAIの基本原理を理解しておくことが、うまく付き合っていくための第一歩です。 AIから質の高い回答を引き出す3つのポイント では、どうすればAIの能力を最大限に引き出せるのでしょうか。それは、AIが苦手なことをさせるのではなく、得意な土俵で仕事をさせることです。具体的には、以下の3つのポイントが重要になります。 ポイント1:具体的な「条件付け」で考える範囲を絞る まず最も重要なのが、人間がAIのために適切な条件を与えることです。漠然と問いかけるのではなく、以下のよう考えるべき範囲を具体的に絞り込んであげましょう。 目的:何を得たいのか、何を実現したいのか、誰にどんな結果をもたらしたいのか。 制限・境界条件:予算の上限、使えるリソース(人員、時間)、関連する法律や規制、競合が強い領域など。 ここで欲張って条件を緩くするよりは、むしろ現実的な制約をできるだけ多く与える方が、AIは質の高い回答を出しやすくなります。絞り込みすぎたと感じたら、そこから一つずつ条件を緩めていく、というアプローチがおすすめです。これは、人間に仕事を依頼する時と同じだと考えると分かりやすいでしょう。 ポイント2:「うまくいった例」をデータとして蓄積する AIに良いヒントを与えるために、成功事例や参考情報をデータとして蓄積していくことも非常に効果的です。これは社内のナレッジとしても財産になります。 社内の成功事例:過去にAIを使って良い回答が得られた質問(プロンプト)と、その回答をセットで保存しておきましょう。Googleフォームやスプレッドシートのような簡単な仕組みで十分です。 外部の参考情報:他社の事例や業界の動向、新しい組み合わせで成功した商品のニュースなど、参考になりそうな情報をテキスト形式でまとめておき、AIに読み込ませられるように準備します。 こうした「うまくいった例」をAIにインプットすることで、AIは「こういう観点で言葉のつながりを探せば、良い答えにたどり着きそうだ」というヒントを得ることができ、回答の精度が格段に向上します。 ポイント3:「探索」と「深掘り」のフェーズを分ける 一つの質問で、

  5. OCT 24

    第575回:Google Analytics MCPサーバーは初心者は避けるべき理由と、そもそもの「ツールの選び方」とは

    ポッドキャスト一部抜粋 Googleアナリティクスの「MCPサーバー」本当に誰にでも便利なツールか? 今回は、Googleアナリティクスの「MCPサーバー」とは?そしてそれは誰もが使うべき便利なものなのか…?結論から言えば違います。ある程度データ解析やGAが分かっている人でないとリスクが大きいです。 詳しい内容は、Podcast本編をお聞き下さい。 Google アナリティクスの MCP サーバーを試す | Google for Developers Google Analytics MCPサーバーは誰のため?ツールの本当の価値と選び方 今回は、以前からお話ししようと思っていた「Google Analytics MCPサーバー」についてです。ただ、このテーマ、どうお伝えしようか考えていたのですが、必ずしもポジティブな内容にはならないかもしれません。 というのも、このMCP機能は自然言語、つまり私たちが普段話す言葉でAIに指示を出せることから、「分析が簡単になる」「民主化される」といったイメージが先行しているように感じます。しかし、私自身が深く向き合えば向き合うほど、これは分析に慣れていない方が安易に手を出すべきではない、少し注意が必要なツールだな、と感じています。 そこで今回は、MCPが本当に役立つのはどういう人なのか、という話に加えて、そもそも業務で使うツールとどう向き合い、どう選ぶべきか、という本質的なテーマに繋げてお話しできればと思います。 「新しいツールを導入したけど、結局使わなくなってしまった」「便利になるはずが、逆に手間が増えてしまった」そんな経験がある方にとって、きっとヒントになることがあるはずです。 Google Analytics MCPサーバーは、本当に初心者向けなのか? 結論:分析に慣れていないなら、まだスルーで良い まず、今回の話で一番お伝えしたい結論からお話しします。 もしあなたがWebサイト分析の初心者であるなら、「Google Analytics MCPサーバー」のことは、一旦忘れてしまって問題無いと思っています。 ここで言う「初心者」とは、例えば次のような方をイメージしています。 Googleアナリティクスに出てくる「指標」や「ディメンション」といった言葉の意味が、まだ曖昧にしか分からない。 