復職名人が読む三手先

Centro Salute

この番組は、産業医の高尾総司、弁護士の前園健司、社労士の森悠太の三名が、企業や自治体の人事・健康管理に携わる方向けに、メンタルヘルス不調者対応や健康管理について、議論をしていくポッドキャストです。 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210%E2%81%A0

  1. 6日前

    第105回|三原則アップデートと上司向け「3ステップ」

    三原則のアップデート、とりわけ第二原則の見直しについて掘り下げました。今回は割と早くスッキリしてしまったので、いつもと比べて短めです。 告知 【産業医生涯研修会のお申し込みはこちらから】 https://jfpa.manaable.com/login/6fc978c9-b132-4b5b-933c-292b51dc7f2b/detail 【復職名人の次の一手をスタートしました】 https://fukushoku-meijin.com/podcast/itte-ep01/ 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ 近況報告 高尾:風邪が長引いてます。天気予報とにらめっこしながらの(車の)散歩してます。 前園:西鉄の電車内の広告について。 森:身近になってしまったクマ問題。 議論した内容 第二原則のアップデートー「休ませる」から「指摘し続ける」へ 第一原則・第三原則は変更なし。修正の対象は第二原則のみ。 従来の第二原則は「通常勤務ができないなら休ませる」であったが、修正後は「通常勤務ができていない事実(またはその懸念)を何度でも伝え続ける」に軸足を移した。 従来型は運用の担い手を医療職と想定し、共通目標として療養を掲げていたが、メソッドを早期導入した企業では役目を終えつつあるという認識。 無理やり休ませる方向に働くと関係がギクシャクする。難渋事例で法務に相談すれば「休職命令権の濫用が争点になる」と返され、第二原則の運用が阻害されるという構造的問題。 事例性と疾病性の混同も背景にある。疾病性の思い込みから「休ませよう」に飛びがちだが、まずは通常勤務の支障という事例性の指摘を尽くすべき。 休業を命じないのであれば懲戒する覚悟が必要。「様子を見る」「受診させて見守る」という選択肢は取らない。 休職命令と懲戒処分 第二原則は「通常勤務できないなら休職命令」とは述べていない。事実を指摘し、原因が病気にあるなら休むことを強く勧めるという趣旨であり、休職命令権の濫用論に飛びつくのは論理の飛躍という整理。 休ませれば賃金請求リスクが生じるが、休ませなければ安全配慮義務不履行のリスクを問われる。両者は裏表の関係にある。 懲戒と休職命令を比較考慮すると、懲戒は履歴書の賞罰欄を通じて社外での不利益が大きくなりうる一方、休職命令は履歴書に記載されない。不利益の程度からは休職命令のほうが妥当。 懲戒は刑事処分に類似し、事実の存在と処分の均衡が求められるため無効になりやすい。戒告・譴責は法的不利益がほぼなく、訴えの利益が問題となる余地もあるという論点も提示された。 履歴書の賞罰欄はJIS様式の廃止に伴い減少傾向。賞罰欄の「罰」は一般に刑事罰の有罪歴を指し、軽微な懲戒処分の記載は不要とされるが、面接で問われれば正直に答える必要があるという整理。 懲戒は突然行うものではなく、事前に繰り返し予告した上での最終手段。この前提が伝わらないまま「療養の次は懲戒」と受け取られること自体が問題という指摘。 上司向け「3ステップ」 三原則は人事・産業保健職・法務が全体を見通すための「現場運用の羅針盤」であり、上司に教えるものではないという結論。 上司には「気づきと初期対応の3ステップ」として伝える。第1ステップ=気づきのポイント(従来の第一原則)、第2ステップ=指摘・指導を繰り返す、第3ステップ=人事と連携する。 管理職研修で三原則を紹介すると「どうやって休ませるか」に焦点が集中し、その前段にある指摘が抜け落ちるという実感。 「2.5原則」のように原則を分割すると混乱を招くため採用しない。 ポーカーフェイスができない上司は少なくなく、「休ませる」という結論が本人に見透かされると強い抵抗を招く。本人の状態が真正な事例でも微妙な事例でも同様。 上司に休ませる責任まで負わせると「休ませればあとは何もしなくてよい」という理解に流れる。責任範囲を指摘と人事連携までに限定するほうが機能する。 ラインケアとの住み分け ラインケアは「できる上司」を前提とした内容であり、全管理職に求めるのは非現実的。管理職登用試験でその能力を確認していない以上、全員ができる前提には立てない。 4つのケアの枠組みでは人事が抜け落ち、上司の相談先が直ちに産業医となる構造になっている。上司が向かうべき先は人事であり、健康管理ではない。健康管理は本人が向かう先。 上司向け研修ではラインケアの考え方に軽く触れつつ、「規定はしない、できる人はやってよい、基本はこちらで進める」という立て付けが現実的。 ラインケア研修を受けてきた上司ほど「肩の荷が下りた」と腹落ちする傾向。2019年の自治体研修でも同様の反応が多数寄せられた。 上司の裁量権と安全配慮義務 就業上の措置・配慮とは、本質的に「上司の裁量権に対する制約」。上司は法人から働かせる裁量を与えられているだけで、休ませる権限は与えられていない。 したがって休ませるか否かの検討は人事総務が関与してから行うべきであり、上司の役割は働かせること、部下を育成すること、そして安全配慮義務の担い手であることに整理される。 安全配慮義務の中身は予見可能性と結果回避義務。指摘を続け、その限界を超えそうな段階で人事につなぐという整理で履行と位置づけられる。 業務の加減について、事例性も疾病性もない段階では育成目的の裁量範囲内。事例性ないし疾病性が生じた後は、業務量の加減は上司の裁量ではなく法人の指示に従う領域に移る。 指摘・指導は育成の基本。フィードバックを受けない部下はいつまでも改善しない。 指摘は手間がかかるため、放置すれば「コスパのいい部下しか指導しない」状況に陥る。指摘のシナリオ(読み上げられる指摘文)は会社が用意すべきという提言。 管理職研修と動画活用 森の次回管理職研修の構成案:大原則と2つの健康管理の整理 → 復職プログラムの動画視聴 → 上司としてやってほしいこと(3ステップ)。 高尾が医学部生に動画を見せたところ、AMAガイドライン等の講義内容より動画の印象が強く残った。「寄り添わなくてよいのか」という当初の違和感が、動画を見ることで「こんなものか」と納得に変わる反応が多数。 動画は実践投入済みのツールであり、本物を見せることの説得力が大きい。業務基準の説明や、休職期間満了=解雇扱いとする就業規則の読み上げまで、口頭では言いづらい内容がスムーズに受け入れられる。 「理屈はいいが本番でできるのか」と構えて聞く層に対して、動画が有効に機能するという手応え。 編集後記 高尾 これまでの三原則は、産業医(保健職)・人事総務・法務などの、後方支援メンバーの「見通し」をたてるための指針、一方で、上司のための3STEPは、いままさに目前の対応をするための簡便なルール、というような棲み分けですかね。  その意味では、後方支援が主の産業医等からは、現場対応が主の産業医(保健職)に対しては、3STEPを示すことになるのかもしれません。 前園 メンタル不調者対応における私のテーマのひとつが、「人事や上司・管理職を悩ませない」ということなのですが、まさに今回の議論は学び多き時間でした。  メンタル対応は、どうしても、不調になってしまった方に焦点を当てる議論になるのですが、人事や上司らに焦点を当てることにより、見えてくることもあると思います。  こういった、軸をズラすような考えは、これからもクセとして持っておきたいと思います。 森 動画を用いた上司向け研修をやってきました。動画自体については異論無し、厳しすぎるという意見は全くなく、実践導入に向けて対応していくこととなりました。  興味深かったのは、実際に面接で対応する担当者と、一般の上司とでは、考え方が異なった点です。上司からは、「動画は抑揚がなく、人間味に欠けるので、もっと暖かくしてほしい」という要望が多かったのですが(これはAI音声の設定の都合もあったかもしれません)、担当者の上司からは「矢面に立たされる担当者がこれまで不憫だった。これなら様々な反発を直接受けずに済む

