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岡大徳

人を尊重して話を聞かせていただく「アクティブリスニング」エバンジェリスト『自己満足ではない「徹底的に聞く」技術』著者赤羽雄二氏公認|『アクションリーディング』読書会開催|仲間と一緒に成長できる「親子のクオリティタイム」「最速ロールプレイング」「A4メモ書き」などのグループ運営|株式会社miiboのmiibo Designer|一般社団法人 遠隔健康医療相談適正推進機構 正会員 【配信内容】 配信URL;https://www.daitoku0110.news 3つの内容を配信中 1. 岡大徳 アクティブリスニングなどについて配信しています。 ブログなどの内容はこちら ・https://daitoku0110.com ・https://daitoku0110.jp ・https://daitoku.site/ 2. miiboDesigner 株式会社miiboのmiiboDesignerの岡大徳がmiiboについての新しい情報や気になった情報、ノウハウなど話していきます。 miiboデザイナーとは、miiboの会話の精度があがるように設計をしていく人のことです。 ・プロフィールサイト:https://daitoku0110.net/ ・miiboガイド(初めての人はこちらから):https://daitoku0110.net/miibo/ ・miibo情報:https://daitoku0110.net/miibo-information/ ・スライド共有サービスドクセル:https://www.docswell.com/tag/miibo 3. ナレッジマネジメント 岡大徳のNotesをもとにナレッジマネジメントの一環として配信しています。 岡大徳のNotes:https://daitoku0110.wiki 【Clubhouse】 https://www.clubhouse.com/@daitoku0110 ・『アクションリーディング』行動が変わり人生が変わる読書会 https://bit.ly/38uMBJP ・親子のクオリティタイム https://bit.ly/3Rf8X6z 【Peatix】 https://peatix.com/user/1425712/ ・実践『アクションリーディング』自分を変える行動読書 https://action-reading.peatix.com/ 【Facebook】 https://ms-my.facebook.com/oka.hironori.1 グループ ・実践『アクションリーディング』自分を変える行動読書:https://www.facebook.com/groups/practiceactionreading ・実践 最速ロールプレイング:https://www.facebook.com/groups/551556716178832 ・実践『ゼロ秒思考』A4メモ書き:https://www.facebook.com/groups/notewriting 【Unstoppable Domains】 https://ud.me/daitoku0110.x 【ドクセル】 https://www.docswell.com/user/daitoku0110 www.daitoku0110.news

  1. 災害医療体制の現状と課題:能登半島地震・コロナ禍の教訓から見る今後の方向性

    6H AGO

    災害医療体制の現状と課題:能登半島地震・コロナ禍の教訓から見る今後の方向性

    令和7年9月18日に開催された中央社会保険医療協議会の入院・外来医療等の調査・評価分科会において、災害医療に関する包括的な調査結果が報告されました。日本の災害医療体制は783の災害拠点病院と1,840のDMATチームを中心に構築されていますが、能登半島地震での実際の派遣経験から、職員の配置基準維持や現地情報収集などの運用面での課題が浮き彫りになりました。 本報告では、災害拠点病院の整備状況とDMATの活動実態、能登半島地震における医療機関の対応状況、新型コロナウイルス感染症対応での施設基準の弾力的運用という3つの観点から、現在の災害医療体制の到達点と今後の改善方向を示します。特定機能病院の92.6%が能登半島地震への派遣を検討し、急性期一般入院料1算定病院の68.4%が検討したという結果は、高度急性期医療機関が災害医療の中核を担っている実態を明確に示しています。診療所における事業継続計画(BCP)策定率が約30%にとどまることや、派遣時の職員配置基準の課題など、医療提供体制全体として取り組むべき課題も明らかになりました。 災害拠点病院とDMAT体制の整備状況 日本の災害医療体制は、平成8年から整備が始まった災害拠点病院を中心に構築されています。災害拠点病院は、基幹災害拠点病院(都道府県に原則1箇所、全国63病院)と地域災害拠点病院(二次医療圏に原則1箇所、全国720病院)の2層構造で、令和7年4月1日までに計783病院が指定されています。 この災害拠点病院を支えるDMAT(災害派遣医療チーム)は、平成17年3月から養成が開始され、現在18,909名、1,840チームが研修を修了しています。DMATは医師1名、看護師2名、業務調整員1名の4名を基本として構成され、都道府県の派遣要請に基づいて活動します。令和4年2月には、新型コロナウイルス感染症対応の経験を踏まえ、新興感染症等のまん延時における対応も活動内容に追加されました。 各入院料区分別の災害派遣医療チーム設置状況を見ると、特定機能病院が90.7%と最も高く、次いで急性期一般入院料1算定病院が59.1%となっています。高度急性期医療を担う医療機関ほど災害医療体制への参画率が高い傾向が明確に表れています。DPC/PDPS対象病院では、災害拠点病院の指定、DMATの指定、EMISへの参加、BCPの策定が体制評価指数として診療報酬上も評価される仕組みとなっています。 能登半島地震における医療機関の派遣実態と課題 令和6年能登半島地震への対応では、医療機関の規模や機能による派遣検討・実施の差が顕著に現れました。派遣を検討した医療機関の割合は、特定機能病院92.6%、急性期一般入院料1算定病院68.4%、専門病院50.0%の順となり、実際に派遣した割合も同様の傾向を示しました。 派遣検討時の主な困難要因として、「現地の状況把握と情報収集」「派遣にあたっての交通手段の確保」「派遣中の労務管理」「派遣中に自施設のスタッフ配置基準が満たせなくなること」が挙げられました。これらの課題は、災害発生時の初動体制や情報共有システム、労務管理体制の整備が急務であることを示しています。特に、職員配置基準の問題は、平時の医療提供体制維持と災害支援のバランスという構造的な課題を浮き彫りにしています。 実際に派遣された職種は、看護師が最も多く(急性期一般1で94.4%、特定機能病院で100%)、次いで医師(急性期一般1で81.5%、特定機能病院で94.2%)、事務職員、薬剤師の順でした。災害医療においても、看護師と医師を中心とした多職種チームによる支援体制が機能していることが確認されました。 新型コロナウイルス感染症対応と施設基準の弾力的運用 新型コロナウイルス感染症への対応においても、医療機関間の支援体制が重要な役割を果たしました。他の医療機関や福祉施設への職員派遣を検討した医療機関は、特定機能病院46.3%、急性期一般入院料1算定病院43.2%と、能登半島地震への対応と比較すると低い割合でしたが、長期間にわたる支援が継続されました。 派遣検討時の困難要因は、「派遣中に自施設のスタッフ配置基準が満たせなくなること」が最も多く、次いで「現地の状況把握と情報収集」「派遣中の労務管理」が挙げられました。能登半島地震と異なり、交通手段の問題は少なかった一方で、長期派遣による自施設の人員不足がより深刻な課題となりました。 これらの課題に対応するため、厚生労働省は施設基準の弾力的運用を認める事務連絡を発出しています。新型コロナウイルス感染症患者の受け入れや職員派遣により、月平均夜勤時間数や看護要員数に1割以上の変動があった場合でも、最初の月から3か月以内に限り施設基準の届出区分変更を不要とする特例措置が設けられました。この措置は当初令和6年5月31日までとされていましたが、活用状況を踏まえて令和8年5月31日まで延長されています。 まとめ 日本の災害医療体制は、783の災害拠点病院と1,840のDMATチームを中心に着実に整備が進んでいます。能登半島地震と新型コロナウイルス感染症対応の経験から、高度急性期医療機関が災害医療の中核を担う体制が機能していることが確認されました。一方で、職員派遣時の配置基準維持、現地情報収集、労務管理などの運用面での課題や、診療所のBCP策定率が約30%にとどまるなど、医療提供体制全体としての備えには改善の余地があります。今後は、施設基準の弾力的運用の恒久化や、情報共有システムの強化、中小医療機関のBCP策定支援など、実践的な課題への対応が求められています。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