それらのデータを組み合わせることで、どんな発見や気づきが得られるのか、具体的なイメージが持てない。 普段、アナリティクスの画面を見ても、なんとなくアクセス数を確認するくらいで、他のデータをどう活用すればいいか分からない。 もし少しでも当てはまるようであれば、現時点でMCPを無理に使う必要性は全くないでしょう。それよりも、まずはGoogleアナリティクスの画面に慣れ親しみ、そこにあるデータが何を意味しているのかを一つひとつご自身の言葉で理解していくこと。その上で、Looker Studioのようなツールを使って、自分の手でデータを可視化しながらレポートを組み立てていく経験を積む方が、はるかに実践的で有益です。 MCPが真価を発揮するのは「データと壁打ち」できる人 では、MCPはどのような人にとって強力な武器になるのでしょうか。 それは、一言でいえば「データと対話(壁打ち)ができる中級者以上の方」です。 具体的には、各指標の意味を正確に理解し、「このデータとこのデータを掛け合わせたら、こんなことが分かるはずだ」といった仮説をご自身の中に持てるスキルがある方です。 私自身がMCPをよく使うのは、例えば他のデータと組み合わせて、相関関係を探ったり回帰分析をするような場面です。そうした少し手間のかかる集計を、対話形式でスピーディに進められるのは大きな魅力です。 例えば、私のコンサルティングでは、毎月決まった数字を報告する定型レポートではなく、その時々の状況に応じてストーリーを組み立て、最適なご提案をすることを大切にしています。その場で「この角度から見たらどうだろう?」「このデータと組み合わせたら何が見える?」と、AIと壁打ちをしながら分析を深めていくような使い方には、MCPは非常によくマッチします。 逆に言えば、毎月決まった形式のレポートを作成することが主な業務であれば、MCPを使うメリットはあまり感じられないかもしれません。それならば、APIやBigQueryを使ってデータを確実に取得する仕組みを構築する方が、はるかに効率的でしょう。 MCPを使いこなすための注意点と、私の実践例 AIに「解釈」や「推論」をさせてはいけない MCPをある程度使えるようになった方でも、一つ注意していただきたい点があります。それは、少なくとも最初はAIに「解釈」や「推論」を求めない、ということです。 データの「集計」をさせるのは非常に有効です。しかし、その結果を元に「このデータから改善点を提案してください」とか「課題に優先順位をつけてください」といった判断を委ねるのは避けるべきです。 なぜなら、現状のAIから返ってくるのは、きちんとした前提条件付けなどを行わない会議リ、当たり障りのない、どこかで聞いたことがあるような一般的な内容がほとんどだからです。 例えば、AIはデータの中で変化率が大きい箇所を機械的に指摘してはくれますが、それがビジネス全体にどれだけの影響を与えるか、という視点が抜け落ちがちです。 例えば、全体のアクセスが10万ある中で、ある1ページの直帰率が20ポイント悪化した、という報告をさも重要そうに回答することがあります。 しかしこれは、1ページ当たりの数字の変化としては大きいですが、全体へのインパクトはごく僅かですよね。また、もし全体の数字へのインパクトが多かったとしても、ビジネス的にはどうでもいい変化もあるわけです(見込み客以外のアクセスが季節的に増えるページなど)。 先に検証やデータの設計がないと… この辺りは、何が大事で何が大事では無いのかというルール付けや、そもそもそのルールや重み付けを作れるように先に検証やデータの設計をしないといけないわけです。 それを行う前提であればいいのですが、それを「きっとAIはそこまで考えてくれる」と思ってMCPServerに関わらずAIに解釈や推論をさせると、「意味がない」ばかりか「適切ではない」方向に導かれる可能性すらあると感じています。 あくまで定量的な事実を集計・整理するためにツールを使い、そこからの解釈や判断は人間が行う。この線引きが非常に重要になります。これをしなければ、まだ使わない方がいいというのが私の考えなんですね。まずはWebUIから普通に使って覚えた方が良いです。 余談「数字を鵜呑みにしない」という言葉の本当の意味 ちなみに、時々、「AIが出した数字は鵜呑みにしてはいけない」というアドバイスを見かけますが、私はこの考え方に少し違和感があります。 なぜなら、そもそも信頼できないかもしれないデータを出してくるツールを使うこと自体が、時間の無駄に繋がる、と考えるべきでは?と思うからです。 