  2. 7月1日

    第104回|産業保健に生かす裁判例の読み方・考え方

    9月の産業医生涯研修で予定するコマ「産業保健に生かす裁判例の読み方・考え方」の構成を考えました。 告知 【産業医生涯研修会のお申し込みはこちらから】 https://jfpa.manaable.com/login/6fc978c9-b132-4b5b-933c-292b51dc7f2b/detail 【復職名人の次の一手をスタートしました】 https://fukushoku-meijin.com/podcast/itte-ep01/ 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ 近況報告 高尾:先週の札幌での地方研修に続き盛岡へ移動し、じゃじゃ麺を食べました 前園(アラビアータ):エレベーター内でドアにCM映像と音楽が流れた件への違和感。隙間時間まで広告で埋める風潮への悲しさを吐露。 森:総務省・家計調査の対象世帯に当選。半年間の購入品を逐一記録し、初月は食品の重量まで測る負担を紹介。 議論した内容 裁判例を産業保健に生かす2つの軸 産業医が裁判例を知りたがる背景に、「自分の身を守る(訴訟リスク)」と「企業へのアドバイスに生かす」の2軸があるとの整理。 産業保健で裁判例が生きる分野はメンタル不調者対応・過重労働・ハラスメントに偏り、健診事後措置やストレスチェックでは生かしにくいという指摘。 弁護士を介したリスクの押し付け構造 会社の顧問弁護士が、リスクを産業医に取らせる形で主導権を握ろうとする構図。 軽減勤務からフルタイムに移行できない従業員の面談を突然任され、雇用継続への懸念まで産業医に言わせようとする場面など、「自分が言って大丈夫か」という不安が生じる。 パワハラ裁判の萎縮効果 保健師が産業医からパワハラを受けたとされる事例(判例誌掲載)を題材に、裁判所が職場コミュニケーションの適否にまで踏み込む傾向への懸念。 挨拶の無視といった細部まで本件行為として認定される運用が、現場の萎縮を招くという見方。 法的リスクを考えるべき場面 法的リスクが顕在化するのは基本的に「無理やり辞めさせた時」(休職期間満了退職・原職復帰拒否)であり、休職発令の無効や賃金差額請求として争われる。 原職復帰を前提に延長を1回に限る等、雇用を無理に終了させない運用なら過度に恐れる必要はないという整理。片山組事件と必ずしも一致させる必要はないとの指摘。 裁判例そのものの読み方 判決文の構造(経緯・争いのない事実・争点・原告/被告の主張・裁判所の判断・結論)を解説するレクチャーの価値。 ダイジェストや解説文だけでなく原告・被告の主張欄を対比して読むと双方の「景色」やエピソードが見え、会社側の主張は裁判所にほとんど採用されないといった実感も得られる。 SNS等で断片的に紹介される裁判例を鵜呑みにせず、要約に踊らされない余裕を持つべきという注意喚起。参考文献として労働新聞社の裁判例集や労働法の基本テキストを挙げる案。 産業医賠償責任保険と契約上の手当て 医師賠償責任保険は団体扱いが基本で個人加入しにくく、学校医・産業医活動の特約付帯率は低いと推測。支払い実績が乏しく保険会社に有利な一方、手間ゆえ営業が特約を積極的に付けない現状。 訴訟時の弁護士費用に備え、産業医契約に「業務に関連して第三者から訴訟等を受けた場合の費用は会社が負担する」旨を盛り込む提案。医療過誤で病院が求償するのと同様に、費用を会社へ求償する発想も。 費用負担が担保されるからこそ独立して判断できる、という独立性の捉え直し。 産業医が紛争当事者にされやすい構造と対策 産業医は法人から独立した人格ゆえ矢面に立ちやすく、産業医と会社(人事総務)の温度差・不整合が本人の紛争感を招く。 対策は、個別対応の前に運用ルール(対集団対応)を産業医が主導して整えること。事前ルールなく個別に会社へ足並みを揃えると「会社の犬」に映るという指摘。 主治医と産業医を場外に出し、会社と労働者を当事者として向き合わせる「仲人」的ポジションへの転換。 まとめ:トレードオフから両立へ 「自分の身を守る」と「企業へのアドバイス」は無策だとトレードオフだが、会社に言うべきことを言ってもらい、事前に定めた集団的方針を個別事例に当てはめる(シナリオも活用)メソッドを取れば両立するという結論。 研修当日は今回の議論を原稿化し、ブロックごとに紹介しつつ質疑応答で補う進め方とする方針。 編集後記 高尾 (盛岡)じゃじゃ麺は、平打ちのうどん麺。ジャージャー麺は、中華麺、というのが一番の違いみたいですね。 前園 私が「人類はこのまま隙間を埋め尽くしてどこに行くのだろう」と考え出したのは、コロナ禍でWeb会議が普及し、「移動時間がなくなってWeb会議が1日20件入ってる」みたいなエピソードを聞いた辺りからです。エレベーターの中まで広告が流れるとなると、次はどこでしょう。 森 家計調査の報奨金は6ヶ月で21,000円。。。まったく割にあいません。国の大事な調査なのでもちろんご協力しますが、もう少し何か良い方法はないかなと思うところです。

