Webコンサルタント中山陽平の「中小企業を強くするWebマーケティングラジオ」

ラウンドナップ・Webコンサルティング 代表 中山陽平

WebマーケティングやWeb活用で手が止まってしまったり、悩んでいる中小・小規模事業者の皆様へ、根本的なウェブに対する考え方・捉え方をお届け。

  1. 2日前

    第597回:中小企業のAI投資は「人」より「タスク」でROI(投資対効果)を見る

    Podcastを今すぐここで聞く ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。 このPodcast/書き起こしで得られること(要点) AIの利用量やトークン量だけでは、投資対効果を判断してはいけない理由 作成時間だけでなく、確認・修正・承認まで含めて効果を測ることの大事さ AIを使える「人」ではなく、効果が出る「タスク」へ投資する重要性 社内に軋轢を生まず、継続してAIを活用するための見方 今回は、中小企業がAIの投資対効果、いわゆるROIをどう判断すべきかを取り上げます。 AIにかかる費用は、月額料金やAPIの利用料だけではありません。AIを使って何かを作る前の準備から、作った後の確認や承認まで含めて、会社全体の仕事が本当に改善したのかを見る必要があるんですね。 今回の話題のきっかけは、OpenAIが2026年7月14日に公開した、エージェント型AI時代の投資管理に関する記事です。 エージェント型 AI 時代の AI 投資管理方法 | OpenAI https://openai.com/ja-JP/index/managing-ai-investments-in-agentic-era/ そこでは、 利用状況と支出の見える化 成果に基づくモデル効率の評価 規模拡大前のガバナンス 複利効果を生むワークフローへの投資 実証された需要に合わせたキャパシティ という5つの観点が示されていました。 ただし、ここから先では、その記事をそのまま解説するわけではありません。まだAI活用が十分に進んでいない中小企業が、現場で何を基準に考えればよいのかを、私の経験をもとに整理します。 利用量ではなく、AIが生み出した価値を見る まず押さえたいのは、AIを多く使った人が、それに比例して多くの価値を生んだとは限らないということです。トークン量や利用回数は、AIを動かした量を示します。しかし、それだけでは業務が改善したのか、意思決定が速くなったのか、成果物の品質が上がったのかは分かりません。 AIでアプリを作ったとしても、1週間後、1か月後に使っていなければ、継続的な業務改善にはつながっていません。同じ作業を毎回AIに依頼し、再利用できる形にしていない場合も同様です。表面的な利用量が増えていても、根本的な効率化は進んでいない可能性があります。 私自身、何かを作るときは「これは1か月後も使い続けているだろうか」と考えます。継続利用が怪しければ、そこまでにかけた時間を惜しまず、一時利用のツールとして割り切ります。見栄えを整えたり、不要な機能を足したりする前に、繰り返し価値を生むものかを確認する方が重要です。 「何を作ったか」より「何が良くなったか」を報告する AI活用を社内で報告するときも、「レポートを作った」「アプリを作った」で終わらせないことが大切です。その結果、どの仕事の負担がどれくらい減ったのか、会社や業務全体にどのような価値が生まれたのかまで伝えましょう。 最初から厳密な数値を求める必要はありません。完了できた仕事、短縮できた時間、判断しやすくなった場面など、分かる範囲から成果を記録します。AIを使った量ではなく、AIによって業務がどのように変わったのかを共有する習慣が、投資判断の土台になります。 確認・修正・承認まで含めて業務全体を測る 作成時間だけを切り取って評価しない AIは、文章やレポートを作る工程を大幅に速くできます。一方で、後工程を担う人の確認作業が増えれば、会社全体の効率化につながったとはいえません。作成工程だけを切り取ると、AIを使った本人は楽になっていても、周囲に負担が移っていることがあります。 例えば、半日かかっていた記事の作成が15分になったとします。それだけなら大きな改善です。しかし、実際には、情報収集、構成の確認、事実確認、既存のトーンとの調整、表現や法務上の確認、承認、公開後の確認といった工程があります。AIの出力に不要な情報や新しい提案が増えれば、誰かがそれらを精査しなければなりません。 作成者の時間だけでなく、レビューする人、承認する人、実行する人の時間と負担も合わせて見ましょう。その結果、記事の閲覧数や次の行動へ進む人が増え、業務時間も減ったのであれば、投資効果があったと判断できます。反対に、確認を含めた総工数が増え、成果も測っていなければ、AIの活用方法を見直す必要があります。 内容を把握していないAIレポートは意思決定を遅らせる AIで作った詳細なレポートの内容を、発表する本人が十分に把握していないケースもあります。質問されたときにその場で答えられず、回答をすべて持ち帰ることになれば、意思決定は止まります。後からAIで調べ直した長い回答が届いても、論点がずれていれば、確認の往復がさらに増えてしまいます。 必要以上に複雑な情報を出すことが、品質の高さにつながるとは限りません。判断に不要な情報を削り、作成者自身が説明できる状態に整えるところまでが仕事です。AIの出力をそのまま渡すのではなく、周囲が使える形にする工程もROIの評価に含める必要があります。 「AIを使える人」ではなく「効果が出るタスク」へ投資する 投資先を「人」から「タスク」へ切り替える AI活用が進んでいる企業の考え方を自社にそのまま当てはめ、現時点でAIを使いこなせていない人を早くから選別するのは危険です。中小企業では、誰がどのような成果を上げるかも、その成果を評価する基準も、まだ固まっていないことが多いからです。 まずは人ではなく、タスクに焦点を当てましょう。「この人にAIの利用費用を配分するか」ではなく、「この業務ではAIの投資対効果が高いか」を見ます。業務工程を調査、作成、確認、実行などに分け、AIが向いている工程へ費用をかける方が、投資の妥当性を判断しやすくなります。 AIを使う人以外の役割も評価する AIを使って案を作る人だけで仕事は完結しません。現場で実行する人、内容を確認する人、顧客や関係者と調整する人にも価値があります。人の優劣ではなく役割分担として捉えると、公平感を保ちやすくなります。また、AIを使う側にも、周囲の仕事まで考える姿勢が生まれます。 人材を採りにくく、外部の人とも連携しながら進める中小企業では、チーム内の協力が欠かせません。前後工程と役割を可視化し、タスク全体で評価することが、社内の軋轢を抑えながらAIを浸透させるポイントです。 成功事例を鵜呑みにせず、試しながら社内に知見を残す AI活用を始めるとき、多くの方が成功事例を探します。しかし、公開される事例では、見栄えのよい結果や提供側に都合のよい部分が中心となり、途中の失敗、調整、社内の衝突といった重要な過程が書かれていないことがあります。 そのため、成功事例を正解としてそのまま採用するより、実際に小さく試すことが大切です。ただし、すべてを外部へ丸投げすると、自社に経験や判断基準が残りません。経験を持つ支援者からリスクや遠回りを指摘してもらいながら、自社の担当者が試行錯誤し、調整する進め方が理想です。 AIは使った方がよいという前提に立ちつつ、利用量だけを競うのは避けましょう。業務全体の価値を見て、効果を確認できたタスクへ次の投資をします。この繰り返しによって、自社に合ったAI活用の知見が蓄積されます。 まとめ:AI投資は「使った量」ではなく「業務全体の価値」で判断する 中小企業がAIの投資対効果を考えるときは、トークン量や利用回数だけを評価基準にしないでください。AIを使っている時間だけを成果とせず、確認、修正、再実行、承認まで含めて、業務全体がどう変わったかを見ます。 また、投資先を人で決めるのではなく、効果が出るタスクを基準に考えましょう。AIで作る人、確認する人、実行する人の役割を合わせて評価すれば、組織内の不公平感や軋轢を減らせます。さらに、1か月後も使われているか、同じ価値を繰り返し生み出せるかを確認し、効果を実証できたタスクへ費用を増やしていきます。 AIの利用料金は、今後も無視できないコストです。一方で、AIの活用によって、費用以上の価値が生まれる可能性があります。費用を抑えることだけを目的にせず、会社全体の仕事を良くする投資として、一緒に試しながら判断基準を育てていきましょう。 関連する公式情報 以下は、背景を理解するための公式情報です。上記の実務的な提案はPodcastの内容をもとに構成

