名古屋ではたらく社長のITニュースポッドキャスト

ikuo suzuki

システムサーバーの社長である鈴木生雄が気になるITニュースをピックアップして数分のコンテンツとしてお届けする番組です。主に取り上げるニュースはAI、半導体、ビッグテック企業です。

  1. 3D AGO

    Ep.640 Oracle、AMDを“5万基”導入──NVIDIA一強に突きつける第2の選択肢(2025年10月16日配信)

    日本時間10月14日朝、OracleとAMDがAIインフラでの大型提携拡大を発表しました。要点はシンプルで強力です。Oracleは2026年第3四半期に、AMDの次世代アクセラレータ「Instinct MI450」を5万基まとめて配備し、一般の顧客が使える“AIスパークラスタ”として提供を開始する――まずはここから、という段取りです。2027年以降の増設も視野に入れており、供給逼迫が常態化するAI計算資源に“もう一つの太い水路”を通す狙いが透けて見えます。発表を受け、米メディアは「NVIDIA依存を和らげる動き」と位置づけ、プレマーケットのAMD株は上昇、Oracleは小幅安で反応しました。 今回の一手は、10月6日にOpenAIとAMDが公表した「最大6ギガワットのGPU配備」計画とも呼応します。OpenAIは2026年後半にMI450で1ギガワットを皮切りに段階配備を始める方針で、求められるのは“使える場所”の確保。OracleはMI450の大規模クラスタをパブリックに開き、研究開発から推論運用までを自社クラウド上で完結できる導線を示しました。基盤モデル各社や生成AIを導入する企業にとって、NVIDIA一辺倒だった調達と最適化の選択肢がいよいよ現実味を帯びます。 足回りの実務では、Oracleは「2026年Q3開始」という明確な日付感を出しつつ、まずは5万基で“密度の高い一群”を用意する設計です。これにより、大規模学習や混雑時間帯の推論にも対応できる帯域・スケジューリングの計画が立てやすくなる。一方で、2027年以降の拡張は電力・冷却・ネットワークの三位一体での段積みが肝になります。供給の第二軸を示した今回の発表は、価格交渉力という意味でも市場に波紋を広げるはずです。 マーケットの温度感も見ておきましょう。報道直後、AMDは上昇基調。短期的には期待先行の面もありますが、OpenAI陣営の採用とOracleクラウドの公開クラスターがそろうことで、開発者と企業が“検証→本番”へ移る導線が整うのは確かです。 現場視点の示唆は三つ。第一に、2026年後半の“複数アーキテクチャ併走”を前提に、モデルごとの学習・推論の最適配置を今から設計しておくこと。第二に、契約は容量だけでなく、SLAと拡張パス(2027年以降)を条項化しておくこと。第三に、ワークロードのポータビリティ――NVIDIAとAMDを跨ぐオーケストレーション層の整備です。そうしておけば、需要の山谷や価格の変動に、落ち着いて“選べる”体制がつくれます。今回のOracle×AMDは、そのための現実的な選択肢を一つ増やした出来事でした。

    4 min
  2. 3D AGO

    Ep.639 Starship、連続成功──11回目の飛行試験が示した「回収」へのロードマップ(2025年10月16日配信)

    テキサス州スターべースから打ち上げられたStarshipの11回目の飛行試験は、ブースターのメキシコ湾着水と上段機のインド洋着水を含む主要目標をクリアし、前回に続く“連続成功”を達成しました。打上げ後の分離、降下制御、遠地点通過後の誘導まですべて計画に沿って実施され、SpaceXは「次の大型アップグレード機への橋渡し」と位置づけています。 今回の試験は、ヒートシールドの挙動評価や上段でのエンジン再点火、バンキングによる姿勢制御など、将来の帰還・回収を見据えた運用検証が主眼でした。上段は半周飛行ののちインド洋へ、ブースターは分離後にメキシコ湾へソフトに着水。衛星運用を模したダミーのStarlinkペイロード放出も行われ、周回ミッションへ向けた一連の手順を重ねています。 このフライトで現行バージョンの区切りがつき、次は「回収と再利用」を本格に据えたアップグレード型へ移行すると伝えられています。SpaceXは“上段を将来は発射場に戻す”ことを想定した運用変更を公表しており、年内〜来年にかけて燃料補給試験や機体拡張を段階的に進める計画です。 国家プロジェクトへの波及も大きい。NASAはアルテミス計画で月周回から月面までの“最後の区間”をStarshipに担わせるため、着陸船版と補給技術の成熟を待っています。連続成功は日程面の不確実性を和らげる材料であり、並行して進む軌道上補給や熱防護の成熟が次のクリティカルパスになります。 民間宇宙の視点では、超大型・完全再使用ロケットの安定運用に向けて“精密誘導→再点火→熱防護→着水/着地”のチェックリストをひとつずつ潰すフェーズに入りました。今回の手順消化は、コスト構造を根底から変える「回収のふつう化」への現実的な階段を一段上がったことを意味します。現場の熱狂に負けず、次のアップグレードでどこまで回収率とターンアラウンドを詰められるかが、巨大輸送体系の競争力を左右することになるでしょう。

