韓国メディアthebellは10月30日、サムスン電子がテスラの次世代AIチップ「AI5」を2nmで量産し、あわせて「AI6」も2nmで手がける計画だと報道しました。量産拠点は米テキサス州のテイラー新工場で、装置の前倒し搬入により当初の2026年末予定から来年第3四半期の稼働開始を狙うとしています。これに対し、TSMCはAI5を3nm系で製造する見通しで、同一世代の案件ながら“サムスンは2nm、TSMCは3nm”という対照的な布陣になります。
この“二社体制”は、イーロン・マスク氏が直近の決算説明会で明言しています。AI5はサムスンのテイラー工場とTSMCのアリゾナ工場の双方で生産し、初期は供給過多を意図的に作って需要に備える方針。マスク氏は「サムスンの米工場はTSMCアリゾナよりわずかに先端装置が進んでいる」とも述べ、米国内での分散製造に実務的な合理性があると強調しました。
背景には、今夏に報じられたテスラとサムスンの大型契約があります。報道各社によれば、総額約165億ドル規模でAI6を中核に据えた長期供給を締結。サムスンのテイラー工場はこの契約で“アンカーテナント”を得て、2nmの量産立ち上げに弾みがついた格好です。
今回のポイントは二つ。第一に、サムスンがAI5を2nmで請け負うことで、最先端世代の“実績”をテスラという看板顧客で積み上げにいくこと。AI4では既に製造実績があるものの、自社APとは異なり外部大口で2nmを通すことの意味は大きい。第二に、TSMCの3nmとサムスンの2nmが同一プログラムで併走するため、歩留まり・性能・コストの“実戦比較”が業界の注目を集めます。もしテイラーの立ち上げが順調なら、AI6や他ビッグテックの2nm案件獲得に波及する可能性が高い。一方で歩留まりやコストが伸び悩めば、“3nm優位”の見立てが強まるリスクも残ります。
さらにAI5は車載だけでなく、ヒューマノイドやデータセンター用途にも拡張される見通しが語られており、米国内製造の冗長化はサプライチェーン耐性の観点でも妥当です。テスラのDojo戦略見直しや外部GPU活用の流れとも合わせて、カスタムASICを“車・ロボ・DC”に跨って回す設計が、今後のテスラ×サムスン/TSMCの協業ピースを決めていくでしょう。
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- Show
- FrequencyUpdated Weekly
- PublishedNovember 5, 2025 at 10:00 PM UTC
- Length4 min
- Season1
- Episode679
- RatingClean