  3. 6月21日

    第103回|パワハラ対応と産業医面談

    次回の研修会で予定しているパワハラのグループワークに向けて、事前議論を行いました。 告知 【復職名人の次の一手をスタートしました】 https://fukushoku-meijin.com/podcast/itte-ep01/ 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ 近況報告 高尾:台湾旅行で台湾ウイスキー(カバラン)を購入。試験管入りの定番セットはキャップの出来が悪く液漏れした一方、国内未発売の新ラベルを免税店で割安に入手した。 前園:産業衛生学会に参加。大阪生まれ大阪育ちの立場から、川沿いを綺麗に整備し文化的に活用する大阪と、そうした発想が薄い福岡の街づくりの違いを実感したという話。 森:学会で「復職名人聞いてます」と多数の声をもらった。社名とブランド名の不一致に悩んだものの、ネームカードにシールを貼る対応で決着。セカンドライン番組も準備中。 議論した内容 パワハラ対応の大原則は「切り分け」 パワハラを理由に療養した本人が「上司を変えてくれれば復職できる」と主張するケースを素材に、復職の手続きとパワハラ認定の手続きは分けるべきという基本原則を確認。 切り分けないと、本人の関心が復帰基準の達成ではなく加害者の処遇やパワハラ認定の行方に集中し、時間だけが経過して復帰が遠のくという指摘。 実務で本当に困るのは明白なパワハラではなく、グレーやパワハラ未満の主張事案。会社側がまともに取り合いすぎると、本人が「要求は通って当然」という誤った方向に思い込みやすくなる。 休職を取引材料にさせない、安全配慮義務を一身に投げさせない、という観点でも切り分けが有効。 産業医面談の限界と「原因/結果」の切り分け 産業医は面談で本人の話しか聞けないため、客観的にパワハラ有無を判断できない。主治医が本人の話だけで上司を悪者と判断してしまう構図と同じという指摘。 「原因(本人がパワハラと考えるもの)」と「結果(精神的不調)」を切り分け、医療職は後者の相談・助言にのみ関わるという整理。 慣れていない産業医・産業保健師がこの領域に踏み込むと事態を悪化させるため、安易に触らせたくないという立場も示された。 「さよなら産業医面談」—何でも面談への問題提起 ノープラン・ノー情報で何でも聞く「いきなり面談」は時代に合わないという問題提起(高尾先生の連載構想)。 臨床の問診も構造化・標準化が進み、思いつきで取る情報が決定打になる場面は減ったとの見立て。産業保健でも質問紙等で必要な情報を体系的に収集する流れにあるとした。 パワハラ相談はそもそも産業医・産業保健師がワンストップで受け止めるべきではなく、通報窓口へ案内すべきという整理。 カリスマ産業医とエントリー産業医 法律知識・人事との連携・本人の協力を兼ね備えた万能型(カリスマ)産業医なら、本人ヒアリング→会社確認→異動を含む調整→復職、という交渉ごとをこなせる。ただし非弁活動に近づく面もあると指摘。 一方で、嘱託産業医がそこまで時間をかけるのは物理的・時間的に非現実的。カリスマは「ここまでなら会社が動く」という交渉枠を経験的に持っている=時短交渉をする弁護士に近いという整理。 多くの産業医には、社外相談窓口の初動のように「判断はせず事実だけ確認する」という割り切った役割の方が現実的という結論。 ワンフレーズから「構造化(パーツ化)」へ 設定されてしまった面談では、冒頭で「この場はパワハラの有無を判定・調査する機関ではない」と立場を説明し、調査希望ならパワハラ窓口へ案内する切り返しが有効。 ただし会社側が「パワハラは曖昧なまま、この人を異動させたい」といった忖度系の依頼を産業医に持ち込む構造もあり、巻き込まれるリスクに注意。本人の前で人事面接へ引き渡すシナリオ(産業医の顔をあえて軽く潰す芝居)も紹介。 ワンフレーズでしのぐのは過去の手法。新しいしのぎ方は、伝えるべきこと(中立の立場説明・聞く範囲の限定)を配置し、自由に聞く部分の射程を自分でコントロールする「パーツ(構造)」化。 質問が決まっている構造化面接とは異なり、こちらは「言いたいこと」を起点に自由発話の射程を制限する点が肝。両立支援カードの「自由なキャンバスに見えて絵柄は決まっている」発想とも通じる。 イメージは「交通整理」。本人のお困り事を預からず、緩やかに本人へ返すキャッチボールにたとえた。整理の軸は「原因側・結果側・交絡要因」の3つに絞ると伝わりやすいという案も示された。 編集後記 高尾 産業医が前置きなしで、パワハラの相談を受けてあげると、従業員は、「中立的(=医学的?)であるはずの産業医が共感的に意見を述べてくれたということは、すなわち「私は正しい!(真にパワハラを受けている)」という考えの強化に関与してしまっているんじゃないですかね。。。 前園 パワハラの問題については、パワハラとはなんぞやという啓発の第1フェーズがうまくいかないまま、「パワハラという言葉が走ることで萎縮効果が生じる」という第2フェーズに入っている印象があります。  さすがに最近は、第1フェーズの研修を新規で依頼するような会社は減っているかとは思いますが、第2フェーズにおける有効な対策を考えていくのが、今年の課題だと思います。  教育なのか、仕組みなのか、両方なのか。仮にそれらでやるとしても、本当に実務で活きるやり方は何なのか。  産業保健に携わるみなさんと議論を深めていきたいです。 森 パワハラのネガティブリスト(やっちゃダメリスト)方式の問題は、最近少し話題になっていた不適切保育ガイドラインの問題にも通じる気がしました。例えば「お口チャック」はダメと示されているのですが、じゃあなんて指導したら良いのかはわからず、現場では大変苦労されているようです。

