Webコンサルタント中山陽平の「中小企業を強くするWebマーケティングラジオ」

ラウンドナップ・Webコンサルティング 代表 中山陽平

WebマーケティングやWeb活用で手が止まってしまったり、悩んでいる中小・小規模事業者の皆様へ、根本的なウェブに対する考え方・捉え方をお届け。

  1. 3d ago

    第595回:労働供給制約社会に備えて…どこを業務効率化すればいい?「未来予測2040」からムダの代表例を押さえる

    Podcastを今すぐここで聞く ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。 このPodcast/書き起こしで得られること(要点) 労働供給制約社会で、中小企業が考えるべき業務改善とは 業務の無駄を見つける5つの切り口、古い仕組み、目的不明、会議・調整、過剰対応、空気の仕事について AIを入れる前に、自社のどの業務に無駄があるのか当たりをつけられる 仕組みで改善しやすい無駄と、個別対応が必要になりやすい無駄を分けられる 今回は、AI活用そのものの話というよりも、AIを使う前に会社の中で見直しておきたい「無駄」について。 最近はAIの話題が本当に増えました。私自身、AIには大きく二つの使い方があると感じています。 一つは、できることを掛け算のように増やしていく使い方 もう一つは、今ある業務の無駄を減らしていく使い方 ただ、「無駄を減らしましょう」と言うのは簡単です。 難しいのは、実際に自社の業務の中から、どれが無駄なのかを見つけること。 なんとなく無駄な気はする。けれども、誰かの役に立っているような気もする。ここまでやる必要はないかもしれない。けれども、やりすぎて悪いわけではないから、そのまま続いている。こうした業務は、現場に入っていると本当に多いと感じます。 労働供給制約社会がどんどんと覆い被さってくる 今回のきっかけは、経済産業省と中小企業庁から出された「労働供給制約社会における中堅・中小企業の稼ぐ力強化戦略」という資料です。 この資料は、強い中小企業を増やしていくために、事業再構築、生産性向上、事業再編、投資、取引適正化、賃上げなどを支援していくという内容です。 大きな方向性としては、労働生産性を高め、事業を変え、賃上げもできる会社になっていく必要がある、という話。 ここで重要なのは、人を増やせば何とかなる、という前提が置きづらくなっていることです。 リクルートワークス研究所の「未来予測2040 労働供給制約社会がやってくる」では、働ける人口の減少や、地域によって労働供給が不足していく見通しが紹介されていますので、今回はそれの一部をご紹介します。 中小企業の現場では、すでに人が集まりづらい状況。 そこからさらに人が減っていくなら、今までのやり方をそのまま続けるのは難しくなります。そのため、まず自社の中に残っている無駄を見つける必要があります。 無駄は「何となく」では見つからない 無駄を見つけるときに難しいのは、現場の人ほど、その作業に慣れていて気づきづらいこと。 引き継ぎや日々の処理で手いっぱいになっていると、まずはミスなく進めることが一番大事になります。 もちろん、それ自体は大切です。ただ、その状態が続くと、「そもそもこの手順は必要なのか」「紙でやる必要があるのか」「毎回この会議に全員が出る必要があるのか」といった問いが出にくくなる。 他部署の人から見れば、「なぜまだ紙でやっているのですか」とすぐ分かることでも、当事者にとっては当たり前になっている。そうすると、気づくのは難しくなるんですよね。 部門長や管理職が横断的に見直す。別部署同士でレビューする。新しく入った人の違和感を聞く。こうした仕組みがないと、現場だけではなかなか変わりません。うまく「外」を使う。 業務の無駄を見つける5つの切り口 今回の中心テーマは、企業の無駄をどう分類するか。 リクルートワークス研究所の資料にある27項目をきっかけに、私なりに大きく5つへ整理しました。 切り口1:古い仕組みの無駄 一つ目は、やり方や仕組みが古いことによる無駄です。 頻度や一回あたりの業務量が多すぎる作業 手順が多いまま放置されている作業 システム化できるのに紙でやっている作業 簡単な方法があるのに、時間がかかる方法で続けている作業 手戻りが多い作業 誰かのミスや対応遅れによる手待ち時間 こうしたものは、比較的見つけやすく、仕組み化によって改善しやすい領域です。ただし、当事者だけでは気づきにくいものです。そのため、定期的に棚卸しする仕組みが必要です。 切り口2:目的や成果が曖昧な無駄 二つ目は、目的や成果が曖昧なまま続いている無駄です。 何のためにやっているか分からないけれども毎回続けている業務 上司や関係者が必要だと言うので実施している作業 いつか利益につながるはずだと信じて続けている作業 他社もやっているという理由で、深く考えずに自社でもやっている作業 他社のやり方を真似ること自体は悪くありません。最初は型を真似て、そこから自社に合わせて崩していく。いわゆる守破離のような流れは大切です。ただ、その後の最適化が抜けると、形だけが残ってしまいます。 新しく入った人が「これは一般的なのでしょうか」と疑問を持つことがあります。そうした違和感は、大事にしたいものです。業務に慣れてもらうだけでなく、今の仕事を見直す機会にもなるからです。 切り口3:会議・調整・関係者対応の無駄 三つ目は、会議、調整、関係者対応の無駄です。 自分の出番がほとんどないのに、念のため参加する会議 議事録を読めば済むのに、参加を求められる会議 上司や関係者の意見の不一致に、現場が巻き込まれる作業 決裁権がない人たちだけで話し合って、後からひっくり返される打ち合わせ 会議は、始まる前に大枠が決まっているべきことも多いです。管理職同士が事前に詰めておけばよい話を、その場で始めてしまうと、周りの人の時間を奪います。 その会議は意思決定の場なのか。提案づくりの場なのか。情報共有の場なのか。どこまで決めてよいのか。この違いを曖昧にしたまま始めると、会議はすぐに無駄になります。 切り口4:過剰品質・過剰対応の無駄 四つ目は、品質や対応が過剰になっている無駄です。 不必要に細かすぎる確認 必要以上に高い品質を求められる作業 品質に影響しない上司や関係者の好みに対応する修正 お客様を過剰にもてなすための業務 社外にいい顔をするために借り出される作業 もちろん品質は大事です。ただ、すべての仕事で同じ粒度の品質を求める必要はありません。この仕事ではどこまで合わせれば十分なのか。何が成果に影響して、何が好みの問題なのか。そこを分けないと、作業時間は際限なく増えていきます。 切り口5:評価や空気から生まれる無駄 五つ目は、評価、空気、個人都合で生まれる無駄です。 付き合い残業 長時間働いて頑張っているように見せるための労働時間 働いていないと思われるのを避けるためのアリバイ仕事 残業代を確保するために作業を引き延ばすこと 自身の能力不足によって発生している作業 この領域は、かなり根深いです。 本人だけに責任を負わせても、うまくいきません。 仕組みで6割から7割は減らせるかもしれませんが、残りは個別対応が必要になる。 そのため、最初からここを真正面から扱うよりも、まずは仕組みで改善しやすい領域から手をつける方が現実的です。 仕組みで改善しやすい無駄から、手をつける 今回の5分類の中でも、やり方や仕組みが古い無駄、目的が曖昧な無駄、会議や調整の無駄、過剰品質の無駄は、比較的仕組みで扱いやすい領域です。 もちろん、一つひとつの業務には事情があります。外から見れば無駄に見えても、実は必要な理由があるかもしれません。そのため、単純に「無駄ですからやめましょう」と言えば済むわけではありません。 それでも、問いを立てることはできます。 この作業は、何の成果につながっているのか。 この会議は、誰が何を決める場なのか。 この品質は、本当に必要なのか。 紙や手作業で続けている理由は、今も残っているのか。 新しく入った人が見たとき、どこに違和感を持つのか。 こうした問いを、個人攻撃ではなく業務改善として扱うことが大切です。 AIに丸投げする前に、ゴールと前提を作る ここで注意したいのが、「AIに聞けば全部分かるのではないか」という考え方です。 AIは便利です。業務改善にも使えます。 ただ、AIへそのまま投げれば良い答えが返ってくる、というものではありません。 AIは、ゴールや前提を設計しないと、実行に移しやすいアウトプットを返しにくいからです。 たとえば、「このチェックリストに当てはまる業務を探して

  2. Jun 23

    第594回:中小企業のAI活用の現状を商工中金のデータから読む、そして本当に必要な「要素」とは何か?