  2. 7月13日

    第596回:画像生成AI活用はもうマスト、注意すべきは制作過程・トレーサビリティ

    Podcastを今すぐここで聞く ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。 このPodcast/書き起こしで得られること(要点) 画像生成AIで作った広告クリエイティブ、それにともなうコンテンツを、いまどう捉えるべきか SNS上の反発だけで利用可否を決める危うさ AI活用で管理すべきなのは、制作過程とトレーサビリティ 「AIかどうか」の上位概念としての、買い手からの信頼設計 今回は、画像生成AIなどを使って広告やWebサイトのコンテンツを作ってよいのか、という話です。 このテーマは、まだ扱いづらいと感じる方が多いと思います。SNSではAIを忌避する声が目立ちますし、著作権への不安もあります。社外的には使えそうでも、社内に懸念を示す人がいて動かしづらい、という話も実際によく聞きます。 先に結論をお伝えすると、一般的な領域では、広告やコンテンツ制作への生成AI活用を検討できる段階に入ったと私は考えています。 ただし、「活用できる」という結論だけを受け取ると、間違った判断をする可能性があります。 著作権などの基本的なルールを守ることは当然です。加えて、AIを使った事実や制作過程を説明できる状態にしておかなければなりません。 つまり、いま問われているのはAIを使うか使わないかではありません。 透明性を確保し、受け手からの信頼を守りながら使えるかどうかです。 SNS上の反応と実際の顧客を分けて考える AIに関するネガティブな意見は、SNS上で目立ちやすいものです。ただし、SNSが世の中全体をそのまま反映しているとは限りません。SNSで目にした意見だけを基準に、広告やコンテンツへのAI利用を止めてしまうのは避けた方がよいと考えています。 生成AIを使った広告は、看板、駅、電車内など、さまざまな場所ですでに見かけるようになりました。私自身もAIを使った広告を出稿していますが、少なくとも私が把握している範囲では、AIを使ったことによって問題が起きた経験はありません。 もちろん、AIに対して特にセンシティブな反応が起きやすい業界では、個別に考える必要があります。 しかし、一般的な商材やサービスまで、SNS上の一部の声だけで一律に判断する必要はありません。実際の顧客や対象市場がどう受け止めるのかを見て、判断することが重要です。 大手企業の姿勢を判断材料にする 私が新しい手法を「使うべきか、まだ待つべきか」と判断するときは、大手企業がどのような姿勢を取っているかを一つの基準にしています。 単に様子を見ているのか。それとも、利用ガイドラインや具体的な機能を用意しているのか。この違いは大きいものです。 しかし、実際大手企業がAIを使うための仕組みを実際に提供しているなら、少なくとも市場は「AIの利用そのものを避ける段階」から先へ進んでいると捉えてよいでしょう。 今回のPodcastで取り上げたGoogleの動きも、その一例です。 Googleは、広告が生成AIで作成・編集されたかを確認できる「How this ad was made」という仕組みを発表しました。Google自身の生成AI機能だけでなく、外部のツールで作った広告についても、広告主がAI利用の有無を示せる方向へ進んでいます。 これは、AI広告を排除するためだけの仕組みというより、開示したうえで使える状態を整える動きだと私は見ています。 AI活用の前提となる制作過程の透明性 その上で、注意すべきは「使っているか使っていないか」の管理が大事だということ。トレーサビリティと呼んでも良いでしょう。 AI広告で起こり得る事故の中で、特に注意が必要なのは、「外部へ依頼した制作物が、実はAIを使って作られていた」というケース。 問題は、生成AIを使ったこと自体ではありません。 使っているのに使っていないことになっている、あるいは、誰も制作過程を説明できない状態になっていること。 そのため、これからは完成したクリエイティブを見るだけでは足りません。次のような制作プロセスも管理する必要があります。 使用したツール AIを使った工程 担当者が確認・修正した内容 外部パートナーを含めたトレーサビリティ 自社内で制作している場合でも、担当者ごとにAIの使い方が異なる可能性があります。制作会社や広告代理店など、外部パートナーへ依頼している場合は、さらに見えにくくなります。 そのため、AI利用の有無と制作過程を説明できるようにしておくことが欠かせません。発注側は、外部パートナーがAIをどう捉え、今後どのように生産性や改善速度を上げようとしているのかを確認する必要があります。 反対に、制作会社側から見ると、早い段階でこの管理体制を整えることは強みにもなります。AI利用を気にする企業に対して、制作工程をきちんと説明できれば、安心して選んでもらいやすくなるからです。 AIか非AIかではなく信頼設計 AIを一度使えば、それだけでよい広告になるわけではありません。AIで生成したものを人間が確認し、目的や顧客に合わせて最適化する共同作業が前提です。 一方で、AIを適切に使えば、制作や改善の速度を上げられます。私としては、特に多くの人を対象にマーケティングを行う場合、この流れに乗らないことが次第にリスクになると考えています。 ただし、ここでも本質は「AIだからよい」「AIだから悪い」という話ではありません。AIが登場する以前から、画像の意図的な加工や、受け手を誤解させる表現は嫌われてきました。ツールが変わっても、問われているものは同じです。 自分たちがマーケティングやセールスで伝えている内容を、買い手が信頼できるか。AIの使い方にも、その企業の信頼設計が表れます。 自社なりの使い方を改善し続ける 社内に懸念があるなら、いきなり大きく展開する必要はありません。「この形なら使えるのではないか」と仮説を立て、実際に顧客へ見せて反応を確認します。顧客に受け入れられた表現と、受け入れられなかった表現を記録し、自社のノウハウとして蓄積していけばよいのです。 AIの使い方に、最初から完成された正解があるわけではありません。正しく、前向きに使うための方法を考え続け、改善し続ける。その積み重ねによって、自社なりの使い方を見つけることが重要です。 まとめ:AI広告で問われる透明性と信頼 広告やコンテンツ制作にAIを使うことは、すでに標準的な選択肢になりつつあります。議論の中心も、「使うか使わないか」から、「透明性を確保し、使った事実と制作過程を説明できるか」へ移っています。 そのために必要なのは、利用したツールや工程を記録し、外部パートナーも含めてトレーサビリティを確保することです。そして、実際の顧客の反応を見ながら、自社なりの運用を改善していくことです。 AIだけを切り離して考えると、この問題を見誤ります。情報があふれ、もっともらしいものを簡単に作れる時代だからこそ、自社をどう信じてもらうか。その信頼設計からWeb戦略やマーケティングを捉え直すことで、次に取り組むべきことが見えやすくなるはずです。 関連する公式情報 この記事はPodcastの書き起こしを元に再構成したもので、本文作成時に外部文献を直接引用していません。内容の背景を確認したい方向けに、関連する公式情報を以下に挙げます。 Google公式:Expanding AI transparency in ads Google公式:Enhance visual storytelling in Demand Gen with generative AI Google公式:Get creative with generative AI in Performance Max FAQ AIで作った画像を広告やWebコンテンツに使ってもよいのでしょうか。 一般的な領域では、基本的なルールを守り、担当者が内容を確認・最適化する前提で活用を検討できる段階に入っています。業界や顧客によって受け止め方が異なるため、実際の反応も確認しながら判断しましょう。 SNSでAI広告への反発が目立つ場合、利用を控えるべきでしょうか。 SNS上の意見が世の中全体をそのまま反映しているとは限りません。SNSの反応だけで決めず、実際の顧客や対象市場がどう受け止めるかを確認したうえで判断しましょう。 AIを使った広告では、何を記録しておくべきですか。 広告主や制作担当者が、AI利用の有無、使用したツール、AIを使った工程、担当者が確認・修正した内容を説明できるようにします。完成したクリエイティブだけでなく、制作過程も管理しましょう。 外部の制作会社へAI広告を依頼す