  4. 6月10日

    特別編|高尾メソッドと両立支援

    労務管理と産業保健研究会の自由集会として、高尾メソッドの立場から仕事と治療の両立支援をあらためて整理した特別編です。 森からの問題提起に対し、高尾先生が賃金のグラデーション制度という具体策を提示し、前園先生が安全配慮義務の法的リスクを補足したうえで、会場との質疑応答で論点を深めました。 告知 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ 議論した内容 労働契約の本質と「仕事と治療」の主従関係 職場はあくまで働く場所であり、労働契約に基づく労務提供が前提。あえて「治療と仕事」ではなく「仕事と治療」の順で呼び、留意すべきは病気による労務提供能力の低下の許容ではなく治療機会の確保だと整理した。 育児・介護の両立支援は基本的に「時間(時短等)」の調整であり、本人の職務遂行能力自体は低下していない点が決定的に異なるという指摘。復帰後の体制づくり(保育園探し、ケアプラン策定)は本来労働者が主体的に行うものであり、仕事と治療も同様に本人の主体性が問われるとした。 職務無限定性と個別配慮の不整合 問題の根幹は、正社員の職務無限定性(いつでも・どこでも・何でも)と、個別配慮・特別扱いとの矛盾にあるとの分析。ジョブ型雇用なら「週4日勤務に契約変更」といった交渉で解決し得るが、無限定性ゆえに難しくなる。 「どこで働くか・いつ働くか」は労働契約の本質的部分であり、賃金が労働時間に対して支払われる以上、安易に踏み込むべきでないという補足。会社側から契約変更を持ちかけるのは現実的に難しいとした。 安全配慮義務をめぐる誤解 今回の指針が安衛法68条等を「安易に就業禁止をせず可能な限り措置を講じる」根拠として持ち出しているが、同条は感染性疾患等の就業制限を定めるもので、解釈としては無理筋との指摘。 中途半端な業務軽減での就労は、かえって予見可能性を高め、結果回避義務の不履行の履歴を作り出しかねない。指針を守っていても、いざ訴訟になれば実際に起きた結果が優先され、守ってくれるとは限らないと懸念を示した。 負担の所在と国の役割 育児時短では減額分の一部が雇用保険から補助される一方、傷病については傷病手当金(休業時)のみで、就労継続中の負担構造が不明確。会社が業務量・売上の低下を許容しない限り、しわ寄せは同僚に向かい、企業が不当に利益を得る構図になりかねないとの問題提起があった。 主治医連携と両立支援カードの使い方 会社としての主治医連携は最小限にすべきとの立場。連携すべきは「本人が主治医の説明を理解し、自分で会社に伝えること」であり、治療スケジュール程度は本人が確認・申告すれば足りるとした。 両立支援カードは、本人が労働契約内容(労働時間・異動可能性・使える制度)を自ら書き込み主体性を促す道具として活用する。会社ができる支援内容に選択肢を絞った様式をあらかじめ準備し、衛生委員会等で「自社ではここまで」と整理しておく運用を提案した。事前に会社と本人で配慮内容を合意し、主治医にはチェックのみを依頼すれば主治医の負担も軽減できるとした。 高尾メソッドの答え:賃金のグラデーション制度 マクロの視点(生産量だけでなく労働生産性の向上)を忘れないことが起点。「治療と就業の支援」は労働生産性低下と周囲負担を招く「貧国弱民の策」だと位置づけ、本来の「仕事と治療の両立支援」=富国強兵的な発想との対比を示した。 ミクロではノーワークノーペイから「ワークペイバランス」へ。職務無限定性を放棄すると4掛けになるため、10割〜5割のレンジでグラデーションを作る「プースカフェスタイル/ミルフィーユ構造」の賃金制度を提案。職務限定・勤務地・労働時間などの制約に応じて1割ずつ減額し、最大5割減まで設計する案を提示した。 国の負担として、最大7割まで雇用保険で補填する案、頻回受診には「有給休暇の無給前借り制度」という案も提示。前園先生からは、就業規則・賃金規定で合理性と必要性を備えれば例外的に減額制度は設計可能で、基本給を低めにして職務無限定手当等を上乗せする設計があり得るとの補足があった。 「やってみなはれ」方式と本人の主体性 復職や就業の前に「たられば」で空想的対立をするから、会社は健康リスクを過大に見積もり、労働者・主治医側は念のためと配慮を最大要求する。まず働いてもらい、評価して賃金を合わせるべきという考え方を示した。 賃金減額は本人合意を要件にできないため、育児時短と同様に評価後に一方的に下げる前提で制度化する。両立支援カードは労働者の働く意思の表示と位置づけ、完全労務提供希望/不完全労務提供申し出の2パターンで運用する構想が語られた。 安全配慮義務リスクのマネジメント(前園補足) 安全配慮義務違反のリスクはゼロにできないとの結論。NTT東日本事件(家族性高コレステロール血症・心筋梗塞既往の労働者が連続出張研修後に死亡)を例に、産業医への情報提供不足が義務違反と認定され、過失相殺7割でも3割の限度で敗訴した事案を紹介した。後付けで「こうすれば助かった」と主張される構造的問題があるとした。 リスクは「なくす」ものではなく「マネージする」もの。具体策として、主治医・産業医の意見担保、本人の申し出で始める(訴える土壌を作らない)、家族の早期関与、ストップ要件の強化による早期の療養導入、健康状態の自己申告(就業に支障のある症状の有無・定期通院・服薬のみを確認)が挙げられた。 質疑応答で深めた論点 病状悪化の損害は因果関係の立証が難しく、適切にリスク認識を共有していれば大きな賠償リスクにはなりにくい。死亡・後遺障害と異なり相場も立ちにくいとの見立て。 治療を怠った結果の病状悪化については、定期通院・服薬は本人の役割であると明示しておくべき。過保護な日本の文脈では「言っていないことは知らない」となりがちなため、自己申告に組み込む案が示された。 「0を5にする」という表現は無理やり働かせる印象を与えるため、「10が4に落ちるのを9・8・7・6・5で踏み止まる」と捉えるべきとの整理。見せ方も「ミルフィーユを剥がす」ではなく「4掛けから上乗せする」と表現すべきとした。 産業保健職が配慮を引き出すことへの懐疑に対し、両立支援は医療問題ではなく労務問題だと言い切る姿勢を示した。疾病別の細やかな医療化は、最終的に対象者の特例子会社化(隔離政策)につながりかねないとの危惧から、中小企業でも回せる労務管理の枠組みを重視した。 柔軟な働き方は日本の文脈ゆえに健康によいと見えるだけで、社会疫学の知見では職位の低い層にとって「中抜き」的な働かせ方になり得るとの留保。熱中症リスク等についても、ガイドライン遵守と体制づくりで「訴えさせない土壌」を作ることが重要だとした。 在宅勤務はむしろ体調確認を難しくする面があり、両立支援の文脈では安易に認めない(勤務地制限として扱うか、業務委託に切り替える)という逆説的な論点も提示された。 賃金制度の本格運用は、地域や賃金制度にとどまらず雇用制度全体(正社員かそれ以外か)の整理を要する大きな改革であり、本来は社会保障を含む抜本的改革を伴うべきものを医療側に押し付けている構図だと総括した。両立支援は産業保健ではなく労務管理の分野。 編集後記 高尾 言い忘れてましたが、職能性のもとでの賃金は、簡単には下げられないことはいつも言及しているとおりですが、「●●手当」については、その手当の金額と内容が見合っているものであれば、これを無くすことは、それほど難しくありません(管理職手当、とか)。  それゆえ、職務限定性手当1(軽)みたいなものであれば、職務に限定を加えるならば、これを支給しない対応はできるだろう、ということです。 前園 何を隠そう私は大阪生まれ大阪育ちであり、もともとの勤務先が中之島に面するビルだったので、今回の学会は感慨深いものがありました。仕事に

