名古屋ではたらく社長のITニュースポッドキャスト

ikuo suzuki

システムサーバーの社長である鈴木生雄が気になるITニュースをピックアップして数分のコンテンツとしてお届けする番組です。主に取り上げるニュースはAI、半導体、ビッグテック企業です。

  1. 1日前

    Ep.747 AWS、「Amazon Nova 2」で逆襲へ──“エージェントAI”時代の覇権を握るインフラ戦略(2025年12月4日)

    ラスベガスで開催中の世界最大級のクラウドイベント「AWS re:Invent 2025」から、業界の勢力図を塗り替えるかもしれない巨大な発表がありました。AWSは、エージェント機能に特化した次世代の基盤モデル「Amazon Nova 2」を発表しました。これまでAWSは、AnthropicやMetaなど他社の優秀なモデルを取り揃える「デパート戦略」をとってきましたが、ここにきて自社ブランドの「Amazon Nova」を主力として前面に押し出し、本気で勝負をかけてきました。 今回の目玉は、なんといっても「Agentic AI(エージェントAI)」へのシフトです。従来のAIが「質問に答える賢い辞書」だとすれば、Nova 2は「仕事を任せられる部下」として設計されています。特に注目すべきは、今回プレビュー公開された「Nova 2 Omni」です。このモデルは、目(カメラ)と耳(マイク)を持っており、ビデオ映像や音声をリアルタイムで理解しながら、自然な会話を行うことができます。例えば、工場のラインをカメラで見せながら、「この部品の取り付け方は合っている?」と聞けば、即座にアドバイスをくれるような使い方が可能になります。 さらにAWSは、企業がAIを使うだけでなく「作る」ための環境も整えました。新サービス「Nova Forge」を使えば、企業はNovaモデルをベースに、自社の機密データを混ぜ合わせて、世界に一つだけの「自社専用Nova」をトレーニングすることができます。これは、セキュリティと独自性を重視する大企業にとって、非常に魅力的な選択肢となります。 また、マット・ガーマンCEOは基調講演で「未来は開発者のものだ」と語り、開発者の負担を減らすための自律型エージェント「Kiro」なども披露しました。インフラ(チップ)、モデル(Nova)、そして応用(エージェント)の全てを垂直統合で提供できるAWSの強みが、いよいよ遺憾なく発揮され始めたと言えるでしょう。2026年、企業AIの主戦場は「チャット」から「エージェント」へと完全に移行しそうです。

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  2. 1日前

    Ep.746 AWS、NVIDIA包囲網を強化──「Trainium3」搭載ウルトラサーバーが始動(2025年12月4日)

    ラスベガスで開催されている「AWS re:Invent 2025」から、AIインフラの勢力図を塗り替えるかもしれない大きなニュースが飛び込んできました。AWSは12月2日、自社開発の最新AIチップ「Trainium3」を搭載した「UltraServer」の一般提供を開始したと発表しました。これは単なる新製品の発表ではなく、AI半導体で独走を続けるNVIDIAに対する、AWSからの明確な挑戦状と言えるでしょう。 今回発表されたTrainium3は、AWSとして初めて最先端の3nmプロセス技術を採用しています。その性能は驚くべきもので、前世代のTrainium2と比較して計算能力は約4倍、電力効率も40%向上しています。しかし、真の驚きはチップ単体ではなく、それらを束ねた「UltraServer」というシステムにあります。1つのサーバー筐体に144個ものチップを詰め込み、それらを専用のネットワークで高速に接続することで、あたかも一つの巨大な脳のように振る舞うことができます。これは、NVIDIAがBlackwell世代で推進している大規模なサーバー構成に真っ向から対抗するスペックです。 この巨大なパワーを誰が使うのかというと、その筆頭が「Claude」でおなじみのAnthropicです。AWSとAnthropicは「Project Rainier」と呼ばれる壮大な計画を進めており、最終的には数十万個規模のTrainiumチップを連結した、世界最大級のAI計算クラスターを構築しようとしています。Anthropicのようなトッププレイヤーが、NVIDIA製GPUだけでなくAWS製チップを主力として採用し始めたことは、市場に「GPU以外の選択肢」が実用的であることを証明する大きな意味を持ちます。 また、技術的な観点で見逃せないのが「液冷」へのシフトです。Trainium3のような高性能チップは発熱量も凄まじく、もはや従来の空調ファンでは冷やしきれません。AWSはデータセンターの設備自体を刷新し、液体を使って効率的に熱を逃がす仕組みを導入しています。これは、AI開発が単なるソフトウェアの戦いから、電気と熱をどう制御するかという物理的なインフラ戦争のフェーズに入ったことを象徴しています。コストと性能のバランスを武器に、AWSがAIインフラの「第2の標準」としての地位を確立できるのか、2026年に向けて目が離せません。