    Podcastを今すぐここで聞く ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。 このPodcast/書き起こしで得られること(要点) AI検索の影響は、単なるアクセス減ではなく「判断基準を提案する機会」 コンテンツマーケティングにおける、比較・選び方・理解の場はWebサイト上では機能しなくなった 中小企業が今後前提に置くべき、サイト上の見込み客育成(ナーチャリング)の流れ 今回のテーマ:AI検索が奪っているのはなに? AI検索が広がることで、企業から失われているのはどのプロセスか、という内容です。主としてコンテンツマーケティングの観点です。 「サイトへの流入が減る」「検索キーワードが見えにくくなる」「Google側のツールが対応しておらずブラックボックス状態」といった話。もちろんそれらもAI検索による影響として重要であり事実です。ただ、私が現場で「最も大きい」と感じているのは、そこではなく。 結論から言えば、AI検索が大きく変えているのは、ユーザーが「情報を探しながら、自分なりの判断基準を作っていく」プロセスです。 売り手側から見れば、見込み客育成・リードナーチャリングのためのファネルの入り口〜中盤の部分です。TOFUとかMOFUの部分。 ここをAIがごっそり持っていき始めている。 セールス・マーケティングの観点では、ここがかなり大きい変化だと考えています。 AI検索で奪われるのは、流入だけではない 長文検索やパーソナライズされやすい、と言う特徴はそこまで重要か?本当か? AI検索の話になると、長文で検索できるようになるとか、パーソナライズされやすくなる、などそういう話題が出ます。 たしかにそれもあります。ただ、長い文章で検索する人は以前からいましたし、Googleでも以前から長い検索自体はできました(インターフェイス的にやりやすいかどうかはともかく)。 ※仕様上は、2013年のハミングバード導入から、会話調や文章での検索に初期対応していた。10年以上前です。 パーソナライズについても、それに繋がるような情報を交えて検索する人はいないわけではないですが少ない。要するに、AIだからという理由でまとめられるほどのものではない(と感じます)。 AIだけではなくチャットボットのログなどを見ていても、長文を入れる人ってホントに一部です。 なので、私はそこが本質だとは思っていません。 では何が変わったのか では何が変わったのか。昔の検索行動を思い出してみると分かりやすいです。 何かを調べるとき、人は最初から答えだけを探していたわけではありません。 情報そのものにたどり着く前に、 どういう観点で見ればいいのか 何を基準に判断すればいいのか 自分の問いはそもそも何なのか を探していました。 そして、調べながら理解を深めていく。検索しているうちに問いが変わっていく。 少しずつ情報を拾いながら、自分が本当に欲しいものへ近づいていく。そういう探索的な検索の流れがありました。 そしてAI検索は、この「どう調べればいいか」「何を基準に判断すればいいか」という探索的な検索の部分を代わりにやってくれます。 便利ではあります。体感で楽に感じるのは、ここじゃないでしょうか?考え方をアウトソーシングできる。 そういう意味ではインフルエンサーを信じる方向に近い便利さを提供していると言えます。AIは。 しかしそれは、企業側から見ると、ユーザーが自社サイトに来る前に、判断の土台が自社にとってアンコントローラブルな場所(AI)で作られてしまうということでもあります。 従来の検索体験では「選択にはいくつもの切り口がある」と自然に分かった 「○○ 比較」コンテンツが自然と提示していた物 昔から「何とか 比較」「何とか おすすめ」「何とか 選び方」という検索は多かったと思います。 月間検索数でも実際多いですし、それ故トピッククラスターモデルで計画を立てると、まず最初に埋めるべき対象になりがちです。そして、実際に需要はあったし、閲覧されることも多かったですね(それ故競争も激しかったですが) 従来の検索結果では、複数の記事が並びます。 A社の記事では「こういう観点で考えるとよい」と書いてある。 別のレビューでは「このサービスを選ぶならこの基準が大事」と書いてある。 体験談や個人ブログが出てくることもある。 今であれば企業の「選び方」コンテンツが多いかもしれません。 それらを見ていると、ユーザーは無意識に気づきます。 「世の中にはいろいろな切り口がある。1つの基準で考えればいいわけではない」 「まず、どの基準で選ぶのかを自分で選ばなければいけない。」 このプロセスは面倒です。でも、情報探索においては非常に大事です。 複数の考え方に触れて、どれが自分たちに合うのかを拾っていく。その過程で、判断基準が自分の中に作られていきます。 AIが判断基準を丸めて提示することによる影響 AI検索になると、ユーザーからの景色が変わります。 Googleであろうと、ChatGPTであろうと、Claudeであろうと、検索する人から見ると全部 「AIが答えている」「AIがおすすめしている」という形 になります。 もちろん、AIの裏側にはさまざまな情報があり、AIそのものの意見ではないという説明はできます。 しかし、ユーザーから見た姿としては、詳しいAIさんが一つの回答としてまとめてくれているように見える。 AIに対して人格を感じるのは、人生相談などにAIを使うユーザーが非常に多いことからも明らかです。 ここが大きい、と思いませんか? マーケティング側が失った物 今までは複数の人や企業の考え方が並んでいて、その中から自分たちが選ぶ必要がありました。 AI検索では、それが丸められて見えやすい。 いろいろな切り口があるはずなのに、最初から「こう考えるとよい」という形で提示される。 行動科学の観点で言えば、アンカリングに近いことが毎回起きます。 何を基準に判断すればいいのかを、先にAIが杭を打つように決めてしまう。 特に、その分野に慣れていない人や、これからAIネイティブに情報探索を始める人にとっては、それが考え方の基準になりやすい。 判断基準コンテンツが読まれにくくなる マーケティング側から見たときに、ここで奪われるものは何か。それが「判断基準を作る場」です。 これまでは、企業サイトには「自社の強み」「選び方」「初めての方向け」「比較のポイント」といったコンテンツがありました。 ユーザーに考え方を知ってもらい、その考え方に納得してもらい、そのうえで自社のサービスのよさへつなげる。いわゆるナーチャリング、見込み客育成の王道の流れです。 ところが今、アクセス解析を見ていると、そうしたフロントエンド系のコンテンツが本当に読まれにくくなっていると感じます。過去に関わってきたサイトや診断してきたデータからの印象として、サービス詳細、会社概要、事例といった確認系のページへのアクセスに偏っている。 会社概要を見て問い合わせへ直行する。 アクセスページを見て、ちゃんとオフィスがあることを確認して問い合わせる。 昔からのセッションを追っても、判断基準コンテンツを読んでいる形跡が見えにくい。 そういうケースが増えています。 なので、力を入れているコンテンツが、自社サイトにあるだけだと機能しないことがあると。いくらサイト内で誘導を増やしたり、バナー訴求しても反応しない。 自社サイトでコントロールできる範囲の縮小 これまでであれば、自社サイトに判断基準を書いておけば、少なくとも読まれる可能性がありました。検索順位で上に出る必要はありますが、それでも自分たちでコントロールできる範囲にありました。 しかし、今はAIにそれが持って行かれている。そして、AI側にその判断基準を反映させようとすると、難易度は一気に上がります。事実上非常に難しいでしょう。 AIの内部知識に影響させるには長い時間がかかるでしょうし、グラウンディングや検索連携の仕様も変わり続けています。GEOやLLMOのような言葉も出ていますが、現時点で「こうすれば確実」と言えるものはありません。 Googleだけでなく、ChatGPTやClaudeなど、サービスごとに出方も変わります。 今までのように、サイトに来てもらって、そこで強みを知ってもらい

  3. Jun 15

    第593回:中小企業のAI活用の現状を商工中金のデータから読む、そして本当に必要な「要素」とは何か?