  5. 5月19日

    第102回|てんかんと業務上の運転制限をどう設計するか

    今回は、療養中・就業中にてんかんなどの疾病で運転業務に制限が生じた場合の復職判定や処遇のあり方について議論しました。なお、収録の不手際により、本エピソードは議論の途中からの開始となっており、近況報告は含まれていません。ご了承ください。 告知 【第99回日本産業衛生学会@大阪の企画についてポスター発表】 下記の通りポスター発表を行います。 セッションの間は私たちがポスターの前にいますので、ぜひお気軽にお越しくださいませ。 演題番号:P9-95 演題名:産業医・弁護士・社労士の連携の取り組み セッション日時: 5月28日(木) 13:45~14:45 【会場外自由集会】 下記にて、自由集会を行います。公開収録形式の予定です。申し込み不要ですので、ぜひお越しくださいませ。 日時:5月29日(金)9時30分〜11時30分 場所:中之島センタービルディング 31階スカイルーム テーマ:両立支援と高尾メソッド 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ 議論した内容 療養期間におけるてんかんの特殊性 通常の原因不明の失神であれば、車内運転は6ヶ月程度のみそぎ期間で再開可能というのが一般的な感覚 検査により疾病が特定されれば、通常は就業制限期間が短くなる方向に働くが、てんかんは2年の実績期間が必要で、特定されると逆に期間が長くなるというデメリットが生じる 失神原因として注意すべきはてんかん・不整脈・血糖値の急激な低下の3つ。不整脈の検出にはホルター心電図が想定されるが、発作の捕捉自体が課題となる リスクベースとリスクトレランスの整理 法的・医学的には運転可能だが、会社として「命じない」バッファー期間が発生する構造 自治体の災害対応のように、いつ命じられるか分からない状態は周囲の納得を得にくい 会社のレピテーションリスクと運用のバランスが論点 就業中に発覚した場合の処遇 復帰時のように一律で休ませる対応はやりづらい 解除期間と、解除はされているが命じない期間を会社側と本人で折半する考え方が示された ケースをマトリックスで整理し、原則とバリエーションを明確化する必要性が指摘された 事故・発作の累積による期間延長ロジック 1回ごとに6ヶ月・1年を独立に当てはめるのではなく、累積で2年など長期に振る運用が必要 累積が2年を超えた時点でキャパシティ問題と捉え、雇用終了や職務限定への切り替えも視野に入る 一方で、無事故期間をクリアした場合は職務無限定に戻す余地を残しておく設計 真に病気で運転回避が必要か、業務回避の意図かの切り分け リスクトレランスとリスクベースの混在をどう切り分けるか、理屈を社内に作る必要がある 治療・自己健康管理への取り組み態度が判断材料となる 接客で問題を起こす人事評価のマイナスとセットで業務から外す運用と類似の構造で整理できる 病気のコントロールと自己健康管理の組み合わせ 糖尿病・高血圧はメディカルコントロールと自己健康管理が揃えばほぼ発作が起きず、就業制限の解除も速やかに可能 てんかんは両方を徹底しても一定頻度で発作が起きるため、2年の実績期間が避けられない 就業制限の解除と現実の配置は別問題で、リスクヘッジ期間は企業規模により変動するが、社内で一定のルールを設けることが必要 運転手当による処遇調整案 「運転するかもしれない手当」を給与に組み込み、制限が生じた際に取り上げる設計案 夜勤手当と同様の構造で、本人へのペナルティを金銭面で吸収する形に整理できる 金額は月1〜2万円程度から、業務の必要性に応じて設定する 解雇や利用延長といった強烈な対応に至らずに調整可能な枠組みを準備できる 社内でのルール設計の重要性 明快な答えは出なくとも、社内で議論し合意形成してルール化することが重要 「めんどくさいから運転させない」で済ませる対応が最も避けるべき結論 議論の過程を同僚にも共有することで、運転免除に対する周囲の納得感も得られる 編集後記 高尾 ひょっとして、職務無限定手当1、手当2とかをあらかじめ組み込んでおいて、通常の復職時、すなわち1ヶ月間以内ならば、これを支給するが、1ヶ月を超えた場合は、支給しなければ、うまくいく? 例えば制約がひとつだけなら、手当1は支給。二つ以上ならいずれも支給しない。 本当は絶対額ではなく、それぞれ基本給の2割くらいに設定できるといいのでしようけれど。 前園 親知らずを人生で初めて抜歯しました。 「詰め物が取れたので歯医者に行ったら、抜歯をすすめられる」という展開が、抜歯あるあるのようです。 よく考えたら、産業保健の界隈でも歯の話題は当然ありますが、法的論点として触れたことはないですね…。 歯のところは、弁護士との連携がしにくい分野かもしれませんね(笑) 森 今回は録音ミスをやってしまいました・・・ いつもは指差し確認をしっかりやって、録音と録画を確認していたのですが、完全に忘れておりました。