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  3. 1日前

    Ep.745 Anthropic、Bunを買収──「Claude Code」が半年で売上10億ドル突破の衝撃(2025年12月4日)

    生成AI業界にまた一つ、大きな地殻変動が起きました。Anthropicは2025年12月2日、高速JavaScriptランタイム「Bun」を買収したことを発表しました。これは2021年の創業以来、同社にとって初の企業買収となります。 この買収劇の裏には、Anthropicが放つAIコーディングツール「Claude Code」の驚異的な成功があります。2025年5月に一般公開されたばかりのClaude Codeは、わずか半年後の11月時点で、ARR(年間経常収益)が10億ドル(約1500億円)を突破するという、エンタープライズ・ソフトウェア史上でも類を見ない爆発的な成長を記録しました。NetflixやSpotify、Salesforceといった巨大企業がこぞって導入を進めており、開発現場の「デファクトスタンダード」を塗り替えつつあります。 では、なぜAI企業のAnthropicが、JavaScriptの実行環境であるBunを必要としたのでしょうか。その答えは「垂直統合」にあります。Claude Codeのような自律型エージェントは、単にコードを書くだけでなく、テストを実行し、エラーを修正し、デプロイまで行います。このプロセスを高速かつ安定して回すためには、AIモデルだけでなく、コードが実際に動く「足回り(ランタイム)」の制御が不可欠です。 Bunは、既存のNode.jsよりも圧倒的に高速な起動と処理速度を誇ります。AnthropicはBunを自社に取り込むことで、Claude Codeが生成したコードの実行速度を劇的に向上させ、ユーザーの待ち時間を短縮し、より複雑なタスクを短時間で完遂できる環境を整えようとしています。これは、ハードウェアとソフトを統合して体験を高めるAppleのような戦略を、AI開発ツールの世界で実践しようとする動きとも言えます。 なお、Bunの創業者であるJarred Sumner氏はAnthropicに参画しますが、Bun自体は今後もオープンソースとして維持され、MITライセンスの下で開発が継続されるとのことです。Microsoft傘下のGitHub Copilotや、OpenAIの動向に対し、Anthropicは「AI×ランタイム」という独自の武器で対抗軸を鮮明にしました。

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  4. 1日前

    Ep.744 AWSの新星「Kiro」──開発チームに加わる“自律型”AIエージェント(2025年12月4日配信)

    ラスベガスで開催中の年次イベント「AWS re:Invent 2025」から、開発者の働き方を根本から変えるかもしれない注目の発表が飛び込んできました。AWSは、開発チームの一員として機能する自律型AIエージェント、「Kiro autonomous agent」を発表しました。 これまでもAIによるコーディング支援ツールは存在しましたが、Kiroは一線を画します。従来のツールが「人間が書くコードを補完する」ものだとすれば、Kiroは「タスクを丸ごと任せられる新人エンジニア」のような存在です。例えば、JiraのチケットやSlackでの会話からタスクの内容を理解し、GitHub上の複数のリポジトリを横断してコードを修正、テストの実行までを自律的に行います。 特筆すべきは、Kiroが持つ「学習能力」です。これまでのAIはセッションが終われば記憶がリセットされていましたが、Kiroは「永続的記憶」を持っています。もしプルリクエストのレビューで、人間の先輩エンジニアから「このプロジェクトではこのエラー処理パターンを使ってね」と指摘された場合、Kiroはそのフィードバックを記憶します。そして、次回のタスクからは言われなくてもそのルールを守るようになるのです。 AWSのマット・ガーマンCEOは「Agents are the new cloud(エージェントこそが新しいクラウドだ)」と宣言し、Kiroだけでなく、セキュリティ監視を行う「AWS Security Agent」や、障害対応を行う「AWS DevOps Agent」も同時に発表しました。これらは「Frontier Agents」と呼ばれ、人間が寝ている間もシステムを守り、育て続ける新たな労働力として定義されています。 開発者は今後、コードを一行一行書く作業から、これら優秀なエージェントたちに指示を出し、その成果物を監督する「マネージャー」のような役割へとシフトしていくのかもしれません。