    Podcastを今すぐここで聞く ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。 このPodcast/書き起こしで得られること(要点) 中小企業のAI活用が、個人利用や事務作業の効率化以上に波及しづらい理由 「会社としてAIを導入すれば成果が出る」という見方への注意点 AI活用で必要になる「改善後の姿」の描き方 情報収集、予算、人材、定着の課題を分けて考える視点 中小企業が今からAI活用へ踏み出すための現実的な始め方 今回は、中小企業がAIをどう活用していけばよいのか、というテーマです。AIを個人では使っている。メールの下書き、要約、議事録、ちょっとした調べ物には使っている。でも、会社として経営にインパクトが出ているかというと、そこまでは行っていない。そういう相談は、実際にかなり増えています。 商工中金が公開している中小企業向けの生成AIに関する調査を見ると、まさにその現場感が出ています。   個人判断で使っている企業は多い。一方で、会社全体の業務フローを変えるところまでは、まだ進みきっていない。このギャップをどう考えるかが、今回の大きなポイントです。 私が強く感じているのは、AI活用で最初に必要なのは「AIツールの使用スキル」では”ない”ということです。 その前に、自社がどう変わりたいのか、業務がどうなれば良い状態なのか、その絵を描けるかどうかということです。 会社で導入すること自体が、何かを変えてくれる…訳ではない 調査では、会社として導入している企業のほうが、経営へのプラス効果を感じている割合が高い、という結果が示されています。 これだけを見ると、会社主導で生成AIを入れれば成果につながる、という捉え方をしたくなります。 ただ、そこを少し疑って見たほうがよい。 会社として導入しているから成果が出ている、というより、そもそも会社として導入できるだけの土台がある企業だから成果が出ている。 AIをみんなで使おう、システムを入れよう、業務フローを見直そう、と考えられる会社には、もともと改善する文化があります。 上層部の理解があり、現場を変える力があり、小さく試して前に進める空気があります。 そういう会社は、会社契約をしても成果が出やすいし、個人利用から始まっても深い活用へ進みやすい。 逆に、会社として契約だけしても、使う目的が曖昧で、現場の業務にどう組み込むのかが見えていなければ、ほとんど動きません。アカウントを配っただけで終わる。チームプランを契約しただけで終わる。そういうことは普通。 だから、とりあえず会社としてAIを入れれば何とかなる、という考え方は危険。契約の前に、AIを使える会社になっているかどうかを考えなければいけません。 個別作業の効率化でつまづく理由 生成AIの使い道として多いのは、メール、報告書、議事録、要約といった事務作業です。これは始めやすいですし、実際に効果も出やすい領域です。私も、こうした使い方が悪いとはまったく思っていません。 ただ、そこだけで止まってしまうと、AIの力のごく一部しか使っていない状態に。 目の前の作業を少し楽にすることと、会社全体の生産性を変えることは別の話。 目の前の作業を楽にする使い方は、Excelのマクロを作るような感覚に近いもの。この文章を整えてほしい。このメールを短くしてほしい。この議事録をまとめてほしい。こうした使い方は、今ある作業の中にAIを差し込むだけなので分かりやすい。 一方で、会社全体を巻き込んで、生産性を何十%も上げる。新しい業務の進め方を作る。現場のデータを集め、加工し、使える状態にして、意思決定の流れまで変える。ここまで行こうとすると、先に「自分たちはこうなれるはずだ」という絵が必要。 その絵がないままAIを使っても、どこに使えばいいのかが決まりません。結局、分かりやすいメールや議事録に戻ってしまう。多くの企業が個別作業の効率化でつまづく理由は、AIの性能不足ではなく、向かう先が描けていないことにあると感じています。 改善後の姿が情報収集を決める AI活用が進まない理由として、「情報収集が追いつかない」という声もよく聞きます。もちろん、技術の変化は速いですし、毎日のように新しいツールや事例が出てきます。追いきれない感覚があるのは自然です。 ただ、もう少し分解して考えたほうがよいです。 情報がないのか。調べ方が分からないのか。それとも、そもそも何を調べたらいいのか分からないのか。この3つは違います。 私の感覚では、かなり多くのケースで問題になっているのは、最後の「何を調べたらいいか分からない」です。自社がどうなりたいかが見えていないから、必要な情報も見えていない。だから、AIのニュースを追っても、ツール紹介を見ても、自分たちの業務にどう関係するのかが分からない。 逆に、ゴールの姿があると、必要な情報は見えやすくなります。 ここからここへ行くには、どのデータが必要か 今あるデータは使えるのか。現場からどう集めるのか 加工が大変なら、そこをAIに任せられるのか 社内ではGoogle Workspaceを使っているから、スプレッドシートで見られる形がよいか こういうふうに、必要なステップが自然に分解されていきます。 AI活用は、単にAIに詳しくなることではありません。自社の業務をどう変えたいか。 そのために何が足りないかを見つけ、その足りない部分をAIやデータで埋めていくこと。 情報収集も、その順番で考えないと散らかってしまいます。 導入前、検討中、導入後で違う壁 生成AIを導入しない理由にも、いくつかの段階があります。以下が実際の資料です。 導入以前であれば、具体的な活用場面が分からない、自社業務になじまない、経営戦略や事業戦略に反映できていない、情報収集が追いつかない、といった課題が出てきます。 これらは一見ばらばらですが、かなりの部分は「どこへ向かうのか」が描けていないことに戻ってきます。 活用場面が分からないのは、変えたい業務の姿が見えていないからです。 経営戦略に反映できないのは、AIによって何が変わるのかを説明できないからです。 導入を検討する段階になると、別の壁が出ます。 推進する人材がいない。従業員に知識不足や心理的抵抗がある、予算や時間を確保できない。相談先が見つからない。 これも、先にある変化が見えていなければ動きにくいものです。 特に、推進する人材というのは、単にAIに詳しい人ではありません。絵を描ける人です。 こう変わると良い。こうなれば現場が楽になる。ここまで行ければ会社として意味がある。 そういう姿を示せる人がいると、周りもついてきやすくなります。 さらに導入後には、 社内ルールや方針整備が追いつかない 導入効果を測定できない 知識が一部部署に偏る 業務プロセスに組み込めず定着しない といった課題が出ます。 ここでは、最初に描いた絵が現場にはまっていなかった可能性と、価値を証明する仕組みを用意していなかった可能性があります。 AIで業務を変えるなら、何をもって効果があったと見るのかも先に考える必要があります。 時間が減ったのか、ミスが減ったのか、判断が速くなったのか、現場の負担が減ったのか。そこを測れないと、せっかく動かしても周囲を説得できません。 今から始めても遅くない理由 調査では、5年後もAIの活用は限定的だと考える人が、業界によってはかなりいることも示されています。 情報通信業のように大きな変化を感じている業界もありますが、多くの業界では、まだそこまで変わらないだろうと見ている人が少なくありません。 これは、AI活用に取り組む側から見ると、まだ十分にチャンスがあるということ。 すでに出遅れたと感じる必要はありません。むしろ、今から自社の業務に合わせてAIとデータの使い方を考え始めるだけでも、まだアドバンテージがあります。 実際、AIを使って良くなっている会社はあります。ただし、そういう会社ほど、外にあまり言わないことも。 同業他社に気づいてほしくない、仕組みを知られたくない、ということも当然あります。 SNSで見える派手な事例だけが現実ではありません。 だからこそ、まずは事例を見ることです。抽象的に「AIで何ができますか」と調べるより、

  4. May 17

    第592回:Google AI ModeとChatGPT Searchの引用元の変動はどれくらい?