  6. 5月12日

    第101回|産業医・弁護士・社労士の三職種連携をどう一般化するか

    第99回日本産業衛生学会でのポスター発表に向け、産業医・弁護士・社労士の3職種連携の特徴を一般化・整理することを目的に議論を行いました。平時連携と有事連携の違い、共通言語の重要性、不可侵領域とオーバーラップ部分の見極め、シナリオによる同床異夢の最小化など、連携の本質的要素を多角的に整理しています。 告知 【第99回日本産業衛生学会@大阪の企画についてポスター発表】 下記の通りポスター発表を行います。 セッションの間は私たちがポスターの前にいますので、ぜひお気軽にお越しくださいませ。 演題番号:P9-95 演題名:産業医・弁護士・社労士の連携の取り組み セッション日時: 5月28日(木) 13:45~14:45 【会場外自由集会】 下記にて、自由集会を行います。公開収録形式の予定です。申し込み不要ですので、ぜひお越しくださいませ。 日時:5月29日(金)9時30分〜11時30分 場所:中之島センタービルディング 31階スカイルーム テーマ:両立支援と高尾メソッド 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ 近況報告 高尾 産業医科大学基本講座の受講者激励会に行ってきました。 前園 労働新聞にて単独連載がスタートしました。この機会に労働新聞をぜひ購読してください。 森 作業環境測定士の取得に向け、第一種衛生管理者保有者向けの免除講習を受講してきました。 議論した内容 ポスター発表の狙い 産業医・弁護士・社労士という3職種連携の特殊性を踏まえつつ、産業保健職と人事・経営層との連携など、より広い場面に応用可能な一般化を目指す方向で整理。 平時連携と有事連携 連携には「個別ケース対応の有事連携」と「考え方や仕組みを整理する平時連携」の2層が存在し、3人の関係は当初から平時連携を並行して行ってきた点が特徴。 平時連携が積み重なることで、有事と感じる事案を平時連携の延長で捌けるようになり、結果として「有事ならない」状態が生まれる。 必要性ベースの関係は必要性が消えれば終わってしまうため、必要性のない時間の確保と中期的なリソース交換が連携継続の鍵。 連携を支える共通言語と考え方の共有 メソッドという共通言語を持っていることが、3職種連携の再現性を支える基盤。 「あの先生はこう言っている」という答えだけでなく、「なぜそう考えるか」という導出プロセスを共有することが連携を機能させる上で重要との指摘。 不可侵領域とオーバーラップ部分 職種が異なるからこそ、不可侵領域を明確にしつつ、医学・法律以外の業務的アプローチで重なるオーバーラップ部分を厚くしておくことが連携の持続条件。 リング上で議論する範囲(共通領域)と、リングを降りて持ち帰る範囲(医学・法律的判断)を明確に区別する運用を確認。 勉強会・飲み会形式との比較 勉強会形式は教える側と教えられる側が固定されやすく、平時連携の代替にはなりにくい。 飲み会の質と種類によっては議論が深まらず、文書に相互に手を入れる作業こそが連携の本質的な深化を生むとの整理。 病名ごとの対応検討の可能性 当初から病名を問わない一般化を貫いてきたことが連携継続の要因であり、初期に病名検討から入っていれば連携は続かなかったと振り返り。 成熟した現状であれば、病名ごとの対応をオプション的に取り扱う検討にも意義があり、メソッドのメリット・デメリットが病名により異なる点を整理する余地あり。 両立支援との接点 病名ごとの検討は両立支援との当てはめの議論と相当オーバーラップする可能性があり、メンタルより先にがん等の身体疾患領域から検討を進める方向性。 個別ケースの主治医意見に右往左往するのではなく、再現性のある対応を構築することが企業活動に適合。 文書理解力・作成能力の重要性 自治体関係者との連携が機能している背景には、文書の理解力と作成能力という基礎能力の存在。 医療職は総じて文章作成能力が高くないため、議論の土台を揃える「掃除」のような作業が必要であり、内容に入る前段階の素養を整える重要性を指摘。 同床異夢の最小化とシナリオの役割 連携が形骸化する最大の要因は同床異夢であり、これを最小化するためのコストを払う関係性が不可欠。 面接シナリオは「誰が何という言葉で伝えるか」まで落とし込むツールであり、同床異夢を構造的に減らす効果。 手順や様式だけでは運用がばらつくのに対し、シナリオを共有することで完成度を90%程度まで引き上げ、残る部分にのみマージンを残す運用が可能。 録音共有との対比 面談録音の相互共有は理論上可能でも、リカバリを含む面談全体のアートを損なう懸念や、聞き返す手間の重さから現実的ではない。 事前のシナリオ文書は曖昧さがなくクリアであり、議論を突き詰めやすいというメリットを再確認。 編集後記 高尾 従来型の対応は、経験からの帰納的な内容に、近年では手引きを中心とした要領のようなものからの演繹的な内容を、追加的にハイブリッドにしたものではないでしょうか。一方で、メソッドは要領(労働契約・就業規則+大原則・三原則)からの演繹的内容だけで構成されます。  もっとも、今回言及したように、いかに演繹的に構成しても、運用マニュアル(+様式)だと30%くらいしか(50%未満)制御できなかったところ(すなわち要領と乖離が生じる)、シナリオで90%くらい制御できるようになった気がします。(また連載か、別の原稿にまとめます) 前園 「共通言語」という言葉を、森先生が指摘してくれました。我々専門家は、弁護士であれ産業医であれ、本来いつも「難しい専門用語ばかり使わない」と意識しているはずですよね。でもメンタル不調者対応の相談場面では、専門家の人事・上司に対するアドバイスがわかりやすいかという話とは別に「人事・上司が労働者に対してどういう言葉を使うのか」という意味のレベルまで、共通言語化できているかどうかが、重要だということだと思います。  我々が早口で話す内容が、一言一句のレベルまでメモできるはずもないですので(笑)、私としても、この点はもっと意識していきたいと思います。 森 本編では直接取り上げられませんでしたが、3人がお互いに紹介した本をお互いに読むことが非常に多いのも、何か良い連携のヒントのように思いました。