    4 min
  3. 3D AGO

    Ep.638 10GW計画──OpenAI×Broadcom、カスタムAIアクセラレータで“自前インフラ”に舵(2025年10月16日配信)

    きょうのテーマは、OpenAIとBroadcomが発表した戦略的協業です。現地時間10月13日、両社はOpenAI設計のカスタムAIアクセラレータとBroadcomのネットワークを束ね、合計10ギガワット規模のAIラックを展開すると公表しました。場所はサンフランシスコとパロアルト。マルチイヤーの枠組みで、AIクラスタ向けのアクセラレータとEthernetソリューションを共開発・配備します。 ポイントは「学びをハードに埋め込む」発想です。OpenAIはフロンティアモデルの開発・運用で得た知見をそのまま専用チップとシステムに反映し、能力と効率の新しい地平を拓くと宣言。設計はOpenAI、開発と量産配備をBroadcomが担う形で、両社はすでに共同開発と供給に関する長期の合意を積み上げてきたと説明しています。 接続方式にも戦略がにじみます。今回のラックはスケールアップ/スケールアウトの双方でEthernetを採用。BroadcomはEthernetスイッチ、PCIe、光接続など“端から端まで”の部材を供給し、標準技術で巨大クラスターを伸ばす路線を強調しました。InfiniBand優位の市場に対し、Ethernet陣営の巻き返しという文脈でも注目を集めています。 スケジュールは具体的です。ラック配備は2026年後半にスタートし、2029年末までの完了を目指すとしています。両社はアクセラレータとBroadcomのネットワーキングを組み込んだラック配備に関するタームシートを締結済みで、OpenAIの施設やパートナーデータセンターに順次展開される見通しです。 中期の打ち手としても整合的です。OpenAIは10月6日にAMDと最大6ギガワットのGPU供給で合意し、2H 2026からMI450の初期1ギガワット配備を開始予定と発表しました。今回のBroadcom案件はそれを補完し、GPUと自社設計アクセラレータの“二正面”で計算資源を積み上げる構図です。加えて、サムスン/SKとの「Stargate」協業でメモリと拠点拡張も並行するなど、サプライチェーンの多層化が一段と進んでいます。 最後にビジネスインパクトです。コストと電力効率を左右するのは、どの処理を専用チップに“寄せるか”という設計判断。Ethernetの採用は、調達や運用の標準化による全体最適を狙った選択でもあります。エンタープライズの皆さんにとっては、2026年以降のAI導入計画で「GPU+専用アクセラレータ+標準Ethernet」という複合前提が現実味を帯びてくる——そんな節目の発表と言えるでしょう。

    4 min
  4. 3D AGO

    Ep.637 米中“第2幕”へ──100%関税示唆と報復警告が映すテック覇権のいま(2025年10月16日配信)

