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令和8年度外来医療改定の3つの焦点:生活習慣病管理料・かかりつけ医機能・外来機能分化を徹底解説

令和7年度第13回入院・外来医療等の調査・評価分科会において、外来医療に関する検討結果のとりまとめが公表されました。この報告書は、生活習慣病管理料と地域包括診療料の運用実態、かかりつけ医機能の評価体制、特定機能病院等における外来機能分化の進捗状況という3つの重要テーマを扱っています。次期診療報酬改定に向けて、療養計画書の作成負担軽減、患者の継続受診を促す体制整備、医療機関間の連携強化が主要な検討課題として浮かび上がっています。

本報告書では、生活習慣病管理料(Ⅰ)(Ⅱ)の算定実態と継続受診率の医療機関間格差が明らかになりました。かかりつけ医機能については、機能強化加算の届出状況とかかりつけ医機能報告制度との関係性が議論されています。外来機能分化では、特定機能病院等における再診患者の長期通院実態と逆紹介推進の課題が示されました。

生活習慣病管理料の運用実態と課題

生活習慣病管理料の算定状況には、令和6年度改定を境に大きな変化が見られます。令和4年では外来管理加算が最も多く算定されていましたが、令和6年では生活習慣病管理料(Ⅱ)が最多となりました。この変化は、改定によって生活習慣病管理の評価体系が再編されたことを反映しています。

地域包括診療料の届出医療機関数は近年横ばいでしたが、算定回数は減少傾向にあります。一方、地域包括診療加算の届出医療機関数と算定回数は増加傾向を示しています。算定患者の主傷病名は、高血圧症、糖尿病、脂質異常症が多い傾向ですが、多岐にわたっています。

特定疾患療養管理料については、令和6年度改定以前は生活習慣病が多くを占めていました。改定後は気管支喘息や慢性胃炎の占める割合が増加し、算定回数は大幅に減少、算定医療機関数もやや減少しています。この変化は、生活習慣病管理が特定疾患療養管理料から生活習慣病管理料(Ⅱ)へシフトしたことを示唆しています。

生活習慣病管理料を算定していない理由として、対象患者が少ないこと以外に、療養計画書に記載する項目が多く業務負担が大きいことが14.4%の医療機関から挙げられています。過去に簡素化がなされたものの、依然として負担感が残っており、分科会では療養計画書のあり方について見直しの検討が必要との意見が出されました。

生活習慣病管理料を算定された患者の6か月ごとの継続算定率は、医療機関ごとにばらつきがあります。患者が治療から脱落せず継続的に受診を続けることが重要な観点であり、外来患者を対象とした調査では、定期的な受診を続ける上で必要な体制として「予約診療を行っていること」が最も多く、次いで「28日以上の長期処方に対応していること」が多く選択されています。

生活習慣病管理料(Ⅰ)と(Ⅱ)の使い分けについては、受診頻度が2か月に1回より少ない患者や検査頻度が2か月に1回より少ない患者については生活習慣病管理料(Ⅰ)の算定が多く、その他の患者については生活習慣病管理料(Ⅱ)の算定が多い傾向があります。生活習慣病管理料(Ⅱ)を算定した外来患者の6か月当たりの血液検査算定回数を調べたところ、平均して6か月に2回以下の頻度で算定している患者が全体の約7~9割以上でした。6か月に1回も算定がない患者も一定数を占めており、分科会では適切な医学管理が行われているか疑問があるとの意見が出されています。

高齢者の生活習慣病管理については、学会のガイドライン等において特有な状態への配慮が必要とされています。糖尿病の管理では、高齢者の患者とそれ以外の患者では治療目標の推奨が異なっています。分科会では、複数疾患への罹患やポリファーマシー、フレイルの進行などを包括的に診る役割を担うことが、かかりつけ医の重要な機能であるとの意見が出されました。