  7. 5月6日

    第100回|100回記念〜リスナーからのお便り企画〜

    第100回記念として合宿先からのライブ配信を実施。事前に寄せられた10通超のお便り・ご質問に対し、番組の在り方からメソッド運用上の具体的な実務論点まで幅広く議論しました。リスナーとの双方向の交流を通じ、メソッドの普及や運用上の課題を改めて整理する回となりました。 告知 【第99回日本産業衛生学会@大阪の企画についてポスター発表】 下記の通りポスター発表を行います。 セッションの間は私たちがポスターの前にいますので、ぜひお気軽にお越しくださいませ。 演題番号:P9-95 演題名:産業医・弁護士・社労士の連携の取り組み セッション日時: 5月28日(木) 13:45~14:45 【会場外自由集会】 下記にて、自由集会を行います。公開収録形式の予定です。申し込み不要ですので、ぜひお越しくださいませ。 日時:5月29日(金)9時30分〜11時30分 場所:中之島センタービルディング 31階スカイルーム テーマ:両立支援と高尾メソッド 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ 議論した内容 100回記念ライブ配信とお便り企画 100回記念企画として、事前に寄せられた10通超のお便り・質問を読み上げ、コメントしながら進行する形式を採用しました。 来年の合宿に合わせて再度募集する案や、節目の50回ごとに実施する定番企画化の構想も話題に上りました。 番組の聞き方と近況報告の効果 公開収録の現地参加と通常配信、ノーカット版(有料会員向け)を組み合わせて聞いてくださっているリスナーの存在に対し、感謝が示されました。 近況報告は人柄を伝える機能があり、初対面でも知り合いに感じられる効果(単純接触効果に類するもの)があるとの指摘が紹介されました。 出演者の声質と音声編集 3名の声質が明確に異なるため、音声コンテンツとして識別性が高いというリスナーからの指摘を取り上げました。 機材選定と編集は森が担当しており、録音環境(反響音、エアコン音等)に応じた音響調整を行っていることが説明されました。 メソッドの間口の広げ方とセカンドライン構想 「ポッドキャストの内容がコアな信者向けになっている」というリスナーからの指摘に対し、初心者向けの「セカンドライン」配信や、よくある質問シリーズの可能性を議論しました。 「職場は働く場所である」という大原則が、20年以上経った今も新鮮に受け取られる現実への驚きが共有されました。 仕事と治療の両立支援における事業者方針表明 努力義務化された両立支援において、事業者の方針声明(A4・2枚程度の様式)の重要性を指摘しました。 厚労省雛形の声明をそのまま発出すると、人事の方向性がそちらに固定化される懸念があり、独自の方針表明が望ましい旨が述べられました。 福利厚生の文脈で実施できる体力のある会社か、否かでアプローチを分ける必要性も論じられました。 宗教上の断食中の従業員への対応 イスラム教徒のラマダン期間中の勤務に関する質問について、「日本の社会通念上、断食による業務支障は許容されない」という方針を明示すべきとの見解を示しました。 「水分補給の啓発」のような中途半端な対応ではなく、「健康管理を本人責任で行ったうえで通常勤務するか、休暇を取得するか」を選択させる枠組みが提案されました。 建設業など事故リスクの高い業務では、より厳格な運用が必要との指摘も加えられました。 シナリオ・受領書作成のスキルアップ方法 スキルアップにはチームでの相互添削が有効であり、3人以上で同じ事例にコメントし合うことが推奨されました。 「場数をこなせ」という助言が紹介され、実践量とフィードバックの両輪が重要であると整理されました。 AIによるシナリオ添削チャットボット構想は、文体・言い回しの修正は可能でも、背景知識を要するパラグラフ追加には課題があると共有されました。 中小企業(短い休職期間)でのメソッド導入 休職期間が3ヶ月程度の中小企業では、療養開始から1週間以内に初回面接を実施するなど、対応の早期化が必須となります。 「うちの会社の休職期間は3ヶ月しかありません」と、入社時から繰り返し本人に伝えておくことが最大の備えであるとの指摘が示されました。 休職期間の短さを補うのではなく、日頃の労務管理をメソッドで強化することが本質的な解決策である旨を強調しました。 週1報告が止まった従業員への対応と「刺激」という曖昧語 「刺激しない方がよいかと思って指摘していない」という相談に対し、「刺激」という言葉が「相手を怒らせて面倒になりたくない」という回避を正当化していると指摘しました。 週1報告(療養復帰準備報告書)は復職意思の存在証明であり、提出停止は休職を法人として認めるか否かに関わる重大な事象として、明確に通知すべきです。 給与・金銭関連の連絡窓口とエールサポート(復職支援サポート窓口)をワンストップ化し、家族同席の要請も「求めます→要請します→命じます」と段階的に強める運用が提案されました。 産業医・保健職へのメソッド導入と組織構造 産業医や保健職にメソッドを浸透させるアイデアとして、健康管理部門と安全衛生部門を組織的に分け、安全衛生側に産業保健職を配置することで、自由裁量を構造的に制限する方法が紹介されました。 様式や運用面で機能的に主治医・産業医の暴走を抑える従来の対応に加え、組織構造そのものを変更することで何も起きない状態を作る発想が示されました。 神経痛で短期休職を繰り返す社員への対応 残業免除の就業制限では改善せず、短期休職を繰り返している社員のケースについて、療養期間を3ヶ月→4.5ヶ月→6ヶ月と段階的に長くしていく運用が提案されました。 頸椎症や腰椎ヘルニア等の手術判断は本人の意思に委ねるべきであり、会社からは労務提供が不完全であることを明示し、療養に専念させることが助言として有効です。 過重労働の閾値(時間外80時間以上等)の運用や、業務の属人化解消が組織課題として残ること、合理的配慮や両立支援で勤務時間・日数の調整に踏み込む場合は原契約の見直しが必要となる可能性についても議論されました。 編集後記 高尾 セカンド・ライン、いいですね。名称もおおよそ決まったみたいですし。私も楽しみにしています! 前園 ここまでポッドキャストが続いたのも、ひとえにリスナーの皆様のおかげです。 いつもリアルでオンラインで、ありがとうございます。 内容面では、話題が細かすぎるなどの課題はあるのかもしれませんが、とにかく「続ける」ということは大事なだなぁと思います。 この100回まで、よほどのことがない限り収録のキャンセルはしてこなかったです。 とはいえ、聴いてくれる方が減っていくのは意味がないので、今後も真摯に取り組んでまいります。 どうか引き続きよろしくお願いします! 森 100回を記念して、ポッドキャストのカバーアートを新調いたしました! 猪戸どしさんというイラストレーターの方に作成してもらいました。 https://coconala.com/users/4728081?ref=service_main_column