  3. 7月2日

    第595回:労働供給制約社会に備えて…どこを業務効率化すればいい?「未来予測2040」からムダの代表例を押さえる

    Podcastを今すぐここで聞く ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。 このPodcast/書き起こしで得られること(要点) 労働供給制約社会で、中小企業が考えるべき業務改善とは 業務の無駄を見つける5つの切り口、古い仕組み、目的不明、会議・調整、過剰対応、空気の仕事について AIを入れる前に、自社のどの業務に無駄があるのか当たりをつけられる 仕組みで改善しやすい無駄と、個別対応が必要になりやすい無駄を分けられる 今回は、AI活用そのものの話というよりも、AIを使う前に会社の中で見直しておきたい「無駄」について。 最近はAIの話題が本当に増えました。私自身、AIには大きく二つの使い方があると感じています。 一つは、できることを掛け算のように増やしていく使い方 もう一つは、今ある業務の無駄を減らしていく使い方 ただ、「無駄を減らしましょう」と言うのは簡単です。 難しいのは、実際に自社の業務の中から、どれが無駄なのかを見つけること。 なんとなく無駄な気はする。けれども、誰かの役に立っているような気もする。ここまでやる必要はないかもしれない。けれども、やりすぎて悪いわけではないから、そのまま続いている。こうした業務は、現場に入っていると本当に多いと感じます。 労働供給制約社会がどんどんと覆い被さってくる 今回のきっかけは、経済産業省と中小企業庁から出された「労働供給制約社会における中堅・中小企業の稼ぐ力強化戦略」という資料です。 この資料は、強い中小企業を増やしていくために、事業再構築、生産性向上、事業再編、投資、取引適正化、賃上げなどを支援していくという内容です。 大きな方向性としては、労働生産性を高め、事業を変え、賃上げもできる会社になっていく必要がある、という話。 ここで重要なのは、人を増やせば何とかなる、という前提が置きづらくなっていることです。 リクルートワークス研究所の「未来予測2040 労働供給制約社会がやってくる」では、働ける人口の減少や、地域によって労働供給が不足していく見通しが紹介されていますので、今回はそれの一部をご紹介します。 中小企業の現場では、すでに人が集まりづらい状況。 そこからさらに人が減っていくなら、今までのやり方をそのまま続けるのは難しくなります。そのため、まず自社の中に残っている無駄を見つける必要があります。 無駄は「何となく」では見つからない 無駄を見つけるときに難しいのは、現場の人ほど、その作業に慣れていて気づきづらいこと。 引き継ぎや日々の処理で手いっぱいになっていると、まずはミスなく進めることが一番大事になります。 もちろん、それ自体は大切です。ただ、その状態が続くと、「そもそもこの手順は必要なのか」「紙でやる必要があるのか」「毎回この会議に全員が出る必要があるのか」といった問いが出にくくなる。 他部署の人から見れば、「なぜまだ紙でやっているのですか」とすぐ分かることでも、当事者にとっては当たり前になっている。そうすると、気づくのは難しくなるんですよね。 部門長や管理職が横断的に見直す。別部署同士でレビューする。新しく入った人の違和感を聞く。こうした仕組みがないと、現場だけではなかなか変わりません。うまく「外」を使う。 業務の無駄を見つける5つの切り口 今回の中心テーマは、企業の無駄をどう分類するか。 リクルートワークス研究所の資料にある27項目をきっかけに、私なりに大きく5つへ整理しました。 切り口1:古い仕組みの無駄 一つ目は、やり方や仕組みが古いことによる無駄です。 頻度や一回あたりの業務量が多すぎる作業 手順が多いまま放置されている作業 システム化できるのに紙でやっている作業 簡単な方法があるのに、時間がかかる方法で続けている作業 手戻りが多い作業 誰かのミスや対応遅れによる手待ち時間 こうしたものは、比較的見つけやすく、仕組み化によって改善しやすい領域です。ただし、当事者だけでは気づきにくいものです。そのため、定期的に棚卸しする仕組みが必要です。 切り口2:目的や成果が曖昧な無駄 二つ目は、目的や成果が曖昧なまま続いている無駄です。 何のためにやっているか分からないけれども毎回続けている業務 上司や関係者が必要だと言うので実施している作業 いつか利益につながるはずだと信じて続けている作業 他社もやっているという理由で、深く考えずに自社でもやっている作業 他社のやり方を真似ること自体は悪くありません。最初は型を真似て、そこから自社に合わせて崩していく。いわゆる守破離のような流れは大切です。ただ、その後の最適化が抜けると、形だけが残ってしまいます。 新しく入った人が「これは一般的なのでしょうか」と疑問を持つことがあります。そうした違和感は、大事にしたいものです。業務に慣れてもらうだけでなく、今の仕事を見直す機会にもなるからです。 切り口3:会議・調整・関係者対応の無駄 三つ目は、会議、調整、関係者対応の無駄です。 自分の出番がほとんどないのに、念のため参加する会議 議事録を読めば済むのに、参加を求められる会議 上司や関係者の意見の不一致に、現場が巻き込まれる作業 決裁権がない人たちだけで話し合って、後からひっくり返される打ち合わせ 会議は、始まる前に大枠が決まっているべきことも多いです。管理職同士が事前に詰めておけばよい話を、その場で始めてしまうと、周りの人の時間を奪います。 その会議は意思決定の場なのか。提案づくりの場なのか。情報共有の場なのか。どこまで決めてよいのか。この違いを曖昧にしたまま始めると、会議はすぐに無駄になります。 切り口4:過剰品質・過剰対応の無駄 四つ目は、品質や対応が過剰になっている無駄です。 不必要に細かすぎる確認 必要以上に高い品質を求められる作業 品質に影響しない上司や関係者の好みに対応する修正 お客様を過剰にもてなすための業務 社外にいい顔をするために借り出される作業 もちろん品質は大事です。ただ、すべての仕事で同じ粒度の品質を求める必要はありません。この仕事ではどこまで合わせれば十分なのか。何が成果に影響して、何が好みの問題なのか。そこを分けないと、作業時間は際限なく増えていきます。 切り口5:評価や空気から生まれる無駄 五つ目は、評価、空気、個人都合で生まれる無駄です。 付き合い残業 長時間働いて頑張っているように見せるための労働時間 働いていないと思われるのを避けるためのアリバイ仕事 残業代を確保するために作業を引き延ばすこと 自身の能力不足によって発生している作業 この領域は、かなり根深いです。 本人だけに責任を負わせても、うまくいきません。 仕組みで6割から7割は減らせるかもしれませんが、残りは個別対応が必要になる。 そのため、最初からここを真正面から扱うよりも、まずは仕組みで改善しやすい領域から手をつける方が現実的です。 仕組みで改善しやすい無駄から、手をつける 今回の5分類の中でも、やり方や仕組みが古い無駄、目的が曖昧な無駄、会議や調整の無駄、過剰品質の無駄は、比較的仕組みで扱いやすい領域です。 もちろん、一つひとつの業務には事情があります。外から見れば無駄に見えても、実は必要な理由があるかもしれません。そのため、単純に「無駄ですからやめましょう」と言えば済むわけではありません。 それでも、問いを立てることはできます。 この作業は、何の成果につながっているのか。 この会議は、誰が何を決める場なのか。 この品質は、本当に必要なのか。 紙や手作業で続けている理由は、今も残っているのか。 新しく入った人が見たとき、どこに違和感を持つのか。 こうした問いを、個人攻撃ではなく業務改善として扱うことが大切です。 AIに丸投げする前に、ゴールと前提を作る ここで注意したいのが、「AIに聞けば全部分かるのではないか」という考え方です。 AIは便利です。業務改善にも使えます。 ただ、AIへそのまま投げれば良い答えが返ってくる、というものではありません。 AIは、ゴールや前提を設計しないと、実行に移しやすいアウトプットを返しにくいからです。 たとえば、「このチェックリストに当てはまる業務を探して

  4. 6月23日

    第594回:中小企業のAI活用の現状を商工中金のデータから読む、そして本当に必要な「要素」とは何か?