    9 min
  2. 少子化時代の小児・周産期医療体制の現状と課題:母体・胎児集中治療室の要件見直しと成人移行期医療の展望

    1D AGO

    少子化時代の小児・周産期医療体制の現状と課題:母体・胎児集中治療室の要件見直しと成人移行期医療の展望

    令和7年度第12回入院・外来医療等の調査・評価分科会において、少子化が進行する中での小児・周産期医療体制の現状と課題が議論されました。出生数が72万人台まで減少し、医療機関の運営が困難になる中、母体・胎児集中治療室(MFICU)の医師配置要件の見直しと小児成人移行期医療の充実が喫緊の課題となっています。本稿では、これらの課題に対する現状分析と今後の方向性について解説します。 本分科会では、3つの重要な論点が示されました。第一に、出生数減少による小児・周産期医療体制への影響です。第二に、MFICUの医師配置要件と実際の運用状況の乖離です。第三に、小児慢性特定疾病患者の成人移行期医療の課題です。これらの課題は相互に関連しており、診療報酬改定を通じた総合的な対応が求められています。 少子化が小児・周産期医療に与える影響 出生数の急速な減少が、小児・周産期医療体制の維持を困難にしています。令和5年の出生数は727,288人で、前年より43,471人減少し、明治32年の人口動態調査開始以来最少となりました。この傾向は今後も継続すると予測され、14歳以下の人口はさらに減少していく見込みです。 出生数減少は、分娩取扱医療機関の減少を招いています。産婦人科を標榜していても実際に分娩を取り扱わない施設の割合は、病院で25%、診療所で65%に達しています。特に診療所における分娩取扱の中止が顕著であり、地域における周産期医療体制の維持が課題となっています。一方で、妊婦の高齢化により、35歳以上の妊婦が30%を占め、合併症妊娠や社会的ハイリスク妊産婦が増加しており、高度な周産期医療の需要は減少していません。 小児入院医療においても、病床稼働率の低下が問題となっています。小児入院医療管理料届出病床当たりの小児入院患者数の割合は約5~6割程度にとどまっています。令和6年度診療報酬改定では、小児入院医療管理料3において一般病棟との一体的運用を可能とする見直しが行われましたが、地域における小児医療体制の維持には継続的な対応が必要です。 母体・胎児集中治療室(MFICU)の運営課題 MFICUの届出治療室数は、令和4年7月から令和6年7月にかけて全国で11治療室減少しました。地域別では東北で4治療室、近畿で3治療室が減少しており、地域偏在が懸念されます。全国周産期医療(MFICU)連絡協議会のアンケート調査によると、届出変更の理由として「医師の配置要件を満たせない」が最も多く挙げられています。 現行の施設基準では、専任の医師が常時MFICU内に勤務することが原則とされています。令和6年度改定で一定の条件下で宿日直を行う医師も認められましたが、依然として人員確保が困難な状況です。実態調査では、MFICU内に常駐していない医師でも、院内にいる医師は概ね10分以内に診察開始可能であることが確認されており、緊急時の対応体制は確保されています。 母体搬送受入件数や多胎妊娠分娩件数が極めて少ない施設も存在しています。母体搬送受入件数が0件の施設が関東信越に、1~9件の施設が関東信越、東海北陸、近畿にそれぞれ存在しており、施設間の機能分化が不十分である可能性が示唆されます。一方で、産科異常出血は分娩前からの予測が困難であり、約20%の症例ではリスク因子が認められないことから、すべての分娩施設において緊急時対応体制の確保が必要です。 小児成人移行期医療の現状と課題 小児慢性特定疾病患者の成人移行期医療は、まだ十分に体制が整備されていません。小児科以外の医療機関で定期的に小児科に受診していた患者を紹介により受け入れた経験は極めて少なく、病院で平均0.6人、診療所で平均2.3人にとどまっています。受け入れ経験がない理由として、「対象となる患者の紹介がなかったため」が85%と最も多く、次いで「医師・スタッフの専門的な知識・経験が不足しているため」が17.7%となっています。 診療報酬上の課題も存在します。小児慢性特定疾病は801疾病が指定されているのに対し、指定難病は348疾病にとどまっており、約半数の疾病が指定難病に該当しません。小児科医療機関で「小児科療養指導料」を算定していた患者が成人移行期となり小児科以外の医療機関に紹介された場合、「難病外来指導管理料」の算定対象でない限り、同様の管理料を算定できない状況です。 成人移行期患者を受け入れた経験のある診療科は、内科が25.9%と最も多く、次いで消化器内科、精神科が各9.3%となっています。移行期医療の推進には、受け入れ側の医療機関における体制整備と、診療報酬上の評価の充実が必要です。 まとめ 少子化時代における小児・周産期医療体制の維持には、医療資源の効率的な配分と診療報酬による適切な評価が不可欠です。MFICUの医師配置要件については、地域の実情に応じた柔軟な運用を可能にしつつ、緊急時対応体制を確保する方向での見直しが求められます。小児成人移行期医療については、指定難病の対象拡大や新たな管理料の創設など、継続的な医療提供を支援する仕組みの構築が必要です。今後の診療報酬改定において、これらの課題に対する具体的な対応策が示されることが期待されます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