糖尿病患者に対する合併症予防の観点では、診療所又は200床未満の病院において、眼科受診を指導した患者数は平均で21.5人、中央値は0人であり、歯科受診を促した患者数は平均で14.1人、中央値は0人でした。分科会では、糖尿病患者に対する歯科受診は、オーラルフレイルの予防や口腔機能の低下への早期対応の観点から重要であり、歯科診療所への定期的な受診を促す体制がさらに必要ではないかとの意見がありました。

かかりつけ医機能の評価と今後の方向性

機能強化加算の届出医療機関数は、令和3年までは増加傾向でしたが、近年は横ばいです。算定回数は令和2年に大きく減少していましたが、令和5年には令和元年以前よりも増加しました。令和5年時点で、病院1,289施設、診療所13,518施設が届出を行っています。

外来受診した医療機関において「かかりつけ医機能に関する説明を受けたことがある」と回答した患者は38.9%、「かかりつけ医機能に関する院内掲示を見たことがある」と回答した患者は46.2%でした。機能強化加算の届出医療機関は、算定要件の一部となっている「処方薬の把握」「健診に関する相談」「予防接種」「学校医」等に関する機能を有している割合が大きくなっています。

かかりつけ医に関連した研修等については、「日本医師会のかかりつけ医機能研修」を修了又は一部受講した医師の在籍割合が最も高く43.5%でした。医学生の実習、臨床研修医の受入れを行っている診療所は約10%前後であり、専攻医の受入れを行っている診療所は約4.2%でした。

分科会では、現在の機能強化加算は地域包括診療料・加算、小児かかりつけ診療料、在宅時医学総合管理料等の届出をもってかかりつけ医機能が高いと評価する考え方となっていますが、かかりつけ医機能報告制度が開始されることを踏まえると、この制度に沿った形で再検討することが求められるのではないかとの意見がありました。一方で、かかりつけ医機能報告制度は医療機関の機能を認定する制度ではなく現状を把握するための報告制度であり、地域における専門性を有する医療機関が連携して面としてかかりつけ医機能を発揮することを目指すものであるため、かかりつけ医機能報告制度と診療報酬は関連させるものではないとの慎重な意見も出されました。

地域包括診療料・加算の算定診療所では、それ以外の診療所と比較して、介護との連携に関する取組を実施している割合が高くなっています。認知症地域包括診療料・加算を算定された患者に占める65歳以上の患者の割合は、認知症地域包括診療料では約93%、認知症地域包括診療加算では約77%でした。

診療所における検査体制については、いずれの検査項目も、機能強化加算の算定医療機関において、より早期に結果を出せる体制が確保されている傾向がありました。このことは、機能強化加算が一定の体制整備を促す効果を持っていることを示しています。

外来機能分化の進捗状況と医療機関連携の課題

病院の1日平均外来患者数は長期的には減少傾向です。紹介なしで外来受診した患者の割合を病院機能別に見たところ、その割合は長期的に減少傾向にあり、令和5年は特定機能病院では34.1%、地域医療支援病院では58.5%でした。これは、外来機能分化が徐々に進展していることを示しています。

紹介割合・逆紹介割合による初診料・外来診療料の減算規定の対象病院における令和6年度の紹介割合・逆紹介割合は、令和5年度と比較して不変からやや増加していました。減算規定の対象病院における令和6年10月の再診の患者数の平均値・中央値は、令和5年10月と比較して増加しました。全受診患者に占める初診患者割合の平均値・中央値は、特定機能病院では約5%、その他の区分では約10%でした。

減算規定の対象病院の再診患者のうち約6割以上の患者は、2年以内に初診料の算定がない患者でした。平均して8割程度の患者が直近6か月以内に再診を受けています。分科会では、相当数の患者が2年以上通院していることや半年以内に外来再診していることについて、当該患者が本来逆紹介すべき患者であるのか、あるいは地域の医療機関で日常的な管理を受けつつ専門外来でフォローアップされているのか、現状のデータだけでは判断が困難であるため、今後他の医療機関への受診状況や疾患の種類等も含めて分析を行い、継続