    Podcastを今すぐここで聞く ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。 このPodcast/書き起こしで得られること(要点) AI検索の影響は、単なるアクセス減ではなく「判断基準を提案する機会」 コンテンツマーケティングにおける、比較・選び方・理解の場はWebサイト上では機能しなくなった 中小企業が今後前提に置くべき、サイト上の見込み客育成(ナーチャリング)の流れ 今回のテーマ:AI検索が奪っているのはなに? AI検索が広がることで、企業から失われているのはどのプロセスか、という内容です。主としてコンテンツマーケティングの観点です。 「サイトへの流入が減る」「検索キーワードが見えにくくなる」「Google側のツールが対応しておらずブラックボックス状態」といった話。もちろんそれらもAI検索による影響として重要であり事実です。ただ、私が現場で「最も大きい」と感じているのは、そこではなく。 結論から言えば、AI検索が大きく変えているのは、ユーザーが「情報を探しながら、自分なりの判断基準を作っていく」プロセスです。 売り手側から見れば、見込み客育成・リードナーチャリングのためのファネルの入り口〜中盤の部分です。TOFUとかMOFUの部分。 ここをAIがごっそり持っていき始めている。 セールス・マーケティングの観点では、ここがかなり大きい変化だと考えています。 AI検索で奪われるのは、流入だけではない 長文検索やパーソナライズされやすい、と言う特徴はそこまで重要か?本当か? AI検索の話になると、長文で検索できるようになるとか、パーソナライズされやすくなる、などそういう話題が出ます。 たしかにそれもあります。ただ、長い文章で検索する人は以前からいましたし、Googleでも以前から長い検索自体はできました(インターフェイス的にやりやすいかどうかはともかく)。 ※仕様上は、2013年のハミングバード導入から、会話調や文章での検索に初期対応していた。10年以上前です。 パーソナライズについても、それに繋がるような情報を交えて検索する人はいないわけではないですが少ない。要するに、AIだからという理由でまとめられるほどのものではない(と感じます)。 AIだけではなくチャットボットのログなどを見ていても、長文を入れる人ってホントに一部です。 なので、私はそこが本質だとは思っていません。 では何が変わったのか では何が変わったのか。昔の検索行動を思い出してみると分かりやすいです。 何かを調べるとき、人は最初から答えだけを探していたわけではありません。 情報そのものにたどり着く前に、 どういう観点で見ればいいのか 何を基準に判断すればいいのか 自分の問いはそもそも何なのか を探していました。 そして、調べながら理解を深めていく。検索しているうちに問いが変わっていく。 少しずつ情報を拾いながら、自分が本当に欲しいものへ近づいていく。そういう探索的な検索の流れがありました。 そしてAI検索は、この「どう調べればいいか」「何を基準に判断すればいいか」という探索的な検索の部分を代わりにやってくれます。 便利ではあります。体感で楽に感じるのは、ここじゃないでしょうか?考え方をアウトソーシングできる。 そういう意味ではインフルエンサーを信じる方向に近い便利さを提供していると言えます。AIは。 しかしそれは、企業側から見ると、ユーザーが自社サイトに来る前に、判断の土台が自社にとってアンコントローラブルな場所(AI)で作られてしまうということでもあります。 従来の検索体験では「選択にはいくつもの切り口がある」と自然に分かった 「○○ 比較」コンテンツが自然と提示していた物 昔から「何とか 比較」「何とか おすすめ」「何とか 選び方」という検索は多かったと思います。 月間検索数でも実際多いですし、それ故トピッククラスターモデルで計画を立てると、まず最初に埋めるべき対象になりがちです。そして、実際に需要はあったし、閲覧されることも多かったですね(それ故競争も激しかったですが) 従来の検索結果では、複数の記事が並びます。 A社の記事では「こういう観点で考えるとよい」と書いてある。 別のレビューでは「このサービスを選ぶならこの基準が大事」と書いてある。 体験談や個人ブログが出てくることもある。 今であれば企業の「選び方」コンテンツが多いかもしれません。 それらを見ていると、ユーザーは無意識に気づきます。 「世の中にはいろいろな切り口がある。1つの基準で考えればいいわけではない」 「まず、どの基準で選ぶのかを自分で選ばなければいけない。」 このプロセスは面倒です。でも、情報探索においては非常に大事です。 複数の考え方に触れて、どれが自分たちに合うのかを拾っていく。その過程で、判断基準が自分の中に作られていきます。 AIが判断基準を丸めて提示することによる影響 AI検索になると、ユーザーからの景色が変わります。 Googleであろうと、ChatGPTであろうと、Claudeであろうと、検索する人から見ると全部 「AIが答えている」「AIがおすすめしている」という形 になります。 もちろん、AIの裏側にはさまざまな情報があり、AIそのものの意見ではないという説明はできます。 しかし、ユーザーから見た姿としては、詳しいAIさんが一つの回答としてまとめてくれているように見える。 AIに対して人格を感じるのは、人生相談などにAIを使うユーザーが非常に多いことからも明らかです。 ここが大きい、と思いませんか? マーケティング側が失った物 今までは複数の人や企業の考え方が並んでいて、その中から自分たちが選ぶ必要がありました。 AI検索では、それが丸められて見えやすい。 いろいろな切り口があるはずなのに、最初から「こう考えるとよい」という形で提示される。 行動科学の観点で言えば、アンカリングに近いことが毎回起きます。 何を基準に判断すればいいのかを、先にAIが杭を打つように決めてしまう。 特に、その分野に慣れていない人や、これからAIネイティブに情報探索を始める人にとっては、それが考え方の基準になりやすい。 判断基準コンテンツが読まれにくくなる マーケティング側から見たときに、ここで奪われるものは何か。それが「判断基準を作る場」です。 これまでは、企業サイトには「自社の強み」「選び方」「初めての方向け」「比較のポイント」といったコンテンツがありました。 ユーザーに考え方を知ってもらい、その考え方に納得してもらい、そのうえで自社のサービスのよさへつなげる。いわゆるナーチャリング、見込み客育成の王道の流れです。 ところが今、アクセス解析を見ていると、そうしたフロントエンド系のコンテンツが本当に読まれにくくなっていると感じます。過去に関わってきたサイトや診断してきたデータからの印象として、サービス詳細、会社概要、事例といった確認系のページへのアクセスに偏っている。 会社概要を見て問い合わせへ直行する。 アクセスページを見て、ちゃんとオフィスがあることを確認して問い合わせる。 昔からのセッションを追っても、判断基準コンテンツを読んでいる形跡が見えにくい。 そういうケースが増えています。 なので、力を入れているコンテンツが、自社サイトにあるだけだと機能しないことがあると。いくらサイト内で誘導を増やしたり、バナー訴求しても反応しない。 自社サイトでコントロールできる範囲の縮小 これまでであれば、自社サイトに判断基準を書いておけば、少なくとも読まれる可能性がありました。検索順位で上に出る必要はありますが、それでも自分たちでコントロールできる範囲にありました。 しかし、今はAIにそれが持って行かれている。そして、AI側にその判断基準を反映させようとすると、難易度は一気に上がります。事実上非常に難しいでしょう。 AIの内部知識に影響させるには長い時間がかかるでしょうし、グラウンディングや検索連携の仕様も変わり続けています。GEOやLLMOのような言葉も出ていますが、現時点で「こうすれば確実」と言えるものはありません。 Googleだけでなく、ChatGPTやClaudeなど、サービスごとに出方も変わります。 今までのように、サイトに来てもらって、そこで強みを知ってもらい

  5. 6月15日

    第593回:中小企業のAI活用の現状を商工中金のデータから読む、そして本当に必要な「要素」とは何か?