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  5. 1日前

    Ep.743 Mistral 3始動──欧州の至宝が放つ「6750億パラメータ」のオープン革命(2025年12月4日配信)

    「AIの民主化」を掲げるフランスのMistral AIが、またしても業界の常識を覆す一手を打ちました。同社は2025年12月2日、次世代モデルファミリー「Mistral 3」を正式にリリースしました。最大の注目点は、最上位モデルである「Mistral Large 3」までもが、商用利用可能なApache 2.0ライセンスの「オープンウェイト」として公開されたことです。 Mistral Large 3は、総パラメータ数が6750億という超巨大モデルですが、MoE(Mixture of Experts)アーキテクチャを採用しており、推論時に実際に稼働するのはそのうちの410億パラメータのみです。これにより、GPT-4クラスの性能を維持しながら、推論コストと遅延を劇的に抑えることに成功しています。NVIDIAとの緊密な連携により最新GPU「H200」に最適化されており、AWSやAzureといった主要クラウドでも即日利用可能となりました。 また、今回はデータセンター向けだけでなく、PCやスマートフォンなどの端末内で動作する「エッジAI」への野心も見せました。同時に発表された「Ministral 3」シリーズは、30億から140億パラメータという軽量サイズで、ネット接続なしでも高度な推論やマルチモーダル処理(画像認識など)を可能にします。 OpenAIやGoogleがモデルの中身をブラックボックス化する「クローズド戦略」を採る中で、Mistral AIは「高性能なモデルを誰でも手元で動かせる」という選択肢を提供し続けています。企業の機密データを社外に出さずに最高峰のAIを使いたいというニーズに対し、Mistral 3はまさに決定打となる可能性を秘めています。

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  6. 1日前

    Ep.742 Apple、AI責任者が退任へ──苦戦するSiri刷新と、Google・Microsoft出身の「救世主」(2025年12月4日配信)

    iPhoneの生みの親であるAppleが、AI戦略の抜本的な見直しを迫られています。Bloombergなどの報道によると、長年AI部門を率いてきたジョン・ジャナンドレア氏が退任し、後任としてGoogleとMicrosoftの両社でAI開発の中枢を担ったアマル・スブラマニヤ氏を招聘することが明らかになりました。 この人事の背景にあるのは、Appleが直面している「AI開発の苦戦」です。2024年に華々しく発表された「Apple Intelligence」ですが、市場の反応は芳しいものばかりではありませんでした。特に、目玉機能となるはずだった「新生Siri」の開発は難航を極めています。当初期待されていたような、複雑な文脈を理解しアプリを横断して操作する機能の実装は遅れに遅れ、完全なリリースは2026年の春までずれ込む見通しです。BBCなどのメディアからは、AIが生成したニュース要約に事実誤認が含まれているといった精度の問題も指摘されており、品質に厳格なAppleとしては異例の事態が続いていました。 そこで白羽の矢が立ったのが、スブラマニヤ氏です。彼はGoogleで対話型AI「Gemini」のエンジニアリング責任者を務め、その後Microsoftに移籍してAI戦略を支えた、いわば「ライバルの手の内を知り尽くした人物」です。Appleはこれまで、純粋培養の自社文化を大切にしてきましたが、ここに来て外部の、それも直接的な競合他社のトップエンジニアに舵取りを委ねるという決断は、彼らの危機感の表れと言えるでしょう。 今後は組織構造も変わり、スブラマニヤ氏はソフトウェアエンジニアリング担当のクレイグ・フェデリギ氏の直属となります。これは、AIを単なる研究対象としてではなく、iOSやmacOSといった製品に直結する機能として、よりスピーディーに実装していくための布陣です。「プライバシー重視」というAppleの哲学を守りながら、周回遅れと言われるAI競争でどう巻き返しを図るのか。2026年はAppleにとって、真価が問われる一年になりそうです。