    Podcastを今すぐここで聞く ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。 このPodcast/書き起こしで得られること(要点) 引用元は安定しているように見えて、実際にはかなり入れ替わっています。Google AI Modeでは週ごとに半分程度、ChatGPT Searchでは4分の3程度が入れ替わるという数字を見ると、単発の露出に一喜一憂するのは危険です。 AI検索の引用元は、見た目よりもかなり速い周期で入れ替わっている Google AI ModeとChatGPT Searchでは、引用元の数も安定性も大きく違う ニュース性のあるコンテンツより、意思決定やサービス理解に関わるコンテンツの方が残りやすい AI検索対策の指標は、単発の露出ではなく、一定期間での継続的な残り方で見るべき AI検索における「引用元」AI Citation Drift 今回は、AI検索における「引用元」の話です。AI検索やAIモードで、自社の情報が引用されるかどうかは、Webマーケティング上かなり大きなテーマになっています。実際、AIOやGEOのような言葉で営業提案を受けている会社さんも増えていると思います。 ただ、ここで難しいのは「何を指標にして判断すればよいのか」です。 1回調べて自社が出ていたから良いのか。逆に、出ていなかったから駄目なのか。提案を受ける側としても、自社で調べる側としても、そこが分からないのは怖いですよね。 今回の出発点は、SISTRIXが出しているAI Citation Driftに関する調査です。AIの回答で引用されるドメインが、時間とともにどれくらい入れ替わるのか。数字を見ると、思った以上に動いています。 AI検索の引用元は固定されていない Google AI Modeでは週ごとに56%が入れ替わる AI Citation Driftという言葉があります。簡単に言えば、AIの回答で使われる引用元が、時間とともにずれていく、入れ替わっていくということです。 Google検索の順位も、もちろん昔から変動してきました。今でもSEO業界はちょっとした変動まで「ニュース」として記事になるくらいです…。 ただ、AI検索系の引用元は、それよりもかなり速いスピードで入れ替わっている。検索結果の順位が少し動くというより、引用されるドメインそのものが週単位で大きく変わるイメージです。 SISTRIXの調査では、Google AI Modeでは、1つの回答にだいたい14から16程度のドメインが引用される。そして、そのうち56%が週ごとに入れ替わる。つまり、1週間でおよそ半分が変わっているということです。 従来のSEO感覚で言えば、1週間で半分が入れ替わるのは大変動です。ツールの画面が真っ赤になるような状態でしょう。しかしAI Modeでは、それがある程度当たり前の挙動として起きている。国別に見ても、ドイツ、アメリカ、イギリス、イタリア、スペイン、フランスで大きく傾向が変わらないため、地域特有というより、プラットフォーム側の構造に近いものとして捉えた方がよさそうです。 ChatGPT Searchはさらに入れ替わりが大きい ChatGPT Searchでは週ごとに74% さらに入れ替わりが大きいのがChatGPT Searchです。SISTRIXの調査では、ChatGPT Searchでは週ごとに74%、つまり4分の3ほどのドメインが新しくなるとされています。 しかも、ChatGPTはGoogle AI Modeに比べて、回答に出てくる引用ドメイン数がかなり少ない。平均で3から4個程度ということなので、そのうち74%が入れ替わるということは、1週間後に同じ引用元として残っているものは、1つあるかどうかという感覚になります。 実際に使っていても、ChatGPTは引用として表に出すドメインが少ない印象があります。途中ではもっと多くの情報を見ているのかもしれませんが、回答上に参照元として出てくるのはかなり絞られている。そこにさらに大きな入れ替わりが乗るので、単発で「出た」「出なかった」を見ても、あまり強い判断材料にはなりません。 単発確認で喜ぶ危うさ ここで注意したいのは、自分で少し調べて「うちが出ている」と喜んで終わってしまうことです。AIツールは、文脈、メモリ、パーソナライズの影響を受けます。自分の環境で見えた結果は、あくまで参考情報でしかありません。 もちろん、まったく意味がないわけではありません。ただ、AI検索の引用元はこれだけ動くので、1回の表示結果で判断すると、かなりぬか喜びになりがちです。見るべきなのは、一定期間の中でどれくらい残り続けているかです。 残りやすいコンテンツと流れやすいコンテンツ 残りやすいものと、流れやすいものがあります では、どんなコンテンツでも同じように入れ替わるのかというと、そうではありません。残りやすいものと、流れやすいものがあります。 ニュースやメディア系の情報は、かなり残りづらい傾向があります。流動性が高い情報なので、AI側もその時点でより新しいもの、より良いものを取りに行く。ブログでトピックスを拾って記事を書くようなコンテンツは、その瞬間のインプレッションやクリックにはつながるかもしれませんが、AI検索で長く引用される資産として考えると、やや不向きです。 一方で、サービスに関わる情報、意思決定に関わる情報、商品ページや説明ページ、FAQ、技術的なドキュメントのようなものは、一度引用される側に入ると残りやすい傾向があります。ここは重要です。 AI検索時代のコンテンツ計画では、とにかくニュース性のある記事を出し続けるよりも、サービスの根幹に関わる情報をきちんと育てる方が、積み上げとしては強い可能性があります。作っても作っても走り続けないと成果が続かない形は、運用としてかなりつらい。長く残るコンテンツ形態を育てる視点が必要です。 最初に乗るまでと、乗った後の維持 もう1つ大事なのは、一度「残るドメイン」の側に入ると、そこに居やすい傾向があることです。もちろん、正式な意味での特権ではありません。ただ、安定して引用される中核に入った後は、それを維持していくことが施策の中心になります。 逆に言えば、最初に乗るまでが大変です。しばらくは何も起きていないように見えるかもしれません。それでも、もう一押しで安定した引用グループに入る可能性もあります。後追いで競争の激しい領域に入る企業にとっては厳しいですが、だからこそ、安定的に残りやすいページを育てることが重要です。 指標は点ではなく期間で見る どれだけ安定して引用され続けているか AI検索の引用状況は頻繁に変わります。だから、毎日見て「今日は増えた」「今日は減った」と振り回されても、あまり意味がありません。 見るなら、1週間、1ヶ月といった一定期間で、どれだけ安定して引用され続けているかです。1回入ったからOKではなく、1ヶ月後にも残っているか。前よりも安定して出るようになったか。こうした見方でKPIを設定する必要があります。 お客様向けにAI関連のモニタリングツールを作っていますが 私自身も、お客様向けにAI関連のモニタリングツールを作っていますが、この調査を見て、計測の仕方はもっと工夫しなければいけないと感じました。特にChatGPTのようなチャットツールは、個人ごとの文脈やメモリ、パーソナライズの影響が大きい。企業利用で一部をオフにしているケースもありますが、それでも計測はまだ参考レベルだと見ておいた方がよいと思います。 また、AI検索での引用が増えたから売上が上がった、問い合わせが増えた、と単純に読むことも難しくなっていきます。情報過多の時代は、比較検討の流れそのものが複雑です。どこで効いたのかを一本の線で追うのは、ますます難しくなります。 AI時代ほど顧客理解に戻る お客様のことをどれだけ理解しているか 昔のデジタルマーケティングには、定量的にいろいろなことが分かるからやりやすい、という感覚がありました。Google Analyticsで検索キーワードが見えていた時代を知っている方なら、なおさらそう感じるかもしれません。 しかし、AI検索やチャットツールの時代になると、また少しアナログな世界に戻っていくように感じています。細かなデータを完全に読み切るというより、お客様のことをどれだけ理解しているか。その上で、AIから有用な情報を引き出す問いを設計できるか。ここが重要になります。 大ざっぱなプロンプトでは、良い情報はなかなか取れません 「いい感じにやって」「お客さんのことを教えて」という大ざっぱなプロンプトでは、良い情報はなかなか