    Podcastを今すぐここで聞く ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。 このPodcast/書き起こしで得られること(要点) 中小企業のAI活用が、個人利用や事務作業の効率化以上に波及しづらい理由 「会社としてAIを導入すれば成果が出る」という見方への注意点 AI活用で必要になる「改善後の姿」の描き方 情報収集、予算、人材、定着の課題を分けて考える視点 中小企業が今からAI活用へ踏み出すための現実的な始め方 今回は、中小企業がAIをどう活用していけばよいのか、というテーマです。AIを個人では使っている。メールの下書き、要約、議事録、ちょっとした調べ物には使っている。でも、会社として経営にインパクトが出ているかというと、そこまでは行っていない。そういう相談は、実際にかなり増えています。 商工中金が公開している中小企業向けの生成AIに関する調査を見ると、まさにその現場感が出ています。   個人判断で使っている企業は多い。一方で、会社全体の業務フローを変えるところまでは、まだ進みきっていない。このギャップをどう考えるかが、今回の大きなポイントです。 私が強く感じているのは、AI活用で最初に必要なのは「AIツールの使用スキル」では”ない”ということです。 その前に、自社がどう変わりたいのか、業務がどうなれば良い状態なのか、その絵を描けるかどうかということです。 会社で導入すること自体が、何かを変えてくれる…訳ではない 調査では、会社として導入している企業のほうが、経営へのプラス効果を感じている割合が高い、という結果が示されています。 これだけを見ると、会社主導で生成AIを入れれば成果につながる、という捉え方をしたくなります。 ただ、そこを少し疑って見たほうがよい。 会社として導入しているから成果が出ている、というより、そもそも会社として導入できるだけの土台がある企業だから成果が出ている。 AIをみんなで使おう、システムを入れよう、業務フローを見直そう、と考えられる会社には、もともと改善する文化があります。 上層部の理解があり、現場を変える力があり、小さく試して前に進める空気があります。 そういう会社は、会社契約をしても成果が出やすいし、個人利用から始まっても深い活用へ進みやすい。 逆に、会社として契約だけしても、使う目的が曖昧で、現場の業務にどう組み込むのかが見えていなければ、ほとんど動きません。アカウントを配っただけで終わる。チームプランを契約しただけで終わる。そういうことは普通。 だから、とりあえず会社としてAIを入れれば何とかなる、という考え方は危険。契約の前に、AIを使える会社になっているかどうかを考えなければいけません。 個別作業の効率化でつまづく理由 生成AIの使い道として多いのは、メール、報告書、議事録、要約といった事務作業です。これは始めやすいですし、実際に効果も出やすい領域です。私も、こうした使い方が悪いとはまったく思っていません。 ただ、そこだけで止まってしまうと、AIの力のごく一部しか使っていない状態に。 目の前の作業を少し楽にすることと、会社全体の生産性を変えることは別の話。 目の前の作業を楽にする使い方は、Excelのマクロを作るような感覚に近いもの。この文章を整えてほしい。このメールを短くしてほしい。この議事録をまとめてほしい。こうした使い方は、今ある作業の中にAIを差し込むだけなので分かりやすい。 一方で、会社全体を巻き込んで、生産性を何十%も上げる。新しい業務の進め方を作る。現場のデータを集め、加工し、使える状態にして、意思決定の流れまで変える。ここまで行こうとすると、先に「自分たちはこうなれるはずだ」という絵が必要。 その絵がないままAIを使っても、どこに使えばいいのかが決まりません。結局、分かりやすいメールや議事録に戻ってしまう。多くの企業が個別作業の効率化でつまづく理由は、AIの性能不足ではなく、向かう先が描けていないことにあると感じています。 改善後の姿が情報収集を決める AI活用が進まない理由として、「情報収集が追いつかない」という声もよく聞きます。もちろん、技術の変化は速いですし、毎日のように新しいツールや事例が出てきます。追いきれない感覚があるのは自然です。 ただ、もう少し分解して考えたほうがよいです。 情報がないのか。調べ方が分からないのか。それとも、そもそも何を調べたらいいのか分からないのか。この3つは違います。 私の感覚では、かなり多くのケースで問題になっているのは、最後の「何を調べたらいいか分からない」です。自社がどうなりたいかが見えていないから、必要な情報も見えていない。だから、AIのニュースを追っても、ツール紹介を見ても、自分たちの業務にどう関係するのかが分からない。 逆に、ゴールの姿があると、必要な情報は見えやすくなります。 ここからここへ行くには、どのデータが必要か 今あるデータは使えるのか。現場からどう集めるのか 加工が大変なら、そこをAIに任せられるのか 社内ではGoogle Workspaceを使っているから、スプレッドシートで見られる形がよいか こういうふうに、必要なステップが自然に分解されていきます。 AI活用は、単にAIに詳しくなることではありません。自社の業務をどう変えたいか。 そのために何が足りないかを見つけ、その足りない部分をAIやデータで埋めていくこと。 情報収集も、その順番で考えないと散らかってしまいます。 導入前、検討中、導入後で違う壁 生成AIを導入しない理由にも、いくつかの段階があります。以下が実際の資料です。 導入以前であれば、具体的な活用場面が分からない、自社業務になじまない、経営戦略や事業戦略に反映できていない、情報収集が追いつかない、といった課題が出てきます。 これらは一見ばらばらですが、かなりの部分は「どこへ向かうのか」が描けていないことに戻ってきます。 活用場面が分からないのは、変えたい業務の姿が見えていないからです。 経営戦略に反映できないのは、AIによって何が変わるのかを説明できないからです。 導入を検討する段階になると、別の壁が出ます。 推進する人材がいない。従業員に知識不足や心理的抵抗がある、予算や時間を確保できない。相談先が見つからない。 これも、先にある変化が見えていなければ動きにくいものです。 特に、推進する人材というのは、単にAIに詳しい人ではありません。絵を描ける人です。 こう変わると良い。こうなれば現場が楽になる。ここまで行ければ会社として意味がある。 そういう姿を示せる人がいると、周りもついてきやすくなります。 さらに導入後には、 社内ルールや方針整備が追いつかない 導入効果を測定できない 知識が一部部署に偏る 業務プロセスに組み込めず定着しない といった課題が出ます。 ここでは、最初に描いた絵が現場にはまっていなかった可能性と、価値を証明する仕組みを用意していなかった可能性があります。 AIで業務を変えるなら、何をもって効果があったと見るのかも先に考える必要があります。 時間が減ったのか、ミスが減ったのか、判断が速くなったのか、現場の負担が減ったのか。そこを測れないと、せっかく動かしても周囲を説得できません。 今から始めても遅くない理由 調査では、5年後もAIの活用は限定的だと考える人が、業界によってはかなりいることも示されています。 情報通信業のように大きな変化を感じている業界もありますが、多くの業界では、まだそこまで変わらないだろうと見ている人が少なくありません。 これは、AI活用に取り組む側から見ると、まだ十分にチャンスがあるということ。 すでに出遅れたと感じる必要はありません。むしろ、今から自社の業務に合わせてAIとデータの使い方を考え始めるだけでも、まだアドバンテージがあります。 実際、AIを使って良くなっている会社はあります。ただし、そういう会社ほど、外にあまり言わないことも。 同業他社に気づいてほしくない、仕組みを知られたくない、ということも当然あります。 SNSで見える派手な事例だけが現実ではありません。 だからこそ、まずは事例を見ることです。抽象的に「AIで何ができますか」と調べるより、

  6. 5月17日

    第592回:Google AI ModeとChatGPT Searchの引用元の変動はどれくらい?