    いただいたトピックは、米国時間10月12〜13日にかけて一気に緊張が高まった米中通商の動きです。発端は、中国がレアアースの輸出管理を正当化しつつ引き締めたこと。これに対しトランプ大統領が「中国からの輸入に追加で100%関税も辞さない」と強硬姿勢を打ち出し、中国商務省は「米国が実行すれば断固報復する」と応酬しました。市場は敏感に反応し、アジア株は急落する場面も見られました。 今回のエスカレーションには“伏線”があります。米国は9月末、制裁指定企業の子会社(50%以上保有)にも自動的に規制を及ぼす新ルールを導入し、対中の輸出管理を実質的に拡大しました。中国側も9月下旬に米企業の一部を輸出管理・信頼できない実体リストに追加。双方が制度面の締め付けを強める中で、関税カードが再び前面に出た格好です。 テック企業をめぐる“点の衝突”も増えています。中国は10月10日にクアルコムのAutotalks買収に独禁調査を開始。米側の輸出管理強化と鏡写しのように、個別案件へ圧力が波及しています。トランプ政権の対中方針は強硬と同時に、発言のトーンを抑える場面も混在しており、交渉余地を残しつつレバレッジを高める狙いが透けて見えます。 レアアースはAI・半導体・EVモーターなどIT・製造の“見えない血液”です。中国は採掘・精錬で支配的地位を持ち、輸出規制はサプライチェーン全体に波紋を広げます。米国は内製化や同盟調達を急いでいますが、短期での完全代替は難しいのが実情。ゆえに100%関税という“価格ショック”と、レアアースという“供給ショック”が同時に走ると、企業の在庫・原価・販売計画は一気に組み替えを迫られます。 この先を読み解くカギは三つ。第一に、両政府が示した措置の実施時期です。多くは11月初旬までの“発効前”にあり、駆け込み協議の余地が残る点。第二に、制裁と関税の“対象設計”。米側の子会社ルールや中国側の個別企業対応は、サプライチェーンのボトルネックをピンポイントで突く設計になっています。第三に、市場のセンチメント管理。大統領は「心配するな」と火消しも試みており、強硬と緩和の往復で交渉力を維持する構図が続きそうです。 実務面では、テック企業は代替資源の確保、在庫ヘッジ、設計変更の三本立てで“揺れ”に備える局面です。半導体・電子部品のBOM見直し、磁性材料や触媒での代替サプライヤー開拓、そして対中売上比率の高い企業は中国側の審査・規制リスクを前提にM&Aやアライアンスのタイムラインを再設計する必要があります。足元の相場変動は短期的ショックでも、交渉の行方いかんでは“構造変化”に発展しうる──そんな緊張をはらんだ局面と言えるでしょう。

    4 min
  5. 3D AGO

    Ep.636 広告の“AI覇権戦争”──Salesforce・Google・Microsoft・Amazonの陣取り合戦(2025年10月16日配信)

    取り上げるのは、The Informationが報じた「広告テックのAI版・陣取り合戦」です。要点は、Salesforce・Google・Microsoft・Amazonが、AIエージェントを前提に広告の企画から運用、アトリビューションまでを“ワンストップ”で囲いにいくという構図。各社は自社の業務AIと広告在庫、データ基盤を束ね、媒体横断のキャンペーン計画や自動チューニング、成果分析を人手より速く回せることを売りにしています。 外堀はすでに固まりつつあります。SalesforceはMarketing Cloud/Data CloudにEinsteinを深く組み込み、広告最適化・パーソナライゼーション・異常検知などの運用自動化を前面に出します。CRMの予約購買データと広告配信ログを安全に突き合わせる“土台”が強みで、AIエージェントの出力を営業・CSまでつなげやすいのが特徴です。足元ではサンフランシスコ本社にAI拠点を拡充し、企業のエージェント導入を後押しする投資計画も打ち出しました。 対するGoogleは、巨大な検索・YouTubeの在庫と測定エコシステムを武器に、Geminiを用いた自動入稿・クリエイティブ生成・入札最適化の“フルAI運用”を推進中です。一方で、米司法省の救済審理や英CMAの“戦略的市場ステータス”指定など、広告テクノロジーの構造に手直しを迫る動きが加速。AIで運用高度化を進めながら、規制対応での透明性・相互運用性をどう担保するかが今年後半の焦点です。 マイクロソフトはCopilotとAzureのAIスタックを、Xandr由来の広告面に重ねて展開。生成系だけでなくエージェントの“指示系統”を強みとし、B2B広告や小売メディアのバックエンドをAzureに載せ替える提案で攻めます。広告運用チームの“日次業務”をCopilotで短縮する導線は、Office資産との同居が効く領域です。 アマゾンはリテールメディアの雄として、買い物文脈の一次データをAIに供給しやすい立場。Amazon Adsは生成AIで商品理解・クリエイティブ作成・効果洞察を支援する方針を公表しており、今秋は業務AIスイートの「Quick Suite」とも歩調を合わせ、調査→可視化→自動実行という一連の回路を広告にも広げてきました。ECと広告の“地続き”を、エージェントで一気につなげる絵です。 この競争の裏には、プライバシー規制で従来のトラッキングが細るなか、“自社データ×AI”で広告成果を証明する必要があるという事情があります。クリーンルームや相互運用の標準化、規制当局の監視強化というパズルを解きつつ、各社は「AIが計画し、走らせ、検証する」までをエンドツーエンドに閉じる――その主導権を握りたい。The Informationの表現どおり“ランドグラブ”の色合いが濃く、年末に向けては米司法省の救済判断や英CMAの運用設計が製品戦略に波及する可能性も見えてきます。 実務の視点では、広告主側の勝ち筋は三つ。第一に、CRMや購買データをクリーンルーム経由で広告運用に安全接続し、AIエージェントの判断材料を増やすこと。第二に、クリエイティブと入札のループを“人の確認をはさんだ自動化”に切り替え、学習速度を上げること。第三に、測定は媒体横断のコンバージョン・リフトを優先し、プラットフォームの“自社指標”に寄りすぎないこと。これらを抑えれば、どの陣営を選んでも“AI時代の広告運用”の土台は外しません。