ツールと向き合う上で本当に大切なのは、「どこまでの範囲で、どのような指示を出せば、出力された結果を100%信頼(鵜呑みに)できるか」という安全な領域を見極め、その仕組みを自分で作れるかどうかです。毎回「この数字は本当だろうか?」と疑っていては、効率化は望めません。 例えば、集計をさせる際に「どのカラムのどのデータを使って算出したか」を併せて出力させるように指示すれば、その結果が妥当かどうかを人間がすぐに判断でき、信頼性を担保することが可能になります。 ツール選びで失敗しないために、考えておきたいこと ここからは、MCPの話から少し視野を広げて、業務ツール全般との向き合い方についてお話しします。 ツールはあなたの能力を増幅させる「掛け算」 まず大前提として、ツールは「魔法の杖」ではありません。あなたのスキルがゼロの状態を、ツールが1から10にしてくれることは基本的にないのです。 ツールとは、あなたが持っている能力や、やろうとしていることを、より速く、より効率的に実行するための「掛け算」の役割を果たすものだと考えてください。つまり、あなたの能力を何倍にも増幅させてくれる存在です。 その価値は、大きく「省力化」と「能力の拡張」の2つに分けられます。この基本を理解しておくと、ツール選びのミスマッチを大きく減らせるはず。 「ピンとくるか」を一つの判断基準に 新しいツールを検討する際、その機能

  6. OCT 16

    第574回:中小企業の不安を無くし、良い回答を得るための「生成AIの必須設定」

    なぜ今、生成AIの「正しい使い方」を知るべきなのか 「ChatGPTを試してみたけれど、思ったような答えが返ってこない」「ハルシネーション(AIが嘘をつくこと)が怖くて、結局使わなくなってしまった」こうした経験はありませんか。特に、ChatGPTが話題になり始めた頃に一度触ってみて、その印象が更新されないままになっている方も多いのではないでしょうか。 しかし、人手不足が深刻化する現代において、AIを活用した生産性向上は、もはや避けては通れない経営課題です。現場で体を動かす仕事は人に頼るしかありませんが、それ以外の多くの業務はAIによって効率化できる可能性があります。今回は、ウェブマーケティングという分野に限定せず、すべてのビジネスパーソンが今日から実践できる、生成AIとの正しい付き合い方について、私の試行錯誤から得た知見を余すところなくお伝えします。 まず押さえるべき、生成AI活用の2つの大前提 AIツールを使いこなす上で、まず共有しておきたい大切な前提が2つあります。ここを誤解してしまうと、「AIは使えない」という結論に至りがちなので、しっかりと確認していきましょう。 前提1:有料プランへの投資を惜しまない 多くの生成AIツールには無料プランがありますが、ビジネスで本格的に活用するなら、有料プラン(ChatGPTの場合は月額3,000円程度の「Plusプラン」など)の利用を強く推奨します。このコストを惜しんではいけません。企業であれば、福利厚生の一環として導入するのも一つの手です。 なぜなら、有料プランにはコストを上回る明確なメリットがあるからです。 回答速度の向上:何より、遅いのは一番のストレスです。思考が中断されず、スムーズな対話が可能になります。 上位モデルの利用:より高精度で賢いAIモデルが使えるため、回答の質が格段に向上します。 便利な機能の解放:後述する「カスタム指示」の高度な設定や、定型作業を自動化する「GPTs」など、業務効率を飛躍的に高める機能が利用可能になります。 この投資は、必ず元が取れると断言できます。まずは使い倒そうと考えている方だけでも、有料プランから始めてみてください。 前提2:AIは「20→80」を担うパートナーと心得る 次に重要なのが、AIへの「期待値の調整」です。物事を0から100までのプロセスで考えたとき、AIが最も得意とするのは、20から80までの部分、つまり「ある程度の方向性が見えているものを、具体的な形に仕上げていく」作業です。 逆に、0から20の「全く新しいアイデアを生み出す」部分や、80から100の「個別の状況に合わせて細部を詰める」部分は、人間の深い洞察力や経験が必要であり、AIはあまり得意ではありません。「〇〇業界で、集客できる新たなプランを10個考えて」といった漠然とした指示では、AIは一般的な当たり障りのない回答しかできません。これはAIの能力が低いのではなく、問いの立て方、つまりAIへの依頼の仕方が適切でないのです。 AIはあくまで、人間の思考を加速させる「掛け算」のツールです。