    Podcastを今すぐここで聞く ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。 このPodcast/書き起こしで得られること(要点) 引用元は安定しているように見えて、実際にはかなり入れ替わっています。Google AI Modeでは週ごとに半分程度、ChatGPT Searchでは4分の3程度が入れ替わるという数字を見ると、単発の露出に一喜一憂するのは危険です。 AI検索の引用元は、見た目よりもかなり速い周期で入れ替わっている Google AI ModeとChatGPT Searchでは、引用元の数も安定性も大きく違う ニュース性のあるコンテンツより、意思決定やサービス理解に関わるコンテンツの方が残りやすい AI検索対策の指標は、単発の露出ではなく、一定期間での継続的な残り方で見るべき AI検索における「引用元」AI Citation Drift 今回は、AI検索における「引用元」の話です。AI検索やAIモードで、自社の情報が引用されるかどうかは、Webマーケティング上かなり大きなテーマになっています。実際、AIOやGEOのような言葉で営業提案を受けている会社さんも増えていると思います。 ただ、ここで難しいのは「何を指標にして判断すればよいのか」です。 1回調べて自社が出ていたから良いのか。逆に、出ていなかったから駄目なのか。提案を受ける側としても、自社で調べる側としても、そこが分からないのは怖いですよね。 今回の出発点は、SISTRIXが出しているAI Citation Driftに関する調査です。AIの回答で引用されるドメインが、時間とともにどれくらい入れ替わるのか。数字を見ると、思った以上に動いています。 AI検索の引用元は固定されていない Google AI Modeでは週ごとに56%が入れ替わる AI Citation Driftという言葉があります。簡単に言えば、AIの回答で使われる引用元が、時間とともにずれていく、入れ替わっていくということです。 Google検索の順位も、もちろん昔から変動してきました。今でもSEO業界はちょっとした変動まで「ニュース」として記事になるくらいです…。 ただ、AI検索系の引用元は、それよりもかなり速いスピードで入れ替わっている。検索結果の順位が少し動くというより、引用されるドメインそのものが週単位で大きく変わるイメージです。 SISTRIXの調査では、Google AI Modeでは、1つの回答にだいたい14から16程度のドメインが引用される。そして、そのうち56%が週ごとに入れ替わる。つまり、1週間でおよそ半分が変わっているということです。 従来のSEO感覚で言えば、1週間で半分が入れ替わるのは大変動です。ツールの画面が真っ赤になるような状態でしょう。しかしAI Modeでは、それがある程度当たり前の挙動として起きている。国別に見ても、ドイツ、アメリカ、イギリス、イタリア、スペイン、フランスで大きく傾向が変わらないため、地域特有というより、プラットフォーム側の構造に近いものとして捉えた方がよさそうです。 ChatGPT Searchはさらに入れ替わりが大きい ChatGPT Searchでは週ごとに74% さらに入れ替わりが大きいのがChatGPT Searchです。SISTRIXの調査では、ChatGPT Searchでは週ごとに74%、つまり4分の3ほどのドメインが新しくなるとされています。 しかも、ChatGPTはGoogle AI Modeに比べて、回答に出てくる引用ドメイン数がかなり少ない。平均で3から4個程度ということなので、そのうち74%が入れ替わるということは、1週間後に同じ引用元として残っているものは、1つあるかどうかという感覚になります。 実際に使っていても、ChatGPTは引用として表に出すドメインが少ない印象があります。途中ではもっと多くの情報を見ているのかもしれませんが、回答上に参照元として出てくるのはかなり絞られている。そこにさらに大きな入れ替わりが乗るので、単発で「出た」「出なかった」を見ても、あまり強い判断材料にはなりません。 単発確認で喜ぶ危うさ ここで注意したいのは、自分で少し調べて「うちが出ている」と喜んで終わってしまうことです。AIツールは、文脈、メモリ、パーソナライズの影響を受けます。自分の環境で見えた結果は、あくまで参考情報でしかありません。 もちろん、まったく意味がないわけではありません。ただ、AI検索の引用元はこれだけ動くので、1回の表示結果で判断すると、かなりぬか喜びになりがちです。見るべきなのは、一定期間の中でどれくらい残り続けているかです。 残りやすいコンテンツと流れやすいコンテンツ 残りやすいものと、流れやすいものがあります では、どんなコンテンツでも同じように入れ替わるのかというと、そうではありません。残りやすいものと、流れやすいものがあります。 ニュースやメディア系の情報は、かなり残りづらい傾向があります。流動性が高い情報なので、AI側もその時点でより新しいもの、より良いものを取りに行く。ブログでトピックスを拾って記事を書くようなコンテンツは、その瞬間のインプレッションやクリックにはつながるかもしれませんが、AI検索で長く引用される資産として考えると、やや不向きです。 一方で、サービスに関わる情報、意思決定に関わる情報、商品ページや説明ページ、FAQ、技術的なドキュメントのようなものは、一度引用される側に入ると残りやすい傾向があります。ここは重要です。 AI検索時代のコンテンツ計画では、とにかくニュース性のある記事を出し続けるよりも、サービスの根幹に関わる情報をきちんと育てる方が、積み上げとしては強い可能性があります。作っても作っても走り続けないと成果が続かない形は、運用としてかなりつらい。長く残るコンテンツ形態を育てる視点が必要です。 最初に乗るまでと、乗った後の維持 もう1つ大事なのは、一度「残るドメイン」の側に入ると、そこに居やすい傾向があることです。もちろん、正式な意味での特権ではありません。ただ、安定して引用される中核に入った後は、それを維持していくことが施策の中心になります。 逆に言えば、最初に乗るまでが大変です。しばらくは何も起きていないように見えるかもしれません。それでも、もう一押しで安定した引用グループに入る可能性もあります。後追いで競争の激しい領域に入る企業にとっては厳しいですが、だからこそ、安定的に残りやすいページを育てることが重要です。 指標は点ではなく期間で見る どれだけ安定して引用され続けているか AI検索の引用状況は頻繁に変わります。だから、毎日見て「今日は増えた」「今日は減った」と振り回されても、あまり意味がありません。 見るなら、1週間、1ヶ月といった一定期間で、どれだけ安定して引用され続けているかです。1回入ったからOKではなく、1ヶ月後にも残っているか。前よりも安定して出るようになったか。こうした見方でKPIを設定する必要があります。 お客様向けにAI関連のモニタリングツールを作っていますが 私自身も、お客様向けにAI関連のモニタリングツールを作っていますが、この調査を見て、計測の仕方はもっと工夫しなければいけないと感じました。特にChatGPTのようなチャットツールは、個人ごとの文脈やメモリ、パーソナライズの影響が大きい。企業利用で一部をオフにしているケースもありますが、それでも計測はまだ参考レベルだと見ておいた方がよいと思います。 また、AI検索での引用が増えたから売上が上がった、問い合わせが増えた、と単純に読むことも難しくなっていきます。情報過多の時代は、比較検討の流れそのものが複雑です。どこで効いたのかを一本の線で追うのは、ますます難しくなります。 AI時代ほど顧客理解に戻る お客様のことをどれだけ理解しているか 昔のデジタルマーケティングには、定量的にいろいろなことが分かるからやりやすい、という感覚がありました。Google Analyticsで検索キーワードが見えていた時代を知っている方なら、なおさらそう感じるかもしれません。 しかし、AI検索やチャットツールの時代になると、また少しアナログな世界に戻っていくように感じています。細かなデータを完全に読み切るというより、お客様のことをどれだけ理解しているか。その上で、AIから有用な情報を引き出す問いを設計できるか。ここが重要になります。 大ざっぱなプロンプトでは、良い情報はなかなか取れません 「いい感じにやって」「お客さんのことを教えて」という大ざっぱなプロンプトでは、良い情報はなかなか