  5. May 8

    第591回:AIに伝わるWebサイトへ 中小企業が次のサイト リニューアルで持つべき視点

    Podcastを今すぐここで聞く このPodcast/書き起こしで得られること(要点) AIエージェント時代のWebサイト対応は、AI検索での露出対策とは別の話として重要度が高い HTMLの意味付けやアクセシビリティが、AIにとっての理解しやすさに直結する可能性が高い(Googleブログによると) 人間向けの見た目だけでなく、AIが操作しやすいレイアウトや導線が重要になる 小手先の見せ方より、標準的で分かりやすい構造と中身で戦う時代に入る ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。 今回は、AIエージェント時代に向けて、Webサイトをどう整えておくべきかという話です。 最近は、情報探索や情報収集をAIに任せる場面が増えています。さらに踏み込んで使っている方であれば、意思決定のための材料集めをAIがかなり担うようになってきたことを、すでに体感しているのではないでしょうか。 そうなると、Webサイトは「人が直接見に来る場所」だけではなくなります。AIが情報を取りに来る。AIがブラウザを操作する。その前提で、自社のWebサイトをどう整えるかを考える必要が出てきます。 これはAI時代の露出の話(≒ いわゆるAIOやGEO)などの話とは違います まず、これはAI検索で引用されやすくする話でも、AI OverviewやAImodeで露出を増やす話でもないです。 今回扱うのは、エージェントが情報を取りに来たとき、迷わず、正確に、負荷少なく扱えるWebサイトにしておくにはどうするか、という観点です。露出が上がるという文脈ではないのでご注意ください。 AIエージェントという新しいWeb利用者 AIエージェントという言葉から、ブラウザを勝手に操作してくれるもの、放っておいても作業を進めてくれるものなど、いろいろなイメージを持つと思います。ここでは厳密な定義には踏み込みません。 外から見た姿として考えると、これまでは人間がWebサイトを見て、情報を集め、資料を作り、意思決定をしていました。その情報収集の大きな部分を、自分ではない何か、つまりAIに任せる時代が来ている。まずはそのくらいに捉えておけば十分です。 もしまだ体験したことがなければ、セキュリティ面には注意しつつ、CodexのComputer Use、あるいは以前からある自動化 Playwrightのような、プログラムがブラウザを操作する仕組みを一度見てみるとよいと思います。 画面上でポインターが動き、処理が進んでいく様子を見ると、人間ではないものがブラウザを操作する時代が、かなり近いところまで来ていることが分かります。 もちろん、今はまだ遅い部分もあります。自分でやった方が早いと思う場面もあります。それでも、一度体感しておく価値はあります。AIがテキストで回答するだけでなく、画面を見て、判断し、操作していく世界を前提にすると、Webサイトに求められるものの見え方が変わるからです。 まず戻るべきHTMLの意味付け 最初に見るべきなのは、HTMLのセマンティック性、つまり意味付けです。 たとえば、クリックして何かアクションを起こす要素を作る場合、HTMLではbuttonタグを使うケースもあれば、aタグを使うケースもあります。一方で、意味を持たないdivタグなどにCSSやJavaScriptで見た目や挙動を寄せて、ボタンのように見せることもできます。 人間は見た目から「これはボタンだろう」と判断できます。しかしAIは、まずHTMLを読んで、そこから「これはアクションを起こすためのボタンだろう」と判断します。視覚を使わずにWebサイトを理解する場面では、Webの基本に沿った意味付けが重要になります。 SEOでは後回しにされがちだった構造 これまでSEOの世界では、HTMLの構造はそこまで重視されてこなかった面があります。H1くらいしか関係ない、HTML Lintで100点を取っても検索順位が上がるわけではない、といった感覚もありました。 経済的インセンティブが薄かったため、構造化データのようにGoogleが目に見えるメリットを出すもの以外は、どうしても後回しにされがちでした。極端な場合、全部をdivで組んでしまうような実装もあります。ブラウザのデフォルト挙動を避けたい、ゼロベースで見た目を作りたいという気持ちは分かります。 ただ、AIエージェントにとっては判断しづらくなります。button、a、input、form、labelといった要素を適切に使う。フォームではプレースホルダーだけに頼らず、きちんとラベルを付ける。HTMLとアクセシビリティの基本を整える。こうしたことが、改めて重要になってきます。 AIが操作しやすい画面設計 もう1つの大きなポイントは、視覚的な使いやすさです。 AIは今や、スクリーンショットを撮りながら画面を理解することもできます。Computer Useのような仕組みも、スクリーンショットを見ながら、どこを操作すべきかを判断しています。デバッグでも、色や余白、仕様通りかどうかを視覚的に確認できるようになっています。 ただし、視覚情報は重いです。HTMLはテキストなので軽いですが、スクリーンショットはすぐに1MB、2MBになります。それを動きながら取り続けるわけですから、AIにとっても負荷が大きい。だからこそ、なるべく視覚的な負荷を減らすことが重要です。 重要なボタン、ずれない画面、分かりやすい導線 重要なボタンは、重要だと分かるようにする。位置、色、サイズ、近さを分かりやすくする。ボタンを押した直後にレイアウトがずれて、押そうとした場所が変わるような状態を避ける。 Core Web Vitalsでもレイアウトシフトは好ましくない要素ですが、AIエージェントにとっても大きな妨げになります。ここだと思って押したら位置が変わってしまう。すると、エージェントはもう一度状況を判断し直さなければなりません。 今は、エージェントによるWebサイト活用がそこまで一般化していないため、どれくらい行動制限につながるかは見えにくいかもしれません。しかし、ブラウザ操作が当たり前になった未来では、操作しづらいWebページは致命的になる可能性があります。 Webサイトのリニューアルは、毎年行うものではありません。3年に一度くらいのことも多いはずです。3年後には、エージェントを前提にした世界になっていてもおかしくありません。次にリニューアルする時は、セマンティック性のあるHTML、認知負荷の低い設計、レイアウトシフトの少ない画面、視覚的に使いやすいシンプルなサイトを、大きな指針にするべきだと考えています。 標準的な構造と中身で勝つ時代 私はもともと、AI時代のWebサイトはデータベースに近いものになっていくと思っていました。サイトの中身をAIが読み取り、それをもとに情報をまとめる。意思決定や操作は人間がするのだろう、と考えていました。 しかし、ブラウザを自動操作する技術の正確性や速度が、思った以上に上がっています。今は「AIが勝手に操作するのは怖い」「セキュリティ的にどうなのか」という感覚も強いですし、実際に危ない部分もあります。それでも一定のラインを超えると、当たり前のように使われるようになるでしょう。 そうなると、Webサイトを情報の出所であるDBとして分かりやすくしておくこと、網羅性のある情報を配置しておくことに加えて、エージェントに対するユーザビリティも考える必要があります。 奇抜なUIよりも、よくある分かりやすさ AIにとって一番分かりやすいのは、よくあるレイアウト、よくあるやり方です。奇抜なUIではなく、「普通はこの辺にこれがあるよね」という標準的な構造を守る。そして、情報やサービスの中身の質で勝っていく。そういう形にしていかなければなりません。 逆に、テクニックや見た目の違い、小手先の心理的な誘導で差を感じさせていたところは、今後ジリ貧になっていくと思います。人間の認知的な部分に強く依存して売っている意識があるなら、そのバフが効かなくなる前提で見直した方がよいでしょう。 たとえば「値下げしました」と見せても、実は毎月値下げしていることはAIに調べさせればすぐ分かります。アップセルをどこで出すか、この段階で何を見せるか、といった人間向けの見せ方も、AIが情報収集を始めると必要なければ見ません。 買う側にとっては、超有能なスタッフが代わりに買いに行ってくれるようなものなので便利です。しかし売る側としては、今までそうした見せ方で乗せてきた部分がある会社ほど、脱却