    9 min
  3. 透析医療の転換期:34万人の患者と変革する診療体制の課題

    2D AGO

    透析医療の転換期:34万人の患者と変革する診療体制の課題

    入院・外来医療等の調査・評価分科会は、令和7年9月18日、透析医療の現状分析と課題検討を行いました。約34万人の慢性透析患者数が2022年から減少傾向に転じ、患者の平均年齢が70.1歳に達する中、透析医療の提供体制は大きな転換期を迎えています。血液透析に偏重した日本の腎代替療法の構造改革が求められています。 本報告書は、透析患者の高齢化と減少傾向、腎代替療法の選択肢提供の実態、災害対策と診療体制の課題という3つの重要な論点を提示しています。血液透析を実施する医療機関の19.5%しか腹膜透析を提供していない現状があります。全患者に腎代替療法の3つの選択肢を提示している施設は51.2%に留まります。災害時情報ネットワークへの登録率は76.1%となっています。これらの課題への対応が、今後の透析医療政策の重要な検討事項となります。 透析患者の現状と腎代替療法の選択肢 慢性透析患者数は343,508人(2023年末)で、2021年まで緩徐に増加していましたが、2022年から減少傾向に転じました。この減少傾向は、年間約3.9万人の新規導入があるものの、患者の高齢化による死亡数増加が背景にあります。患者の平均年齢は70.1歳、新規導入患者の平均年齢は71.6歳と、透析患者全体の高齢化が顕著です。 高齢化の進展は、腎代替療法の選択にも影響を与えています。日本では血液透析患者の割合が諸外国と比較して著しく高く、腹膜透析は10,585人、腎移植は年間2,001例に留まっています。腹膜透析は生活の制約や食事・飲水制限が血液透析より少なく、自由度が高いという利点があります。しかし、医療機関側の体制不備や経験不足が普及の障壁となっています。 腎代替療法に関する情報提供も不十分な状況です。全患者に血液透析、腹膜透析、腎移植の3つの選択肢を提示している医療機関は51.2%に過ぎません。35.6%の医療機関は情報提供の取組を行っていません。患者の自己決定権を保障し、最適な治療選択を支援する体制の構築が急務となっています。 診療体制の課題と災害対策の現状 血液透析の診療体制には、複数の課題が顕在化しています。シャント閉塞等のトラブルは透析患者の入院理由として最も多く、93.6%の医療機関が自院または事前連携先で対応しています。しかし、5.9%の医療機関は事前連携のない医療機関への紹介となっており、緊急時対応の体制整備が必要です。 災害対策については、各医療機関の取組にばらつきが見られます。災害対策マニュアルの策定は80.5%の施設で実施されていますが、電源車や給水車の受入体制は22.9%に留まります。日本透析医会災害時情報ネットワークへの登録または自治体等との連携体制を確保している医療機関は76.1%です。大規模災害時の透析医療継続には、より包括的な対策強化が求められます。 腹膜透析の提供体制も大きな課題です。血液透析実施医療機関の77.1%が腹膜透析を提供していません。その理由として、対象患者がいない(59.5%)、器具設備の不備(38.6%)、医師の経験不足(18.4%)が挙げられています。緊急時や入院時のバックアップ体制への不安も、腹膜透析導入の障壁となっています。 診療報酬による政策誘導と今後の方向性 診療報酬制度は、腎代替療法の適切な選択を促進する重要な政策ツールです。導入期加算は、腎代替療法に関する十分な説明と選択支援を評価し、200点から810点の3段階で設定されています。腎代替療法実績加算(100点)は、腹膜透析や腎移植の実績を評価する仕組みです。 慢性維持透析の施設基準は、透析用監視装置の台数と患者数の割合により3つに区分されています。慢性維持透析1の届出医療機関数は増加傾向(令和6年:2,358施設)にある一方、慢性維持透析2・3は減少しています。この変化は、医療機関の規模や効率性を反映した診療報酬体系への適応を示しています。 緩和ケアの取組も重要な検討事項です。医療用麻薬を用いた疼痛緩和を実施している医療機関は32.2%、終末期や透析医療中止に関する意思決定支援は35.1%に留まっています。超高齢社会における透析医療では、治療の継続と中止、緩和ケアへの移行を含めた包括的な医療提供体制の構築が不可欠となっています。 まとめ 透析医療は、患者数の減少と高齢化により大きな転換期を迎えており、血液透析偏重から腎代替療法の選択肢拡大への構造改革が必要です。診療体制の強化、災害対策の充実、腹膜透析の普及促進という3つの課題への対応が、今後の透析医療政策の重要な検討事項となります。診療報酬制度を通じた政策誘導と、医療機関の体制整備支援により、患者中心の透析医療への転換を推進することが求められています。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

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  4. 外科系診療科の医師偏在解消へ:機能分化による働き方改革と集約化の新展開