  7. 5月8日

    第591回:AIに伝わるWebサイトへ 中小企業が次のサイト リニューアルで持つべき視点

    Podcastを今すぐここで聞く このPodcast/書き起こしで得られること(要点) AIエージェント時代のWebサイト対応は、AI検索での露出対策とは別の話として重要度が高い HTMLの意味付けやアクセシビリティが、AIにとっての理解しやすさに直結する可能性が高い(Googleブログによると) 人間向けの見た目だけでなく、AIが操作しやすいレイアウトや導線が重要になる 小手先の見せ方より、標準的で分かりやすい構造と中身で戦う時代に入る ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。 今回は、AIエージェント時代に向けて、Webサイトをどう整えておくべきかという話です。 最近は、情報探索や情報収集をAIに任せる場面が増えています。さらに踏み込んで使っている方であれば、意思決定のための材料集めをAIがかなり担うようになってきたことを、すでに体感しているのではないでしょうか。 そうなると、Webサイトは「人が直接見に来る場所」だけではなくなります。AIが情報を取りに来る。AIがブラウザを操作する。その前提で、自社のWebサイトをどう整えるかを考える必要が出てきます。 これはAI時代の露出の話(≒ いわゆるAIOやGEO)などの話とは違います まず、これはAI検索で引用されやすくする話でも、AI OverviewやAImodeで露出を増やす話でもないです。 今回扱うのは、エージェントが情報を取りに来たとき、迷わず、正確に、負荷少なく扱えるWebサイトにしておくにはどうするか、という観点です。露出が上がるという文脈ではないのでご注意ください。 AIエージェントという新しいWeb利用者 AIエージェントという言葉から、ブラウザを勝手に操作してくれるもの、放っておいても作業を進めてくれるものなど、いろいろなイメージを持つと思います。ここでは厳密な定義には踏み込みません。 外から見た姿として考えると、これまでは人間がWebサイトを見て、情報を集め、資料を作り、意思決定をしていました。その情報収集の大きな部分を、自分ではない何か、つまりAIに任せる時代が来ている。まずはそのくらいに捉えておけば十分です。 もしまだ体験したことがなければ、セキュリティ面には注意しつつ、CodexのComputer Use、あるいは以前からある自動化 Playwrightのような、プログラムがブラウザを操作する仕組みを一度見てみるとよいと思います。 画面上でポインターが動き、処理が進んでいく様子を見ると、人間ではないものがブラウザを操作する時代が、かなり近いところまで来ていることが分かります。 もちろん、今はまだ遅い部分もあります。自分でやった方が早いと思う場面もあります。それでも、一度体感しておく価値はあります。AIがテキストで回答するだけでなく、画面を見て、判断し、操作していく世界を前提にすると、Webサイトに求められるものの見え方が変わるからです。 まず戻るべきHTMLの意味付け 最初に見るべきなのは、HTMLのセマンティック性、つまり意味付けです。 たとえば、クリックして何かアクションを起こす要素を作る場合、HTMLではbuttonタグを使うケースもあれば、aタグを使うケースもあります。一方で、意味を持たないdivタグなどにCSSやJavaScriptで見た目や挙動を寄せて、ボタンのように見せることもできます。 人間は見た目から「これはボタンだろう」と判断できます。しかしAIは、まずHTMLを読んで、そこから「これはアクションを起こすためのボタンだろう」と判断します。視覚を使わずにWebサイトを理解する場面では、Webの基本に沿った意味付けが重要になります。 SEOでは後回しにされがちだった構造 これまでSEOの世界では、HTMLの構造はそこまで重視されてこなかった面があります。H1くらいしか関係ない、HTML Lintで100点を取っても検索順位が上がるわけではない、といった感覚もありました。 経済的インセンティブが薄かったため、構造化データのようにGoogleが目に見えるメリットを出すもの以外は、どうしても後回しにされがちでした。極端な場合、全部をdivで組んでしまうような実装もあります。ブラウザのデフォルト挙動を避けたい、ゼロベースで見た目を作りたいという気持ちは分かります。 ただ、AIエージェントにとっては判断しづらくなります。button、a、input、form、labelといった要素を適切に使う。フォームではプレースホルダーだけに頼らず、きちんとラベルを付ける。HTMLとアクセシビリティの基本を整える。こうしたことが、改めて重要になってきます。 AIが操作しやすい画面設計 もう1つの大きなポイントは、視覚的な使いやすさです。 AIは今や、スクリーンショットを撮りながら画面を理解することもできます。Computer Useのような仕組みも、スクリーンショットを見ながら、どこを操作すべきかを判断しています。デバッグでも、色や余白、仕様通りかどうかを視覚的に確認できるようになっています。 ただし、視覚情報は重いです。HTMLはテキストなので軽いですが、スクリーンショットはすぐに1MB、2MBになります。それを動きながら取り続けるわけですから、AIにとっても負荷が大きい。だからこそ、なるべく視覚的な負荷を減らすことが重要です。 重要なボタン、ずれない画面、分かりやすい導線 重要なボタンは、重要だと分かるようにする。位置、色、サイズ、近さを分かりやすくする。ボタンを押した直後にレイアウトがずれて、押そうとした場所が変わるような状態を避ける。 Core Web Vitalsでもレイアウトシフトは好ましくない要素ですが、AIエージェントにとっても大きな妨げになります。ここだと思って押したら位置が変わってしまう。すると、エージェントはもう一度状況を判断し直さなければなりません。 今は、エージェントによるWebサイト活用がそこまで一般化していないため、どれくらい行動制限につながるかは見えにくいかもしれません。しかし、ブラウザ操作が当たり前になった未来では、操作しづらいWebページは致命的になる可能性があります。 Webサイトのリニューアルは、毎年行うものではありません。3年に一度くらいのことも多いはずです。3年後には、エージェントを前提にした世界になっていてもおかしくありません。次にリニューアルする時は、セマンティック性のあるHTML、認知負荷の低い設計、レイアウトシフトの少ない画面、視覚的に使いやすいシンプルなサイトを、大きな指針にするべきだと考えています。 標準的な構造と中身で勝つ時代 私はもともと、AI時代のWebサイトはデータベースに近いものになっていくと思っていました。サイトの中身をAIが読み取り、それをもとに情報をまとめる。意思決定や操作は人間がするのだろう、と考えていました。 しかし、ブラウザを自動操作する技術の正確性や速度が、思った以上に上がっています。今は「AIが勝手に操作するのは怖い」「セキュリティ的にどうなのか」という感覚も強いですし、実際に危ない部分もあります。それでも一定のラインを超えると、当たり前のように使われるようになるでしょう。 そうなると、Webサイトを情報の出所であるDBとして分かりやすくしておくこと、網羅性のある情報を配置しておくことに加えて、エージェントに対するユーザビリティも考える必要があります。 奇抜なUIよりも、よくある分かりやすさ AIにとって一番分かりやすいのは、よくあるレイアウト、よくあるやり方です。奇抜なUIではなく、「普通はこの辺にこれがあるよね」という標準的な構造を守る。そして、情報やサービスの中身の質で勝っていく。そういう形にしていかなければなりません。 逆に、テクニックや見た目の違い、小手先の心理的な誘導で差を感じさせていたところは、今後ジリ貧になっていくと思います。人間の認知的な部分に強く依存して売っている意識があるなら、そのバフが効かなくなる前提で見直した方がよいでしょう。 たとえば「値下げしました」と見せても、実は毎月値下げしていることはAIに調べさせればすぐ分かります。アップセルをどこで出すか、この段階で何を見せるか、といった人間向けの見せ方も、AIが情報収集を始めると必要なければ見ません。 買う側にとっては、超有能なスタッフが代わりに買いに行ってくれるようなものなので便利です。しかし売る側としては、今までそうした見せ方で乗せてきた部分がある会社ほど、脱却

