バレーボールに話しかけよう

伊舎堂 仁

短歌

  1. 6d ago

    真夜中に出かけて次の真夜中に帰ってきてちょっとだけ眠った/篠原仮眠

    歌集『banana flavored chewing gum』 真夜中に出かけて次の真夜中に帰ってきてちょっとだけ眠った コンビニの中ではぐれてアーモンドチョコの辺りを探しに行った 漫才が終わった頃にやってくる三人目から二人で逃げる  クリスマスツリーを飲んでみんなから嫌われて死ぬまで光ってた  星の色なんて考えたことないや 手 繋いだまま 泳ぐ 方法  約束をみんな守って、約束が慌てて赤くなるのを見てた  公園の遊具が塗り直されている いま子どもたちは学校だから お土産を渡す相手が少ないと詳しくなれないねお土産には ライオンのお腹のあたりゆれていてなんか不安になる早送り  階段を発明したら天国へ行ける発明した階段で  ⚫︎ ミスド よく考えたら好きじゃなかった あなたを さっきまで好きだった  ⚫︎でもきみでなくてもよかったということ暮れる川辺でいつか話そう/山中千瀬『死なない猫を継ぐ』    ⚫︎ そっくりそのままきみにあげるよ 嘘つくよ 死なない猫になって向かうよ/初谷むい『わたしの嫌いな桃源郷』  ⚫︎ああ君に飽きたくないな ラップされラーメン屋のリモコン不思議そう/武田穂佳『江古田文学103号』 ⚫︎ オープンカー あなたはひどい悪人で雨の日もサングラスのギャング 公園の遊具が塗り直されている いま子どもたちは学校だから  からっぽの檻は荒野に捨てられてとっても風に詳しくなった  満月に話し相手はいなかった 発祥の地で廃れた踊り  ⚫︎ はじめからここに来ようとしたわけじゃないなら落ち葉どうしてだろう    ↪︎呼び捨てにされる準備をする前に燃える聖堂どうしたらいい/藤本玲未『テリーヌの夢』 ⚫︎ 短歌

    真夜中に出かけて次の真夜中に帰ってきてちょっとだけ眠った/篠原仮眠
  2. Jul 6

    おこる? って訊かれてさびしかったこと心に柿の黒点ほどに/笠木拓

    歌集『オランジェット』 カーテンがあるからでかいバスは好きうまれるまえの竜のまどろみ  雪かきが引き連れてくる空腹は魔獣でそれに食わせるお餅  スコップがすこし曲がって一月の後部座席にそのまま暮らす きみといるといつもかもめが背景を奥へゆく なぜかな さよなら  夕凪の波打ち際は去るためにあるからやっとふたりは去った  僕にまだ敵に回せる世界すらなかった春の夜のりんご飴  一周忌で来たと寿司屋に答えればほんとうに祖母はもういない  みるままにすなば塗りつぶした雨のそれからだった痛かったのは もうだれに泣いていいかと問うこともなくてアロエの欠けた切っ先  なーーんだ嘘なんだって笑いあう再会までは傘かりとくね  おこる? って訊かれてさびしかったこと心に柿の黒点ほどに 珈琲を飲んでからする夜歩きは言葉がむしろろころこ眠い  よけたけど酔っていたのですこし踏むぎんなんの実のださいにおいだ  チャイ注げば薪(たきぎ)のにおいにんげんとお酒を飲んで遊んだあとの  死後もあるいは余生だろうか回りくるおすしの上の魳(かます)きときと  ⚪︎ 口堅い運転手など連れてまだどこかにいる気がする 後白河  お姉ちゃんみたいなひとがまたひとり人妻になる 縁石をゆく(笠木拓『はるかカーテンコールまで) ⚫︎ 大丈夫ちゃんと呪いだ僕の手は遺書のつもりで書かなくたって   「2013年感」  あまり会ひに来てくれないと(ゆふぞらだ)つよくなんども叱責されて/藪内亮輔『海蛇と珊瑚』 おしばなの栞のやうなきみの死に(嘘だ)何度もたちかへる夏/吉田隼人『忘却のための試論』 ⚫︎ つぎは夜景見せてって手を振ってから改札を抜けざまにブロック   ↪︎ 砂糖までチカチカなのかこの星は宇宙にハブられた安い星/篠原仮眠『banana flavored chewing gum』の「ハブられた」 もなかアイス おまえを包むぎんいろの闇をゆびもて裂くときがきた  ↪︎ 銅と同じ冷たさ帯びてラムうまし。どの本能とも遊んでやるよ/千種創一『砂丘律』