まずは人間が「叩き台」となるアイデアや方向性を用意し、それをAIに渡して磨き上げてもらう、という付き合い方を意識しましょう。 ChatGPTをビジネス仕様に育てる具体的な設定方法 ここからは、ChatGPTをより強力なビジネスパートナーにするための具体的な設定について解説します。これらの設定は、一度行っておくだけで、その後のAIとの対話の質を大きく向上させます。(ChatGPTを前提に話しますが、Geminiなど他のツールでも基本的な考え方は同じです) カスタム指示:AIを「従順な部下」から「有能な参謀」へ 「カスタム指示(Custom Instructions)」は、ChatGPT全体の応答スタイルをあらかじめ設定しておく機能です。ここに適切な指示を書き込むことで、AIの応答品質は劇的に変わります。特に重要なのが、以下の3点です。 1. AIの「迎合性」を破壊し、「自分の脳の外側」に出る 対話型AIは、その仕組み上、ユーザーが望むであろう回答を返すように最適化されがちです。あなたが提示した意見に同意し、プランを肯定する。これでは、あなたの思考の範囲を超えるアイデアは永遠に生まれません。ビジネスでブレークスルーを起こすには、自分の中にはない視点や、計画の盲点を突くような意見こそが必要です。 そこで、カスタム指示に「返信は常に中立な立場で、懸念点などがあれば批判も含めて回答するようにしてください」といった趣旨の一文を必ず加えてください。これにより、AIはあなたのご機嫌取りをやめ、客観的な分析者として機能し始めます。耳の痛い指摘を恐れず、AIに健全な緊張関係を強いること。これが、思考の壁を打ち破るための鍵です。 2. 「引用なき情報」を排除し、意思決定の質を高める AIが生成するもっともらしい嘘、「ハルシネーション」はビジネス上の大きなリスクです。「論拠(ソース)のないデータに価値はない」という鉄則を、AIとの対話にも適用せねばなりません。 そこで、「回答は『事実』と『推論』に分けて記載し、事実には必ず引用元を提示してください」という指示を追加します。これにより、回答のどの部分が信頼できる情報で、どの部分がAIのアイデアなのかを明確に区別できます。「事実」は引用元を辿って裏付けを取り、「推論」はあくまでアイデアとして吟味する。この一手間が、誤った情報に基づく意思決定を防ぎます。 3. 言葉遣いを調整し、コミュニケーションを円滑に AIの回答は、時に専門用語が多かったり、体言止めで分かりにくかったりします。「自然で平易な日本語で回答してください。専門用語は、最初の一回だけ意味を括弧書きで補足してください」のように、読みやすい文章スタイルを指示しましょう。「高校生にも分かるように」といった具体的なレベル設定も有効です。これらの指示は、使っていく中で気になった点を「今後こうならないように指示を追加して」とChatGPT自身に聞き、随時更新していくのがおすすめです。 プロジェクト:専門分野ごとの役割を与える カスタム指示はあくまで「全体設定」です。「〇〇の専門家として回答して」といった役割設定をここに入れてしまうと、レストラン選びのようなプライベートな相談のときにも専門家として振る舞ってしまい不便です。 そこで活用したいのが「プロジェクト」機能。これはフォルダのようなもので、「マーケティング相談用」「会計相談用」といったプロジェクトごとに、専用の指示を設定できます。これにより、相談内容に応じてAIのペルソナを切り替えられるのです。私の場合は、スマホで閲覧するために「出力をコンパクトにまとめる」といった見た目の調整用プロジェクトも作っており、こうした使い分けも非常に便利です。 GPTs:定型作業を自動化する専用ボットを作る レシート画像を読み込ませて経費の仕訳をさせたり、議事録の音声を要約させたり、といった繰り返し行う定型作業は「GPTs(ジーピーティーズ)」機能を使って自動化しましょう。 これは、特定の目的に特化した自分だけのオリジナルAIチャットボットを作成できる機能です。 一度設定してしまえば、あとはファイルを渡すだけでAIがよしなに処理してくれるようになります。こうした定型作業を一つずつGPTs化していくことで、あなたはより創造的な業務に時間を使えるようになります。この機能も有料プランでのみ利用可能です。 AIの能力を最大限に引き出す質問(プロンプト)のコツ ここまでの設定を終えたら、あとは「いかに上手に質問するか」が鍵となります。基本は、あなたが他の人に何かを相談したり、仕事を依頼したりする時と同じように、丁寧な情報提供を心がけることです。 私が意識しているのは、「現在・過去・未来」のフレームワークです。「(過去)これまで〇〇という経緯があり、(現在)今△△という状況です。(未来)最終的に□□という状態を目指しています。そのために、こういう方法を考えていますが、これについて評価と、具体的な実行ステップを提案してください」というように、背景や目的、そして自分なりの叩き台を伝えることが重要です。 AIからの回答がしっくりこなかった場合は、一人で悩む必要はありません。「正直、今の回答はいまいちでした。より精度の高い回答を得るた