    3D AGO

    外科系診療科の医師偏在解消へ:機能分化による働き方改革と集約化の新展開

    外科系診療科における医師偏在と過重労働が深刻化する中、令和7年度第12回入院・外来医療等の調査・評価分科会は、診療科偏在対策の具体的な方向性を示しました。令和6・7年度入院・外来医療等における実態調査によると、心臓血管外科、消化器外科、脳神経外科では常勤医師1人あたりの時間外・休日労働時間が全診療科平均を大きく上回る実態が明らかになり、医師確保の困難さも内科43.7%、麻酔科32.8%、整形外科30.7%、外科27.1%と高い水準にあります。これらの課題に対し、山口大学の成功事例に代表される医療機関の機能分化による集約化と、手術の休日・時間外・深夜加算の施設基準見直しという2つのアプローチが注目されています。 本分科会の分析によれば、高度な手術の集約化により医療の質向上と医師の負担軽減を同時に実現できることが示されました。消化器外科領域では、年間50件未満の手術実施施設が大半を占める一方、大学病院本院の多くは200件以上を実施しており、すでに自然発生的な集約化が進んでいます。山口県の取り組みでは、医療機関を常勤消化器外科医師数に応じて3つのタイプに分類し、高度手術を基幹病院に集約する一方、術後の化学療法やフォローアップを地域の病院で実施する体制を構築しました。この機能分化により、基幹病院の医師の負担が軽減され、サテライト病院の経営改善も実現するという好循環が生まれています。 外科系診療科の労働実態と医師確保の現状 外科系診療科の時間外・休日労働時間は、全診療科平均を大きく上回る深刻な状況にあります。令和6・7年度入院・外来医療等における実態調査では、心臓血管外科、消化器外科、脳神経外科で特に常勤医師1人あたりの時間外・休日労働時間が長時間となっていることが明らかになりました。これらの診療科では、緊急手術や長時間手術が多く、オンコール体制による拘束時間も長いことが要因となっています。 医師確保の困難さも診療科によって大きな差があります。令和7年度の調査によると、内科では43.7%の施設が医師確保に困難を感じており、麻酔科32.8%、整形外科30.7%、外科27.1%と続きます。外科では大学医局からの派遣を受けている施設が38.2%あり、そのうち15.0%で派遣人員が減少していることが報告されています。有料の求人サービスを利用する施設も外科で7.9%、麻酔科で14.0%となっていますが、特に外科系診療科では効果が限定的です。 令和7年7月31日の中間とりまとめでは、若手医師の診療科選択にも偏りが生じていることが指摘されています。外科系診療科は専門性の習得に長期間を要し、身体的・精神的負担も大きいにもかかわらず、処遇が見合わないと感じる医師が増加しています。女性医師の増加に伴い、出産・育児との両立が困難な診療科は敬遠される傾向も強まっています。 手術加算の施設基準見直しによる働き方改革 手術の休日・時間外・深夜加算1の施設基準が令和6年度改定で強化されました。従来は交代勤務制、チーム制、手当支給のいずれかを満たせばよかったものが、交代勤務制またはチーム制の導入と手当支給の両方が必須となりました。この変更により、医師の休日確保と適切な処遇改善の両立が求められています。 新たな施設基準では、予定手術の術者・第一助手が前日に当直等を行った日数を年間4日以内に制限しています。交代勤務制では夜勤翌日を休日とし、チーム制では緊急呼び出し当番の翌日を原則休日とすることが義務付けられました。しかし、多くの施設でこれらの要件を満たすことが困難な状況です。 令和7年5月時点の調査では、手術の休日・時間外・深夜加算1を届け出ている192病院のうち、経過措置終了後に算定が困難となる要件として「緊急呼び出し当番翌日の休日対応」と「夜勤翌日の休日対応」を挙げる施設が最も多くなっています。オンコール体制の待機時間は労働時間に該当しない場合もありますが、施設基準では翌日の休日確保を求めており、医師確保が困難な施設では対応に苦慮しています。 山口モデルが示す機能分化と集約化の成功事例 山口大学医学部附属病院消化器外科が実践した機能分化モデルは、診療科偏在対策の有効な解決策を提示しています。このモデルでは、医療機関を常勤消化器外科医師数に応じて3つのタイプに分類し、それぞれの役割を明確化しました。Type1病院(常勤消化器外科医師1-2名)は基本的な手術のみ実施し、がん手術は大学病院に紹介する一方、術後の化学療法とフォローアップを担当します。 Type2病院(常勤消化器外科医師3-5名)は胃がん・大腸がんの標準的な手術を実施しますが、食道・肝胆膵の高難度手術は大学病院に集約します。Type3病院(常勤消化器外科医師6名以上)は従来通り独立してがん治療を完結できる体制を維持します。この機能分化により、各病院が強みを活かした診療体制を構築できました。 取り組みの結果、基幹病院では高度手術に専念できる環境が整い、医師の技術向上と負担軽減が実現しました。サテライト病院では、化学療法とフォローアップの症例数増加により経営が劇的に改善し、地域住民も近隣で継続的な治療を受けられるようになりました。この成功モデルは、他地域への展開可能性を示唆しています。 高度手術の集約化がもたらす医療の質向上 消化器外科領域の高度な手術(外保連試案の難易度D・Eかつ4時間以上)の実施状況分析から、自然発生的な集約化の実態が明らかになりました。令和4年度のNDBデータによると、全国2,017施設のうち年間50件未満の施設が過半数を占める一方、大学病院本院では200件以上実施する施設が大半となっています。この集約化により、手術成績の向上と若手医師の教育機会確保が両立されています。 集約化のメリットは手術の安全性向上だけではありません。症例数の増加により医療チームの技術が向上し、合併症率の低下や在院日数の短縮につながっています。また、高額な医療機器の効率的な活用や、専門スタッフの配置も可能となり、医療経済的にも合理的です。 中間とりまとめでは、過度な集約化による地域医療へのアクセス低下の懸念も指摘されました。分科会では、小規模な手術とのバランスを保ちながら、地域の実情に応じた集約化を進める必要性が強調されています。また、小規模施設から大規模施設への紹介・連携に対するインセンティブ強化も今後の検討課題となっています。 まとめ 外科系診療科の医師偏在と過重労働の解消には、医療機関の機能分化による集約化と、働き方改革を促進する診療報酬上の評価が不可欠です。山口モデルの成功は、地域全体で医療資源を最適配分することで、医療の質向上と医師の負担軽減を両立できることを実証しました。令和8年度診療報酬改定では、これらの取り組みを後押しする評価体系の構築が期待されます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