    5 min
  6. 3D AGO

    Ep.635 Oracleの“GPUレンタル”は儲かるのか──内部データが示すAIインフラの現実(2025年10月16日配信)

    今回のテーマは、OracleがNVIDIA搭載サーバーを貸し出す“AIクラウド”の中身です。The Informationが入手した内部データによれば、OracleのGPUレンタル事業は直近四半期で約9億ドルの売上に対し、粗利益が約1.25億ドル、粗利率はおよそ14%にとどまったといいます。記事を受けて株価は軟調に推移し、同様の数値を引用する後追い報道も相次ぎました。 採算を圧迫しているのは“最新世代の初期導入負担”です。報道ベースでは、Blackwell世代の貸し出しでは四半期で約1億ドルの赤字に陥った局面もあったとされます。最先端GPUの確保・据え付け・冷却・電力・減価償却が前倒しで乗る一方、顧客課金は利用立ち上がりに時差が出やすい――AIインフラならではのキャッシュフロー構造が数字に表れた形です。 一方で、スケールの絵柄は大きい。OracleはNVIDIAと組んでGB200 NVL72やH200の超大規模クラスターを“受注生産”の勢いで拡張中で、最大13万GPU級のスケールアウトをうたいます。ここが立ち上がるとリソース稼働率の改善や運用の学習効果でマージンが上がる――これが強気派の見立てです。実際、アナリスト筋からは「初期のAI粗利は薄くて当然、規模化で25%水準へ」との評価も出ています。 マーケットの視線は“需給と顧客ミックス”にも向きます。超大型顧客(例:基盤モデル事業者)がまとめてキャパシティを押さえると、単価は下がりやすい半面、稼働は安定しやすい。AI投資の最前線では、データセンター建設・電力契約・GPU調達が先行投資として膨らむため、短期の粗利は削れても、長期契約や高付加価値のネットワーキング/ストレージを抱き合わせて“総合採算”で合わせにいくのが通例です。Oracleの株価反応に対しても「過剰反応」とする強気レポートが目立ちました。 テック産業への示唆は明確です。第一に、AIインフラの“初期は薄利・時に赤字”という現実。最新GPUの導入期は供給制約と前倒し費用が重く、償却と稼働率が噛み合うまで粗利が伸びにくい。第二に、ネットワーク設計や冷却効率など“土木系の工夫”が利益を左右する段階に入ったこと。第三に、顧客の長期コミットと複合課金(GPU+帯域+ストレージ+サポート)が、採算の安定化に決定的に効くという点です。 最後に、実務の打ち手を三つ。調達側の企業は、①短期の価格だけでなく“稼働保証(SLA)と拡張パス”を契約に織り込み、②学習・推論を跨ぐ“ミックス最適化”(世代混在・閾値配賦)でコストを平準化し、③ネットワーク/ストレージを含む総コストで見積もること。提供側にいる皆さんは、初期の薄利を織り込んだうえで、稼働率改善と自動化(プロビジョニングの即応性)でキャッシュ回転を速めることが肝になります。いずれも、今回のOracleのケースが“AIインフラ経済学”の教科書になりつつあることを物語っています。

    4 min
  7. 3D AGO

    Ep.634 NBA中国×アリババクラウド──AIで“観る”を作り替える(2025年10月16日配信)