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  7. 1日前

    Ep.741 AccentureとOpenAIが描く「AI精製所」──企業AIは“実験”から“実戦”のフェーズへ(2025年12月4日配信)

    本日は、世界最大級のコンサルティングファームAccentureと、生成AIの王者OpenAIが手を組んで推進している、企業のAI導入における新しい潮流について解説します。 これまで多くの企業がChatGPTなどの生成AIを導入してきましたが、その多くは「メールの下書き作成」や「議事録の要約」といった、個人の作業効率化に留まっていました。しかし、AccentureとOpenAIが目指しているのは、その先にある「企業の業務プロセスそのものの変革」です。 その鍵となるのが、Accentureが展開する「AI Refinery(AI精製所)」というプラットフォーム構想です。 原油がそのままでは車の燃料にならないのと同じように、OpenAIが提供する強力なAIモデルも、そのままでは企業の複雑な業務にはフィットしません。そこでAccentureは、この「Refinery」という環境を用意し、顧客企業が持つ膨大な社内データを使ってOpenAIのモデルをカスタマイズ(精製)するプロセスを支援しています。 特に注目すべきは、単に質問に答えるだけのAIから、自律的に仕事をする「エージェント型AI」へのシフトです。 例えば、マーケティング部門であれば、AIエージェントが市場データを分析し、キャンペーンの立案からコンテンツの生成、さらには効果測定までを自律的に行います。金融機関であれば、無数のコンプライアンス規定を学習したAIが、融資の審査プロセスを人間と協調して進めます。Accentureは、こうした「働くAI」を構築するためのツール群や、NVIDIAと連携した強力な計算基盤を提供することで、企業が抱える「AIをどう業務に組み込めばいいか分からない」という悩みを解決しようとしています。 OpenAIにとってAccentureは、自社の技術を大企業の「現場」に定着させるための最強のパートナーであり、AccentureにとってもOpenAIの進化するモデルは、コンサルティングサービスの質を根本から変える武器となります。 「とりあえず導入してみた」というフェーズが終わり、2025年は「自社専用のAIを育て、経営の武器にする」という、より本質的な競争が始まろうとしています。

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  8. 1日前

    Ep.740 PFN「PLaMo翻訳」が霞が関へ──ガバメントAI「源内」採用と新社長体制の船出(2025年12月4日配信)

    本日は、日本のAI開発における歴史的な一日となるかもしれません。2025年12月2日、株式会社Preferred Networks(PFN)の「PLaMo翻訳」が、デジタル庁の運用するガバメントAI環境「源内(Gen-nai)」において正式に利用開始されました。 これまで、政府や自治体が利用するAIといえば、OpenAIなどの海外勢が主流でした。しかし、今回採用された「PLaMo翻訳」は、PFNが独自に開発した純国産のモデルです。このモデルの強みは、なんといっても「日本語の解像度」にあります。海外製AIに見られるような不自然な言い回しや、専門用語の誤訳を極限まで減らし、行政文書のような硬い文章でも、文脈を損なわずに正確に翻訳できる点が評価されました。これが霞が関のインフラとして組み込まれたことは、日本のスタートアップ技術が国家のセキュリティ基準をクリアし、実務レベルで海外巨大テック企業と競合できることを証明したと言えます。 また、PFNにとってこのニュースは、単なる「官公庁への導入事例」以上の意味を持ちます。実は先週の11月27日、PFNは創業以来の大きな体制変更を行いました。長年CEOを務めた西川徹氏が会長に退き、代わってCTOとして技術を牽引してきた岡野原大輔氏が新社長に就任したのです。 「技術の天才」として知られる岡野原氏がトップに立った直後のこの発表は、PFNが「研究開発」のフェーズから、技術を社会実装し、国のインフラさえも支える「実業」のフェーズへと完全に移行したことを象徴しています。 MN-Coreという独自のAI半導体を持ち、その上で動くPLaMoという独自の頭脳を持つPFN。ハードとソフトの両方を握る彼らが、日本の「デジタル主権」を取り戻すための切り札として、政府の中枢で動き始めました。

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番組について

システムサーバーの社長である鈴木生雄が気になるITニュースをピックアップして数分のコンテンツとしてお届けする番組です。主に取り上げるニュースはAI、半導体、ビッグテック企業です。