  6. Apr 7

    第590回:[現場から]中小企業がAIツール導入で失敗しないために、最初に見直す6つの判断軸

    Podcastを今すぐここで聞く ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。 AIツールの話になると、どれを選べばいいのか、無料版で十分なのか、自動化まで一気に進めたほうがいいのか、といったご相談を本当によくいただきます。実際には、中小企業のAIツール活用は、難しいことから始めないほうがうまくいきます。 このPodcast/書き起こしで得られること(要点) 中小企業のAIツール活用で押さえておきたいのは、 まず使ってみる 有料版で実力を見極める 真似から入って使い方を自分の仕事に寄せていく 自動化は最初はシンプルな物から 外部公開は気をつけて ブラウザ操作は気をつけて 便利さだけを追いかけるのではなく、現場で使い続けられる形に落とし込んでいくと、AIは十分に力を発揮してくれます。 中小企業のAIツール活用は、悩む前にまず触ってみる 最初にお伝えしたいのは、悩んでいるなら使ったほうがいい、ということです。今はChatGPT、Gemini、Claude、それからGrokやCopilotのように、選択肢はいくつもあります。どれが絶対に正しいかという話ではなく、実際に触ってみないと、自分に合うかどうかは分かりません。 AIツールは、性能の高さだけで決まるものではありません。やり取りのしやすさもありますし、自分が思っていることを引き出しやすいかどうかもあります。 人と仕事をするときと同じで、相手の能力が高くても、うまく引き出せなければ成果にはつながりません。反対に、多少癖があっても、自分にとって扱いやすければ、そちらのほうが結果として役に立つこともあります。 使っているうちに、やりたいことが見えてくる AIツールは、使い始める前より、使い始めてからのほうが可能性が見えてきます。最初は、文章を書かせる、要約させる、そのくらいしか思いつかないかもしれません。 けれど、日々触っていくと、これもできるかもしれない、あれにも使えるかもしれない、という形で仕事とのつながりが少しずつ見えてきます。 ですから、比較記事を読み続けて決めきれずにいるより、まずひとつ選んで触るほうが早いです。普段からGoogle Workspaceに寄っているならGeminiでもいいですし、まわりにChatGPTを使っている人が多いならChatGPTでもいい。 日本語での書き味が気になるならClaudeでしょうか。なんにせよ、悩んでいる時間が長いなら、まず目の前のものに三千円前後を払って試したほうが、得られるものは大きいはずです。 無料版ではなく、有料版で見ないと実力は分からない これはかなり強くお伝えしたいのですが、無料版だけでそのツールを判断しないほうがいいです。 無料版は入口としては悪くありませんが、そのツールの持っている力や、本来の使い勝手は、どうしても見えにくくなります。無料版のまま何とかしようと頑張るより、有料版にして仕事の中で試したほうが、判断はずっと正確になります。 しかも、有料版にしていても、上位のモデルや機能を使っていないケースは珍しくありません。けれど、その差は意外と大きいです。 出力の質も、考え方の深さも、作業の進み方も変わってきます。個人で使う場合でも、可処分所得がある程度ある方であれば、有料版を使って元が取れない、ということはあまりないのではないかと思います。 年払いではなく、月額で始めたほうがよい AIツールは変化が早いので、最初から年払いにする必要はありません。年払いのほうが安く見えることはありますが、途中で乗り換えたくなる可能性が十分にあります。実際、使っていくうちに、自分には別のツールのほうが合うと分かることはよくあります。まずは月額で始めて、合っているかを確かめながら続けるほうが安心です。 私自身、プロプランや各種APIも含めると、毎月かなりの金額をAIに使っています。ざっくり言えば、一桁上、つまり十万円以上は毎月使っていますが、それでもコストに見合わないと感じたことはありません。それだけ、きちんと使えば仕事に返ってくる余地があるということです。 最初は真似から入るほうが、中小企業のAIツール活用は進みやすい 最初から、自分で一から全部組み立てようとしないほうがいいです。SNSを見ていると、すごく複雑なことをやっているように見える投稿がたくさん流れてきます。 けれど、ああいうものは、その一つの投稿の裏に、かなりの試行錯誤や積み重ねがあります。最初から同じところを目指そうとすると、たいてい止まってしまいます。 それより、まずは真似から入るほうが自然です。同業の人が使っているやり方でもいいですし、勉強会で見た手順でもいい。まずなぞってみる。 そのうえで、ここは自分向きに変えよう、ここはうちの業務に合わせよう、と少しずつ寄せていくと、仕組みが見えてきます。そうやって初めて、自分でも作れる感覚が育っていきます。 真似ることは、手を抜くことではない 真似というと、あまりよくない印象を持たれるかもしれません。 ですが、最初の段階では、遠慮なく真似して大丈夫です。真似してみると、どこが使いやすくて、どこが使いにくいのかが分かります。その差分が、そのまま自社向けの調整ポイントになります。 AIツールは、使い方そのものが成果を左右します。だからこそ、いきなり独自流に走るより、よい型を借りて、自分の現場に合う形へ直していくほうが、ずっと前に進みやすいです。 自動化とブラウザ操作は、便利さより慎重さを先に置く AIの話になると、自動化への期待はどうしても大きくなります。 寝ている間に何かが終わっている、ほうっておいたら作業が片付いている、そういう話は魅力的です。ただ、最初からそこを目指すと、期待したものが返ってこないことが多いです。むしろ、見た目ほど簡単ではありません。 まずは、自分が見ているところで動かすことを基本にしたほうがいいです。 別のウィンドウで作業させる程度ならまだしも、複雑な処理を一気通貫で自動化するとなると、AIのできることとできないことをかなり把握していないと厳しいです。 結果として手戻りが増え、かえって手間がかかることもあります。 自動化は、単純なものから始める たとえば、決まったフォルダに入れたものを整理する、日報のような定型情報を整える、といった単純な作業なら、自動化の入り口としては悪くありません。 ただ、複雑な調査や、複数の判断をまたぐ業務を、最初から丸ごと任せるのはおすすめしません。そこにはかなりの試行錯誤と、自分なりのやり方が必要になります。 AIに慣れてくると、これは自動化したら楽になるな、というものが自然に見えてきます。その順番で十分です。最初から自動化を目的にしすぎると、思ったほどの成果が得られず、苦手意識だけが残りやすくなります。 ブラウザを操作させる権限は、用途を絞る もう一つ気をつけたいのが、ブラウザを操作させる権限です。これは便利そうに見えるのですが、かなり慎重に扱ったほうがいい領域です。限定された社内ページを巡回させて情報を取る、決まった作業を補助させる、そのくらいならまだしも、何でも自由に触らせる方向へ進めるのは、今の段階ではおすすめしにくいです。 特に、ログインや入力をまたぐ操作は、想像以上に気をつける必要があります。便利さに目を奪われず、どこまで任せてよいかを細かく区切ること。ここは中小企業のAIツール活用で、かなり差がつくところだと思います。 社内情報を使うものは、外に公開しない AIがあることで、ちょっとした社内ツールやアプリを自分で作ろうと思う方は増えています。それ自体はとてもよい流れです。 ただし、社内の情報やアクセス解析のデータ、顧客情報、認証を含むものは、安易に外へ公開しないほうがいいです。自分のレンタルサーバーに置いて、家からでも会社からでも触れるようにする、といった形は、便利さの裏に大きな怖さがあります。 本当にまずいのは、何か起きてからでは遅いことです。個人情報や認証まわりは、一度事故が起きると取り返しがつきません。 ですから、こういうものは、まず自分のマシンの中や閉じた環境で使うところまでにとどめておくほうが無難です。外に出すなら、AIに作らせたから大丈夫、ではなく、システムやセキュリティに詳しい人と一