  8. 4月7日

    第590回:[現場から]中小企業がAIツール導入で失敗しないために、最初に見直す6つの判断軸

    Podcastを今すぐここで聞く ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。 AIツールの話になると、どれを選べばいいのか、無料版で十分なのか、自動化まで一気に進めたほうがいいのか、といったご相談を本当によくいただきます。実際には、中小企業のAIツール活用は、難しいことから始めないほうがうまくいきます。 このPodcast/書き起こしで得られること(要点) 中小企業のAIツール活用で押さえておきたいのは、 まず使ってみる 有料版で実力を見極める 真似から入って使い方を自分の仕事に寄せていく 自動化は最初はシンプルな物から 外部公開は気をつけて ブラウザ操作は気をつけて 便利さだけを追いかけるのではなく、現場で使い続けられる形に落とし込んでいくと、AIは十分に力を発揮してくれます。 中小企業のAIツール活用は、悩む前にまず触ってみる 最初にお伝えしたいのは、悩んでいるなら使ったほうがいい、ということです。今はChatGPT、Gemini、Claude、それからGrokやCopilotのように、選択肢はいくつもあります。どれが絶対に正しいかという話ではなく、実際に触ってみないと、自分に合うかどうかは分かりません。 AIツールは、性能の高さだけで決まるものではありません。やり取りのしやすさもありますし、自分が思っていることを引き出しやすいかどうかもあります。 人と仕事をするときと同じで、相手の能力が高くても、うまく引き出せなければ成果にはつながりません。反対に、多少癖があっても、自分にとって扱いやすければ、そちらのほうが結果として役に立つこともあります。 使っているうちに、やりたいことが見えてくる AIツールは、使い始める前より、使い始めてからのほうが可能性が見えてきます。最初は、文章を書かせる、要約させる、そのくらいしか思いつかないかもしれません。 けれど、日々触っていくと、これもできるかもしれない、あれにも使えるかもしれない、という形で仕事とのつながりが少しずつ見えてきます。 ですから、比較記事を読み続けて決めきれずにいるより、まずひとつ選んで触るほうが早いです。普段からGoogle Workspaceに寄っているならGeminiでもいいですし、まわりにChatGPTを使っている人が多いならChatGPTでもいい。 日本語での書き味が気になるならClaudeでしょうか。なんにせよ、悩んでいる時間が長いなら、まず目の前のものに三千円前後を払って試したほうが、得られるものは大きいはずです。 無料版ではなく、有料版で見ないと実力は分からない これはかなり強くお伝えしたいのですが、無料版だけでそのツールを判断しないほうがいいです。 無料版は入口としては悪くありませんが、そのツールの持っている力や、本来の使い勝手は、どうしても見えにくくなります。無料版のまま何とかしようと頑張るより、有料版にして仕事の中で試したほうが、判断はずっと正確になります。 しかも、有料版にしていても、上位のモデルや機能を使っていないケースは珍しくありません。けれど、その差は意外と大きいです。 出力の質も、考え方の深さも、作業の進み方も変わってきます。個人で使う場合でも、可処分所得がある程度ある方であれば、有料版を使って元が取れない、ということはあまりないのではないかと思います。 年払いではなく、月額で始めたほうがよい AIツールは変化が早いので、最初から年払いにする必要はありません。年払いのほうが安く見えることはありますが、途中で乗り換えたくなる可能性が十分にあります。実際、使っていくうちに、自分には別のツールのほうが合うと分かることはよくあります。まずは月額で始めて、合っているかを確かめながら続けるほうが安心です。 私自身、プロプランや各種APIも含めると、毎月かなりの金額をAIに使っています。ざっくり言えば、一桁上、つまり十万円以上は毎月使っていますが、それでもコストに見合わないと感じたことはありません。それだけ、きちんと使えば仕事に返ってくる余地があるということです。 最初は真似から入るほうが、中小企業のAIツール活用は進みやすい 最初から、自分で一から全部組み立てようとしないほうがいいです。SNSを見ていると、すごく複雑なことをやっているように見える投稿がたくさん流れてきます。 けれど、ああいうものは、その一つの投稿の裏に、かなりの試行錯誤や積み重ねがあります。最初から同じところを目指そうとすると、たいてい止まってしまいます。 それより、まずは真似から入るほうが自然です。同業の人が使っているやり方でもいいですし、勉強会で見た手順でもいい。まずなぞってみる。 そのうえで、ここは自分向きに変えよう、ここはうちの業務に合わせよう、と少しずつ寄せていくと、仕組みが見えてきます。そうやって初めて、自分でも作れる感覚が育っていきます。 真似ることは、手を抜くことではない 真似というと、あまりよくない印象を持たれるかもしれません。 ですが、最初の段階では、遠慮なく真似して大丈夫です。真似してみると、どこが使いやすくて、どこが使いにくいのかが分かります。その差分が、そのまま自社向けの調整ポイントになります。 AIツールは、使い方そのものが成果を左右します。だからこそ、いきなり独自流に走るより、よい型を借りて、自分の現場に合う形へ直していくほうが、ずっと前に進みやすいです。 自動化とブラウザ操作は、便利さより慎重さを先に置く AIの話になると、自動化への期待はどうしても大きくなります。 寝ている間に何かが終わっている、ほうっておいたら作業が片付いている、そういう話は魅力的です。ただ、最初からそこを目指すと、期待したものが返ってこないことが多いです。むしろ、見た目ほど簡単ではありません。 まずは、自分が見ているところで動かすことを基本にしたほうがいいです。 別のウィンドウで作業させる程度ならまだしも、複雑な処理を一気通貫で自動化するとなると、AIのできることとできないことをかなり把握していないと厳しいです。 結果として手戻りが増え、かえって手間がかかることもあります。 自動化は、単純なものから始める たとえば、決まったフォルダに入れたものを整理する、日報のような定型情報を整える、といった単純な作業なら、自動化の入り口としては悪くありません。 ただ、複雑な調査や、複数の判断をまたぐ業務を、最初から丸ごと任せるのはおすすめしません。そこにはかなりの試行錯誤と、自分なりのやり方が必要になります。 AIに慣れてくると、これは自動化したら楽になるな、というものが自然に見えてきます。その順番で十分です。最初から自動化を目的にしすぎると、思ったほどの成果が得られず、苦手意識だけが残りやすくなります。 ブラウザを操作させる権限は、用途を絞る もう一つ気をつけたいのが、ブラウザを操作させる権限です。これは便利そうに見えるのですが、かなり慎重に扱ったほうがいい領域です。限定された社内ページを巡回させて情報を取る、決まった作業を補助させる、そのくらいならまだしも、何でも自由に触らせる方向へ進めるのは、今の段階ではおすすめしにくいです。 特に、ログインや入力をまたぐ操作は、想像以上に気をつける必要があります。便利さに目を奪われず、どこまで任せてよいかを細かく区切ること。ここは中小企業のAIツール活用で、かなり差がつくところだと思います。 社内情報を使うものは、外に公開しない AIがあることで、ちょっとした社内ツールやアプリを自分で作ろうと思う方は増えています。それ自体はとてもよい流れです。 ただし、社内の情報やアクセス解析のデータ、顧客情報、認証を含むものは、安易に外へ公開しないほうがいいです。自分のレンタルサーバーに置いて、家からでも会社からでも触れるようにする、といった形は、便利さの裏に大きな怖さがあります。 本当にまずいのは、何か起きてからでは遅いことです。個人情報や認証まわりは、一度事故が起きると取り返しがつきません。 ですから、こういうものは、まず自分のマシンの中や閉じた環境で使うところまでにとどめておくほうが無難です。外に出すなら、AIに作らせたから大丈夫、ではなく、システムやセキュリティに詳しい人と一

4.4
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番組について

WebマーケティングやWeb活用で手が止まってしまったり、悩んでいる中小・小規模事業者の皆様へ、根本的なウェブに対する考え方・捉え方をお届け。

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