  7. OCT 6

    第573回:Web担当者のための「燃え尽きを防ぐ」タスク管理のポイントとは

    なぜあなたのタスク管理はうまくいかないのか?多くの人が陥る「一つの誤解」とは ToDoリスト、GTD、ポモドーロ・テクニック…世の中には数多くのタスク管理術が存在します。しかし、「色々と試したけれど、どうもうまくいかない」と感じている方も多いのではないでしょうか。タスクに追われ、計画通りに進まず、自己嫌悪に陥ってしまう。その根本的な原因は、テクニックの問題ではなく、タスク管理に対する「ある誤解」にあるのかもしれません。 今回は、その誤解を解き、タスク管理を成功に導くための最も重要な考え方についてお話しします。 タスク管理の目的は「自己成長」ではない 結論から言うと、タスク管理が失敗する最大の理由は、「タスク管理」と「自己成長」を混同してしまっているからです。 私たちはタスクリストを作成するとき、無意識のうちに「もっと効率的に、もっと多くのことをこなせる理想の自分」を基準に計画を立てがちです。「これくらいは出来なければいけない」という成長目標を、日々のタスク管理に持ち込んでしまうのです。 しかし、タスク管理の本来の目的は、「今の自分を最大限に活用すること」です。理想の自分ではなく、現実の自分の能力やコンディションを基準に、最もパフォーマンスが高まる方法を見つけ出すためのツールなのです。 この2つを切り離して考えること。それが、あらゆるタスク管理術を機能させるための、最も重要で、最初に行うべきステップです。 「今の自分」を最大限に活用する鍵は「客観視」にある では、「タスク管理」と「自己成長」を切り離し、「今の自分」を最大限に活用するためにはどうすればよいのでしょうか。その鍵は「自分自身を客観視する」ことにあります。 「これくらいで出来るはずだ」という主観や思い込みを一度捨て、データに基づいて「今の自分」がどのような状態なのかを冷静に把握する必要があります。ここからは、そのための具体的な3つのステップをご紹介します。 ステップ1:作業時間を正確に計測する まずは、自分が一つの作業にどれくらいの時間をかけているのかを、客観的なデータとして記録することから始めましょう。「提案書作成なら3時間くらいかな」「メール返信は1件5分だろう」といった感覚的な見積もりは、実際の結果と大きくずれていることがほとんどです。 私の場合、デスクトップ上の作業をすべて記録するタイマーアプリを使っていますが、使い始めた当初は、自分の感覚と実際の作業時間の差に驚くことばかりでした。このような客観的なデータを集めることで、初めて現実的な計画を立てるための土台ができます。 ステップ2:自分の「パフォーマンスの波」を受け入れる 次に、自分がどのような時にモチベーションが上がり、どのような時に下がるのかを把握します。「モチベーションは常に高く保つべきだ」と考えがちですが、人間である以上、パフォーマンスに波があるのは当然です。1日の中でも、驚くほど集中できる時間もあれば、どうしても集中力が続かない時間も存在します。 大切なのは、その波を否定せず、受け入れることです。その上で、「どうすればハイパフォーマンスモードに入れるか」という自分だけのスイッチを探しましょう。自分の特性を冷静に理解することが重要です。 ステップ3:パフォーマンスレベルに合わせたタスクを割り振る 作業時間と自分のパフォーマンスの波を把握したら、それに基づいてタスクを割り振ります。ポイントは、パフォーマンスのレベルを「高・中・低」の3段階くらいに分け、それぞれに適したタスクをあらかじめ用意しておくことです。 ハイパフォーマンス時:思考力や創造性が求められる、重要なタスク ミドルパフォーマンス時:定型的な業務や、ある程度集中力が必要なタスク ローパフォーマンス時:単純作業や情報収集など、やる気がなくてもできるタスク 特に重要なのが「ローパフォーマンス用のタスク」です。