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  5. 医師の働き方改革を加速するICT活用|8割の病院が未導入の現状と改善策

    4D AGO

    医師の働き方改革を加速するICT活用|8割の病院が未導入の現状と改善策

    令和7年度入院・外来医療等における実態調査により、全国の約80%の病院で医師事務作業のICT活用が進んでいない実態が明らかになりました。医師の働き方改革が喫緊の課題となる中、生成AIやRPAなどの先進技術の活用が労働時間短縮の鍵となっています。本稿では、入院・外来医療等の調査・評価分科会で示されたICT活用による業務効率化の具体的効果と導入推進に向けた方策を解説します。 調査結果によると、生成AI文書作成補助システムを導入した医療機関では退院サマリー作成時間を最大66%削減する効果が確認されました。WEB問診・AI問診では1問診あたり40~50%の時間短縮を実現しています。説明動画の活用やRPAによる臨床データ集計においても、作業効率の大幅な向上と労働時間の短縮効果が報告されています。これらのICT技術は、医師事務作業補助者の業務負担軽減と医師の本来業務への集中を可能にする重要な手段となっています。 ICT活用の現状と導入の遅れ 令和7年度入院・外来医療等における実態調査によると、医師事務業務の省力化に向けたICT活用について、約80%以上の病院でいずれの取組も実施されていないことが判明しました。この現状は、医師の働き方改革を推進する上で大きな障壁となっています。調査によれば、ICTを活用している医療機関の取組内容は「説明動画の活用」、「WEB問診・AI問診」、「外来診療WEB予約システム」が上位を占めています。 導入済みの医療機関では、すべてのICT活用において「作業効率の上昇」と「労働時間の短縮」という明確な効果が確認されています。特に効果が高い取組として、「臨床データ集計等でのRPA活用」、「退院サマリー等の作成補助を行う生成AI文書作成補助システム」、「説明動画の活用」が挙げられます。これらの技術は、医師事務作業補助者が実施している紹介状の返書作成、診療情報提供書の作成、退院サマリーの作成などの主要業務において、大幅な時間短縮を実現しています。 医師事務作業補助者を必要数確保できない医療機関が40.1%存在する中、ICT活用は人材不足を補完する重要な解決策となります。入院・外来医療等の調査・評価分科会の中間とりまとめでも、給与や賞与の見直しだけでは限界があり、診療報酬の枠組みでの議論の必要性が指摘されています。 生成AI等による具体的な削減効果 生成AIによる文書作成補助システムの導入効果は、複数の医療機関で実証されています。1000床規模の国立大学病院では、退院サマリー作成時間を1時間から20分に短縮し、66%の削減率を達成しました。別の国立大学病院では、診療情報提供書と退院サマリー作成で平均47%の時間削減を実現し、年間1人当たり63時間の削減効果を生み出しています。 750床規模の民間病院では、医師事務作業補助者による退院サマリーの下書き作成時間を30分から0分に完全に自動化しました。医師による作成時間も10分から5分に短縮し、全体として大幅な効率化を達成しています。200床規模の民間病院でも、診療情報提供書・紹介返書・退院サマリー・主治医意見書等の作成において、医師事務作業補助者による下書き時間を30分から15分に短縮し、50%の削減効果を実現しています。 WEB問診・AI問診システムも顕著な効果を示しています。300床規模の民間病院では1問診あたり約10分から6分への短縮(削減率40%)、診療所では1問診あたり約12分から約6分への短縮(削減率50%)を達成しました。がん登録作業においても、生成AIの活用により患者スクリーニング作業時間で27.1%、がん登録作業時間で16%の削減効果が報告されています。 これらのシステムは、診療録からの情報収集、部門システムからのデータ抽出、情報の統合と構造化、要約作成といった一連のプロセスを自動化します。従来は医師事務作業補助者が手作業で行っていた業務が、AIにより効率的に処理されるようになっています。 今後の推進に向けた課題と方向性 入院・外来医療等の調査・評価分科会では、医師事務作業補助者の定着に向けた取組やICTの活用による省力化等について、令和7年度入院・外来医療等における実態調査の結果を踏まえさらなる検討を進めることが示されています。医師の働き方改革は急性期機能の集約化や病院間の役割分担とも密接に関連しており、急性期の医療機関機能を検討する際に併せて考えていくべきとの意見も出されています。 地域医療確保体制加算の評価向上も含め、診療報酬制度における適切な評価が重要な検討課題となっています。多くの当直医が大学病院からの派遣で満たされている現状を踏まえ、夜間の宿日直体制を維持していくことの重要性も指摘されています。 ICT導入の障壁として、初期投資コストや運用体制の構築、スタッフの教育などが挙げられます。しかし、労働時間短縮による人件費削減効果や医療の質向上を考慮すれば、中長期的には十分な投資対効果が期待できます。特に医師事務作業補助者の確保が困難な地域や施設においては、ICT活用が不可欠な選択肢となっています。 今後は、成功事例の共有と横展開、導入支援体制の整備、診療報酬上のインセンティブ設計などを通じて、全国的なICT活用の推進を図ることが重要です。医師の働き方改革の実現と医療の質向上の両立に向けて、デジタル技術の積極的な活用が求められています。 まとめ 令和7年度入院・外来医療等における実態調査により、医師事務作業のICT活用は約80%の病院で未導入という現状が明らかになりましたが、導入済み施設では明確な労働時間短縮効果が実証されています。生成AI文書作成補助システムによる最大66%の時間削減、WEB問診・AI問診による40~50%の効率化など、具体的な成果が報告されています。医師の働き方改革を実現し、持続可能な医療提供体制を構築するために、ICT活用の推進は避けて通れない課題となっています。各医療機関においては、自施設の業務特性に応じた最適なICT導入戦略を検討し、段階的な実装を進めることが求められます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

