16分

64,12月21日 月曜日 14時22分 金沢銀行本‪店‬ オーディオドラマ「五の線」

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64.mp3

本多慶喜は12畳ほどの広さの専務室にある革張りの自席に座った。ため息をついたところで懐にしまっていた携帯電話が鳴った。彼はそれを取り出して画面に表示される発信者の名前を見て思わず舌を打った。
先程まで開かれていた金沢銀行の役員会上でマルホン建設の追加融資には、条件が課せられた。それは事前に山県が作成した経営改善策を無条件で受け入れることだった。常務の加賀は成長分野である介護・医療の優良先とマルホン建設が提携する山県の案を評価した。これが即座に実行されるならば、仮に金融検査が入っても格下げを回避できようという評価だ。併せて加賀はこの改善策を根拠に、金融庁にマルホン建設の査定を大目に見るよう、事前に働きかけること約束した。
今俎上に上がっている1億の融資が実行されなければマルホン建設は資金ショートを起こして経営に行き詰まってしまう。しかしそのために課せられた条件は慶喜にとって具合の悪いものだった。提携だけならば良いが、ドットメディカルはそれに条件をつけてきた。ドットメディカルのマルホン建設における発言権を高めるために、役員を刷新せよとの事だった。現社長はそのままで、一族の役員は全て解任。その代わりにマルホン建設社内の生え抜きの若手管理職を常務に、ドットメディカルから専務取締役を選任せよとのことだ。後の2人の取締役は社外から引っ張ってくる。今まで役員数が何故か10名もいたマルホン建設はその数を5名にせよとのことだった。
慶喜は金沢銀行専務取締役ながら、実家の家業であるということもあって、マルホン建設の社外取締役として席を置いていた。しかし今般の提携話によってその職も解かれることとなる。
「善昌…。すまん…。」
そう言って彼は何度も鳴る携帯をそのまま机の上に置いて放置した。しばらくしてそれは鳴り止んだ。
ー兄貴にどう報告すればいいんだ…。
慶喜は背もたれに身を委ねて、そのまま天を仰いだ。目を瞑りひと時の間をおいて彼は目を開いた。そして彼は自席に配されている固定電話の受話器に手をかけた。
「もしもし…。あぁ、私だが…。」
「どうしました。」
「まずいことになった。」
「まずいこと?」
「マルホン建設の人事が一新される。」
「はぁ?」
「俺も身内も全員解任だ。」
「どうしたんですか急に。」
「実は…マルホン建設に対する1億の融資案件があってな。その実行条件として役員一同の刷新が課せられた。」
受話器の向こうの男は黙ったままだった。
「善昌はそのままだが、役員のほとんどが社外からの者になる…。」
「あの…そういう事態を未然に防ぐのがあなたの仕事のはずじゃないですか。」
「すまん…。私の力が及ばなかった…。」
「専務困りますよ。力及ばずで済ませる話じゃありませんよ。何とかしてくださいよ。」
「しかし…。役員会でこれは決議された。この条件を飲まないことには手貸が実行できん…。」
電話の向こう側の男はしばらくの沈黙を経て言葉を発した

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先程まで開かれていた金沢銀行の役員会上でマルホン建設の追加融資には、条件が課せられた。それは事前に山県が作成した経営改善策を無条件で受け入れることだった。常務の加賀は成長分野である介護・医療の優良先とマルホン建設が提携する山県の案を評価した。これが即座に実行されるならば、仮に金融検査が入っても格下げを回避できようという評価だ。併せて加賀はこの改善策を根拠に、金融庁にマルホン建設の査定を大目に見るよう、事前に働きかけること約束した。
今俎上に上がっている1億の融資が実行されなければマルホン建設は資金ショートを起こして経営に行き詰まってしまう。しかしそのために課せられた条件は慶喜にとって具合の悪いものだった。提携だけならば良いが、ドットメディカルはそれに条件をつけてきた。ドットメディカルのマルホン建設における発言権を高めるために、役員を刷新せよとの事だった。現社長はそのままで、一族の役員は全て解任。その代わりにマルホン建設社内の生え抜きの若手管理職を常務に、ドットメディカルから専務取締役を選任せよとのことだ。後の2人の取締役は社外から引っ張ってくる。今まで役員数が何故か10名もいたマルホン建設はその数を5名にせよとのことだった。
慶喜は金沢銀行専務取締役ながら、実家の家業であるということもあって、マルホン建設の社外取締役として席を置いていた。しかし今般の提携話によってその職も解かれることとなる。
「善昌…。すまん…。」
そう言って彼は何度も鳴る携帯をそのまま机の上に置いて放置した。しばらくしてそれは鳴り止んだ。
ー兄貴にどう報告すればいいんだ…。
慶喜は背もたれに身を委ねて、そのまま天を仰いだ。目を瞑りひと時の間をおいて彼は目を開いた。そして彼は自席に配されている固定電話の受話器に手をかけた。
「もしもし…。あぁ、私だが…。」
「どうしました。」
「まずいことになった。」
「まずいこと?」
「マルホン建設の人事が一新される。」
「はぁ?」
「俺も身内も全員解任だ。」
「どうしたんですか急に。」
「実は…マルホン建設に対する1億の融資案件があってな。その実行条件として役員一同の刷新が課せられた。」
受話器の向こうの男は黙ったままだった。
「善昌はそのままだが、役員のほとんどが社外からの者になる…。」
「あの…そういう事態を未然に防ぐのがあなたの仕事のはずじゃないですか。」
「すまん…。私の力が及ばなかった…。」
「専務困りますよ。力及ばずで済ませる話じゃありませんよ。何とかしてくださいよ。」
「しかし…。役員会でこれは決議された。この条件を飲まないことには手貸が実行できん…。」
電話の向こう側の男はしばらくの沈黙を経て言葉を発した

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