「やる気がない時は何もしない」のではなく、「今の自分でもこれならできる」というタスクを用意しておくことで、自己嫌悪に陥るのを防ぎ、少しでも業務を前に進めることができます。 タスク遂行を後押しする「ルール化」の力 自分を客観視して立てた計画を、さらに確実に実行するための補足的なテクニックが「ルール化」です。 休息のルール化:パフォーマンス維持に不可欠な休息を、「このタスクが終わったら5分休む」のように強制的にスケジュールに組み込みます。 「嫌なこと」のルール化:開きたくないメールなど、後回しにしがちなタスクは「何も考えずに即開封する」といった機械的なルールで処理し、心理的負担が増えるのを防ぎます。 まとめ:自分を受け入れ、タスク管理を本当の武器にする タスク管理を成功させる秘訣は、高度なテクニックを学ぶことではありません。まずは「タスク管理」と「自己成長」を明確に切り離すこと。そして、そのために「今の自分」を客観的に知り、受け入れることから始めてみてください。 現実の自分を土台にして初めて、GTDやポモドーロ・テクニックといった手法が真価を発揮します。「自分で決めたことを遂行できた」という小さな成功体験の積み重ねは、やがて大きな自信につながるはずです。タスク管理を、自分を縛るものではなく、自分を最大限に活かすための強力な武器にしていきましょう。 関連情報 Getting Things Done® (GTD®):タスク管理・生産性向上メソッドGTDの公式サイト Pomodoro® Technique: 時間管理術ポモドーロテクニックの公式サイト。25分の作業と短い休憩を繰り返すことで集中力を維持します。 Timing Tracker: 作業時間を記録・分析するためのタイムトラッキングツールの一つです。(中山が使用) 厚生労働省 働き方・休み方改善ポータルサイト: 生産性向上や労働時間管理に関する公的な情報や支援策 Web活用の「最初の一歩」に関するよくあるご質問 色々なタスク管理術を試しても、なぜうまくいかないのでしょうか? 多くのタスク管理術は、自分自身を客観的に把握していることが前提になっています。自分の作業ペースや集中力の波を理解しないままテクニックだけを導入しても、計画と現実の間に乖離が生まれ、うまくいかないことが多いのです。 タスク管理を始める上で、まず何から手をつければ良いですか? まず「自分を知る」ことから始めるのが重要です。具体的には、①自分の作業時間を客観的に記録する、②どういう時に集中できるか・できないかを把握する、③パフォーマンスの波に合わせてタスクを割り振る、という3つのステップが有効です。 どうしてもやる気が出ない時、どうタスクと向き合えば良いですか? やる気が出ない時間があることを前提に、あらかじめ「低いパフォーマンスの時にやるタスク」を用意しておくことをお勧めします。何もしない状況を避け、少しでも前に進めることで自己嫌悪を防ぎ、生産性を維持できます。 計画通りにタスクが進まず、自己嫌悪に陥ってしまいます。 タスク管理と「自己成長」を一緒に考えてしまうと、理想と現実のギャップから自己嫌悪に陥りがちです。まずは「今の自分を最大限に活かす」という視点でタスク管理を行い、自己成長は別の課題として切り離して考えると、精神的な負担が軽くなります。 タスクを効率的にこなすために、すぐに実践できることはありますか? 「休息」と「嫌なことの処理」をルール化することです。例えば「1時間作業したら5分休む」「開けたくないメールは即時開封する」のように機械的なルールを設けることで、意思決定の負荷を減らし、結果的に全体の生産性を高めることができます。 { "@context": "https://schema.org", "@type": "FAQPage", "mainEntity": [{ "@type": "Question", "name": "色々なタスク管理術を試しても、なぜうまくいかないのでしょうか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", "text": "多くのタスク管理術は、自分自身を客観的に把握していることが前提になっています。自分の作業ペースや集中力の波を理解しないままテクニックだけを導入しても、計画と現実の間に乖離が生まれ、うまくいかないことが多いのです。" } },{ "@type": "Question", "name": "タスク管理を始める上で、まず何から手をつければ良いです

  8. SEP 29

    第572回:「Google検索対ChatGPT検索」を考える意味はあるのか?