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  6. 【2025年最新】急性期入院医療の機能評価と診療報酬改定への影響 - 総合入院体制加算と急性期充実体制加算の徹底解説

    5D AGO

    【2025年最新】急性期入院医療の機能評価と診療報酬改定への影響 - 総合入院体制加算と急性期充実体制加算の徹底解説

    令和7年度第12回入院・外来医療等の調査・評価分科会において、急性期入院医療の機能評価について重要な議論が行われました。DPC制度における急性期機能の評価体系の見直しと、総合入院体制加算・急性期充実体制加算の実績要件の課題が明らかになっています。人口減少が進む地域での医療提供体制の確保と、医療機関の機能分化をどのように進めるべきかが、次期診療報酬改定の重要な論点となっています。 本メールマガジンでは、急性期入院医療の現状と課題を包括的に解説します。急性期一般入院料1算定病院における救急搬送受入実績の格差は、年間1,000件未満から4,000件以上まで大きな幅があります。総合入院体制加算と急性期充実体制加算では、心臓血管外科手術の対象要件が異なり、実績を満たす病院の割合にも大きな差が生じています。なお、両加算は同時に算定することができず、医療機関はどちらか一方を選択する必要があります。人口20万人未満の二次医療圏では、地域の救急搬送を一手に担いながらも、実績要件を満たせない医療機関が存在します。これらの現状を踏まえ、地域の実情に応じた評価体系の構築が求められています。 急性期医療機関の機能分化と評価指標の現状 急性期入院医療の評価において、一般的な急性期機能と拠点的な急性期機能の区別が重要な視点となっています。DPC制度では機能評価係数IIによって、各病院が目指すべき医療と地域の実情に応じて求められる機能を評価してきました。救急搬送件数、全身麻酔手術件数、総合性の3つの観点から、医療機関の急性期機能を評価する枠組みが構築されています。 急性期一般入院料1算定病院の救急搬送受入実績を見ると、医療機関によって大きな差があります。年間1,000件未満の病院から4,000件以上の病院まで幅広く分布しており、単に急性期一般入院料1を算定しているだけでは、医療機関の機能を十分に評価できない状況です。救急搬送受入件数が増えるにつれて、許可病床数、病床当たり医師数、全身麻酔手術件数、夜間・時間外救急患者数も増加する傾向が明確に表れています。 医業収支の観点から見ると、救急搬送受入件数による差が顕著です。救急搬送受入件数1~1,199件の病院では医業利益率が-0.7%、1,200~1,999件では-2.0%、2,000~3,999件では-1.9%、4,000件以上では-2.3%となっており、救急搬送受入件数が多い病院ほど医業利益率が低い傾向にあります。これは、高度な急性期医療の提供には多大な医療資源の投入が必要であることを示しています。 医療資源投入量の観点からも、1患者1日当たり包括範囲出来高点数は、救急搬送受入件数が多い病院ほど高くなる傾向にあり、医療の密度と救急対応能力には相関関係が認められます。DPC標準病院群においても、救急搬送受入件数の多い病院ほど、包括点数に対する包括範囲出来高点数の比率が高くなっています。 診療情報・指標ワーキンググループでは、「DPC制度において、入院基本料と総合入院体制加算、急性期充実体制加算との関係を組み合わせて、新たな病院群の定義を検討することもあり得る」との意見が出されました。また、「全身麻酔手術で必ずしも医療資源投入量が高いとは言えないものや、脊椎麻酔である程度点数の高いものもある」という指摘もあり、評価指標の見直しが検討されています。 総合入院体制加算の要件と実施状況の詳細分析 総合入院体制加算は、24時間総合的な入院医療を提供できる体制を評価する加算として位置づけられています。加算1から3までの3区分があり、それぞれ異なる施設基準と実績要件が設定されています。7診療科(内科、外科、整形外科、脳神経外科、精神科、小児科、産科または産婦人科)の標榜と入院医療の提供が基本要件となっています。ただし、地域医療構想調整会議で合意を得た場合に限り、小児科、産科又は産婦人科の標榜及び当該診療科に係る入院医療の提供を行っていなくても良いという例外規定があります。 総合入院体制加算1の要件は最も厳格です。救命救急センターまたは高度救命救急センターの設置、全身麻酔手術件数年間2,000件以上、人工心肺を用いた手術および人工心肺を使用しない冠動脈・大動脈バイパス移植術40件/年以上などが求められます。悪性腫瘍手術400件/年以上、腹腔鏡下手術100件/年以上、放射線治療4,000件/年以上、化学療法1,000件/年以上、分娩件数100件/年以上といった幅広い実績要件があります。 総合入院体制加算2と3では、要件が段階的に緩和されています。加算2では全身麻酔手術件数1,200件以上、救急搬送件数2,000件以上、加算3では全身麻酔手術件数800件以上となっています。手術等の実績要件についても、加算2では少なくとも4つ以上、加算3では少なくとも2つ以上を満たすことが求められています。 実績要件を満たす割合を見ると、総合入院体制加算1届出病院では3割の病院が全ての要件を満たしており、全ての病院が7項目以上の要件を満たしていました。総合入院体制加算3届出病院では、消化管内視鏡手術や心臓血管外科手術要件を満たしている割合が他の加算届出病院と比較して低く、実績要件を満たす数が少ない病院の割合が高い状況です。具体的には、消化管内視鏡手術600件を満たす病院は37%、心臓血管外科手術100件を満たす病院はわずか14%にとどまっています。 重要な点として、総合入院体制加算を届け出ている病院は、急性期充実体制加算の届出を行うことができません。この排他的関係により、医療機関は自院の機能と地域のニーズを踏まえて、どちらの加算を選択するか慎重に判断する必要があります。 急性期充実体制加算の特徴と精神科医療体制の課題 急性期充実体制加算は、高度な急性期医療を提供する体制を評価する加算として創設されました。急性期一般入院料1の届出と重症度、医療・看護必要度IIの使用が前提条件となっています。救命救急センターまたは救急搬送件数2,000件/年以上、全身麻酔手術2,000件/年以上(うち緊急手術350件/年以上)が基本要件です。総合入院体制加算の届出を行っていないことも要件の一つとなっており、両加算の同時算定はできません。 手術実績要件は総合入院体制加算よりも詳細に設定されています。悪性腫瘍手術400件/年以上、腹腔鏡下または胸腔鏡下手術400件/年以上、心臓カテーテル法手術200件/年以上、消化管内視鏡手術600件/年以上、心臓胸部大血管手術100件/年以上のうち5つ以上を満たす必要があります。化学療法については、外来腫瘍化学療法診療料1の届出と、外来実施割合6割以上という条件が付されています。 精神科医療体制については、両加算ともに課題が明らかになっています。総合入院体制加算1届出病院では全ての病院で精神科の入院医療を提供していましたが、その他の加算届出病院では、精神科の入院医療提供割合が小児科(91-100%)や産婦人科(92-100%)と比較して、精神科は29-83%と低い傾向にあります。 精神科領域患者の入院実態調査によると、摂食障害や依存症の治療のため予定入院で精神病床に入院させた経験のある医療機関は46.9%、自殺企図のために救急外来から直接精神病床に入棟させた経験のある医療機関は53.9%存在しました。また、内科的理由などで精神科領域患者を精神病床に入院させた経験のある医療機関も、予定入院で47.9%、救急外来からの直接入棟で26.3%存在しています。 精神病床数の推移を見ると、総合入院体制加算と急性期充実体制加算の算定病院における精神病床届出数は、令和2年の3,946床(84施設)から令和7年の4,191床(96施設)へと増加傾向にあります。しかし、同一の病院で経年比較すると、特に急性期充実体制加算を届け出た病院で精神病床届出施設数がやや減少する傾向(48施設から45施設へ)が見られ、総合病院における精神科医療提供体制の維持が課題となっています。 地域特性に応じた評価体系の課題と現状 人口20万人未満の二次医療圏における医療提供体制には特有の課題があります。161の二次医療圏のうち、救急搬送受入件数2,000件を超える病院を持つ医療圏は91医療圏、年間1,500件を超える病院を持つ医療圏は113医療圏、年間1,200件を超える病院を持つ医療圏でも127医療圏にとどまっています。人口規模が小さい医療圏では、地域シェア率が高くなる傾向があり、患者の流出率が40%を超える医療圏