  8. 5月5日

    第99回|弁護士勉強会の事例から読み解くメンタルヘルス不調者対応の論点

    合宿2日目の収録です。とある勉強会で取り上げられた「メンタルヘルス不調者への対応」をテーマとする事例検討資料を題材に、ラインケアの限界、業務軽減措置の誤解、受診命令、復職判定、休職満了対応など、現場で頻出する論点を多角的に議論しました。問いの立て方そのものを疑い、業務的アプローチを起点として整理し直す視点を提示しています。 告知 【第99回日本産業衛生学会@大阪の企画についてポスター発表】 下記の通りポスター発表を行います。 セッションの間は私たちがポスターの前にいますので、ぜひお気軽にお越しくださいませ。 演題番号:P9-95 演題名:産業医・弁護士・社労士の連携の取り組み セッション日時: 5月28日(木) 13:45~14:45 【会場外自由集会】 下記にて、自由集会を行います。公開収録形式の予定です。申し込み不要ですので、ぜひお越しくださいませ。 日時:5月29日(金)9時30分〜11時30分 場所:中之島センタービルディング 31階スカイルーム テーマ:両立支援と高尾メソッド 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ 近況報告 高尾・前園:シェリー樽熟成の焼酎を中心に7〜8種類を試飲。観光では猿岩など期待を超えた一方、小島神社はモンサンミッシェルというには、やや期待外れ。ウニ飯定食に生ウニ、巨大なアジフライを堪能した。 森:前回に引き続き、自宅からの参加となった。 議論した内容 弁護士勉強会の事例設定への違和感 弁護士の勉強会の題材としては、社労士向けの内容に留まり、厚労省の4つのケアを紹介する解説に終始している印象。 文字資料はサマリーであり、会場ではより踏み込んだ実践的な議論がなされている可能性はあるが、表に出る範囲では当たり障りのない内容となっている。 弁護士に相談が来るのは、他の専門家が的確な助言をしないことの裏返しでもある。 ラインケアと「不調を見つける」問いの誤り 「管理職がどうすれば不調者を見つけられるか」という問いの立て方自体が誤っており、見つけられたとしてその後の対応が担保されない以上、議論の前提を疑う必要がある。 安全配慮義務(部下の健康管理)とプライバシー保護というダブルバインドを与えられた現場は思考停止しやすく、専門家は優先順位を明確に示す助言をすべきである。 4つのケアを参照した瞬間に医療に思考が引っ張られ、職場で素人が予備軍を見つけるという妄想的な議論に陥る危険がある。 業務軽減措置という曖昧な助言の弊害 安全配慮義務の文脈で「業務軽減措置」を助言すると、現場では誤った運用に流れやすい。 専門家の現場助言は「休ませる一択」が原則であり、業務軽減措置は休業命令発令までの過程で必然的に生じるものに過ぎない。 受診命令と受診拒否への対応 「受診させるためにどう対応するか」という問い自体が方向を誤っており、業務的アプローチと医療的アプローチを並行して進めるべきである。 問題行動には事実に基づく指摘・指導(必要に応じて懲戒検討)を進めつつ、産業医・保健職経由で受診勧奨を行う構えが現実的である。 指定医3名を選択させ協議に応じる姿勢を示す裁判例ベースの対応は、実質的には1択でも家族の理解を得て進められる場面が多い。 業務上の支障(事例性)の言語化 「業務上の支障はどこにあるのか」というメタ認知的な視点が、相談者にもAIにも抜け落ちやすい。 能力不足解雇が難しいのは、仕事ができていないという事実を具体的なシーンや行動レベルで言語化できていないため。 「常識」で片付けず、なぜそれが業務上問題なのかを丁寧に説明する力(フィードバック)が現場に求められる。 即答にこだわらず、「会社としての見解を書面で返す」という選択肢を持つことが有効である。 復職判定と主治医意見への対応 弁護士に相談が来る場面は、療養中の週1報告などの労務管理を行わずに突然診断書が出てくるケースがほとんどである。 主治医に職場の状況を積極的に情報提供し具体的な見解を確かめるという対応は、主治医意見の証拠価値を相対化する訴訟戦略の側面を持つ。 主治医が職場業務を踏まえて噛み合った意見を示してくれば、それは強力な味方となる。 「根本的解決」の捉え方と休職という暫定着地点 解説資料が「根本的解決」を雇用終了と暗黙に定義していることへの違和感。 休職は誰にも直接的被害を与えない暫定的な解決であり、考える時間を稼ぐ手段として極めて有効である。 就業規則上の休職期間満了による自動退職の規定は、当初から本人に明示すべき情報である。 会社が当事者であることの再確認 弁護士、主治医、産業医に順番に聞き、会社自身が判断を回避するたらい回し構造が現場の混乱を招いている。 弁護士は「あなた方で基準を作って考えていい」と会社の主体性を取り戻す助言をすべきである。 問題を「メンタル不調者対応」と一括りにせず、「SNSで意味不明な発信をする従業員への対応」「会社の名誉を毀損する行為への対応」など、就業規則上の懲戒検討から議論を始める枠組みに置き換えるべきである。 編集後記 高尾 私たちにとっての「根本解決」は、再び支障なく業務が遂行できるようにすることで、そのためには、たいていの場合、体制を立て直すためにも療養をはさむのが、ほぼ解というのが経験の教えるところなんでしょうね。 (そして体制を立て直す必要があるのは、本人だけではなく、企業側も同様であるということも) 前園 リスナーの皆様も、弁護士がされているポッドキャスト、弁護士セミナーなどぜひ受講頂いて、そのご感想等をお聞かせ頂ければ嬉しいです。弁護士と産業医の共同セミナーなどもあるようです。 専門家同士の連携については、産業衛生学会のポスター発表でも議論する予定です! 森 ウニ丼・アジフライ(あとはお刺身や壱岐牛など)食べたかったです。。。

評価とレビュー

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番組について

この番組は、産業医の高尾総司、弁護士の前園健司、社労士の森悠太の三名が、企業や自治体の人事・健康管理に携わる方向けに、メンタルヘルス不調者対応や健康管理について、議論をしていくポッドキャストです。 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210%E2%81%A0

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