
Ep.669 xAI「Grokipedia」v0.1始動──“AIが事実確認する百科事典”はWikipediaの対抗軸になり得るか(2025年10月30日配信)
10月28日、xAIがAI生成の百科事典「Grokipedia」v0.1を公開しました。マスク氏はX上で「v1.0は10倍良くなるが、0.1でもWikipediaより優れている」と発言し、ローンチを強調。英語圏メディアも一斉に取り上げ、AIが書いた項目をGrokが“事実確認”し、その実施時刻を各ページに表示する点を主要な特徴として伝えています。公開直後の収録項目は約88万5千件と報じられ、対抗軸としての位置づけが鮮明になりました。
日本語の詳細レポートでは、現在のv0.1は英語項目のみで画像は未掲載、脚注をクリックするとリンク先へ直接遷移する実装、本文選択から「Ask Grok」「It’s wrong(誤り報告)」へつなぐUIなど、“読む・確かめる・直す”の導線が整理されていると解説されています。また、一部ページにはWikipedia由来の記述が含まれ、その旨とCC BY-SA 4.0に基づくクレジットが明記されていること、マスク氏が“オープンソース”と称した点は主にページ内容の利用ライセンスを指す文脈と見られることも補足されています。
他方で、公開初日から論争も噴出しました。The Vergeは「AIで複製されたページが混在し、“Grokが事実確認済み”と表示されるが、その妥当性自体が議論の的」と指摘。WiredやGuardianは“Wikipediaのリベラル偏向に対抗する”という政治的文脈を色濃く伝え、初期版の記述に右派的な言い回しが目立つとの批評も紹介しています。つまり、Grokipediaは“何を真実とみなすか”という価値観の衝突まで引き受ける設計で走り出した、ということです。
タイムラインを振り返ると、v0.1は当初“プロパガンダの除去が必要”として数日の延期が示唆されましたが、結局その週内に公開へ。APやForbesは、マスク氏の「真実、全真実、そして真実のみ」という標榜とともに、Wikipediaの“公開・分散編集”に対してGrokipediaは“AI主導+ユーザーは訂正提案”という運用の差を整理しています。体験としては百科事典でありつつ、裏側は検索・要約・検証までを一気通貫で回す“QAエンジン寄り”の思想がにじみます。
実務への含意は二つあります。第一に、企業や公的機関の広報・IR・研究部署が、固有名詞の説明にGrokipediaを“補助線”として使い始める可能性。Grokの時刻つき検証表示は、初期段階ながら“いつ時点の確認か”を示すメタデータとして有用です。第二に、出典再利用とライセンスの遵守が試されること。Wikipedia由来の記述が混在する以上、クレジットや継承の扱いを誤ると摩擦を生みます。AIが“編集する百科事典”は、性能だけでなく手続きの透明性が信頼の土台になる──この当たり前を、Grokipediaは世界規模の実運用で証明していくことになります。
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- FrequencyUpdated Weekly
- PublishedOctober 29, 2025 at 10:00 PM UTC
- Length4 min
- Season1
- Episode669
- RatingClean