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  7. 令和8年度診療報酬改定の行方:入院医療評価の7つの重要論点と医療機関が準備すべき対応策

    6D AGO

    令和8年度診療報酬改定の行方:入院医療評価の7つの重要論点と医療機関が準備すべき対応策

    令和7年9月11日、中央社会保険医療協議会の入院・外来医療等の調査・評価分科会は、令和8年度診療報酬改定に向けた重要な議論を行いました。本分科会では、診療情報活用の高度化やDPC制度の見直し、地域包括ケア病棟の機能評価など、今後の入院医療の方向性を決定づける7つの重要テーマが検討されました。医療機関は、これらの議論内容を理解し、早期に対応準備を進める必要があります。 今回の検討では、急性期医療の評価指標の再構築、高齢者医療への対応強化、重症度評価の適正化、医療従事者の働き方改革、多職種協働の推進など、医療提供体制の根幹に関わる内容が議論されました。特に注目すべきは、人口減少地域における医療機能の維持、内科系疾患の適切な評価、B項目測定の効率化など、現場の課題に即した具体的な改善策が示された点です。医療機関経営者は、これらの変化を的確に捉え、自院の機能と役割を再定義し、地域医療における位置づけを明確化する戦略的対応が求められます。 急性期医療の新たな評価軸:地域シェア率と人口規模への配慮 診療情報・指標等作業グループは、急性期医療の評価指標として、従来の救急搬送受入件数や全身麻酔手術件数に加え、地域シェア率という新たな視点を提示しました。地域シェア率とは、当該医療機関の年間救急搬送受入件数を所属二次医療圏内の全医療機関の合計で除した割合です。この指標により、20万人未満の二次医療圏において、救急搬送件数は少なくとも地域医療の中核を担う病院の存在が明らかになりました。 総合入院体制加算と急性期充実体制加算の要件統一についても議論が進展しました。両加算の心臓血管外科手術の対象Kコードと実績件数が異なる現状に対し、統一化の必要性が指摘されています。特に、人口が少ない地域での要件緩和が検討され、地域の実情に応じた柔軟な基準設定が求められています。こども病院や離島医療機関など、特殊な医療機関についても、その機能に応じた個別評価の必要性が認識されました。 DPC制度の精緻化:在院日数分布と点数設定方式の見直し DPC/PDPS等作業グループは、現行制度の課題として、点数設定方式と実際の在院日数分布の乖離を指摘しました。多くの診断群分類において、平均在院日数が中央値を上回る正の歪度を有する分布となっており、現行の平均在院日数を基準とした第Ⅱ日設定の妥当性に疑問が投げかけられています。在院日数の中心傾向の指標として、平均値よりも中央値の採用が適切である可能性が示唆されました。 再転棟ルールについても、7日以内の再入院を一連の入院とみなす現行制度の運用実態が検証されました。持参薬使用による診療報酬上の二重負担問題も指摘され、適切なコスト評価の必要性が確認されています。地域医療係数における医師派遣機能の評価では、特定機能病院の基礎的基準との整合性を図る方向で検討が進められています。 包括期医療の機能分化:地域包括医療病棟と地域包括ケア病棟の役割明確化 地域包括医療病棟は、70歳以上の高齢者が多く、要介護度の高い患者、認知症を有する患者の割合が急性期一般入院料4〜6と比較して高い実態が明らかになりました。入院患者の上位疾患は、その他の感染症(真菌を除く。)、肺炎等、誤嚥性肺炎、体液量減少症、股関節・大腿近位の骨折、腎臓又は尿路の感染症、胸椎・腰椎以下骨折損傷などで、内科系疾患が中心です。内科系疾患では包括内の出来高点数が相対的に高く、請求点数には反映されにくい構造的課題が存在しています。 救急搬送受入件数以外の機能評価指標として、下り搬送等受入件数、直接入院、緊急入院、在宅患者緊急入院診療加算、協力対象施設入所者入院加算、介護保険施設等連携往診加算の算定回数などが検討されました。これらの指標は施設によってばらつきがあり、一定程度の幅で分布していることから、複数の指標を組み合わせた総合的な評価の必要性が示唆されています。予定・緊急入院別、手術の有無別による医療資源投入量の差異も確認され、患者群別の評価体系構築の可能性が示されました。 重症度、医療・看護必要度の適正化:B項目測定の効率化とA・C項目の見直し B項目の測定については、入院初日にB得点が3点以上である割合が、特定機能病院や急性期一般入院料1で低く、急性期一般入院料2〜6や地域包括医療病棟で高いという二極化が確認されました。B項目は要介護度と相関し、入院や手術から4〜7日後には点数の変化が少なくなる傾向が明らかになりました。この結果を踏まえ、術後7日目以降や内科系症例での入院4日目以降における測定間隔の緩和が提案されています。 内科系症例におけるA・C項目の課題も浮き彫りになりました。内科系症例では外科系疾患と比較してA・C項目が一定点数以上となる割合が低く、重症度、医療・看護必要度がつきにくい実態があります。特に感染症患者では、抗菌薬がA項目で評価されないため、救急搬送や緊急入院の割合が高いにもかかわらず適切な評価がされていません。内科学会からの提案を踏まえ、免疫抑制剤の増点や緊急入院の評価強化などが検討されています。 働き方・タスクシフト/シェア:医療従事者の負担軽減に向けた方向性 働き方改革とタスクシフト/シェアについては、本分科会の議題として取り上げられ、医療従事者の負担軽減に向けた検討が行われました。医師の時間外労働規制の本格施行を控え、各医療機関では業務の効率化と役割分担の最適化が急務となっています。特定行為研修を修了した看護師の活用、薬剤師の病棟業務の拡充、リハビリテーション専門職の活動範囲の拡大など、様々な職種へのタスクシフト/シェアの推進が、今後の医療提供体制の持続可能性を確保する上で重要な課題として認識されています。 分科会では、タスクシフト/シェアを単なる業務移管ではなく、各職種の専門性を最大限に活かした協働体制の構築として捉える必要性が示唆されました。これにより、医師の負担軽減だけでなく、医療の質の向上と患者満足度の向上を同時に実現することが期待されています。各医療機関においては、自院の状況に応じた具体的な実施計画の策定と、段階的な導入が求められています。 病棟における多職種でのケア:ADL評価指標の統一化に向けた議論 病棟における多職種でのケアについては、患者の状態を的確に把握し、適切なケアを提供するための共通評価指標の必要性が議論されました。現在、ADL評価にはB項目、Barthel Index、日常生活機能評価、FIMなど複数の指標が混在しており、職種によって評価結果が異なることもあるため、多職種協働における共通認識の評価として、患者ケアや退院支援に役立つADL指標を整備すべきとの意見が出されました。 B項目については、「重症度、医療・看護必要度を把握し、適正な職員の配置数の実現を目指し、看護の必要性及び看護の量(療養上の世話)を測る指標」として施設基準通知に明記されており、人員配置、入退院支援、転倒・転落判断等の病棟マネジメント指標としての活用事例が紹介されました。今後、統一的な評価指標の導入により、看護師、リハビリテーション職、介護職等が共通認識を持って患者ケアにあたることが可能となることが期待されています。 大学病院における逆紹介割合の実態調査:地域医療連携の現状把握 全国医学部長病院長会議による調査では、82大学病院本院を対象に令和7年6月診療実績における逆紹介割合の実態調査が実施されました。78病院から回答を得て(回収率95.1%)、大学病院における逆紹介の現状が把握されました。逆紹介率の向上は、大学病院が高度医療機関としての機能を適切に発揮し、地域医療機関との役割分担を推進する上で重要な指標となっています。 今回の調査結果を踏まえ、各大学病院では地域医療機関との連携強化に向けた取り組みの必要性が確認されました。逆紹介を促進するための体制整備として、地域連携室の機能強化、連携医療機関との定期的な情報交換、逆紹介後のフォローアップ体制の構築などが今後さらに重要となることが示唆されています。地域医療支援病院としての機能評価においても、逆紹介率は重要な評価指標として位置づけられる見込みです。 まとめ:令和8年度改定への

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  8. 大学病院の逆紹介割合調査で判明した地域医療連携の課題と改革への道筋