    30 min
  7. Mar 18

    第589回:Web活用・データ活用できない会社の原因は「個人のスキル不足」ではないかもしれない

    Podcastを今すぐここで聞く データ活用できない会社の本当の原因は「個人のスキル不足」ではない AIや業務効率化、さまざまなシステム活用の話題が飛び交う昨今、それらをうまく取り入れている会社と、どうにも手が出せない会社がきれいに分かれてきている印象があります。 成功事例として持ち上げられるように、スムーズに進んでいるところ、そこそこ実現できている実感があるところもある。 一方で、現場としても経営層としても「どうも活用できない」と感じている会社さんも少なくない印象です。 どちらの会社さんからもご相談をいただく中で、両者の違いや課題について考えることが増えました。そこで今回は「どうすればデータを元に動ける組織になれるのか」というテーマで、現場で感じていることをお伝えします。 「リテラシーが低い」「意識が足りない」で片付けてはいけない データ活用というと、どうしても算数や数学的なイメージがつきまとい、うまくいかない原因を「リテラシー不足」「意識が低い」「主体性がない」といった個人の課題に集約しがちに感じます。 しかし、現場に入ってみると、そういうところ以前の課題が横たわっていることが実に多いのです。 ざっくり言えば、データをうまく使えない組織というのは、スキルがないから動けないのではなく、「データを元にして動くと損をする環境」に人々が置かれてきた結果、そうなっているケースがほとんどです。 つまり、個人の能力ではなく環境が課題のケースが多い、少なくとも原因に占める割合としては大きい。 もしこれがシンプルに個人の課題であれば、話は簡単です。 「このデータはこういうふうに読むと、こういうことが分かるんですよ」と伝えるだけで、どんどん変わっていきます。 組織として研修を行えば、翌日から少しずつデータを見てくれるようになったり、「勉強会をもう一回やりましょう」という声が自然と上がったりする。個人がボトルネックであれば、やり方をお伝えするだけでちゃんと前に進んでいく。 しかし、課題が環境にある場合は違います。 データが使えるということは分かっている。でも、それを活かせる「空気」がない。やりたいと思っていてもやれない。そういう状態が生まれているのです。 組織的な要因が疑われるサイン では、環境に課題があるケースにはどんな特徴があるのか。 私がよく目にするのは、次のようなもの 課題提起した人が、そのまま実行責任を押し付けられる 提案すると、なぜか厳しく詰められたり「言ったからには証明してくれよ」という空気になる 一番頑張って提案してくれている人が、一番元気がない・疲れている 会議では売上などの数字は話題に出るが、対策を練る段階になると急に「勢い」や定性的な話に流れる 会議が終わって部屋を出た途端に、みんなが一斉に本音を話し始める こうした状態にある組織では、過去にデータを根拠に動こうとした人が、ポジティブなフィードバックではなく 「そんなデータで何が分かるんだよ」「否定するなら説明責任を取れよ」と一方的に押し付けられてきた経験があることが多いのです。 結果として、今のやり方とは異なる判断軸を持ち込んだときに、それを受け入れられない体質ができあがってしまいます。 個人個人のスキルを上げたところで解決しない そういう状況なら、個人個人のスキルを上げたところで解決しません。 むしろ、やる気やモチベーションのある人から先にやめていってしまうという深刻な事態を招きかねません。 管理者としてこの状況を変えたいのであれば、まずは組織の空気そのものを変えることが出発点です。 影響力のある立場の方ほど率先して行動し、たとえ失敗しても「うちは変わるんだ」という姿勢を見せることが重要です。 データ活用を阻む「4つの壁」 データ活用がうまくいかない原因は大きく4つに分類できると私は考えています。 壁1:能力・スキルの課題 1つ目は、シンプルに今までやってこなかったという経験値の課題です。 データの見方が分からない、解釈の仕方が分からない、そこから何ができるのか行動に結びつかない。 やったことがなければ最初うまくいかないのは当たり前のこと。実際、仕事というのは何でもやってみて覚えることの方が多いもの。 このケースであれば、雑に言えば「教えればどうにでもなります」。 むしろ現場の方々は、定性的・定量的な知識を豊富に持っています。私のような外部の人間がとやかく言うよりも、はるかに生々しく良いアウトプットを出してくれることも珍しくありません。 壁2:組織の構造と仕組みの課題 2つ目は、組織の構造に起因する課題です。 「言い出した人がやる」という暗黙のルールが存在していたり、データに基づいて誰がどう動くのかという役割分担が曖昧だったりします。やろうと思っても権限がないというケースも少なくありません。 ここでいう「権限がない」とは、会社の制度上の話だけではありません。むしろ多いのは「空気的な」権限の欠如です。 提案したことに対して「いいね、やってみなよ」というポジティブな後押しがないのはつらいです。 評価制度も、自分で発案して行動し、成果を出したことがきちんと認められる仕組みになっていない。動きたいのに、動ける心理状態に自然となれない構造が出来上がっているのです。 壁3:心理的な抵抗 3つ目は、個人の心理的な課題です。 データを活用すると、これまで「こうすればいい」と信じてきたやり方が覆される場面がどうしても出てきます。 そのとき、「否定されたくない」「今までの自分が失敗だったと思われたくない」という感情が湧き上がり、過去の判断と自分の存在価値を結びつけてしまうことがあります。 これは性格や考え方の癖に根ざす部分が大きいため、一朝一夕には解決できません。 構造の課題をきちんと整えた上で、実際に動いてもらい、それを認めるというステップを踏んでいく必要があります。 大切なのは、「今までのものを否定するためにデータを使う」のではなく、「今までの土台があった上で、さらに良くするために使えるものなんだ」というメッセージをトップの人間がしっかり発信し続けることではないかな、と思うところです。 壁4:あらさがし文化 そして4つ目、これが最も根深い課題だと感じていますが、企業文化の壁です。 とりわけ厄介なのが「あらさがし文化」です。前例絶対主義、提案が歓迎されない空気、新しいことに対してまず失敗の証拠を探そうとする姿勢。これは日本固有の課題ではなく、海外の方に話を聞いてもグローバルに見られる現象のようです。 あらさがし文化の何が致命的かといえば、何か新しいものが見えたとき、最初に「悪い点を見つけよう」「誰が責任を取るんだ」という方向にエネルギーが向かってしまうことです。 行動を起こすたびに逆方向への力が働く環境では、前に進むのは難しい。 この文化が根づいた背景には、さまざまな事情があるでしょう。 頑張ったけれど裏目に出た、うまく評価してもらえなかった、そうした経験の積み重ねが組織全体の行動様式を変えてしまったケースもあるはずです。 あらさがし文化のもとでは悪循環が しかし結果として、あらさがし文化のもとでは以下のような悪循環が生まれます。 現場が本当の数字を出さなくなる(どうせあらさがしに使われるなら、良いデータだけ報告しておこうという心理が働く) 課題を発見しても報告したくなくなる(言わないで済むならそのほうが安全) 報告が無難な内容に終始する 失敗が「今後の糧」ではなく「減点材料」にしかならない こうなると、データの精度という一番大事な土台が崩れ、良いことも悪いことも何も起きない「現状維持」だけが組織の行動原理になってしまいます。今あるやり方をキープしながら、ちょこちょこと微調整して何とか生き延びる。それがあらさがし文化の行き着く先です。 このような要因を見極めて対処して行くと、良い結果が出てくると思います。 補足:成功事例の「行間」を読めていますか ここで、成功事例の読み方についても触れておきたいと思います。 最近、特に製造業の方のデータ活用事例が多く目に入ってくるのですが、表面的