    はじめに:Google検索 vs 生成AI、Web集客の未来はどうなる? ChatGPTの利用者はGoogleの1%以下というデータ、信じて大丈夫でしょうか。本エピソードでは、こうしたニュースを鵜呑みにする危険性と、中小企業経営者が持つべき視点を取り扱います。 SEOやAIといった手法論争よりも大切なのは、自社のお客様が何を使って情報を探しているかを知ること。時代に左右されない、本質的なWebマーケティング戦略を築くためのヒントがここにあります。 「Google検索は今後も勝ち続けるのか、それともChatGPTのような生成AIが情報探索のメインになるのか」。Webに関わる方なら、一度はこんな議論を見聞きしたことがあるかもしれません。 今回は、この勝ち負けの話ではなく、私たち中小企業の経営者やWeb担当者が、この状況をどう受け止め、ニュースをどう読み解いていけばよいかについてお話しします。 結論から言うと、現時点でどちらが勝つかは誰にも分かりません。ですから、大切なのは勝ち負けを予測することではなく、変化するお客様の行動にどう向き合っていくか、という視点です。 「Google 140億回 vs ChatGPT 6600万回」この数字をどう読み解くか 検索回数の比較データとその背景 最近、ある調査データが話題になりました。それによると、1日あたりの検索(あるいはそれに準ずる行動)の回数は、Googleが約140億回であるのに対し、ChatGPTでは推定約6600万回だということです。この数字だけを見ると、ChatGPTの利用はGoogleの1%にも満たず、まだまだ影響は小さいように見えます。 確かに、20年以上の歴史があり、私たちの生活に深く根付いているGoogleの検索という習慣は、そう簡単には変わりません。絶対数で言えば、Googleが圧倒的であることは事実でしょう。 データ比較の落とし穴:本当に見るべきは「問題解決の質」 しかし、この「回数」という数字だけで物事を判断するのは、少し早いかもしれません。本来、私たちが評価すべきなのは、検索の回数ではなく「そのツールでどれだけ問題が解決できたか」です。 Google自身も、少ないクリックでユーザーの問題を解決することを目指しています。何度も検索しなければならない状態は、決して良い体験とは言えません。 そう考えると、検索回数というボリュームだけで比較することには、あまり意味がないことが分かります。重要なのは、お客様が抱える問題が、どのツールによって、どれだけスムーズに解決されているかという「質」の部分です。 検索以外の行動も見逃せない また、先ほどのデータは「検索っぽい行動」に絞って比較していますが、これも一つの側面に過ぎません。ChatGPTのような生成AIは、これまでGoogle検索では解決しづらかった、より対話的で個人的な悩み相談などにも使われています。 つまり、生成AIは、これまでGoogleがカバーしてこなかった新たな「問題解決」の領域を切り拓いている可能性があるのです。「検索」という枠だけで比較すると、この変化を見誤ってしまうかもしれません。 中小企業が今、本当にやるべきこと 大きなデータより「目の前のお客様」というフィールドデータを信じる では、私たち中小企業は、この変化の時代にどう対応すればよいのでしょうか。結論はシンプルです。世の中の大きなデータやトレンドに一喜一憂するのではなく、「目の前のお客様が何を使っているか」をきちんと把握することです。 世の中でChatGPTの利用がどれだけ増えたか、Googleの利用がどれだけ減ったか、というマクロな情報を気にする必要はありません。たとえ世の中全体では少数派だったとしても、自社のお客様が新しいツールを使い始めているのであれば、それに対応する必要があるからです。 顧客との関係構築が、今後のマーケティングの鍵 そのためには、お客様が普段、どういう場面で、どんなツールを使って情報を集めているのかを、定期的にチェックする仕組みが不可欠です。 お客様に直接聞いてみる ご契約いただいた際にアンケートやヒアリングを行う こうした地道な活動を通じて、お客様の行動(カスタマージャーニー)を具体的に把握することが、何よりも強力な武器になります。 もし、今お客様との接点が少なく、何をしているか分からないという状況であれば、今後のWeb活用は厳しくなる可能性があります。まずは、お客様との関係性を構築し、その声を聞ける仕組みを作ることが最優先です。 まとめ:トレンドに振り回されず、顧客と向き合うWeb戦略を 「Googleか、AIか」という二者択一の議論には、あまり意味がありません。