    SEP 19

    大学病院の逆紹介割合調査で判明した地域医療連携の課題と改革への道筋

    令和7年9月11日に公表された全国医学部長病院長会議による調査は、大学病院における逆紹介の実態を明らかにした。全国82大学病院を対象に実施され、78病院から回答を得た本調査(回収率95.1%)は、令和7年6月の診療実績を分析している。調査結果は、診療報酬改定における外来機能分化の推進という政策目標に対し、大学病院が直面する構造的課題を浮き彫りにした。 本調査により、診療科別逆紹介割合の平均値は48.3‰となり、23診療科中4科が平均値で減算基準30‰を下回ることが判明した。形成外科系(8.7‰)、麻酔科系(6.4‰)、リハビリテーション系(8.7‰)、精神科系(24.6‰)の4診療科は、いずれも専門性の高い継続的な医療管理を要する特性を持つ。再診患者の88%が月1~2日の受診にとどまる一方で、外来化学療法患者が2.2%、高額医薬品使用患者が4.2%、指定難病患者が6.7%を占めており、これらの患者群が大学病院での継続診療を必要としている実態が明らかになった。大学病院からの逆紹介が困難な理由として、希少疾患や複雑な合併症などの疾患要因、患者の不安感などの患者側要因、地域における専門医不在などの医療提供体制の問題が挙げられている。 診療科別逆紹介割合の実態と基準未達成の背景 診療科別の逆紹介割合は、診療科の特性により大きな格差が生じている。循環器系(97.2‰)や整形外科系(84.6‰)が高い逆紹介割合を示す一方、形成外科系、麻酔科系、リハビリテーション系、精神科系の4診療科は平均値で減算基準30‰を大きく下回った。さらに、中央値で見ると、これら4診療科に加えて血液内科系、放射線系、皮膚科、産婦人科系の4診療科も基準を下回っており、合計8診療科で逆紹介が困難な状況が明らかになった。 形成外科系の逆紹介割合が8.7‰にとどまる背景には、術後の長期フォローアップが必要な症例が多いことがある。乳癌術後の乳房再建や、皮膚潰瘍・リンパ浮腫などの慢性疾患は、専門的な管理技術を要し、地域医療機関への紹介が困難である。麻酔科系(6.4‰)においては、帯状疱疹後神経痛や癌性疼痛など、高度な疼痛管理を必要とする患者が集中している。 リハビリテーション系(8.7‰)は、運動器疾患や脳血管障害後のリハビリテーションなど、継続的かつ専門的な介入を要する。精神科系(24.6‰)では、うつ病や統合失調症などの重症例が多く、病状の不安定さから地域医療機関への紹介にリスクを伴うケースが少なくない。これら4診療科に共通するのは、高度な専門性と継続的な医療管理の必要性であり、地域医療機関での対応が困難な患者層を抱えているという構造的な問題である。 再診患者の受診パターンと高額医療の集中 再診患者の受診日数分析により、月1~2日の受診が全体の88%を占めることが明らかになった。月1日の受診が70%、月2日が18%となっており、多くの患者は月1回程度の定期受診で管理されている。一方で、月3日が6%、月4日が3%、月5日以上が3%となっており、頻回受診を要する患者は全体の一部にとどまるが、これらの患者群には特徴的な疾患構成が見られる。 外来化学療法患者(1大学病院平均507人)と高額医薬品使用患者(同978人)を合わせると、再診実患者数の6.4%を占める。外来化学療法は、肺癌、乳癌、大腸癌などの悪性腫瘍患者が中心であり、レジメンに応じた定期的な通院を必要とする。高額医薬品使用患者には、生物学的製剤を使用する関節リウマチや炎症性腸疾患、分子標的薬を使用する血液疾患などが含まれる。 指定難病患者(1大学病院平均1,519人)は再診実患者数の6.7%を占め、パーキンソン病、多発性硬化症、全身性エリテマトーデスなどの疾患が上位を占める。これらの疾患は、専門的な診断・治療技術を要し、病状の変化に応じた細やかな薬剤調整が必要となる。生物学的製剤使用患者(同537人、2.4%)、小児慢性特定疾病患者(同219人、1.0%)、治験患者(同73人、0.3%)も、大学病院での継続的な管理が不可欠な患者群である。 逆紹介を阻む3つの構造的要因 大学病院からの逆紹介が進まない要因は、疾患・医療内容の要因、患者側の要因、その他の要因の3つに大別される。 疾患・医療内容の要因として最も重要なのは、希少疾患や複雑な合併症例の存在である。血液疾患、神経難病(ALS、多系統萎縮症など)、移植後の患者、小児がん患者などは、高度な専門性を要し、地域医療機関での対応が困難である。外来化学療法中の患者や、高額薬剤・生物学的製剤使用患者も、薬剤の副作用管理や効果判定に専門的知識を要する。臨床試験・治験実施中の患者は、プロトコールの遵守と安全性確保の観点から、実施医療機関での継続診療が必須となる。 患者側の要因では、大学病院への安心感・信頼感から「見捨てられるのでは」という不安を抱く患者が多い。症状が安定しても再発・悪化への不安から継続通院を希望し、逆紹介の受け入れを拒否するケースが見られる。複数診療科に通院している患者では、通院先が増えることへの負担感から拒否される場合もある。医療費の観点からも、大学病院でまとめて受診した方が患者負担が少ないという経済的インセンティブが働いている。 その他の要因として、地域における専門医や診療科の不在という医療提供体制の問題が大きい。身寄りがない、後見人がいない、経済的困窮などの社会的要因も逆紹介を困難にしている。受診態度に問題がある患者(クレーマー等)については、地域医療機関が受け入れを躊躇するケースもある。 政策的対応と今後の方向性 本調査結果は、診療報酬による誘導だけでは解決困難な構造的課題の存在を示している。平均値で減算基準を下回る4診療科、さらに中央値で基準を下回る8診療科については、疾患特性や専門性を考慮した基準の見直しが必要である。高額医薬品使用患者や外来化学療法患者については、地域医療機関との連携体制構築に向けた診療報酬上のインセンティブ設計が求められる。 患者の不安解消に向けては、逆紹介後も大学病院がバックアップする体制の明確化が重要である。地域医療機関の専門性向上に向けた教育・研修プログラムの充実、遠隔診療を活用した専門医によるサポート体制の構築など、医療提供体制の強化が不可欠である。社会的要因を抱える患者に対しては、医療ソーシャルワーカーの活用や地域包括ケアシステムとの連携強化が必要となる。 大学病院の外来機能を真に高度急性期医療に特化させるためには、診療報酬による経済的誘導に加え、地域医療提供体制の整備、患者の意識改革、医療機関間の連携強化という多面的なアプローチが必要である。本調査結果を踏まえ、令和8年度診療報酬改定において、より実効性の高い制度設計が行われることが期待される。 まとめ 全国78大学病院を対象とした逆紹介割合調査により、平均値で4診療科、中央値で8診療科が減算基準を下回り、高額医療を要する患者が大学病院に集中している実態が明らかになった。逆紹介が進まない背景には、疾患の専門性、患者の不安、地域医療体制の不備という3つの構造的要因が存在する。今後の診療報酬改定においては、診療科特性を考慮した基準設定、地域連携体制の強化、患者の不安解消に向けた制度設計が求められる。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

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人を尊重して話を聞かせていただく「アクティブリスニング」エバンジェリスト『自己満足ではない「徹底的に聞く」技術』著者赤羽雄二氏公認|『アクションリーディング』読書会開催|仲間と一緒に成長できる「親子のクオリティタイム」「最速ロールプレイング」「A4メモ書き」などのグループ運営|株式会社miiboのmiibo Designer|一般社団法人 遠隔健康医療相談適正推進機構 正会員 【配信内容】 配信URL;https://www.daitoku0110.news 3つの内容を配信中 1. 岡大徳 アクティブリスニングなどについて配信しています。 ブログなどの内容はこちら ・https://daitoku0110.com ・https://daitoku0110.jp ・https://daitoku.site/ 2. miiboDesigner 株式会社miiboのmiiboDesignerの岡大徳がmiiboについての新しい情報や気になった情報、ノウハウなど話していきます。 miiboデザイナーとは、miiboの会話の精度があがるように設計をしていく人のことです。 ・プロフィールサイト:https://daitoku0110.net/ ・miiboガイド(初めての人はこちらから):https://daitoku0110.net/miibo/ ・miibo情報:https://daitoku0110.net/miibo-information/ ・スライド共有サービスドクセル:https://www.docswell.com/tag/miibo 3. ナレッジマネジメント 岡大徳のNotesをもとにナレッジマネジメントの一環として配信しています。 岡大徳のNotes:https://daitoku0110.wiki 【Clubhouse】 https://www.clubhouse.com/@daitoku0110 ・『アクションリーディング』行動が変わり人生が変わる読書会 https://bit.ly/38uMBJP ・親子のクオリティタイム https://bit.ly/3Rf8X6z 【Peatix】 https://peatix.com/user/1425712/ ・実践『アクションリーディング』自分を変える行動読書 https://action-reading.peatix.com/ 【Facebook】 https://ms-my.facebook.com/oka.hironori.1 グループ ・実践『アクションリーディング』自分を変える行動読書:https://www.facebook.com/groups/practiceactionreading ・実践 最速ロールプレイング:https://www.facebook.com/groups/551556716178832 ・実践『ゼロ秒思考』A4メモ書き:https://www.facebook.com/groups/notewriting 【Unstoppable Domains】 https://ud.me/daitoku0110.x 【ドクセル】 https://www.docswell.com/user/daitoku0110 www.daitoku0110.news