    おこる? って訊かれてさびしかったこと心に柿の黒点ほどに/笠木拓
  3. Jun 27

    傾くとわたしの海があふれ出す いとこのようなやさしさはいや/田中槐『ギャザー』

    田中槐『ギャザー』   13首選 ⚫︎ 午前中わたしは爬虫類であるゆっくり瞬きくらいはできる  傾くとわたしの海があふれ出す いとこのようなやさしさはいや  逃げてゆく君の背中に雪つぶて 冷たいかけら わたしだからね  村へ行く一本道をぱたぱたとカブ走らせて、まさるくんったら  おとうとの独楽しゅんしゅんと止まるまで見てはいけない喧嘩はつづく  「ピコ秒で測定不能」君からの愛はもはやもはや…… 立つわたし、いきなり語り出すわたし ウラル=アルタイ語圏のわたし  わたくしは個である。ゆえに類であるあなた方とは美(は)しく繋がる  受話器の向こうで君は赤い目をしていたはずさ 蝶々のテレカ  幾筋もうしろめたさをひきずってO型だから不幸なあなた  くっくっと春の笑いのぎこちなさ赤い鳥居はどこまで続く  どんよりと女ら群れる食卓の赤絵の皿に満たすポタージュ 夜の湖(うみ)ほのかに光る垂線にそってわたしの斧沈みゆく  ● ちなみに未来の人は未来の会で「当たると思ってなくてびっくりしましたうんぬんかんぬんどうたらこうたら」をやると、田中槐さんに叱られます。あなたのその発言をきく時間は、だれのなんの役にも立たない。もちろんわたしもかつて叱られた一人なんですが。 mymhndさん ツイート 2015.5.25 会場評は、主水透、田丸まひる、江田浩司、戸田響子、嶋稟太郎、遠野真、服部真里子、桜井夕也、鈴木麦太朗、本条恵、島なおみ、門脇篤史、山階基。「当たると思っていませんでしたもにゃもにゃタイム」が一切なくていいな。結社で鍛えられてる感。(結社じゃなくて槐さんかも) mymhndさん ツイート 2016.8.21 当時の伊舎堂「こう言える人ってのは絶対におもしろい(怖いからおれは気をつけよう)」 ● 田中槐さん 2026.5.13 X(Twitter)でのツイート 最近、わたしの第一歌集『ギャザー』を国会図書館で(電子データで!)読んだという若者に続けて会って、本当に申し訳ない気持ちになっている。餅まきみたいにばらまいていた昔のわたしを叱りに行きたい… ⚪︎ 何が申し訳ないって、電子データでは帯は読めないんですよね。あの歌集は柄谷行人の帯文にいちばん価値があるので😅 ⚫︎ 📝録音に際してのメモ 逃げてゆく君の背中に雪つぶて 冷たいかけら わたしだからね   ↪︎ 「冷たいかけら」といふ、一見不要にみえる説明の語が、「わたしだからね」と対応することで、息をふきかへす。(岡井隆) ⚪︎ どんよりと女ら群れる食卓の赤絵の皿に満たすポタージュ  ↪︎ 第二歌集の『砂の卵』の〈質感を伴った嫌さ〉、エロティックさへ発展するような感じ ⚪︎ 哲学の教授と帰る東横線ヤスパースとアーレントのように それぞれのダークマターに満たされて恋虫たちはさめざめと泣く 眠る前少しの読書 現実と夢のはざまに「千のプラトー」    「退屈な器」の歌を含め、このあたりの歌に短歌の読者たちはムラっとこなかったのかな、って感じ ブッキッシュ、ペダンチック、生き物、虫、肩甲骨、とかの人間の部位の名前…… ⚪︎ 抒情の歌はあるし、認識の歌もある。しかし、田中槐の歌の新鮮さは、認識と情が対立的に交差する一瞬に、そのいずれでもないような何かをとらえようとしているところにある。          ーーーーー柄谷行人