    グッと肩の力を抜いて聞いてください。現地時間2025年10月9日、NBA Chinaとアリババクラウドがマカオで複数年の包括提携を発表しました。アリババクラウドはNBA中国の「公式クラウド&AIパートナー」となり、ライブ視聴やイベント連動の体験をAIで作り替えていく――そんな宣言です。専用のQwenベースAIモデルをNBA中国のデジタル資産でファインチューニングし、アプリ上でリアルタイムのハイライトや歴史データ、選手インサイト、トレンド解説を届ける構想が示されました。発表の壇上にはアリババ会長でネッツのオーナーでもあるジョー・ツァイ氏、NBAのマーク・テイタム副コミッショナーが並び、テクノロジーがファンとゲームを結び直す時代の到来を印象づけました。 お披露目の舞台は、6年ぶりの開催となった「NBA China Games 2025」。10月10日(金)と12日(日)にサンズとネッツのプレシーズン2連戦がマカオのヴェネチアン・アリーナで行われ、初戦はサンズ、再戦はネッツが勝利。中国におけるNBAの“現場復帰”を象徴する週末になりました。 テック面での見どころは、アリババのAIが仕掛ける「Real-Time 360 Replay」。プレー中の選手位置を追跡し、高品質フレームを合成して“球体視点”のハイライトを生成します。会場のファンはもちろん、配信やイベント会場「NBA House」でも、AIで自分の声色を学習させた実況クリップや、NBAテーマの生成アバターづくりといった体験が並びました。単なる映像処理にとどまらず、“自分ごと化”する演出までAIが肩代わりするのが今回のカラーです。 運用の裏側も大きく変わります。NBA中国のアプリ、公式サイト、ミニプログラムなど“デジタルの玄関口”はアリババクラウドのインフラ上へ。さらにクォークや通義APPといったコンシューマー向けAIアプリも公式マーケティングパートナーに加わり、リーチと反応速度を一段引き上げます。これにより“試合の外側”――ニュース、ハイライト、グッズ、イベント――までAIが一気通貫で最適化される下地が整います。 ビジネスの目線で言えば、この提携は“復路便”の意味も持ちます。2019年以降の関係悪化を経て、NBAは今年マカオ開催を足がかりに中国市場と本格的に関係を再構築中。テクノロジーでファン体験を厚くすることで、政治を越えた“観る理由”を積み上げる──そんな戦略の現実解としても読めます。 最後に、現場の温度です。初戦・再戦ともに会場は早朝キックオフながら熱気十分。スターやレジェンドの来場も話題を呼び、ネット上のハイライト配信は早速大きな波及を見せました。AIが即時に“語り”、クラウドが“届ける”。コートとファンの距離がまた一歩、短くなった週末だったと思います。

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  8. 3D AGO

    Ep.633 MITで語られた“加速の実感”──レイ・カーツワイルが示すAIと長寿の未来(2025年10月16日配信)

    今回は、MITのニュースが伝えたレイ・カーツワイル氏の講演を取り上げます。氏は2025年10月10日付の記事で、MIT SHASSの「Robert A. Muh Alumni Award」を受けた記念講演「Reinventing Intelligence」を実施。AIと計算資源の進歩は線形ではなく指数的であり、今後20年で「目を見張るブレークスルー」が続くと強い楽観を示しました。 講演の肝は二つ。ひとつは医療の加速です。AIが創薬や治験を“デジタル臨床試験”で高速化し、2030年代前半には健康寿命が年々“元取り”できる「Longevity Escape Velocity」に達し得るという見立て。氏は「2032年頃」を具体的に挙げ、ただし先行するのは健康管理に勤勉な人々だと現実的な但し書きも添えました。外部の最近のインタビューでも同様の時期感が語られており、医療×AIの本流化を前提にしたロードマップと言えます。 もうひとつは人とAIの融合像です。2030年代には毛細血管経由のナノロボットが非侵襲で脳とクラウドをつなぎ、2045年には知性が「100万倍」に拡張される“シンギュラリティ”に至る――氏が長年掲げる未来像を、最新の講演でも改めて強調しました。2024年刊の新著『The Singularity Is Nearer』でも、2029年の人間レベルAIと2045年の融合を繰り返し示しており、主張は一貫しています。 キャリア面のアップデートも見逃せません。氏はGoogleで自然言語技術に携わった後、近年は共同創業したロボティクス企業Beyond ImaginationでChief AI Officerに就任。2025年には同社の資金調達報道も出るなど、AIとロボットの“物理実装”に踏み込む姿勢が鮮明です。MITの壇上で語る楽観は、単なる理論ではなく、現場での事業化を伴う実務的な賭けとしても進んでいるわけです。 もちろん氏はリスクも認めています。ドローンが救命にも武器にもなるように、AIは二面性を持つ――だからこそ「危険を制御しつつ約束を実現することは道徳的使命だ」と結んだのが今回のメッセージ。AIの過剰な恐怖と無条件の礼賛のあいだで、技術者と社会がどう実装ガバナンスを設計するか。MITでの講演は、その議論を現実の時間軸に引き戻す“温度”を帯びていました。

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