どちらかのツールが優れている、という話ではなく、お客様の問題解決の方法が多様化している、という事実を捉えることが大切です。 私たち中小企業がやるべきことは、次の3つに集約されます。 ニュースの数字を鵜呑みにせず、その背景を考える 世の中の大きなトレンドより、目の前のお客様の行動(フィールドデータ)に注目する お客様の行動を把握するために、顧客との関係性を構築する 外部の大きな情報に振り回されるのではなく、自社の足元をしっかりと見つめ、お客様と向き合うこと。それこそが、これからの時代を生き抜くための、最も確実なWeb戦略と言えるでしょう。 Web活用の「最初の一歩」に関するよくあるご質問 Q. 結局、これからはGoogle検索とChatGPT、どっちが強くなるのでしょうか? A. 現時点では「分からない」というのが誠実な答えです。どちらが勝つかを予測するより、両方のツールによって顧客の情報収集行動がどう変化しているかに注目し、自社のお客様が実際に何を使っているかを把握することが重要です。 Q. ChatGPTの利用者は少ないと聞きましたが、AI対策はまだしなくても大丈夫ですか? A. 利用回数のデータだけを見て「少ない」と判断するのは早計です。これまで検索では解決できなかった問題がAIで解決されるなど、利用の「質」が変わってきています。すぐに焦る必要はありませんが、自社顧客の動向は注意深く観察し始めることをお勧めします。 Q. SEOはもう時代遅れになるのでしょうか? A. すぐに時代遅れになることはないでしょう。多くの人が長年の習慣でGoogle検索を利用しており、この行動は簡単には変わりません。ただし、AIによる情報探索が普及すればSEOのあり方も変化する可能性があります。手法に固執せず、顧客との接点を多角的に持つことが大切です。 Q. AI時代のWeb集客について、何から手をつければいいか分かりません。 A. まずは、自社のお客様が「普段どのように情報を集めているか」を直接ヒアリングすることから始めましょう。アンケートやインタビューを通じて顧客の行動を具体的に把握することが、効果的なWeb戦略の第一歩になります。 Q. 大きなトレンドについていくのが大変です。中小企業はどうすればいいのでしょうか? A. 世の中全体の大きなデータやトレンドに振り回される必要はありません。それよりも、目の前のお客様との関係構築に注力し、彼らが何に困り、どんなツールを使っているかという「フィールドデータ」を大切にしましょう。足元の顧客理解こそが、変化の時代を乗り切る近道です。 { "@context": "https://schema.org", "@type": "FAQPage", "mainEntity": [{ "@type": "Question", "name": "結局、これからはGoogle検索とChatGPT、どっちが強くなるのでしょうか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", "text": "現時点では「分からない」というのが誠実な答えです。どちらが勝つかを予測するより、両方のツールによって顧客の情報収集行動がどう変化しているかに注目し、自社のお客様が実際に何を使っているかを把握することが重要です。" } },{ "@type": "Question", "name": "ChatGPTの利用者は少ないと聞きましたが、AI対策はまだしなくても大丈夫ですか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", "text": "利用回数のデータだけを見て「少ない」と判断するのは早計です。これまで検索では解決できなかった問題がAIで解決されるなど、利用の「質」が変わってきています。すぐに焦る必要はありませんが、自社顧客の動向は注意深く観察し始めることをお勧めします。" } },{ "@type": "Question", "name": "SEOはもう時代遅れになるのでしょうか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", "text": "すぐに時代遅れになることはないでしょ

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WebマーケティングやWeb活用で手が止まってしまったり、悩んでいる中小・小規模事業者の皆様へ、根本的なウェブに対する考え方・捉え方をお届け。

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