    傾くとわたしの海があふれ出す いとこのようなやさしさはいや/田中槐『ギャザー』
  4. Jun 8

    友達が産業医と同じ笑顔で、どこかの島へ行こうよと言う/𠮷田恭大

    𠮷田恭大『フェイルセーフ』(角川書店) ⚫︎ 以下、音声メモ ⚫︎ 伝聞でいいからときに近況を聞かせてほしい、ほしい、そうです   ⚫︎ トーストいたしますかっていう してもらう サブウェイなのにもう外が夜  ⚫︎ 歳月は、それからここにある力 誰かの締めた蛇口の固さ ⚫︎ 店内と同じ音楽がきこえる、イオンの屋上の駐車場  ⚫︎ 電池を捨てる箱、トナーを捨てる箱、仕事をやめるという選択肢  ⚫︎ 友達が産業医と同じ笑顔で、どこかの島へ行こうよと言う ⚫︎  ↪︎ 結婚をすると会社が二万円くれるらしくて考えている(『光と私語』) ⚫︎ ✏️自力の海、より人から言われた「島」に光がある ⚫︎ 少しでも海が見えれば海辺だと思う 明るい朝に 窓辺に  ⚫︎ 海沿いに生まれ、港も空港も海辺にあると信じてやまず  ⚫︎ 欠航の、港に船が居なければきっと向こうに居るかのような ⚫︎ 川べりに出て海の方まですこし歩く 仕立てた船を見送るように ⚫︎ ある程度まではフィジカルさえあればいけるレベルの就労だった   ⚫︎   端的にいうならコンプレックスをカネに換えたいひとばかり来る 中島裕介『polylyricism』 ⚫︎   終盤を思い返せば集中が切れて気持ちが作れなかった ⚫︎ 寝る前に 真夜中のフェリーの中で百円入れてやる上海Ⅱ ⚫︎ 気持ちの上では毎日泣きつかれて眠る。そうするとよく眠れるという ⚫︎ 晴れているけど強い風 にふかれながら およそ一駅分を歩いた   ⚫︎ 終点で降りると夜のバス停で、夜のバスがそこから引き返す  ⚫︎  ↪︎「ワイヤレスイヤホンを耳から外し手元に仕舞うまでを見ている」(142ページ)と快感が近い ⚫︎ 「自分は何故、短歌をやっていると思いますか?」 ⚫︎ 「自分の短歌の良さを、短歌を知らない人に対してどう説明しますか?」 ⚫︎ 「フェイルセーフ」のサイズで読むほうが『非定型と提携』はおもしろい気がする ⚫︎ 付箋とかつけて読む感じなのか? (そういう人もいるか) ⚫︎ いくつもの呼び名がついて世界とは犬の走った領域だろう 𠮷田恭大『光と私語』 ⚫︎  ……みたいな誇り高い歌、カメラが空を撮って終わる感じの歌 はなりをひそめる ⚫︎ 皿だったそれが買われてきた日のことを二人で思い出、してから捨てた  #短歌

    友達が産業医と同じ笑顔で、どこかの島へ行こうよと言う/𠮷田恭大
  5. Jun 5

    音楽が指紋でだめになるなんてロマンチックな所有のはなし/岡野大嗣

    岡野大嗣『夜なのに夜みたい』 ⚫︎ 音楽が指紋でだめになるなんてロマンチックな所有のはなし ⚫︎ 動物の絵本の大きい動物は途中かなしい出来事にあう  ⚫︎ 第二部は十年後から始まって互いの夜を思う土曜日  ⚫︎  鳩にエサあげるゲームが売れすぎて続編は街に雪を降らせる 神澤保仁『マセキ短歌会VS早稲田短歌会』「題詠 雪」 ⚫︎ ハンドドリップ それをバスケの美しい反則の名と思うひととき  ⚫︎ ↪︎ ゆぶね、って名前の柴を飼っていたお風呂屋さんとゆぶねさよなら/岡野大嗣『たやすみなさい』 ⚫︎ もう全部おととい終わりましたよと常温の水をふるまわれながら  ⚫︎ 雑貨屋で家具を見ています 前の日 医院でレントゲンを見ています  ⚫︎ 教習所のDVDが流す街 みんなの故郷みたいな光 ⚫︎ 領収書の宛名に今の感情を伝えてみれば書いてもらえる  ⚫︎  ↪︎ コンセントの大きい穴にこころを開き小さい穴にこころを許す/斉藤斎藤『人の道、死ぬと町』 ⚫︎ メールには返さなかったひとことが麦わら帽子として飛ばされる  ⚫︎ わたしのことをわたし以上に喜んだり悲しんだり それをわたしがやる  ⚫︎ 短歌

    音楽が指紋でだめになるなんてロマンチックな所有のはなし/岡野大嗣
  6. May 18

    花束で顔を隠して微笑んだ絵画のような春の終わりに/岐阜亮司『フラグメント』

    死ぬ日だとしても読める、と思う短歌 ⚫︎ ゲームセンター跡地でちょっと彼女らが靴下留めをひっぱった夏 ⚫︎ 夏の夜に光りつづける青白い電話ボックスを抱きしめに行く ⚫︎ 十八歳の聖橋から見たものを僕はどれだけ言えるだろうか ⚫︎ さりげなくさしだされているレストランのグラスが変に美しい朝 ⚫︎ たくさんの手紙が欲しい日があってそういうときは寝てしまいます ⚫︎ 「何処へゆくリフトでしたか」中空にたなびいている砂の足跡 ⚫︎ 今朝(けさ)きみが食べるレタスやトマトには僕のかけらもまぎれこまない ⚫︎ 雪になる一歩手前のまなざしが雑木林で手を振っている ⚫︎ ほんとうはありとあらゆるひとたちが僕はしんじつ好きでした ⚫︎ 僕たちが知らない時代を君に似た少年がてくてく歩くなんてね 早坂類『風の吹く日にベランダにいる』 ⚫︎ 「短歌という伝統詩は、どれほど新しくてもどこかに懐かしさを感じるものだ」 「ぼくは、俵、穂村、加藤に少し遅れて早坂類が登場したとき、この懐かしさがないことに違和感をおぼえた。」 荻原裕幸「悲鳴の気配 早坂類歌集『風の日にベランダにいる』に寄せて」 (タイトル、ママ) (短歌ヴァーサス No.9 2006年)

    花束で顔を隠して微笑んだ絵画のような春の終わりに/岐阜亮司『フラグメント』

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