  8. Mar 6

    第588回:その勝手ランキング・比較・○○選記事、大丈夫ですか?|Google評価とAI時代の新リスク

    Podcastを今すぐここで聞く ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。今回は、勝手ランキングや比較記事、○○選記事のようなセルフプロモート型のページが、なぜ今あらためて見直しの対象になっているのかを、現場で見えてきた変化とあわせてお伝えします。 このPodcast/書き起こしで得られること(要点) 自社をよく見せる「前提」で作られた、セルフプロモート型の記事はリスクが高くなっています。Googleも厳しく見てくる動きが現れ始めています。 また、今は検索だけでなく、生成AIでの再参照や情報探索が一気に広がっています。そのため、法的な見られ方、そして読者の信頼まで含めて、短期的な露出より長く残るデジタルタトゥーを警戒すべきです。 自作自演的なランキング記事が少しでも話題になれば、あるいはそう言った業者に対する風当たりが強くなれば、そこに依頼しているあなたも、未来に続く営業負債を抱えてしまうかも知れません。 要点 ランキング形式そのものが問題なのではなく、独自性や一次情報のないセルフプロモート型の作り方が危うくなっています。 一時的に見つかりやすくなったとしても、見抜かれた瞬間に信頼を失いやすく、その印象は後から消しにくいです。 これからは、どこかに載ることよりも、第三者に正当に選ばれる状態をつくることの方が、はるかに企業の資産になります。 「勝手ランキング記事」とは? もともと比較記事やランキング記事には、読者に選択肢を渡す役割がありました。それ自体は悪いことではありません。実際、丁寧に比較し、評価軸を明示し、経験をもとに書かれた記事は、読み手にとってとても役に立つものです。 ところがその中には、最初から自社を押し上げるために作られたページがあります。 おすすめ、比較、○○選といった形を取りながら、実際には読者の判断を助けるより、自社への導線づくりが主目的になっているものです。 見た目は情報提供でも、中身はPRの延長になっている。そういうページが、ここしばらく目立つようになってきました。多くの場合それは自作自演か、そう言った業者によるコンテンツ作成サービスによる記事です。 営業提案として広がっている 現場で見ていても、この手の提案は増えています。 社のクライアントに寄せられる営業をチェックしていますが、生成AIに強いという話が出回ってから一気に増えています。 後えば、特定の地域や業種について「おすすめを教えて」と生成AIに聞かれたとき、先に一覧ページを作っておけば引用されやすい、という営業文句ですね。 自社を1位に入れる、自社を10選の中に入れる、掲載されていること自体を実績のように見せる。そうした見せ方を成果として売っている提案です。 読み手の判断材料を増やしているのではなく、最初から誘導先が決まっているなら、それは比較記事の形を借りた販促に近くなります。 その違和感は、いままで以上に見抜かれやすくなっていますが、あくまで対話型AIに引用されるために作っている、コンテンツ自体を見せないようにするという点で巧妙です。 検索での評価が変わり始めている その前提で見ておきたいのが、2025年12月のコアアップデート以降の変化です。Googleの公式記録でも、2025年12月11日から29日までコアアップデートが行われたことが確認できます。Google Search Status Dashboard その後、2026年2月4日に公開された Google may be cracking down on self-promotional ‘best of’ listicles では、自社を上位に置くベスト記事を多く抱えたサイトで、可視性が大きく下がった事例が紹介されていました。 もちろん、これだけで世の中のすべてを断定はできません。ただ、少なくとも「こうした作り方は今後も安全資産になる」とは言いにくくなっています。 実際に見られたらマイナスだがGoogleのAImodeなどで好意的に露出できるなら差し引きプラスだという考え方が通用しなくなる可能性が高いからです。 ランキング形式そのものが悪いわけではない 念のためお伝えしたいのは、Googleが比較記事やランキング記事そのものを否定しているわけではない、ということです。 Googleの Google Search’s reviews system でも、比較やランキング形式のレビュー自体は対象に含まれています。 問題になるのは、今回話題にしたような実際に見たり使ったりした経験、独自の調査、一次情報、明確な評価軸がないまま、自社を持ち上げるために作られた薄いページです。EEAT的な文脈でもあります。 Googleは Creating Helpful, Reliable, People-First Content でも、検索順位を動かすためではなく、人の役に立つ内容を重視する姿勢を明確にしています。 ですから、守るべきなのは「ランキングという形式」ではなく、「そのページが何のために作られているか」です。そこがぶれると、長く残るページにはなりません。 見抜かれた瞬間に信頼を失う いちばん大きいのは、順位の変化よりも先に、読者の信頼を失うことです。 私も何度も経験をしています。 例えば以前、WordPressテーマを探していて、なるほど1位はこれなのかと思って見ていたら、そのテーマを販売している会社のページだった、ということがありました。 自分で自分を1位にしているのか、と気づいた瞬間、そのページだけでなく、その会社に対する考え方・方向性まで変わってしまうんですよね。もちろん悪い方向に。 商売をしていると、法に触れないなら試してみてもよいのでは、と考えたくなる場面はあります。必死です、商売って、分かります。 ですが、今の環境では、見抜かれたときの印象の悪さが大きすぎます。 自社サイトの中でやる場合も、別ドメインのメディア風サイトを使う場合も同じです。オウンドメディア構築サービスなど。読者は思っている以上に、そこにある不自然さを見ています。 そして、その印象はその場限りで終わりません。 選ばれない理由が積み重なれば、営業にも採用にも、紹介にも静かに響いていきます。派手ではなくても、こういう傷は後からじわじわ効いてくるものです。 AI時代は、過去の見せ方まで残りやすい もう一つ重いのは、公開した情報が後からまとめて参照されやすくなったことです。 以前よりも、過去のページ、掲載先、評判、炎上の文脈がつながって見られやすくなっています。その場しのぎの見せ方だと思って出したものが、後になって会社の姿勢そのものとして読まれてしまうことがあります。 これはAIによる情報収集がもたらしたものです。 掲載先のメディアや運営会社が問題を起こしたときも同じです。そこに載っていた企業名の一覧は、すぐに掘り返されます。 依頼した側にまで「そういう見せ方を選んだ会社なのか」という印象が返ってくるので、後からきれいに切り離せるとは考えない方がよいです。 生成AIについても、Googleではだめでも他では出るから構わない、と単純には考えにくくなっています。 Googleの AI Features and Your Website でも、AI Overviews や AI Mode のために特別な最適化が必要なわけではなく、基本のSEOと、人の役に立つ内容が前提だと案内されています。近道に見えるやり方ほど、土台が弱いまま残りやすいのです。 法律面も軽く見ない方がいい 法律面も外せません。比較広告そのものは禁止されていませんが、消費者庁の 比較広告 では、お伝えしたいことする内容が客観的に実証されていること、数値や事実を正確かつ適正に引用すること、比較の方法が公正であることが必要だと示されています。 比較すること自体より、どう比較するかが問われるということです。 また、消費者庁の No.1表示に関する実態調査報告書(概要) では、自社商品を選択肢の最上位に固定して誘導する例や、合理的な根拠に基づかない表示が問題になるとされています。ランキング記事は表現が違っても、見せ方を誤ればかなり近い構図になりやすいです。だからこそ、「みんなやっているから大丈夫」とは考えない方が安全です。 これから舵を切る方向 では何をするのか。遠回りに見えても、やることははっきりしています。第三者に正当に選ばれる状態をつくることです。 商品やサービスそのものを強くすること。 まず見直すべきなのは見せ方ではなく、中身です。紹介される理由を外側でつくるのではなく、選ばれる理由を中に積み上

About

WebマーケティングやWeb活用で手が止まってしまったり、悩んでいる中小・小規模事業者の皆様へ、根本的なウェブに対する考え方・捉え方をお届け。

You Might Also Like